爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常63 馴れ初め。真白の場合 上

「さて、美穂の話が終わったところで、次じゃな。次は誰がよいか……」

「……じゃあ、私」

「ましろんか? たしかに構わんが……なぜじゃ?」

 

 名乗りを上げたのはましろんじゃったが、一体どうしたのじゃろうか?

 

「……んー、話が重いから?」

「「「「重い?」」」」

「あー……そう言えば、ましろんのあれこれは重かったのう……。そうじゃな。おそらく、この中で一番重いかもしれぬ。そう言う意味では、早めの方が良いか」

「……ん、そう言うこと」

「了解じゃ。ならば、次はましろんの話じゃな。ましろんとは――」

 

 そう言って、儂はましろんとの馴れ初めを話し始めた。

 

 

 儂とましろんが出会ったのは、去年の九月頃の事。

 夏休み明けで、学園祭の準備がそろそろ始まる、という時期に出会った。

 

 ……もっとも、

 

「…………お、お腹、空いたぁ……」

 

 行き倒れ、と言う形でじゃがな。

 

「……ふぅむ。四方木教諭に強制的にやらされた仕事を片付けたら、まさかこんなレアな状況に出くわすとは」

 

 あまりのレアな状況に、さすがの儂も困惑しておった。

 

 くきゅぅ~~~~~~……。

 

「……」

「……」

 

 ふむ、どうしたものか……。

 目の前には、廊下でうつぶせになって倒れている物理的に小さめな女子生徒。

 片や、そんな女子生徒を見下ろす、髪の毛が長い中性的な顔立ちの男子生徒。

 

 ……これ、儂がヤベー奴に思われる気がするんじゃが。

 仕方ない。

 

「あー、こほん。もしもし、そこで倒れている女子生徒よ。どうしたのじゃ?」

「……誰?」

「あぁ、すまん。儂は、一年三組の桜花まひろじゃ」

「……男子生徒なのに、やたらと髪が長くて、お爺さん口調な人?」

「そうじゃな。……と言うか儂、普通に知られとんのな」

「……そこそこ有名」

 

 有名じゃったかー……。

 一体どのような広まり方をしたのじゃろうか。

 

「それで? おぬしはなぜ、倒れておるのじゃ? いや、さっきの音を聞けば理解できるが」

「……空腹。それだけ」

「じゃろうな」

 

 空腹で倒れている以外、理由などあるまい。だって、お腹空いたとか言ったり、腹の音が鳴ったりしておったからな。

 

 しかし、このご時世、それも学園内で行き倒れとは。

 

「……おぬし、金は?」

「……忘れた」

「それで飯を食い損ねた、と?」

「……ん」

 

 ということは、財布を忘れたわけか。

 それで、我慢していた、と。

 

「ふむ。儂が飯を食わせてやってもよいのじゃが……」

「……ほんとっ!?」

「うおぅっ!? な、なんじゃ突然。びっくりしたー」

 

 いきなり起き上がってこっちを見たと思ったら、やたらでかい声で反応して来たつい驚いてしもうた。

 外見の割に、意外と声はでかいのかもしれぬな。

 

「飯を奢るのは別の良いのじゃが、今日はもう学食はやっとらんぞ?」

「……しょぼん……」

「そうしょんぼりするでない」

 

 現実でしょぼんとか言う奴、初めて見た。

 

「たしか、この近くにはコンビニがあったはずじゃ。どれ、儂が買ってきてやろう」

「……いいの?」

「構わぬ」

「……見ず知らずの私に、なぜご飯を恵んでくれるの?」

「む? そうじゃな……特に理由はないが……とりあえず、おぬしが儂好みの容姿じゃったから、ということにしておいてくれ。めんどくさい」

 

 まあ、好みと言うのは嘘ではないがな。

 銀髪で背が小さい女子が現実にいるとは。驚きじゃ。

 だからなんじゃ、と言う話ではあるが。

 

「……好みなの? 私のことが」

 

 儂の回答に、銀髪の女子生徒が少し呆けたような表情を浮かべながら聞き返してくる。

 

「まあ、それなりにな。……ほれ、コンビニへ行くから、食べたいものを言え。急ぎ目に買ってくるのでな。あぁ、遠慮はいらんぞ。好きなものを言うといい」

 

 あまり話していると、相手の空腹も限界に到達してしまいそうだったので、話を切って何が食べたいかを尋ねる。

 

 そこにプラスで、遠慮はいらない、ということもセットでな。

 

「……ツナマヨおにぎり二個、すじこおにぎり一個、牛カルビおにぎり一個、ハムチーズレタスのサンドイッチが一個、卵サンド二個、焼きそばパン一個、あとメンチカツ二個に、唐揚げ一つ」

「……ん? ちょっと待て。え、なに? おぬし、そんなに食べるのか?」

「……? ん、普通だと思うけど……?」

 

 無表情ではあるものの、どこかきょとんとした表情で、そう言ってくる女子生徒。

 な、なるほど……。

 

「そ、そうか。……とりあえず、買ってくるので、しばし待っておれ」

「……ん!」

 

 無表情なのに、なんかすっごい嬉しそうじゃな、こやつ。

 

 

 と言うわけで、コンビニへ行き、頼まれたものを購入。

 

 会計の際、

 

『あの、こういうことをされるのが嫌でしたら、相談とかした方がいいですよ……?』

 

 と、店員に心配された。

 

 もしや儂、いじめられてる勘違いされたのか?

 ……どうもそうっぽいのう……。

 

「あー、いや、これは知り合いが食べるもので、そもそも全部同一人物の物なのじゃが」

『え? この量を一人で? お相撲さんが知り合いにいるんですか?』

「……まあ、普通ならばそう思うわなぁ」

 

 まさかこれを全て食すのが、たった一人の女子生徒だとは思うまい。

 

 

「ほれ、買ってきたぞ」

「……ご飯っ!」

 

 ばひゅんっ! と言う効果音が見えそうなくらいの俊敏な動きで、女子生徒が近づいてきた。

 

「飲み物について訊くのを忘れたので、適当にオレンジジュースを買ってきたのじゃが、大丈夫かの?」

「……問題なし。果実系のジュースは大好き」

「そうか。ならばよかった」

 

 これで、コーラがよかった、とか言われたらちと困ったがな。

 

「もっきゅもっきゅ……!」

 

 お、おぉ、みるみるうちに食べ物が減っていくぞ……!

 何と言うペース。

 あの小さな体のどこに入ると言うのじゃろうか。

 

「……けぷ。ごちそうさまでした」

「お粗末様じゃ」

 

 まあ、作ったのは儂ではないがな。

 

「……お金は後日払う」

「いや、金はよい。儂が好きでしたことじゃ。払わんでもよいぞ」

「……それは申し訳ない」

「本当に構わんのじゃよ。そもそも、奢ると言ったわけじゃからな、儂は。気にするでない」

 

 儂が言い出した事じゃからな。

 わざわざ金を返してもらう必要などない。それに、空腹で倒れるとかよっぽどじゃからのう。

 

「……そう。じゃあ、ありがたく」

「うむ、そうしてもらえると助かる」

 

 受け入れられてよかった。

 

 これでもし、意地でも払おうとしたら、それはそれでかなり困っておったが、意外と素直なのやもしれぬな、この女子生徒は。

 

「ところで、おぬしは誰じゃ? 儂は先ほど名乗ったが、おぬしのことは聞いておらんかったな」

「……あ、そう言えば。じゃあ、自己紹介。私は、氷鷹真白。二年生」

「む、なんじゃ年上じゃったのか。年下じゃと思って、普通にタメ口で接してしまった。警護の方が良いか?」

「……別に。私、敬語は好きじゃない。今のようにタメ口でいい」

「お、そうか。それは助かる。儂も苦手でな、敬語は。正直、肩が凝る」

 

 やはり、この口調が一番気楽で話しやすい。

 しかしまあ、世の中には敬語で話さないと許さん、みたいな奴がいるからのう。もちろん、それは当たり前のこととも言えるので、仕方ないんじゃがのう。

 

「さて、儂はそろそろ帰るとするかの」

「……もう行くの?」

「うむ。夕飯の材料を買いに行かねばならんのでな。それに、今の時間帯であれば、商店街で安く材料が手に入る」

「……主婦?」

「いや、儂は単純に親が家にいないだけじゃ。両親ともに仕事が忙しいらしくてな、半ば一人暮らしみたいなもんじゃな」

「……そう、なんだ」

 

 む? 今、少し暗い表情になったような気がする。

 

 ……ふむ。

 

 しかしまあ、仮にそうだったとして、出会ったばかりの儂が踏み込むのはどうかと思うし、見なかったことにするとしよう。

 

「では、儂は帰るとしよう」

「……ん。ご飯ありがとう」

「はは、どういたしましてじゃ。じゃあの」

 

 そんなこんなで、初遭遇は終わった。

 

 

 初遭遇後は、学年が違っていたため会う機会がなかったのじゃが、ある日……というか、学園祭の準備期間中じゃな。

 

 儂も儂で、夕方六時頃に自分の作業を終わらせ、適当に学内を見回っておった。

 

 すると、

 

「……重い」

 

 少し先で謎のでかい箱が歩いておった。

 しかも、ふらっふらしておる。ついでに言えば、なんか聞き覚えのある声も。

 

 あれはもしや……

 

「あー、氷鷹先輩か?」

「……その声、桜花さん?」

「うむ。そのおぬしの体に似合わぬバカでかい箱はどこへ運ぶのじゃ?」

「……生徒会室」

「生徒会室? 了解じゃ。代わりに持つぞ」

「……あ」

 

 氷鷹先輩が持っておった箱をひょいっと持ち上げる。

 あ、ひょいっとは無理じゃった……。

 

「い、意外と重いな」

「……書類、入ってるから」

「そうか。しかし、おぬしのその体ではきつかろう」

「……いいの?」

「あぁ、小さな女子に持たせれば、下手すりゃ体を壊しかねんからな。ほれ、行くぞ」

「……ありがと」

 

 無表情ではあるものの、意外と表情が出るんじゃな、こやつは。

 ほんのわずかに口元が笑みを浮かべている気がする。

 ふむ。案外、顔に出るタイプなのやもな。

 

 

「ここでよいか?」

「……ん、問題なし」

 

 頑張って荷物を生徒会室に運び、適当な位置に置く。

 いやー、意外と重くて少し腕と腰にきたのう。

 まあ、こんなもんを小さい氷鷹先輩に持たせるわけにはいかんからな。

 

「しかし、ここが生徒会室か。結構綺麗なんじゃな。あと、電話もあるし」

「……生徒会室が汚かったらそれはそれで問題。あと、電話は学食を注文するのに使う。仕事が多いから」

「なるほど、そうなんじゃな」

 

 結構便利なんじゃな、この部屋。

 よく見れば、自販機あるし。

 やはり、仕事が多いとこういう物が必要になるんじゃろうな。

 

「ところで、おぬしはあれか? 生徒会役員なのか?」

「……これでも副会長」

「え、マジで?」

「……マジ。去年、生徒会長のスカウトで副会長になった」

「そうなのか」

 

 人は外見で判断できない、と言うのはあるが、まさか副会長だったとは。

 それにしても、スカウトなんじゃな、生徒会役員って。

 

「ところで、他の役員はどうしたのじゃ?」

「……学園祭の準備期間は、結構忙しい。校内の見回りだけじゃなく、各クラス・部活・個人の出し物の申請の審査や受理・却下まで色々ある。後、却下してもここをどうしなければいけない、こうすれば許可できる、ということを伝えたりしなければならない」

「ふぅむ。一般的な生徒会と言うのは、そこまで忙しいと聞かないが、この学園の生徒会は忙しいんじゃな」

「……この学園は、生徒の自主性を重んじているから、生徒会や委員会の仕事が多い」

「なるほどのう」

 

 そう聞くと、委員会に入らなくてよかったのう……。

 しなければいい仕事はしないからのう、儂は。

 面倒ごとは嫌いじゃ。

 

「で、今は出払っていると」

「……そう」

「ふむ。しかし、先ほどの重い箱は?」

「……副会長は意外と仕事が多い。と言うより、こういうイベントでは生徒会長は結構動き回る。副会長は中継に近いことをする。さっきの箱は、必要になる書類が入った箱」

 

 あの重さのレベルかー。

 ふぅむ。

 

「おぬしには、頼る友人とかはおらんのか?」

「…………友達は、いない」

「ボッチなのか?」

「…………言い方」

 

 ジト目を向けながら、やや非難する声音でツッコまれた。

 今のは儂が悪い。

 

「すまぬ。儂はどうも、正直に言う節があってのう……。傷つけたのなら謝る」

「……大丈夫。私にも色々あるから」

「そうか。……しかし、色々とな? なんじゃ、おぬしはあれか? 過去に何か嫌なことがあったのか?」

「………………別に」

 

 今の間は、どう見ても何かあったんじゃろうな。

 しかし、話したがらないのならば、こちらから聞き出すのも申し訳ない。

 こう言うことは、本人が話したくなった時に訊くのが一番じゃ。まあ、本人が潰れそうになっておったら、その時はこちらから無理にでも踏み込まなければならないがな。

 そうならないことを祈るか。

 

「しかしまあ、友人がいないと言うのは問題じゃろ」

「…………なぜ?」

「なぜて……。まあ、なんじゃ。友人と言うのは必要じゃぞ? やはり、一人で抱え込むなど、自分を大事にしないものがすることじゃ。一人でもいるだけで違うぞ? 悩みを愚痴れたりするからのう」

「…………でも私、避けられてる」

「避けられてる? なぜじゃ?」

「……わからない」

 

 わからないかー……。

 

 ふぅむ、話して見ても別段悪い奴ではないし、むしろいい奴に思える。

 

 話すのは気楽じゃし、こっちとしても年上相手に疲れないで話せるのなんて、小すじゃからのう。儂の口調やらなんやらで。

 

 店長とかは気楽じゃが。よく知っとるし。

 

「そうか……。ふむ、では、儂と友人になるか?」

「……なんで?」

「なんでと言われてものう……。おぬしが嫌ならば別に断ってもよいぞ。無理にとは言わん。第一、友人とは押し付けるものではないからのう」

 

 押し付ける友人は友人ではないしな。

 

 つい最近、その実例がおったからな。まあ、そやつとは仲良くなれたからこっちとしてもよかったがな。

 

 友人が増えるのは、普通に嬉しいしのう。

 

「…………じゃあ、なる」

「む、よいのか? 同学年ではなく、一つ下じゃぞ?」

「……大丈夫。桜花さんは、信用できそう」

「どういう意味じゃ?」

「……過去の経験から、私はその人が信用できるかできないかがわかる。目を見れば」

「ほほう、それはすごいのう。で、どうじゃ? 儂は」

「……ぐーたらだけど、お人好しに見える」

「お、おう……」

 

 健吾や優弥に言われておることとほぼ同じ……。

 なぜ、わかるのじゃろうか。

 むしろ、そう言う能力が身に付くほどの過去とは一体……。

 

「……どう?」

「まあ、正解、じゃな。一応。お人好し、と言う部分は認めたくないが……」

「……見ず知らずの私にご飯を食べさせてくれたり、荷物を持ったりしてくれてる時点で、十分お人好し」

 

 ……それもそうか。

 

「……ま、これで今日から儂らは友人同士じゃ。何か悩みとか、困ったことがあれば遠慮なく言うがよい。あ、これ儂の電話番号とメアドな」

「……ありがとう。ちょっと待って。……はい、これ私の」

「書くの速いな」

「……速筆は基本」

 

 一体何の。

 とりあえず、友人が増えたので良しとしよう。

 

「……そろそろ仕事に戻らないと」

「む、そうか。何か手伝うか?」

「…………さすがに、仕事を手伝ってもらうのは悪い」

「別に、気にせんでもよいぞ。一人でやるのが大変ならば、友人に頼むのも問題ない」

「……友達とは、そう言うもの?」

「うむ。気軽に相談することができる相手、と言うのが友人じゃ」

「……なるほど。じゃあ、手伝ってくれると嬉しい」

「了解じゃ」




 どうも、九十九一です。
 本当は一話にまとめようとしたのですが、結構長くなってしまったので、二話分けになります。と言ってもまあ、書きあがっているので、今日は二話投稿です。この話は10時ですので、次は17時に上げますね。
 それからお知らせを少々。
 活動報告を見た方はご存知かもしれませんが、この作品の18禁版が書きあがりまして、投稿しました。タイトルは『じじのじゃ! 18+』というものになっています。タイトルは気にしないでください。
 なのでまあ、もし興味がある方は、私の作者名をクリックすれば出ますので、どうぞ。あ、18禁なので、高校生未満の方は読まないようにしてくださいね!
 ともあれ、次は17時ですので、よろしくお願いします。
 では。
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