爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常77 露天風呂。天真爛漫は時として凶器

「あぁ~~~~……疲れたのじゃ……」

 

 観光を終えた儂らは、瑞姫が予約(ほぼ前日にねじ込んだ)した旅館の客室にてくつろいでおった。

 

 尚、儂は元の姿に戻った状態で、畳に突っ伏しているところじゃ。

 

「まひろ君、いつになくはしゃいでたもんね」

「まあの。やはり、実際のセットというのは、なかなかに良いものじゃった。あそこで、実際の役者が殺陣をしておったと想像すると、なんともいえぬ気持ちになるというものよ」

 

 映画村は素晴らしい場所であった。

 

 正直、今回の旅行で最も楽しかった場所、と言える。

 

「よかったわね~、ひろ君~」

「うむ! ……じゃが、おかげで足がぱんぱんじゃ。成長した姿から元に戻れば、その分の疲労がその体でやってくるからのう」

「……不便な体」

「ほんとじゃよ。何故、このような不可思議な能力なんじゃろうか、儂」

 

 そうは言うても、能力自体が未だに解明されていない部分が多い代物。

 

 そもそもなぜ、『TSF症候群』があるのか、そして、なぜ能力なんてものを持つのか、という疑問はある種の永遠の課題とも言われておるらしいからの。

 

 ちなみに、神曰く、最も解明が進んでいるのは日本らしい。

 

 理由は、なぜか発症者が多いから。

 

 なぜじゃろうな。

 

「にしても……あれね」

「んむ? なんじゃ? 美穂」

「なんというか、最近のまひろはずっと桜色の髪だったから、黒髪が新鮮だなー、って思って」

「ま、儂が黒髪じゃったのは、もう二ヵ月以上前じゃからな」

 

 まさか、一年の終業式の翌日になるとか、想像できんじゃろ。

 

 とはいえ、進級前であったことは幸いと言うべきじゃろうが。

 

 これがもし、九月とか、新学期が始まって少し経った頃であったならば、めんどうなことになっておったろうからな。

 

 こういったことは、やはり何らかの節目の時期になるのが一番平穏じゃろうな。

 

 ……儂の場合、これっぽっちも平穏じゃなかったがな!

 

 主に、ド変態のせいでな!

 

「なんというか、あの頃が懐かしいわね。あの頃は、ぼさぼさの長い黒髪だったし」

「……今思えば、結構不潔」

「ひ、否定できん……」

 

 ましろんの指摘に、儂は苦い顔をした。

 

 今にして思えば、男であの髪の長さは、かなり……痛い人、じゃよなぁ……。

 

 まあ、儂、自分で言うのもなんじゃが、極度のめんどくさがりじゃったからのぅ……

 

 故に、儂は髪を切らなかったわけじゃがな。

 

 ……そう言えば儂、『成長退行』を使っておるわりには、髪とか伸びんな。

 

 その辺り、どうなっとるんじゃろうか。

 

「でも、それが今や、世の女子が羨む、艶々さらさらな髪になってるんだから、ほんと『TSF症候群』って理不尽な病気よね。何もしなくとも、勝手に理想的な姿になれるんだもの」

「そうは言うが、これでもめんどくささの方が前面に出る場合の方が多いぞ? 例の交流会で仲良くなった者たちは、やはり色々と不便さを感じ取ったみたいじゃからな」

「でも、ひろ君はそうでもないわよね~?」

「ま、儂は今の姿の方が楽、とか思っておるからな。寝てる時など、以前よりも快適じゃからして」

 

 ベッドが小さく感じることにより、儂はごろごろ、以前以上に寝がえりが打てるからの。

 

 その点は、かなり良いと言えよう。

 

「そう言えば、前は聞かなかったけど、交流会ってどんな感じだったの?」

「それ、わたしも気になります」

「私も~」

「たしかに、気になるわ」

「……同じく」

「む? 交流会か? なんじゃ、そんなことが気になるのか?」

「「「「「気になる」」」」」

「そうか。ん~……とりあえず、風呂にでも入りに行くか。そこで、話すとしよう」

「いいねそれ! あたし、露天風呂……というより、公共のお風呂に入ったことないから、楽しみ!」

「「「「「……」」」」」

 

 反応に、困った。

 

 アリアはどうしてそう……悲しいことを平気で言うのじゃろうか……。

 

 しかも、それを沈みながら言うのではなく、天真爛漫、朗らかに言うもんじゃから、かなりその……余計に精神にくる。

 

 なんじゃろう。

 

 全員に対し思っておることじゃが、アリアは特に幸せにしたいと思えるのう……。

 

「あれ? みんなどうしたの?」

「……いやいや、気にせんでもよい。とりあえず、風呂に行こう。ここの温泉は、様々な効能があるらしくてな、今よりももっと、綺麗になれると思うぞ」

「わ、そうなんだ! ……でも、どうしてみんな、そんなに生暖かい目をあたしに向けて来るの?」

「「「「「気のせいです」」」」」

 

 儂らは、にっこり微笑みながら、そう言うのじゃった、

 

 

 アリアの悲しい過去が再び露出したところで、儂らは風呂へ。

 

 人気の旅館なだけあって、儂ら以外にも客は多く存在し、なかなかの賑わいを見せておった。

 

 というか……。

 

「む、むぅ……」

 

 なんか、すんごい罪悪感が……。

 

「どうかしましたか? まひろちゃん」

「あー……いや、その、な。どこの誰とも知らぬ女性の裸体を見るのは……ものすごく、罪悪感がこみ上げてくるというか……」

「あ、ひろ君二ヵ月くらい前までは男の娘だったものね~。それに、女性の裸を見るのは、私たちだけたいだし、そう思うのも当然ね~」

「うむぅ……。知らぬとはいえ、申し訳なく思えてしもうて……」

 

 一応、引っ越した日に、十人のメイドと一緒に風呂に入ったことはあるが、あれもかなり精神衛生上よろしくなかったしのぅ……。

 

 幸いじゃったのは、あの者共が妙な変態性を秘めていたところじゃな。

 

 もしも、ごく普通のメイドであったならば、儂の罪悪感はすごいことになっておったな、絶対。

 

「ま、いいんじゃない? 今のまひろはどこからどう見ても……姉に抱っこされてお風呂に入る妹の図だもの」

「ぐっ……」

 

 そう。

 

 実は今の儂……瑞姫に抱っこされた状態で浴場内に入っておったりする。

 

「ふふふ。やはり、まひろちゃんを抱っこしていると落ち着くので」

「……そうは言うがな、瑞姫よ。そのせいで儂、なんか周囲から微笑ましい目を向けられておるのじゃが」

 

 などと言いながら、儂は周囲を見回す。

 

 そうすると、何やら仲の良い姉妹を見守る微笑まし気な視線を向ける者が多く存在した。

 

 中には、

 

『ねえねえ、あそこの集団、なんかすごくない?』

『ほんとだ。美女に美少女ばっかり! しかも……あっちの二人に至っては胸がでかい……!』

『羨ましいけど……一番目が行くのは』

『えぇ。あそこの胸の大きい黒髪の人が抱っこしてる女の子ね』

『そうそう。何あの娘。可愛さが限界突破したが如く、完璧すぎる可愛さなんだけど』

『しかも、お姉ちゃんに抱っこされてちょっと恥ずかしがっているところとか、背伸びしてる感があっていい!』

『わかるわかる! もう最高!』

 

 という会話をする者がいたりする。

 

 背伸びしてるというか、そもそも儂、普通に高校生なんじゃが。

 

 ついでに言えば儂、妹とかじゃなくて、こやつらの嫁(もう諦めた)なんじゃが。

 

 やはりあれか。瑞姫と同じ、黒髪じゃから、姉妹に見られておるのかの?

 

 可能性は高いな。

 

 あと、儂は恥ずかしがっておるのではなく、単純に目のやり場に困っておるから、結果としてそう見えるだけなんじゃが……。

 

 ……この気持ちは、発症者が全員思う事なのじゃろうか。

 

「……とりあえず、早く洗ってお風呂に入ろ」

「それもそうね。瑞姫、まひろを洗うのは任せたわ」

「ちょっ、美穂。それは儂に死ねと!?」

「ひろ君~。ここは公共の場なんだから、もう少し声のボリュームは抑えてね~」

「うぐっ、す、すまぬ……」

「ではまひろちゃん、早速行きましょうねー」

「……はい」

 

 抱っこされた状態の儂、本当に非力じゃなぁ……。

 

 

 それから体を洗い終えた儂(本当に体の隅々まで洗われた……)らは、仲良く露天風呂に。

 

「ふぃ~……極楽じゃぁ~……」

「まひろ君が極楽って言うと、なんだか年寄りみたいだね」

「……まひろんの喋り方、年寄りだし」

「というか、この容姿でその話し方って、何も知らない人からすれば二度見するような何かよね」

「どこからどう見ても小学生くらいの可愛らしい女の子が、年寄りの口調で話しているわけですからね。びっくりしそうです」

「ひろ君、昔からそうだったものね~。私も最初は驚いたわ~」

「そうは言うが、結衣姉はあまり気にした様子はなかったように思えるのじゃが」

 

 初対面の時とか、普通に接しておった気が……。

 

「あれでも、内心は驚いていたのよ~」

「そうじゃったか」

 

 結衣姉は基本『あらあら、うふふ』で済ます存在じゃから、てっきりあれも流しておったのかと。

 

 なるほど。

 

 結衣姉でも驚くのじゃな。

 

 …………しかし。

 

「ところで結衣姉」

「な~に~?」

「儂……なぜに結衣姉の膝の上に座らされておるんじゃ?」

 

 何故この状態なのじゃろうか。

 

 ちなみに今、儂は足を延ばした結衣姉の膝の上に座らされ、背後から抱っこされた状態じゃ。

 

 柔らかく、それでいて張りのある太ももを尻で直接座っておるし、上半身に関しては、結衣姉のでかい胸に挟まれる状態。

 

 ……なんかこれ、エロ同人みたいな状況じゃね?

 

「だってこの温泉、ひろ君だとぎりぎり沈んじゃうもの~」

「た、確かにそうじゃが……」

「もしかして、恥ずかしいのかしら~?」

 

 にこにことした笑顔じゃが、どこか意地悪っぽさが見えるのは、果たして儂が結衣姉を疑っておるからなのか……。

 

 いや、これは絶対意地悪が混じっておるな。

 

 何せ儂の旦那共、普通にドSじゃもん。

 

「い、いや、その……結衣姉の膝は、す、座り心地はいいのじゃが……」

「じゃが~?」

「お、落ち着かないというか……あ、あの部屋での出来事を思い出すというか……」

「あら~。もしかして、またシてほしいのかしら~?」

「ば、ばばばばバカなことを言うでないっ! しょんなわけっ――こほん、そんなわけないわい!」

 

(あ、噛んだ)

(噛みましたね)

(噛んだね)

(……噛んだ)

 

「可愛らしい噛み方ね~」

「はぅっ!」

 

 くそぅ、なんじゃろう、この恥ずかしさはっ……!

 

 夜以外では、極力普通の関係でいたいと思っておるのに、どうにも手のひらの上で弄ばれておるような気がする……。

 

 し、しかし、このままだとおかしなペースになりそうじゃな……。

 

 であるならば!

 

「あ、そ、そう言えば、交流会の話を聞きたがっておったな! 今話そう!」

「ひろ君、話題の逸らし方が下手ね~」

「……う、うるさいわい! べ、別にいいじゃろ!? は、恥ずかしいんじゃよ!」

「うふふ、わかってるわ~。ひろ君は、恥ずかしがり屋さんだものね~」

 

 なでなで、とにこやかに微笑みながら、結衣姉が儂の頭をなでてくる。

 

「ふゃぁ~……はっ! って、ゆ、結衣姉、今は撫でんでもいい! なんか恥ずかしいからっ!」

 

 ヤバイ、今、結衣姉の極上と言っても過言ではないなでなでに、蕩けさせられておったわい……。

 

「あらあら、遠慮しなくてもいいのよ~?」

「む、ほんとか? ……って、そうではなく! ふ、普通にしてくれ普通に!」

「……まひろ、随分とまあ、結衣さんに調教されちゃったのね」

「変な言い方をするでないっ!」

 

 調教されたって言い方、なんか嫌なんじゃが!

 

 改造されたみたいで!

 

「……でも、間違いじゃない。あの夜、まひろんは結衣さんに甘やかしを無条件で受け入れる体にさせられた」

「やめて!? 本当にその話はやめて!? 今思い出しても、普通に顔から火が出そうなくらい恥ずかしいんじゃよっ! あれ!」

 

 あの時のアブノーマルすぎるプレイの数々は、今思い出しても、どうかしていたとしか思えんのじゃよ!

 

「こらこら、大きな声を出しちゃだめよ~。よしよし~」

「んふぁ~……気持ちぃ~……って、ちくしょうめっ!」

 

 ダメじゃ、全然耐えられん!

 

 それどころか、無条件で蕩けてしまう……!

 

「面白い体になったわね、まひろ」

「ぬぉぉぉ~~~~っ……!」

 

 ニヤニヤとした意地の悪い笑みを浮かべた美穂の発言に、儂は頭を抱えながら苦悶の声を上げた。

 

「二人とも、そろそろやめないと、まひろ君拗ねちゃうよ?」

「おぉ、アリア! おぬしだけは、儂の味方なんじゃな!」

「もちろん。たしかに、こうして甘やかされてるまひろ君は可愛いし、あたしもやってみたいなぁとは思ったし、面白いなぁ、とは思ったけど、それはそれ! 交流会のことも聞きたいからね!」

「アリアのバカぁっ!」

「あ、あれ!? あたし何かした!?」

「アリスティアさん、見事にとどめを刺しましたね」

「……さすがスティ。ある意味、一番残酷な旦那」

「一番の良心が、一番の敵だったわけね」

「よしよし~。いい娘ね~」

「……儂、泣きそう……ぐすん」

 

 

 結局、しばらく儂は結衣姉によって甘やかされ続けた、儂の中の大切な何かが失われた気がした。

 

 風呂ではくつろぐことにし、話すのは夕食時となった。




 どうも、九十九一です。
 やっぱり、ささっと旅行の話を終わらせることにしました。そもそも、京都に行った時の記憶マジでないしね! 忘れたぜ!
 というわけで、次回くらいで多分終わります。その後は……まあ、普通の学園生活に戻るかと。
 次の投稿は、明日も出すつもりでいますが、出せなかったらすまぬ。まあ、一週間以内には出すんで、よろしくお願いします。
 では。
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