爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常40 交流会当日。割と機密レベルが高いまひろの能力

 四月二十四日。

 

 例の交流会当日。

 

「では、儂はそろそろ行ってくるぞ。戸締りはしっかりするのじゃぞ」

「まひろは変質者に襲われないように気をつけてね」

「むしろ、まひろさんが危ない目に遭いそうですよね、外見的に」

「知らない人に付いて行っちゃダメだからね!」

「……不審者に出遭ったら逃げて」

「……儂、高校生なんじゃが」

 

 まあ、儂が小学生と同じくらいの背格好だから、と言うのはわかってはおるのじゃが……そうは言っても、儂は高校生。ついでに言えば、一応能力も保持しておる。

 

 ……使えそうなのは『獣化』だけなのじゃがな。使いどころを間違えれば、一時間はそれで過ごすか、無防備になるのがあれじゃが。

 

「さて、迎えを待たせるのも悪いし、儂は行ってくるぞ。明日の昼前には帰ってくる」

「「「「いってらっしゃい」」」」

「うむ。行ってくる」

 

 なんじゃろう、このやり取り。新婚の夫婦みたいじゃな。

 って、みたいな、ではなく、実際に新婚の夫婦じゃったな。

 

 しかし、交流会はどのようなことになるのかのう。

 

 儂以外の発症者に会えることに、期待で胸を膨らませ、儂は迎えが来る場所へと足を向けた。

 

 

「む、なんじゃ、おぬしか」

「数週間ぶりですね、まひろさん」

 

 迎えが来る場所へと出向くと、そこには以前、儂が発症した日に例の病院へ送り迎えをしてもらった猪瓦がおった。

 

 相変わらずの、キャリアウーマン然とした出で立ちじゃな。

 

「もしや、このO3なる組織は、国運営なのか?」

「その辺りは、移動中にしましょう。さ、どうぞ車へ」

「うむ」

 

 乗るよう指示された車は、やたらと高級感のある黒塗り車であり、尚且つ守備面がかなり強そうなものじゃった。

 

 ふーむ、なんじゃろうか、このVIP的な扱いは。

 

 まあ、悪い気はせんから、よいか。

 

 

 車に乗り込み、猪瓦と会話。

 

「して、このO3とはどのような組織なのじゃ? 生憎と、発症者が所属する組織であることと、これが日本以外にもある、ということしかわかっておらなくてな」

「それでは、簡単に説明しましょう。まず、O3とはまひろさんもご存じの通り『OnsetofOrganization』の略で、言ってしまえば発症者の人たちのみで構成された組織です。この組織はまあ、秘密結社というわけではありませんが、そこまで表立って出て来るような組織ではありません。もし、インターネットなどで調べたのでしたら、ヒットしなかったかと思います」

「うむ、たしかにしなかったのう」

 

 招待状を貰った日、その組織についてちと気になったので、予習復習を終えた後に軽く調べたのじゃが、何一つヒットしなかった。

 

 いや、正確に言えば都市伝説のような形でヒットはしたものの、肝心のものがでなかった、の方が正しいか。

 

「こちらの組織は、世界で初めて『TSF症候群』を発症させた方が設立した組織で、その活動内容は慈善団体に近いものとなっています」

「ほう。それはもしや、能力を使用しての活動か?」

「その通りです。とは言え、完璧な慈善活動と言うわけではなく、いくらかの見返りを受け取ってはいます。ですが、その出どころはどれも把握されており、問題ない物です。間違っても、裏社会とか反社会的勢力などの依頼は絶対に受けることなありません」

「ふむ、しっかりしておるのじゃな」

 

 たしかに、能力と言うものはどれもこれも便利なものばかり。

 

 一つしかない場合や、儂のように複数持ちの場合でも、どれも便利なものばかりと聞く。

 

 しかも、それらの中には一つ能力で複数の効果を持つ物もあるらしい。

 例の『魔法が使えるようになる』という能力もそれらしいからのう。

 

 ……ふむ。そう考えると、儂の『成長退行』と『獣化』の二つもそうなのやもしれぬな。

 

 片や成長と退行を実現させ、片や三種類の動物の能力を得る。ふむ。一つともとれるが、複数とも取れるのう。

 

 とはいえ、根本的には一つではあるのじゃがな。

 

「発症者の方たちが発現させる能力と言うのは、大抵が悪用可能になってしまうものばかりですから」

「攻撃的なものもあるからのう。ま、儂には無縁じゃな。平和的なものしか持ってはおらんし」

「あー、そうですね。強いて言えば、『成長退行』の能力がアレですが……」

「む? どうしてじゃ? あれは、ただ体を自由自在に成長させたり、退行させたりするだけじゃぞ? 危険という意味では、『獣化』の方が危険じゃろう」

 

 大人になったり、幼児になったりする程度の能力など、そこまで危険はないような気がするのじゃが……。

 

 それならば、動物の能力を顕現させる『獣化』の方が危険なはず。

 

「いえ、そう意味ではなく、万が一、まひろさんのその能力が研究者の方たちに知られれば、間違いなく危険に晒されます。まひろさんが」

「……え、マジで?」

「マジです。自身の体を成長させたり、退行させたりと言ったことが自由自在にできるということは、不老不死のようなものですから」

「……そう言えば、神の奴が言っておったな。もしかすると、不老不死かもしれないと」

「はい。ですので、不老不死の可能性があるその能力が知られるということは、かなり危険が伴います。とは言え、そのようなことは絶対にさせませんけどね。世界最高峰のセキュリティプログラムで情報は守られていますから」

「ほう、そんなものが」

 

 なかなかにすごいのじゃな、O3。

 そのような物まであるとは。

 

「はい。発症者の方の中には、世界情勢を軽くひっくり返せるくらいに強大な能力を保持した方もいますので。そういう方たちは、機密レベル5で情報が守られています」

「ほほう。ちなみに、儂はどのレベルなんじゃ?」

「5ですね」

「最高レベルかい!」

 

 軽いノリで訊いてみたら、まさかの最高レベルじゃった。

 

 ……しかし、あれじゃな。幸いにも、儂があの能力を見せたのは、健吾と優弥、美穂、瑞姫の四人だけじゃったな。

 

 あとは、店長も知っておるが……あまり、使用しない方がよいかもな。

 

「まあ、能力が能力なので。不老不死なんて、ある意味では人類の夢みたいなものですから。特に、医療関係の人たちは」

「それもそうか。ちなみに、機密レベル5に設定されておる能力者と言うのは、どういうものがあるのじゃ?」

「どこから漏れ出るかわからないので、あまり言えないのですが……例えでよろしければ、お教えしますが」

「それで構わぬ」

「わかりました。そうですね、簡単に言えば、核ミサイルがいつでも好きな時、好きなタイミングで発射できるボタンを所持しているようなもの、でしょうか」

「……それはたしかに、最高機密レベルの能力じゃな」

「やろうと思えば一人で人類を滅亡させられますからね」

 

 とんでもないのう、発症者。

 

 しかし、物騒な能力もあるんじゃなぁ……。

 そう言った危険な物でなくて安心したわい。

 

「っと、話が脱線したの。それで、組織についてじゃが」

「あぁ、はい、そうですね。えーっと、どこまで話しましたっけ?」

「裏社会や反社会的勢力の依頼は受けない、というところじゃな」

「そうでした。では次に、組織の存在理由ですね。こちらは一言で言ってしまえば『発症者の保護』ですね」

「ふむ。それは国の仕事ではないのか?」

「表向きは、ですけどね」

「む? どういうことじゃ?」

「まひろさんは直接『TSF課』に連絡をしたと思うのですが、実はあそこの部署、厚生労働省の部署じゃないんですよ」

「そうなのか?」

 

 それは驚きじゃな。

 てっきり、厚生労働省管理のものかと思っておったのじゃが……。

 

「あそこの職員はO3の人たちで構成されていまして、実は私もそうなんですよ」

「ほほう。そうじゃったか。……となると、神の奴もそうなのかの?」

「そうですね。あの人は、O3日本支部の研究責任者ですから」

「……あやつ、とんでもない立場だったのじゃな」

「研究大好きの変わった方ですけどね」

「それはよく理解しておる」

 

 こちとら、あやつとは親戚同士らしいからのう。

 

「まあ、この国で検査を受ける際の担当医の方は、必ずと言っていいくらいに神さんになりますからね」

 

 なるほどのう。研究者らしく、発症者の検査は自らが出張ってくるわけか。

 

 さすがと言うかなんと言うか……。

 

「それで、保護、と言うのはどういうことかのう? たしか、発症者には援助金が口座に入れられるが……」

「それも保護の一種ですね。発症者の方は数が少ないと同時に、貴重な人材でもあります。人の役に立つ能力はそれなりにありますので。それに、悪人利用されるような事態が起こったら、それこそ大惨事です。そうならないよう、保護をしているんですよ」

「なるほどのう」

 

 強力な能力があると知ったばかりの今では、心の底から理解できる。

 核ミサイルを発射できるくらいのヤバい能力があると考えれば、当然の行為じゃからな。

 

「ちなみに、クレジットカードにもなっているあのカードですが、実はあれ、とある方の能力で半分作られたものでして、所有者が一定の距離から離れた位置に移動したり、本人以外が所持したり、悪意を感じ取ったりすると、O3の本部に連絡が行くようになっているんですよ」

「なんじゃ、その無駄にご都合主義のような効果は」

「そもそも、『TSF症候群』や能力自体がご都合主義だと思いますけど」

「それもそうじゃな」

 

 性別が変わる、超常的な能力が発現する、そんなもの、ご都合主義と言うほかあるまい。

 考えてみれば、この病はご都合主義の塊のようなものなのじゃな。

 

「して、他に組織についてはあるのか?」

「そうですね……学生時代に発症させた方のほとんどがO3に就職したり、今回開かれる交流会が交流会の皮を被った愚痴り大会だったり、と言ったところですね」

「手紙には愚痴大会と書かれておったが……そこまでか」

「性別が変わると、何かと不便もありますから」

「そうじゃな。儂も、色々と面倒ごとが降りかかっておるので、それは同感じゃな」

 

 主に、旦那たちでな。

 

「まひろさんでもそうなんですね」

「まあ、のう……」

 

 つい先日も死にかけたばかりじゃからな、儂。

 できる事ならば、あの辛さを共有できる者と出会えればよいのじゃが。

 

「あ、そう言えばもう一つ、組織についてありました」

「む、なんじゃ?」

「組織が設立された理由って、発症者の保護と言う名目も三割方であるんですけど、実はもう七割の理由の方が強いんですよ」

「なんじゃ、保護以上の理由があるのか?」

「はい」

「して、それはなんなのじゃ?」

 

 保護以上となるとどういうものなのか皆目見当もつかんが……おそらく、高尚な理由なのじゃろう。自ら組織を設立するくらいじゃからのう。

 

 などと思っておったら、

 

「実は、他の発症者と親睦会がしたいから、と言うのが理由だそうです。滅多にいませんから。あと、愚痴りたいと」

「……あぁ、そうなんじゃな」

 

 結局愚痴りたいだけじゃった。

 

 なんだか、創設者に会ってみたくなってきた。

 

「さて、そろそろ目的地に到着しますので、降りる準備をお願いします」

「なんじゃ、もう到着するのか」

「まあ、組織専用の地下道路を活用していますので。高速道路より速く走行できる上に、使用する方が限りなく少ないので快適なんですよ」

「……そんなものまであるのじゃな」

 

 インフラについても整備がされておったとはのう……。

 

 なんと言うか、色々とすごい人物なのかもしれぬ、その者は。

 

 何はともあれ、交流会じゃな。

 

 果たして、どのような者がおるのか……楽しみじゃな。

 

 できることならば、儂と同じ境遇の者がおることを望む。




 どうも、九十九一です。
 いつもの行き当たりばったりで新たな設定が作られました。うーん、頭おかしい。
 交流会の話、ちょっとカオスになりそうな気がしてます、個人的に。
 明日も10時だと思いますので、よろしくお願いします。
 では。
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