爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常59 遅刻登校。食われる(?)まひろ

「おはようじゃ」

 

 理事長の許可をもらい、屋上で軽く日向ぼっこをした後、授業終了のチャイムを聴き、教室へと向かい、挨拶と共に中に入ると、やけに見られた。

 まあ、遅刻じゃしな。

 

「おはようと言う時間はとうに過ぎてる気がするけどね」

「おお、美穂。昨日ぶりかの?」

 

 教室に入るなり、すぐに近づいて来て、儂に話しかけてくる美穂。

 やや呆れているような気がするが、まあ、いつも通りじゃろう。

 

「ほんとよ。昨日なんて大変だったんだから。まさか、行方不明になるとは思わなかったし」

「ははは、いやすまぬな。ちと、困ったことになったもので。して、アリアは?」

「ここだよー」

「おぉう、背後にいたんかい」

「うん!」

 

 アリアの場所を尋ねた直後、背後から声がして振り向くと、そこには金髪碧眼の美少女が。

 

「心配したんだよ? まひろ君」

「いやぁ、本当に色々あってのう。じゃが、この通り無事なので、安心するがよい」

「うん! 安心だよー!」

「おっと。おぬし、本当によく抱き着いてくるのう」

 

 がばっと嬉しそうな様子で抱き着かれた。

 おおぅ、瑞姫ほどではないとはいえ、胸がでかいのう、アリアも。

 やはり、アメリカ人の血が入っているからじゃろうか?

 

「えへへー、だって昨日はあんまり会えなかったんだもん! それに、まひろ君はお嫁さんだし、やっぱりいなくなったら心配だからね! 今日は、ぎゅっとしてるの!」

「いや、それでは儂、動きにくくなるのじゃが」

「でも、瑞姫ちゃんは抱っこしてるよ?」

「あやつのは病気じゃから」

「あんた、よくもまあ、堂々と旦那の悪口言えるわね」

「悪口ではないじゃろ。本当のことじゃからな」

「たしかにそうだけど」

「ほれ見ろ。否定できとらん」

「だって、瑞姫だし」

 

 おぬしもおぬしで大概だと思うんじゃがのう。

 まあ、旦那同士仲がよいのは、いいことじゃ。

 これで険悪な状況になれば、それこそ儂の気苦労が絶えなくなる。

 死ぬまで添い遂げるつもりじゃからな、儂。

 

『まさか、リアルな百合を見れるとは思わなかったよな』

『控えめに言って、最高すぎる』

『最初は、桜花の奴が羨ましかったけどよ、あいつの状況を見ちまうとなー』

『見守りたくなる』

『『『それな』』』

『まひろ君の周りって面白いよねー』

『そりゃそうだよ。下手な恋愛漫画なんかより、全然面白いに決まってるって』

『だって、ラブコメ主人公ですら滅多に見かけない境遇なんだよ? 性転換して、複数の女の子と結婚しちゃうんだもん』

『リアル百合ハーレムラブコメ主人公……』

 

 ちょっと待て。なんか、また儂に変なあだ名が付いとらんか!?

 なんじゃ、リアル百合ハーレム主人公って。長すぎじゃろ!

 

 というか、周囲の奴とか、思いっきり儂の生活を見て面白がってるよな!?

 くっ、見世物のパンダの気分じゃ。

 

「それで? 朝の件はどうなったのよ」

「…………まあ、了承した」

「そ、了解。あんたが了承するような相手なら、悪い人じゃないんでしょ? もっとも、瑞姫がGOサイン出してる時点で、善人なんだろうけど」

「そもそも、儂が女であることを知りながらも、約束を果たそうとする相手じゃぞ? 信用に足る。……まあ、当時は儂が小学四年生で、相手は中学三年生だったんじゃが……」

「え、何? 相手って大人なの?」

「うむ。歳の差はざっと五歳差と言ったところか。なので、今は二十二歳じゃな」

「……うっそでしょ。あんた、大人の人すらも落としてたの?」

「おー、まひろ君、本当に女たらしだね!」

「……たらしこんでるつもりはないんじゃがのう……」

 

 女たらしとか、最近よく言われるようになったのじゃが……うむむ。儂にそんなつもりはないし、そもそも口説いているわけでもないのにそう言われるのは、本当に心外じゃな。

 

「……って、ちょっと待って。ねえ、まひろ。今、二十二歳って言った?」

「言ったな」

「それ、犯罪じゃないの……?」

「犯罪て」

 

 いやまあ、常識的に考えたら、社会人の女性が、男子高校生と付き合うとか、普通に考えたら……犯罪じゃね?

 しかも、今の儂と言えば、小学生くらいの幼い少女。

 一応、結衣姉はほんわかとした性格じゃし、そもそも優しそうな外見であるから、警察に補導されるようなことはないはず。傍から見れば、姉妹とか、親子にしか見えんし。

 間違っても、夫婦に見えることはない。

 ……が、年齢的に考えたら、十分アウトの範疇な気が。

 

「まあ、両家公認なら問題ないじゃろ。実際、二十歳の男と二十五歳の女が結婚するようなものじゃからな」

「そりゃそうでしょうけど」

「でも、結婚すれば問題ないんじゃないの? だって、まひろ君はお嫁さんで、その人は旦那さんになるんだからね!」

「その通りじゃな。なんでまあ、今日か明日にはもう一人新しい入居者が来ると思うが……仲良くしてやって欲しい」

「了解」

「はーい!」

 

 うむうむ、こやつらならば問題なかろう。

 二人が笑顔で承諾している姿を見て、儂はうんうんと満足げに頷く。

 

「……その人、どんな人?」

「うむ。そうじゃな、ちとぽわぽわしているが、頭のいい奴じゃよ。あと、優しい」

「……それならいい」

「そうか。……って、ましろん!?」

「……やほ。遊びに来た」

 

 いつの間にかクラスに来ていたましろんに驚く。

 そんなましろんは、いつも通り無表情ではあるものの、どこか嬉しそうな雰囲気。

 まあ、本来のこやつは、お茶目な方じゃからのう……。

 

「……と言っても、時間がないからすぐに退散するけど」

「じゃろうな。何せ今は、普通の授業が終わった後の十分休みじゃからな」

 

 そもそも、三年の教室は四階じゃし。

 階段の上り下りを考えると、話せる時間は五分もあればいい方と言ったところか。

 

「……とりあえず、今日はお仕置き」

 

 耳元で囁かれた。

 

「待て、マジですんの!?」

「……当たり前。まひろんのせいで、昨日は散々だった。許すまじ」

「ちょっ、儂悪くなくね!? 悪いのは瑞姫じゃろ!?」

「……まひろんが逃げなければよかった。透け透けの服くらい、問題ない」

「いやあるぞ!? 儂、おぬしらに見られるのが嫌で逃げたんじゃからな!?」

「へぇ~、そうだったの」

「あ、そう言う理由だったんだ」

「……ハッ!」

「……ふふ。まひろん、墓穴掘った」

 

 しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

 逃げ出した理由がバレた!

 ま、まずい……非常にまずい!

 

「あ、あの、じゃな、き、昨日のあれは……!」

「大丈夫よ。大方『こんな恥ずかしい姿を見られたら、襲われて死ぬ!』とか思ったんでしょ?」

「ぬぐっ……それは……」

「大丈夫だよ、まひろ君。怒らないから!」

「アリア……」

 

 うぅ、本当にアリアは優しい……。

 無邪気故に、一番まともだと思っておる……。

 やはり、アメリカ人の血を引いているから、おおらかなのかのう?

 

「……実は、そうなのじゃ。だって、マジで本気になった時のおぬしら、怖いし……」

 

 アリアならば、儂の味方をしてくれるはず。

 であれば、正直に言っても問題ないな!

 

「だって、美穂ちゃん、真白ちゃん」

「ほっほ~う? 私たちが怖い、と」

「……まひろん、いい度胸」

「あ、あれ? なんで、黒いオーラを……?」

 

 何故、そのように怒っておるのじゃ……? というか、無表情のましろんが小さく笑みを浮かべてるんじゃが!?

 いや、そんなことよりも……

 

「あ、アリア? 一体どういうつもりじゃ……?」

「うーんとね、あたしは別に怒る気はないんだけど、美穂ちゃんと真白ちゃんは違ったから! それに、瑞姫ちゃんが『まひろちゃんは、アリスティアさんを頼るような面がありますので、もしも後ろめたい気持ちがまひろちゃんにあるのでしたら、アリスティアさんが尋ねればいちころですよ』って言ってたので」

「み、瑞姫ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!」

 

 おのれ、ド変態ロリコンめぇ! なんちゅーことをアリアに吹き込んどるのじゃ!?

 いや、たしかにこういう時は頼っちゃうけど! じゃが、それを逆手に取るようなことをしないで欲しいのじゃが! 何してくれてんの!?

 

「……まひろん、今日は逃がさないから」

「い、いいいや、儂はその、と、図書委員の仕事がっ!」

『あ、桜花―、今日は図書委員の仕事なしでいいってよー』

「テメェ、空気読めよ!」

『ひぃっ、すんません!』

 

 思わず語気が強くなる程、空気の読めない同僚がぁ!

 ま、まずい、仕事がないとなると、儂はどうすれば……!

 

「おはようございます」

 

 ……し、死んだっ!

 

「あ、瑞姫、ちょうどよかったわ」

「どうしたのですか?」

「ま、待て、絶対に言うでないぞ!?」

「真白さん、羽交い絞め」

「……任せろ」

「ちょっ、おぬしそう言うキャラじゃ――むぐぅっ!」

 

 ガバッと後ろから羽交い絞めにされた上に、口元を塞がれた。

 くっ、ましろんは儂に近い体型なためか、こういう時すごくちょうどいいサイズ感!

 あと、ましろんの手、ミルクの匂いがするのじゃが。いい匂いじゃな。

 いやいやいや、何考えてるのじゃ儂! なんとしても、止めなければ!

 

「んっ~! んんっ~~~~!」

「……まひろん、黙る。あと、暴れない」

 

 じたばたしていたら、羽交い絞めの直後なのに、羽交い絞めから即解放。

 と思ったら、ガシッと両頬を掴まれる。

 

「ぷはっ、え、ちょっ、おぬし、何をしようと……って、待て待て待て! それはまずい! さすがにここでそれは――んむぅっ!?」

『『『おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』』』

『『『きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』』』

 

 ディープキス、再び。

 ……や、やりやがった!

 

「んむぅっ! んむむ~~~~!」

「……ぷは、まひろん、静かにする。ん……」

「んふぁっ……や、やめっ……ぁむぅ」

 

 や、やばい、こやつ、日に日にキスが上達しておる……!

 おかげで、まだ十秒程度じゃと言うのに、頭がぼーっとしてきた……。

 

「……ふぅ。黙った」

「ふゃぁ……」

 

 全身の力が抜け、だらんとする。

 倒れそうになったものの、すぐさまましろんが抱き抱えたので、なんとか倒れなかった。

 が、儂の頭はぼーっとしていた。

 

「うっわ、見事に骨抜き。さすがに、旦那の中で一番のキス魔なだけあるわー」

「ですね。わたしも自信はある方ですけど、真白さんにはまだまだ敵いませんね」

「おー、大人のキス!」

 

 ツッコミを入れようにも、ぼーっとしているため、上手く喋れない。

 というかこれ、話そうとしたら絶対にされる、と本能的に感じ取っていた。

 

「……みほりん、続きどうぞ」

「OK。瑞姫、昨日まひろが逃げた理由は、単純に私たちに襲われるのが怖かったからだそうよ」

「ふふふ、そうだったのですね。たしかに昨日、わたしを見てすぐ逃げ出していましたし。まひろちゃん、覚悟してくださいね?」

「…………ゆ、許してぇ」

「「「無理!」」」

「り、理不尽……」

 

 儂に安寧などないのか……。

 

『唐突に女同士のディープキス見せられるとか、俺、マジでこのクラスでよかったと思ったわ』

『ロリ生徒会長とTSロリ美少女のキス……やっば。真っ直ぐ立てねぇ……』

『ってか、生徒会長大胆過ぎじゃね』

『桜花も羞恥心ないけどよ、生徒会長も大概だわ』

 

 ぼんやりとしているため、周囲の声はあまりよく聴こえないが、なんとなく言っていることはわかる。

 正直、ましろんはその辺り薄いから、平気でしてくる。

 ……こんな公衆の面前でディープキスをしてくるとは思わなかったが……。

 

『すごい……大人のキスって、ああやってやるんだ』

『ものすごく勉強になる。彼氏ができた時とか』

『動画なんかよりも、圧倒的にいい資料!』

 

 そういう講座じゃないんじゃが……。

 くそぅ、色恋沙汰大好きな女子たちは、完全に教科書としか思ってないんじゃろうな、これは……。

 

 男子は、普通に興奮した様子じゃし……。

 

『でも、とりあえず、あとで男子たちの記憶は奪っておきましょう』

『『『賛成』』』

 

 ……理不尽。

 

「おーっす、そろそろ席つけよー……って、うおっ、桜花どうした!?」

「き、気にしないでくれ……」

「そ、そうか。……って、生徒会長? あぁ、そういや生徒会長もそうだったか。氷鷹、とりあえず、自分の教室戻れよー」

「……はい。じゃあ、まひろん、またね」

「が、学園ではマジでやめて……」

「……善処する」

 

 ひでぇ。

 

「……じゃ」

 

 最後に軽くそう言い、儂を瑞姫に渡すと、ましろんは部屋を出ていった。

 嵐のような奴じゃった……。

 

「よし、お前ら全員いるな? って、どうした男ども。若干前屈みになって」

『ちょ、ちょっと腹痛なんす!』

「は? 集団でか?」

『そうっす! さっき男子連中で食った菓子に多分中りました!』

「そうか。やばかったら保健室行けよ。まあ、お前らも健全な男子高校生だからな。そんな光景を見れば、腹も壊すだろうよ」

 

 ニヤニヤとしながら、男子に言い放つ。

 ……こやつ、さては見ていたな!?

 顔から見るに、面白がっていたのか? この野郎……。

 ということは、さっき驚いたのも演技じゃったということか……!

 

「で、桜花の方は大丈夫なのか? 若干ぐったりしているが」

「だ、大丈夫、じゃ……」

 

 瑞姫に自分の席に座らされた後、若干突っ伏しながらも大丈夫と伝える。

 大丈夫じゃないと言えば、間違いなく保健室に連れて行かれるからのう……。

 

「そうか。まいいや。とりあえず、授業の前に軽く連絡事項だ」

『先生、どうして朝じゃないんですか?』

「ついさっき決まったからな。あー、お前らも知っての通り、今年この学園に新しく来た教師の中で、英語の教師が例年よりも少ないことは知っている通りだ」

 

 そう言えばそうじゃったな。

 なんでも、あまり来なかったとか。

 正確に言えば、必要なラインに到達する者が来なかった、というのが正しいかもしれぬが。

 

「で、さっき新しい英語教師がこの学園で働くことが決まったんで、それを伝えておく」

 

 結衣姉じゃな、絶対。

 

『せんせー、それどんな人っすか?』

「んー、とりあえず、かなり若い先生とだけ言っておこう。歳は、今年で二十二だ」

『ってことは二十一!? え、なんで!?』

 

 歳の差が五歳じゃったから、美穂たちに二十二歳と伝えたが、そう言えば結衣姉の誕生日はもう少し先じゃったな。

 正確に言えば今年で、じゃからな。

 まあ、間違いではないじゃろ。

 

「海外の大学に行っていたらしい。ちなみに、お前らと同じ歳の頃には、すでに大学二年生だったそうだぞ」

『飛び級……』

『そんな人、ほんとにいるんだ』

 

 儂も、身内にいるとは思わなかったけどな。

 

「ちなみに、その先生とは割とお前らと接点を持つことになるだろうから、覚えておいてくれ」

 

 ふむ。ということは、このクラスの英語の授業を担当することになるのかの?

 まあ、儂としては、結衣姉の教え方はわかりやすいので、是非ともこのクラスで授業をしてもらいたいものじゃがな。

 

『マジか。男か女か、どっちだろうな?』

『やっぱ、美人な女教師だと、すげえテンション上がるよな!』

『そしたら俺、ぜってー勉強しまくっちまうぜ』

『うーん、この時期に新しい先生かー』

『変な時期だよね。それを言ったら、アリスちゃんもそうだけど』

『……ということは、まひろ君絡みか……?』

『『『あり得るし、面白そう!』』』

 

 女子、鋭くないか……?

 男子に知られれば、どのような状況になるか。

 ……怖いな。

 

「ま、かなり近いうちに会うことになるとは思うがな。よし、んじゃ、授業はじめっぞー」

 

 なんじゃ、今の意味深なセリフは。

 ……ふむ。まあよいか。

 変なことにはなるまい。

 

 ともかく、遅れた分を取り戻さないといかんの。




 どうも、九十九一です。
 相変わらず食われるまひろである。話が進むごとに、どんどんエスカレートしている気がするんですが。うーん、めちゃくちゃ。
 明日も投稿出来たらしますが……ちょっときつそうです。まあ、頑張って出すつもりです。時間的には10時か、いつも言っている17時か19時ですので、よろしくお願いします。
 では。

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