爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常71 暴食。ロリっ娘に食いつぶされる店

「ほれ、出来たぞ」

「「「「「お~! 美味しそう!」」」」」

「遠慮せず食え……って、なんじゃ、美穂と瑞姫も来ておったのか」

 

 料理を運ぶためのワゴンに、作った料理を載せて、アリアたちが座る席へと持って行くと、いつの間にか美穂と瑞姫が座っておった。

 

「ほんの十分前くらいにね。一応入店した時のベルが鳴ったと思うんだけど、あんた、料理してたから」

「あー、そう言えば鳴ったような気がするな……」

 

 集中しておったから、気付かなかったわけか。

 

「……まひろん。早く、早く!」

「おっと、すまぬ……って、ましろん、なんか表情が怖いぞ?」

「……楽しみにしてた。まひろんの手料理」

「お、おう、そうか」

 

 しかし、瞳孔が開いている上に、血走っているのはさすがに怖いぞ。

 ましろんのそのホラーな表情が怖かったんで、いそいそとテーブルに料理を並べていく。

 

「ほれ、食え」

「「「「「いただきまーす!」」」」」

「召し上がれじゃ」

 

 食前の挨拶をすると、五人は一斉に儂が作った料理に手を出し始めた。

 するとどうじゃ。

 全員、笑みを浮かべるではないか。

 

「はー、やっぱりまひろの作る料理は美味しいわね」

「そうですね! さすがお嫁さんです!」

「まひろ君が賄いを作った時は好評だったしね!」

「……もぐもぐもぐもぐもぐ」

「あらあら~、とっても美味しいわね~。ひろ君、いつの間にこんなにお料理ができるようになったの~?」

「小六の頃から家事をするようになってな。それで培ったものじゃ。おかげで、家事は万能じゃぞ?」

「そうなのね~」

 

 儂が家事ができると言うと、結衣姉は意外そうな表情を浮かべたものの、すぐにいつものほんわかとした笑顔に戻った。

 

 しかしまあ、あれじゃな。

 

 全員が儂の料理を美味そうに食べている姿と言うのは、何とも嬉しいものじゃ。

 

 こういう気持ちを得られるのならば、定期的に料理を作って、それらを旦那共に振舞うのもよいかもしれぬのう。

 

 ……と、まあ現実逃避はここまでにして。

 

「……ましろんよ。おぬし、どんだけ食べとんのじゃ」

 儂の目の前には、一切食べるスピードが衰えていない存在のましろんが。

 

 というか、下手すりゃ残像が見えるレベルなんじゃが。

 え、なにあれ、どうやっとんの?

 

「……もぐもぐもぐもぐもぐ……ごくんっ。……私の胃が満足と言うまで」

「いや、儂結構な量を作ったと思うのじゃが」

「……まだまだ足りない。むしろ、ここからが本番。……あ、みーちゃんそれ美味しい?」

「はい、とっても美味しいですよ。食べますか?」

「……当然。全種コンプリートする」

 

 ぐっと握り拳を作りながら、そう言い放つましろん。

 ……洒落にならぬ。

 

「っと、そうじゃった。瑞姫よ、金は持ってきたか?」

「はい、まひろちゃんに言われた通り、現金で持ってきましたよ。ただ、真白さんの胃袋の限界がどのレベルかわからなかったので、とりあえず、二十万円ほど持ってきました」

「ぬ? 儂は二万でいいと言ったのじゃが」

「わたしもそう思ったのですが、相手は空腹状態の真白さんです。となると、かなりの量の料理を食べると予想されますので……まあ、これくらいは、と」

「なるほど、一理ある」

 

 用心するに越したことはない、ということじゃな。

 何せ、瑞姫も言ったように、相手はあのましろん。

 

 まして、腹ペコ状態ともあれば、確実にやべーということだけはわかる。

 

 ……今日の昼間の繁盛の仕方的に考え、材料の在庫から作れる量の数を換算すると……まあ、瑞姫が持ってきた金額よりも少ないくらいか。

 

 ま! さすがのまひろでも、百人前を余裕で越えてくるほどの量を食べきるわけないな!

 

 店長にも、大袈裟に言ったかもしれぬが、いらぬ心配だったやもしれぬ。

 

 ふっ、問題はなさそうじゃな!

 

「……ふぅ、まひろんの手料理、ごちそうさまでした」

「お、なんじゃ、もう終わりか? まあ、結構な量を作ったからな! それに、おぬしは昼食も相当な量食しておったはず。ならば、店の料理は――」

「……? まひろん、何を言ってるの?」

「……ぬ?」

「……わたしは『まひろんの手料理』に対してごちそうさまと言っただけであって、もう食べないとは言ってない」

「…………はい?」

「……それに、これだけ私の胃は満足しないっ。だから……すみません、注文いいですか!」

 

 なっ、いつもは声がちょっと小さ目なましろんが、そこそこの声を出したじゃとぅ!?

 

『はーい、ご注文をどうぞ』

 

 にこやかにやってきた女の同僚が、用紙とペンを持って注文を訊く体勢を取る。

 そして、そのにこやか~な笑顔は、次のましろんのセリフにより、固まることとなる。

 

「……ここのデザートとドリンク以外の料理、全部持って来て。飲み物は、烏龍茶」

『………………はぇ?』

 

 そこそこの間の後、同僚は気の抜けた声を漏らした。

 そして、恐る恐ると言った様子で、

 

『あ、あの~……? も、もう一度、ご注文をお尋ねてしても……?』

 

 と訊き返した。

 

 その際、冷や汗を流しながら、引き攣った笑顔ではあったが……。

 

「……ここのデザートとドリンク以外の料理、全部持って来て。飲み物は、烏龍茶」

『お、お客様? も、もしかして、フードをファイターする人か何かなんですか……?』

「……そういうのじゃない。でも、食べる」

『ほ、本気ですか?』

「…………あ、ごめんなさい」

『あ、もしかして冗談――』

 

 パッ! と安堵した笑みを浮かべる同僚じゃったが、

 

「……一人前じゃなくて、作れるだけ全部持って来て下さい」

『…………』

 

 まひろんからの死の宣告とも等しいセリフに、思わず笑顔のまま固まった。

 

「……まひろ、これは大丈夫なの?」

「……ど、どうじゃろうなぁ? ま、まあ、いくらましろんでも、さすがに……」

「だ、だよ、ね?」

 

 美穂、儂、アリアの三人は冷や汗をだらだらと流しながら、まさかなぁ、と言い合った。

 

 この一時間後。

 

 

「……けぷ。ごちそうさまでした」

「「「全部食べたァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」」」

 

 目の前には、空になった大量の食器が、儂らのテーブルだけでなく、他のテーブルにまで鎮座しておった。

 

 そんなましろんに、儂と美穂、アリアの三人は、キャラ設定と言う名の固定口調を見事にぶっ飛ばし、思わずそう叫んでいた。

 

 ……いやいやいやいや! これはないじゃろ!?

 

「軽く二百人前以上はあったと思うのですけど……さすがですね、真白さん」

「よく食べる子は素敵よね~」

「いや違う! 二人とも、そんな軽い言葉で済ませていい状況ではないと思うのじゃが!?」

「そうよ! この異常事態を見ても、なんでそう平然としていられるの!?」

「さ、さすがのあたしでも、これはびっくりだよっ!」

 

 とまあ、反応が薄い瑞姫と結衣姉の二人に、思い思いのツッコミ(?)を入れている間、ましろんはと言うと……

 

「……次、デザートとドリンク全部行こう」

 

 そんなことを言い出しおった。

 

「「「「「??????」」」」」

 

 さすがの発言に、瑞姫と結衣姉の二人も驚きを通り越し、脳の処理が追い付かなくなったため、儂ら全員は宇宙猫状態となった。

 

「……店員さん!」

『ひっ……は、はい、な、なんでしょう、か……?』

 

 悲鳴を上げる店員とは……。

 

 その後ろを見れば、厨房の奥にはほぼ死んだ顔をした同僚たちと、燃え尽きている店長がいた。

 

 そして、ましろんが店員を呼んだ瞬間、全員がビクゥッ! とし、恐怖という感情で支配された表情を浮かべておった。

 

 そんな者たちに、閻魔大王による断罪のごとき言葉が発された。

 

「……このお店にある、デザートとドリンク類、全部持って来て」

『『『うぼぁ…………』』』

 

 その瞬間、この店にいる店員と店長の心が折れた音が聞こえた気がした。

 

 

 再び一時間後。

 

「……ごちそうさまでした」

 

 そこには、全てのデザートとドリンクを完食したましろんの姿と、死体のように動かなくなった店員たちの姿があった。

 

「し、死屍累々……!」

「……私、死屍累々という言葉が異常なほどに嵌ってる状況を、生まれて初めて見たわ」

「あたしも……」

「わ、わたしもです」

「私でもこんな状況は見たことないわね~……」

 

 儂を含めた、ましろん以外の面子は、軒並みましろんのとんでもない食欲に頬を引き攣らせていた。

 

『し、しんどい……』

『な、なんだあのロリっ娘は……一人で、この店の食材全部食いつくしちまいやがった……』

『あ、悪魔……悪魔よ、あの娘は……!』

 

 ましろんの暴飲暴食を目の当たりにした同僚たちは、床に倒れ伏し、各々得体のしれない何かに対する恐怖を感じたかのような、そんな反応をした。

 

 悪魔、か。

 

 まあ、たしかに色んな意味で悪魔じゃな。

 

 ……主に、あっちの面と、こっちの食事の面では。

 

「……あ、私としたことが、忘れてた」

 

 ガタタッ――!

 

 ぽつりとましろんがそう呟くと、周囲の者たちは、一斉に立ち上がり、壁際に後ずさる。

 

 同僚たちの予想はおそらく、もっと食べたい、というある意味最悪の言葉がくるのでは? であろう。

 

 じゃが、いくらましろんと言えど、あれほどの量を食べておきながら、もっと食べたいなどと言うことはない。

 

 ……多分。

 

「……美味しかったです。ごちそうさまでした」

 

 普段、あまり表情らしい表情を浮かべないましろんが、目に見えてわかるくらいの微笑みを浮かべた。

 

 傍から見ると、無表情なクール合法ロリなましろんであるが、そんな普段から無表情な者が時折このような柔らかい笑みを浮かべるとどうなるか、

 

『『『――……!』』』

 

 全員、不意打ちの可愛さの暴力により、声にならない様子じゃった。

 

 いやまあ、わかる。

 

 ましろんの笑顔は何と言うかこう……心に来るというか、思わず、ずきゅんっ! と来てしまうんじゃよなぁ。

 

 儂も、ましろんの笑顔を初めて見た時は、似たような反応じゃったのう……。

 

 ましろんの笑顔の破壊力は凄まじい。

 

「ふぃー、やー疲れた疲れた……って、おおぉっ!? なんだこりゃ!? お前ら、なんでそんな安らかな笑みでフリーズしてんだ!?」

「お疲れじゃ、店長」

「なんだ、まだいたのか桜花」

「いや、ずっといたじゃろうが。何を言っておる」

「はっはっは、いやー、異常な量の注文に集中するあまり、こっちに気が回らなくてな!」

「それについては、すまんな」

「ん? なんで桜花が謝んだ?」

「いや、儂の身内がバカみたいに食って、相当な労働をさせてしもうたからのう……」

「ははは! 気にしなくていい! ってか、店開いたばかりの時とか、一度も人が入らなくて、ずっと本を読んでいたからな! しかも、それが続きすぎて、本の内容を一字一句余すことなく憶えちまったが! ま、そん時に比べりゃ、こんなに注文が入るのは、飲食店経営者として、幸せってもんだ!」

 

 ははは! と豪快に笑いながら、笑えない過去を話す店長に、店にいた者たちほぼ全員が可哀想な人を見る目を店長に向けた。

 

 ……店長ェ。

 

「……まあ、そういうことならよいが。材料の方はどうじゃ?」

「……いやー、いい食いっぷりだったもんで、材料が尽きた。コーヒー豆も一粒たりとも残っちゃいねえ。正直、お前が飯作ってる時に、明日店は開けない、とか何とか言ってよ、オレはてっきり冗談で言ってんだとばかり思ってたんだが……マジだったとは……」

「ということは、明日は店が開けない、そういうことか?」

「……あぁ」

「マジですまん」

 

 店が開けないことに、本気で悲しそうな儚い笑みを浮かべる店長に、儂は心から謝った。字面はそうは見えんかもしれんが。

 

「ってーわけだ、お前ら! 店の食材が全部尽きたんで、今日は店仕舞い! 明日も休みにするんで、帰ってもいいぞ。あぁ、明日働く予定だった奴と、この後も仕事が合った奴らに関しては、ちゃんとその分の給料も渡すから安心しな」

「て、店長! さすがに、これだけの仕事をしていつも通りは酷くないっスか!?」

「なんだ高畑。オレに文句を言おうってか?」

「い、いいいいいえそのようなことがあろうはずがございませんッ!」

 

 高畑、弱い……。

 

「……しかしまあ、高畑の言い分もわからんでもない。よし、じゃあここにいる従業員全員、今日の働きのご褒美として、特別に給料を上乗せしてやる!」

『『『おおおおおおおおお!』』』

 

 店長の発言に、死んでいた者たちは、一斉に起き上がり歓声を上げた。

 

「大盤振る舞いじゃな、店長」

「ま、いいんだよ。……どうせ、桜花と時乃がしばらくいねえんだ。その未来投資みてーなもんだよ。明後日からはビシバシ働いてもらうからな!」

『『『えぇぇぇぇ……』』』

 

 あ、絶望的な顔に戻った。

 どんだけ嫌なんじゃ。

 

「……あ、ところで桜花先輩」

「ん、なんじゃ? 高畑」

「一つ質問なんスけど……」

「うむ」

「そっちの銀髪ロリっ娘と、見るからに大人なお姉さんって感じの二人は、何なんスか? 見たことないんスけど……」

「それ、オレも気になってたな。んで? 関係性は?」

「……あー、まあ、うん。身内じゃ身内」

「そりゃそうだろ。だから、その関係性を訊いてんだが?」

「……」

 

 い、言いたくない……!

 

 この場でこの二人との関係を言えば、正直めんどくさいことになる予感しかせぬ!

 

 ただでさえ、アリアの時もめんどくさいことになったというのに、ここでこの二人の関係性を知られるのは、ハッキリ言って死を意味する。

 

 ならば、言わない方がいいに決まっとる!

 

 ……と、そう思ったのじゃが……。

 

「……旦那」

「旦那さんです」

「……今、なんと?」

「……まひろんは私のお嫁さん。そして」

「私のお嫁さんでもありますね~。私たち、妻婦(ふうふ)なので~」

「ふ」

『『『妻婦ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!?』』』

 

 二人がドストレートに言ってしまった。

 

 ……まあ、こうなるわな……。

 

 儂の旦那共は、何というか……儂とそう言う関係であると伝えることにためらいがないからのう……。むしろ、それを是としている部分があり、こういう時、儂は非常に困る。

 

 というか、正直しんどいんじゃが。

 

「え、何? まひろ君、旦那増やしたのか?」

「………………まあ、成り行きで、な」

 

 ふっ……と遠い目をしながら、そう言うと、

 

「……なんだ。とりあえず、お疲れ」

 

 ポン、と優しい笑顔と言葉と共に、儂の肩に手を置いた。

 

 そんな店長に儂は、

 

「……店長。顔が怖いから、単純に脅そうとしてるようにしか見えん」

 

 そう言った。

 

「お前、ここでボケるのかよ」

 

 儂じゃからな。

 

 

 この後、同僚たちに質問攻めにあい、女子からは『女のドンファン』とか言われ、男子からは『女たらしクソ幼女』とか言われた。

 

 ……地味に、心に刺さった。




 どうも、九十九一です。
 お久しぶりです。色々とあってこっちの投稿が疎かになってしまい、すみませんでした。
 理由を言うとですね、私のリアルでの私用とか、まあ、その他諸々あったため投稿できませんでした。マジで申し訳ない。
 それと、私の私用の方も片付きましたので、多分投稿頻度に関しては多少ましになるかと思います。もしかすると、毎日投稿に戻る日が来るかもしれません。確定ではないですが。
 ともあれ、今回のように一ヶ月も投稿がされない、などと言うことはないかと思いますので、そこはご安心ください。
 次の投稿は、いつかはわかりませんが、なるべく早めに出したいと思います。時間は10時くらいだと思いますので、よろしくお願いします。
 では。
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