爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常50 不意の電話。爆弾投下再び

「ふぅむ。マジでこの家は広いのう……。何と言うか、場違い感が半端ないのじゃが」

「いえいえ、今日からここはわたしたちの家になりますので、場違いなどということはありませんよ」

 

 喫茶室にて、五人そろって茶を飲み、一息ついた後儂が屋敷の内装を思浮かべながら呟けば、問題なしと瑞姫が否定する。

 

「そりゃ、おぬしのような生まれ持っての金持ちならば、そこまで気にしないんじゃろうが、生憎と儂らは一般的庶民でな。慣れるのに時間がかかるんじゃよ。特に、アリアなんかがそうではないか?」

 

 言い方は悪いが、儂らの中で最も貧乏だったと思われるからのう。

 ましろんの実家については、話をあまり聞いたことがないので、判断しにくいが。

 

「そうだねー。あたしはほら、家が貧乏で、こんなキラキラしたような場所に住むことなんて夢のまた夢どころか、あり得ない未来だと思っていたから、嬉しさよりも、戦々恐々の方が勝ってるかなぁ……。ちょっと怖い」

「じゃろうな。やはりこう、価値観と言うのは、今まで育ってきた周囲の環境によるということじゃな。美穂とましろんはどうなのじゃ?」

「私は……そうね。慣れるのに時間かかりそう。迷いそうだし」

「……私は別に。大体の部屋の位置も覚えた。メイドさんがお世話してくれるのなら、心配事はない。むしろ、嬉しい。私、生徒会長の仕事が忙しいから」

「なるほど。ましろんはさすがじゃな」

 

 伊達に生徒会長しておらんな。

 

 じゃがまあ、うちの学園の生徒会はかなり忙しいと聞く。

 普通の学校であれば、さほど忙しくはないのじゃろうが、うちの学園の生徒会はやることが多い上に、無駄に権力があるからのう。

 

 それを言ったら、委員会のほとんどがそうなんじゃがな。

 儂の所属する図書委員も忙しいからな。

 

「そう言えば、瑞姫よ。おぬしが金持ちであり、尚且つこんな馬鹿みたいに広い屋敷で暮らすことになるから訊くのじゃが……学園へはどのようにして通学するのじゃ? いつも通り、徒歩なのかのう?」

「あ、その件ですね。とりあえずは徒歩で考えていますが……結婚式の後からは、おそらく車での通学になるかと思います」

「それはどうしてなのかな?」

「瑞姫がとんでもない企業の社長令嬢であると考えれば簡単じゃ」

「……羽衣梓グループは、国内有数のグループ企業。多分、まひろんとの結婚自体もかなり秘密裏で、公になっていない。となると、伏せられている。でも、結婚式を挙げるとなると、企業の関係者を呼ぶことになる。もしかすると、その中に情報を流す人がいるかもしれないし、そもそも結婚式に上手く紛れ込む人がいるかもしれない。そうなれば、よからぬ考えを持った汚い大人が私たちを誘拐しようと動く恐れがある。……そう言うことだよね、みーちゃん?」

「大正解です。真白さんが言ったことが理由です。私たちの中の誰かを誘拐し、身代金を……と思うような人がいないとも限りません」

「なるほどー。ありがとう、真白さん!」

「……いいってこと」

 

 儂がましろんと仲良くなるのには、ほんの僅かに時間を要したのじゃが……美穂や瑞姫、アリアとはやけに早く仲良くなっておるんじゃよなぁ……。

 

 やはりあれか、女同士、どこか通じ合う箇所でもあったのじゃろうか?

 

 ま、仲が良いのはいいことじゃ。

 

「……でも、一番守らなければ私たちよりも、まひろんの方だと思う」

「儂? どういうことじゃ?」

「真白さん、本当に鋭いですね」

「……当然。まひろんを一番に考えていれば、その可能性が考えつく」

 

 ……儂を守らなければいけない、とはどういうことなのじゃろうか?

 しかし、ましろんの指摘を瑞姫は否定するどころか、困り顔を浮かべつつも肯定しているのが気になる。

 

「……私やみほりん、みーちゃん、スティは書類上で旦那さん。だけど、ここで問題なのはまひろんの書類上でのこと」

「あー……どういうことじゃ?」

「……簡単に言えば、まひろんの性別が男でも女でもなく、『TS』であること。この性別の最大の特徴は、男女関係なく結婚できることと、複数人と結婚できることにある」

「そうじゃな。それが何か……」

「……そこが問題。どこかの会社の社長が、まひろんを誘拐して自分の子供と無理矢理結婚させないとも限らない。もっとも、私たちの誰かが誘拐されても同じことが起こるかもしれないけど」

「なるほど、そういうことか」

 

 概ね理解した。

 ましろんの指摘を考えると、たしかにそれはあり得るかもしれんのう。

 政略結婚よりも最悪な事態ではあるがな。

 

「ですので、メイドさんを雇ったのです」

「……そう言うということはつまり、この屋敷にいるメイドは、世話係兼護衛も兼ねている、ということかの?」

「はい。みなさんとっても強いですよ? 柊さんなんて、格闘技の世界チャンピオンよりも条件次第では強いので」

「……とんでもない人間がおるもんじゃな」

 

 世の中には不思議なことでいっぱいと聞くが、あの美人なメイドがそれほどの強さとはのう……。

 そんな人材を、一体どこから調達したと言うのじゃろうか。

 金持ちとはすごいのう。

 

「それくらいはしなければ、安全は確保できませんから。ちなみに、他のメイドさんたちも、柊さんほどではなくとも、かなり強いので安心してくださいね」

「何と言うか……VIP待遇ね、私たち」

「実際VIPじゃろ。特に儂なんかは、こやつと結婚したわけじゃからな」

 

 とはいえ、別に金が目当てなどとはなかったがな。巨万の富などには興味がなかったからのう、儂。

 

 ゴロゴロと自堕落な生活ができればよいわけで。

 

「にしても、瑞姫の父上はあれじゃな。今思えば、おぬしからの話でしか聞いていない相手との結婚をよく許したものじゃ」

「お父様は、まひろちゃんにお説教されて以降、わたしの恋愛に寛大になりましたから。その上、わたしの好みのタイプもある程度把握していましたので、それもあるかと」

「そうだとしても、見ず知らずの相手と結婚させるような親は異常だと思うんじゃがな」

「お父様は直感に優れていましたので」

「それで片付けていいのじゃろうか……」

 

 というか、適当すぎるじゃろ。

 よいのか、そんな直感などと言う適当なもので許可して。

 

 ……まあ、本当に今更な話じゃが。

 

「それにしても、女だけの家族って言うのも不思議な感じね」

「……まひろの中身は微妙に男だけど、夜は普通に女の子」

「ちょい待て。それは聞き捨てならんぞ。儂の中身は完璧に男じゃぞ。というか、夜とか言うな」

「でも、夜のまひろ君って、可愛いよね」

「可愛いわね」

「とっても可愛いですね」

「……可愛すぎて、余計にいじめたくなる」

「……もしかして儂、屋敷と言う周囲への騒音に配慮しなくてもよくなったから、毎日のように襲われるのではなかろうか……」

 

 なんて、そんな心配を呟いたら、

 

「「「「ふふふふふふ……」」」」

 

 ものすごく意味深な笑いを四人が零した。

 

 ……儂、死ぬんじゃね?

 

 まあ、わからない未来を心配しても仕方ないし、ともかくそんな心配事はさておくとして。

 

「そう言えば気になるところがあるのじゃが、おぬしらにはこう……子供が欲しいという願望はないのか?」

 

 これ。

 

 儂が男だったならば、さほど問題もなかったが、今の儂の体はれっきとした女の体じゃ。小学生ぐらいじゃが。

 男ではない以上、まあ……子供は作れないわけで。

 

 そこの辺りを考えると、こやつらに子供が欲しいという願望はないのじゃろうか?

 

「まあ……ない、と言えば嘘になるわね」

「わたしは、女の子が欲しかったです」

「あたしも少しだけ憧れはあったかなぁ」

「……人並み程度?」

 

 どうやら、普通にあったらしい。

 

 しかし、今の若者と言えば、何と言うか……結婚願望があまりなかったり、そもそも恋人を作りたいと思う者が少なかったりする。

 それはつまり、子供が欲しい、という願望も薄いわけじゃ。

 

 だとすれば、こやつらは今の時代だと割と珍しい方の部類に入るのかのう? まだ高校生じゃが。

 

「そうなのか。そう考えると、ちと申し訳なく思うのう……。おぬしら全員、元々儂が好きだったらしいし」

「たしかにそうだけど、あんたがそうならなかったら、四人中三人がフラれることになるわけだし、別によかったんじゃない? それに、同性と結婚する、なんていう不思議な経験もできたし」

「わたしはまひろちゃんが女の子になって、気分は有頂天でしたよ?」

 

 まあ、おぬしはそうじゃろうな。ロリコンじゃし。

 

「あたしは別に。失恋するくらいなら、全然いいもん」

「……まひろんだから結婚した。性別は関係ない」

「なんか……強くね? おぬしら」

 

 普通の奴は同性になったら、それなりに困惑するし、もしかすると相手をフるかもしれない。だというのに、こやつらはそんなことをものともせずに結婚したわけじゃからな。その上、今のセリフ。強すぎる。

 

 恋する乙女は強い、ということなのじゃろうか?

 

「まひろちゃんとの子供は欲しいですけど、無理そうですからね。その辺りは諦めています」

「そうか。申し訳ないのう……」

 

 儂としても、そこまでと言うほどその辺の願望はなかったのじゃが、こうして自分の旦那たちが欲しかったという姿を見ると、心に来るものがある。

 

 ……なんて、そう思った時、儂のスマホが鳴った。

 

「……まひろん、電話」

「みたいじゃな。どれ……む、なんじゃ、神か。すまぬ、ちと出てくる」

 

 ディスプレイに表示される『神』という文字を見て、儂は席を立ち部屋を退出し、電話に出る。

 

 そう言えば、あやつが前回電話をかけてきた時は、とんでもなくタイミングが悪かったが……まさかとは思うが、今回もそのパターンじゃなかろうな?

 

『もしもし、まひろ君かな?』

「うむ、儂じゃ。二、三週間ぶりくらいじゃが、なんじゃ? 儂に何か用か?」

『いやなに、君が性転換してから約一ヶ月経ったし、さらに言えば複数人の女性と結婚したようだから、一つだけ重要なことをそろそろ伝えようかと思ってね』

 

 嫌な予感がする。

 それと同時に、なんとなーく……予想ができるのじゃが。

 

「……まさかとは思うのじゃが、同性同士で子供が作れる薬がある、とか言わんじゃろうな?」

 

 可能性潰し、と言う意味での発言。

 できることならば、この可能性は絶対に現実にならないで欲しい。

 が。

 

『おや、よくわかったね。その通りさ』

 

 ちくしょーめ!

 よりにもよって、予想が当たりやがったんじゃが!

 

『実はだね、男性同士、女性同士で子供を作れるようにする薬というものがあるんだよ』

「なんじゃその二次創作物にありそうな薬は」

『ちなみに、製作者は発症者の人だよ』

 

 ……変態しかいないのか?

 

 そう言えば、交流会の翌日に、酔い覚ましの薬が置いてあったが……まさか、あの薬を作った者じゃなかろうな?

 

『ああ、勘違いしないで欲しいけど、これは国からの要請でもあったんだよ』

「国? それはまさかとは思うが、あれか? 少子高齢化対策、的な?」

『その通り。知っての通り、日本は少子高齢化社会なわけだ』

「そうじゃな」

『そんな状況で、『TSF症候群』の発生。発症者のほとんどは、変化した際の性別と同じ性別の人と結婚するケースが多くてね。これでは、どんどん加速してしまうと考えたお偉いさん方が採った方法が、同性同士でも子供が作れる薬』

「……とんでもないもんを生み出しおって」

 

 この件、訊かせるのが怖いんじゃが、儂。

 

 というか、どんな薬じゃ。

 

「……ちなみに、どのような薬なのじゃ?」

『生々しいけど、訊くかい?』

「…………まあ、一応」

『そうか。では、話すとしようか。男同士の方はとりあえず、スルーでいいよね、君、女同士の方だし』

「そうしてもらえると助かる」

 

 今はそっちの方を聞く気にはなれんからな。

 

『では、簡潔に。といっても、本当に簡単さ。その薬を服用すると……まあ、一時的にカタツムリやナメクジのような感じになると言える』

「…………気持ち悪!」

 

 想像しただけで気持ち悪い事事の上ないのじゃが!

 え、何、儂、カタツムリとかナメクジになるの!? きも!

 

『あ、勘違いしないでくれ。私が言うのは、そう言う意味ではなく、その生態に近いものになる、と言う意味さ』

「……生態? 何かあったかの? その二つの生物には」

『雌雄同体って、知ってるかい?』

「たしか、雄と雌、両方の性質を持った生物の事、じゃよな?」

『そうそう。つまり、この薬は一時的にそう言う体質に変化させる薬、と言うわけだ』

「ほほう、なるほどのう……って、はぁ!?」

 

 なんじゃその頭のおかしい薬!

 

「それは、あれか? 創作物――ひいては、十八禁ゲームなんかに見られる、『ふ』で始まって、『り』で終わるあれか!?」

『それだ』

 

 あほだ! マジもんのあほだ!

 とんでもないことを実現させおったバカがおる!

 

『と言っても、本当に一時的なものさ。女性の場合はそう言う形で発生する。だからまあ……うん。いる? その薬』

「なんか怖いんじゃが」

『何を言うか。君だって、一ヶ月ちょっと前までは、股にあったんだぞ? それが』

「確かにそうじゃけども! しかし、この体でそれがあると言うのは……どう考えても違和感ありそうじゃし、未知じゃろ」

 

 実際、現実にそう言う存在がマジでいるらしいが、さすがに自分でなろうとは思わん。

 

『さあね。私は面白そ――もとい、データが欲しいから、是非とも試して欲しいが』

「今面白そうとか言いかけたよな!?」

『はははは。何を言う。私は至って、真面目さ』

「おぬしはただのマッドサイエンティストじゃろ!」

『褒めるなよ、急に。びっくりするだろう?』

「マッドサイエンティストは褒め言葉ではないわ!」

 

 こやつの頭の中はどうなっておるのじゃ。

 

『でもまあ、面白そうだしいずれ必要になるかもしれないと想定し、君の今の家に送ることにするよ』

「やめてくんね!? それが儂の旦那たちに渡れば、儂が死ぬぞ!?」

『そんなことは知らない』

「無責任すぎる!」

『当局は一切関知しない、とはスパイ映画でよく聞くセリフだろう? そういうことだよ』

 

 ……こやつ、本当に酷い。

 

 マジもんのマッドサイエンティストじゃろ。絶対。頭の中、他人で実験することしか考えていないんじゃなかろうか。

 

『ともかく、薬はそうだな……面白そうだし、二週間分くらいは郵送しておくよ。あ、取扱説明書なんかも同封しておくから、使用の際には気をつけてね。じゃ、そういうことで。使うことを楽しみにしているよ。できれば、使用後は報告してもらえると助かる』

「絶対使わん!」

『それじゃ、私は仕事があるので失礼』

 

 ブツッ。

 

 ……あの野郎、色々ととんでもない爆弾を放り込むだけ放り込んで切りおった。

 

「はぁ……。とりあえず、儂でその薬はバレないように回収するか……」

 

 今後増えるであろう心配事に、今から頭を悩ませる儂じゃった。




 どうも、九十九一です。
 この作品がどこに向かっているのか、まったくわかりません。大丈夫なのだろうか、こんな下ネタがそこそこ多くて。ちょっと心配。
 明日は……少し投稿できるかわかりません。私用があると思いますので、私用がない。もしくは、早めに終われば、17時か19時に出せると思いますので、よろしくお願いします。
 では。
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