爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常4 担当医がマッドサイエンティストな物(ご都合主義的なブツ)を作っていた。

 その後のMRIとレントゲンでの検査を終え、再び最初の部屋へと戻る。

 

「よし、とりあえずの診断結果を言おう」

「うむ」

「君は……間違いなく、『TSF症候群』だろう」

「やはりか」

「あぁ。まあ、とりあえず完璧に性転換してるから疑いようはないが、一応もう一つ検査は残っている。というか、こっちの方が重要、かな」

「あれか、能力と言う奴か?」

 

 ある意味では、この病で最も大事な項目とも言えるかもしれぬな。

 

「その通り。学校の授業で習っていると思うが、『TSF症候群』を発症すると、なぜか特殊能力のような物を発現させる。まあ、所謂『超能力』と言うものだ。異世界系だとか、ファンタジー系の小説なんかで見かけるようなものがほとんどだな」

「それは知っておるんじゃが、一体どのような方法で調べるのじゃ? 生憎と、儂はわからんぞ?」

 

 世界的に見ても、発症者はかなり少ない。

 

 発症率が一応五千万人に一人、とは言うが、それが正しいのかどうかは知らん。

 

 世界的人口から見て……一年に百四十人程度なんじゃろうが、テレビを見ても発症者に関するニュースはそうそう流れない。

 

 なので、あれが正しいかどうかは不明じゃな。

 

 まあ、それもあって能力の調べ方なぞ、調べてもまず出てくることはない。

 

 じゃから、儂は知らんのじゃ。

 

「あぁ、それは簡単さ。この薬を使う」

 

 そう言いながら神が取り出したのは、小瓶に入った錠剤だった。

 

 なぜ、薬?

 

「これは私が開発した代物でね。名前は……付けるのが地味に面倒だったから『開示薬』と名付けている」

「本当に適当じゃな」

「使えればいいのさ。で、この薬の効果だ。説明をするのもいいけど……君的には早く帰って寝たいだろう? 今日から春休みみたいだし」

「うむ。すごく寝たい」

「だろうね。なんで、簡単に効果だけを話そう。これは、自身の能力を把握することができる薬だ」

「……なんじゃ、その無駄にファンタジー且つ、ご都合主義な薬は」

 

 ネット小説だったら、確実にちょっと批判されそうじゃぞ、それ。

 

 特に、変に面倒くさい人たちがな。

 

「そう言うな。私とて、初めて開発に成功した時はそう思ったんだ。ちなみに、原材料は『TSF症候群』を発症した者の血液だったりする」

「……それは、大丈夫なのか? 倫理観的に」

「問題ない。十ミリリットルくらいあれば、百人分は作れるから。献血する血液量より少ないはずだぞ?」

「まあ、それなら問題なさそうじゃが……」

 

 人の血液を使って薬を作るとか、色んな意味でアウトな気がしてならないぞ、儂。

 

 人体実験みたいじゃし。

 

「ちなみに、さっき採取した君の血液も、原材料になったりする」

「マジか」

「マジだよ。あぁ、ちゃんと検査にも使うから。余った分を使うのさ」

「……詐欺師みたいじゃな」

「失礼だな、君」

 

 失礼じゃないと思うんじゃが。

 

 そう言うことは、出来れば事前に言って欲しいものじゃ。

 

「ま、それはいいとして。とりあえず、これ飲んで」

「……人間の血から作られた薬か……微妙に飲みたくないのう」

「そう言わずに。能力が把握できないと、色々と援助もできないんだぞ?」

「別に生活にはそこまで困らないが……」

「身分証の発行とかがされなかったりする」

「なら飲むか……」

「それでいい」

 

 にっこりと笑う神。

 

 脅された気分じゃ。

 

 しかし、身分証が発行されないのは色々と問題じゃ。

 だって儂、今小学生にしか見えんからな。

 夜の九時過ぎとかに外を歩いていたら、間違いなく補導されるな。

 それどころか、夜七時でもアウトかもしれん。

 

 それにしてもこやつ、もしかしなくてもマッドサイエンティストなんじゃ……?

 

「ほれ、水だ」

「仕方ない」

 

 自分にそう言い聞かせて、差し出された水と一緒に、一気に薬を飲み込む。

 

 時間はかかるのだろうか? と思っていたら、意外とすぐに効果が現れた。

 

「何か頭の中に浮かんできたかな?」

「うむ……」

「数はいくつだ?」

「あー……三つ、じゃな」

「ほう、三つか。現時点での最高数だな」

 

 そう言えばそうじゃったな。

 

 能力の数は、現状確認されている限りじゃ、三つが限界らしい。

 

 さて、儂は一体どんな能力なんじゃろうか?

 

 頭に浮かんできた能力の詳細を見る限りじゃと……むぅ。

 

「どうした? ちょっと微妙そうな顔をして」

「いや、どうも使い勝手に困るような物が発現したというかじゃな……」

「一体どんなものが?」

「自身の体を成長させたり退行せたりする能力に、動物の特徴を顕現させる能力、あと自分の色を変える能力、かの」

「……ん? なんだい、そのぶっ飛んだ能力は。特に一番最初」

「そうか?」

「いやそうだろう。聞いた限りじゃ、成長と退行が自由自在、ということなんだろう? それってつまり、不老不死と同義なのではないのか?」

「……そう言われてもわからん」

 

 じゃが、たしかに言われてみれば疑似的な不老不死かもしれん。

 

 老化したら、若い時に戻せるような物じゃからな、これ。

 

「まあ、その辺りはその内調べるとして。とりあえず、能力を使用してみて欲しい」

「了解じゃ。となると、わかりやすい『色を変える能力』からの方がいいかの?」

「そうだな。それから頼む」

「じゃあ……適当に髪色を変えるするかの。今は桜色じゃから……銀髪にしてみるか」

「なぜそのチョイス?」

「好きだからじゃが?」

「そうか」

 

 とりあえず、この色、と思い込めばいいのか?

 

 ……よし。儂の髪色を銀に。

 

「おぉ、本当に色が変わった。地味だが」

「本当じゃ。確かに変わっておる。……神の言う通り、本当に地味じゃが」

 

 色が変わるだけ、とはのう……。

 

 これ一つだけだったら、本当に使用用途に困ったぞ。

 

「じゃあ次を頼むよ」

「うむ。ならば、動物の特徴を顕現させるぞ」

 

 この能力の詳細はと言うと、自身が好きな動物三種類の特徴を顕現させることができるようじゃ。

 

 選択肢にあるのは、『狼』『兎』『猫』の三つと。

 

 ふむ……とりあえず、狼にするとしよう。

 

 心の中で、狼に変身、的なことを考えると、不意に周囲がうるさく感じたり、匂いが先ほどよりも強くなった気がする。

 

 目を開けて、自身の手を見るが……

 

「む? 特に変わってなさそうじゃが……」

 

 特に異常はなかった。

 

 もしやこれ、外見に現れるのではなく、力的なものが発現するのかの?

 

「いやいや、思いっきり変わってるぞ?」

「む? どの辺がじゃ?」

「頭とお尻」

「頭と尻じゃと? ……む、何やら謎の感覚がある」

 

 頭頂部とお尻と腰の間くらいに、何やら奇妙な感じがする。

 

 頭に手をやると……

 

「なんじゃ、これ? 耳?」

 

 三角形のふさふさしたものがあった。

 

 まあ、耳じゃろう。これは。

 

 変身した物から察するに、狼の耳で間違いはなさそうじゃ。

 

 ついでに……

 

「尻尾も生えておるな」

 

 こちらもふさふさじゃ。

 

 ……微妙に触り心地がいいの、これ。

 

 というか、患者衣から飛び出ておるし。

 

 道理で尻の辺りがすーすーすると思ったわ。

 

「へぇ、面白い能力だね。まさか、ケモロリになるとは」

 

 見れば、神は儂の姿に感心しておった。

 

「それで、その耳と尻尾は本物か?」

「うむ、本物じゃ。触ってみるか?」

「それはありがたい。どれどれ……ほ~、これはまた、もふもふだな……。しかも、ちゃんと血が通っているのか、温かい。心なしか、体温が高くなっている気がする」

「んっ……なるほど……人に撫でられると言うのは、気持ちいいのじゃな……」

「おや、気持ちいいのかい?」

「うむ……ちょっと気に入っておる」

 

 これはいい。

 

 心が落ち着くぞ……。

 

 ただ、変な声が出そうじゃな、これ。

 

「なるほどなるほど……。では、最後。成長と退行の能力をよろしく」

「了解した」

 

 この場合、やはり成長した姿の方がよさそうじゃな。

 

 となると……イメージとしては、十六歳くらいか?

 それくらいでいいじゃろう。

 

 目を閉じ、自身の成長を想像すると……不意に体が熱くなってきた。

 

 お、おお? なんじゃ? ちょっと、不思議な感じがするぞ。

 

 こう、骨が少し太くなり、筋肉が伸びていくような……そんな感覚。

 

 目を開けると、視点が高くなっていた。

 

「おぉ、本当に成長したぞ。面白いのう、これ」

「驚いた……本当に成長した。しかも、全体的に」

「みたいじゃな」

 

 見れば、成長した結果、儂の服が今にも破けそうじゃ。

 

 というか、破けるんじゃなかろうか、これ。

 

 ミチミチいってるし。

 

 仕方ない。患者衣脱ぐか。

 

「おや……随分と成長したみたいだ」

「そのようじゃな。なんか、肩が少し重いぞ」

「そりゃ、その胸ではな」

 

 神の言う通り、儂の胸は成長しておった。

 身長的には……ふむ、150前半と言ったところかの。

 ただし、胸は結構な大きさみたいじゃ。

 

「見たところ……推定Eと言ったところか」

「結構でかいんじゃな」

「十六歳くらいだと考えると、その先に成長した場合、もっと大きくなりそうだが?」

「……それは困るのう。肩が重くて疲れるし、しかもなんだか腹が空いてきた気もする……いや、これすごい腹が空いてきたぞ」

「なるほど。その能力は体力を使用するみたいだね。というより、カロリーと言ったところかな?」

「みたいじゃ……。どれ、戻るとするか」

 

 さすがにこのままだとものすごく腹が空きそうなので、元に戻りたいと願う。

 すると、みるみるうちに体が縮み、元の状態に戻った。

 

 腹は空いたままじゃが。

 

「能力の検査は、こんなものね。……今思えば、ちゃんとした場所でやるべきだったな。これでもし、攻撃系の能力とか出て来てたら大惨事だったし」

「……なぜ、それを先に言わんのじゃ」

「ハハハ。すっかり忘れていた。まあ、私の知的好奇心を満たせたし、結果オーライさ」

「それはおぬしだけじゃ」

「すまないすまない。……それで、その髪色は戻さないのかい?」

「む? ……あれ、戻らん」

 

 戻したつもりだったんじゃが……どうやら戻っていなかったらしい。

 

 なので、試しに戻そうとしてみたのじゃが、一向に戻る気配はない。

 

「ふむ……どうやらその色を変える能力は、何らかのルールがあるみたいだ。それ、わかるかい? あと、他の能力についてのデメリット的なものとかも。開示薬の効果ももう少しで切れると思うから」

「うむ……」

 

 ちょっと目を閉じて見てみる。

 

 …………ふむ、なるほど。

 

「どうやら、成長と退行の能力は、先ほど神が言っておったように、体力――カロリーを消費するらしい。一応固定化も可能らしいので、多分、慣れじゃろう。そして次に、動物の特徴を顕現させる能力は、変身後、別の動物に変身するのに一時間のインターバルが必要みたいじゃ。あと、顕現出来るのは一度につき一種類までみたいじゃな。最後、色を変える能力は、一日一ヵ所につき、一度までしか色を変えられないらしい。ただ、戻すのは一日一度の縛りから外れるみたいじゃ。まあ、二十四時間以内に戻すのは不可能みたいじゃが」

「なるほど……結構面倒な縛りがあるのか。まあでも、そこまで酷いデメリットもなさそうだし、安全な能力たちなのだろう。よかったな、危険なデメリットがなくて」

「そうじゃな……」

 

 そこは素直に安心するとしよう。

 

「ちなみに、変なデメリットとして、どういうものがあるんじゃ?」

 

 少し気になる。

 

 儂以外にもそれなりにいるからのう、この病を発症させた者は。

 

「んー……例えば、魔法が使える能力を得た人なんかは、時々魔法を使わないと、魔力的なものが体に蓄積されまくって、その内破裂したりするね」

「それ、危険すぎる気がするんじゃが?」

「だろう? その他だと、身体能力を向上させる能力があったりするが、使用した翌日は使用時間に比例して、全身にものすごい筋肉痛が自分に襲い掛かってきたりするな」

「……本当、儂の能力は平和的なんじゃな」

 

 心の底からそう思ったぞ、今。

 

 お腹が空くくらいは全然大丈夫、ということじゃな。

 

 というか、筋肉痛は地味に嫌すぎる。

 

「そうだな。ちなみに、食べなくても生きていける能力を得た人は……」

「人は?」

「性欲が代替品になるらしい。つまり、性欲を満たさないと餓死する、ということだ」

「どこのサキュバスじゃ」

「本当にな。いやー、興味が尽きないよ、この病気は。研究のし甲斐があるというものだ」

 

 やはりこやつ、マッドサイエンティストじゃろ。

 

 悪い笑みを浮かべておるぞ。

 

「まあ、世の中にはそういうデメリットもあるということさ。……さて、概ねこれで検査は終わり、かな。あとは書類を書くだけの簡単なお仕事さ。筆記用具と印鑑は持ってきているね?」

「うむ、持ってきておるぞ」

「じゃ、これを書いてくれ。ついでに、ハンコもな」

 

 一枚の紙を渡され、それを見ると、どうやらそれは今後の生活に関する物だった。

 

 中身を要約すると、こう。

 

 自分は一生転換した性を受け入れて生活します。能力で何か事件を起こすようなことは絶対にしません。

 

 ということじゃ。

 

 これを受け入れないと、国からの援助を受けることはできないらしい。

 

 身分証は発行してくれるらしいが。

 

 ただ、これに従っておかないと、ものすごく監視されるようじゃ。

 

 まあ、本来はない特異な能力を持つ者を野放しにしたら、何をしでかすかわかったものではないからな。

 

 反対に、これに同意すれば、ある程度の自由は保障されるそうじゃ。

 

 ちなみに、能力が強力じゃない場合(儂の色を変える能力など)は、ほぼ監視はないらしい。

 

 あと、日常的に使うことはそれなりに許可されているようじゃ。

 

 あまりに危険すぎるものは、制限がかけられるみたいじゃが。

 

 魔法とかがそうらしい。

 

「まあ、監視とは言っても、そこまで厳しいものじゃないよ。単純に、変に能力を使わないかの心配をしているだけだから」

「じゃが、そうなると窮屈ではないか? これ、絶対発症者の反逆とか起こる気がするぞ、儂は」

「その懸念は最もだ。だが、そうはならんよ」

 

 儂が言った考えに、神は賛同したものの、すぐに否定して来た。

 

「なぜじゃ?」

「だって、ストレスを発散させたくなったら、ここに来ればいいのだから」

「どういう意味じゃ?」

「ここはね、国が直接運営している『TSF症候群』の研究所であり、専門の病院であり、同時に、発症者の為の娯楽施設でもあるんだよ」

「ふむ、それは興味深いのう。しかし、なぜそんなものを?」

「いやほら、この病気は絶対にストレスが溜まるだろう? 男から女に、女から男になるというのは、当然ストレスが溜まるわけだ。今までとは勝手が違うわけだからな。なので、そのストレスで能力を悪用しないよう、この施設はストレス発散の為の娯楽施設という面も兼ね備えているんだよ」

「なるほど……」

 

 たしかに、それは正解じゃろう。

 

 普通の人とは違い、監視や生活面でのストレスが溜まるのならば、それを発散させる場所を作ってしまえばいい、みたいなことじゃろうな。

 

 多少の優遇はしてしかるべき、ということか。

 

 マイナスの意味でも、特別扱いされているわけじゃからな。

 

「ちなみに、安眠できる部屋とかもあったりする」

「む、それは本当か?」

「もちろん。言っただろう、ストレス発散のための娯楽施設だと。ありとあらゆる娯楽があるというわけさ。最新式のゲームから、超快適な安眠室まで。色々さ。あと、さっき言ったデメリットを持った人のための場所も用意されている」

「至れり尽くせりなんじゃな」

「そりゃあね。暴発なんてされたら、この国終わりだから」

「あー、普通の人じゃ敵わない能力を持った人もいそうじゃからなぁ……」

「そういうことさ。……ほれ、雑談はここまでにしよう。説明することも色々あるんだから」

「了解した」

 

 色々と利点があるのは助かる。

 

 なら、断る理由もないな。

 

 ……まあ、断るなんて面倒なこと、するはずがないんじゃがな、儂は。

 

「書けたぞ」

「んー……よし。受理受理、と。それじゃあ、次は座学の時間だ。場所を移そう。着替えたら、廊下に出て来てくれ。どうせ、私が仕事するんだしな」

「わかった」

 

 座学か……なんだか、眠くなりそうじゃな。




 どうも、九十九一です。
 今日の分終了です。普通にこの小説、書いてて楽しい。やっぱいいですね、TSものって。一番好きなジャンルかもしれません。
 さて、明日も昨日今日と同じく、二話投稿です。朝の10時と17時に出しますんで、よろしくお願いします。
 では。
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