爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常86 昼休み。嫌な予感がするまひろ

「……ただいまなのじゃ」

「あー、なんと言うか……うん、ドンマイ」

「くっ……まさか、体育祭の場で、あのような辱めを受けることになろうとは……!」

 

 あまりにもすぎる状況に、儂は片方の手で拳を握りしめつつ、もう片方の手で顔を覆っていた。

 

 いやほんと、競技を終えてこちらへ戻ってくる際の周囲の視線と言ったら……生暖かい目ばかりじゃったわい。

 

 くそぅ……。

 

「それにしても、最後あんた、なんかおばさんと一緒にいなかった? 何? 自分の親なんてお題でも出たのかしら?」

「あー、あれなぁ……。実は儂、つい先ほど知ったんじゃが……どうも儂、所謂御曹司的ポジだったらしい」

「あー、それね。前に瑞姫から聞いたわ。ってか、あんた知らなかったの?」

「だって、知る機会がなかったし……そもそもうちの両親、マジで教えてくれんかったからのう……」

「どこかで気づくことはなかったの?」

「うむぅ……儂、基本的に爺ちゃんに育てられておったからのう。父上と母上はたまにしか帰ってこんかったし、帰って来てもすぐに仕事に行ってしまったからのう」

 

 実際、教えてくれんかったし、何より儂自身もさほど興味がなかったからの。

 

 というより、どこの家庭もこのようなものだとばかり思っておったし。

 

「……でも、家族仲はいい」

「まあの。儂を育ててくれた親じゃ。悪く思う事は無いし、何より道徳的なことは爺ちゃんによく言われておったからな。もとより嫌うことなどあるわけがない」

 

 ……まぁ、さすがに今回の一件はキレそうじゃが。

 

『ただいまの種目を持ちまして、昼休みに入ります。生徒並びに、教職員、ご来場の皆様は昼食を取るなどをしてお過ごしください。尚、再開は一時半を予定しております。学食も開放しておりますので、どうぞご活用ください』

「おっと、どうやら昼飯のようじゃな」

「そうね。たしか、まひろが作ってたわよね?」

「うむ。今日のために昨日から仕込みをしておったわい。さて、どこで食べるかじゃが……」

「それでしたら、屋上が解放されていますので、そちらはいかがでしょうか?」

「お、いいなそれ。では、結衣姉と合流し、そちらで昼食を食べるとしよう」

 

 瑞姫の提案で、儂らは屋上で飯を食べることにした。

 

 

「ほれ、たんと食え、旦那共」

「「「「「おぉ……!」」」」」

 

 屋上には儂ら以外にもいくらかのグループがありはしたが、スペースが無いと言うほどではなかった。

 

 なので、適当な場所を陣取ると、そこに軽くシートを敷いて儂が作って持って来た弁当(重箱でしかも七段)を置き、蓋を開く。

 

 すると、五人は感嘆の声を漏らした。

 

 うぅむ、なんだかいい反応じゃのう。

 

「ねぇこれ、すんごい気合入ってない?」

「で、ですね。わたしもこれは予想外です」

「美味しそう!」

「……早く食べたい(涎ダバー)」

「ひろ君、すごいね~」

 

 よしよし、と儂の頭を撫でる結衣姉は無視。

 

 正直あの一件以来、思わず甘えてしまいそうになる衝動に駆られるが、なんとか押し込める。

 

 というか、ましろんが涎を滝のようにしてるんじゃが。

 

 それ、どっから出とんの?

 

「ほれ、さっさと食べるぞ」

「「「「「「いただきます!」」」」」」

 

 早速と言わんばかりに、五人は各々好きな料理に箸をつける。

 

 ぱくり、と口に運ぶと五人の動きが止まった。

 

「ど、どうしたのじゃ? 何故動きが止まっとるの? も、もしや、不味かったか……?」

 

 何も反応がない五人に、もしや口に合わなかったかと心配していると、ものすごい勢いで料理を食べ始めた。

 

「の、のう? 美味いか? できれば何か言ってもらえると助かるのじゃが……」

 

 少なくとも、不味いようではないじゃが……じゃとしても、何も言われないと言うのは心配になる。

 

 なんて思っておったら、

 

「なにこれ美味しいんだけど!?」

「はいっ! わたし、これならいくらでも食べられます!」

「あたしも!」

「……もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ!」

「ふふ、ひろ君の料理美味しいわ~」

「そ、そうか、それならばよかったわい」

 

 どうやら、ちゃんと美味しいらしい。

 

 じゃが、ましろんよ、おぬしの勢いがなんか怖いんじゃが。

 

 気が付けば一段分が無くなりそうなんじゃけど!?

 

「定番のおかずがこうも美味しいなんてね。これ、何かしてるの?」

「む? そうは言っても、普通じゃぞ?」

 

 儂なんて、料理は素人。

 

 いや、昔は家事をしておったから、アマチュア程度かの?

 

「……もぐもぐもぐ、ごくん。まひろん、それは調理実習でできない人や平凡程度の人に喧嘩を売っている」

「いやいや、儂なんて家庭料理ができる程度じゃぞ? 手の込んだものも作れんことも無いが、そこまでレシピを知っておるわけではない」

「でも、すごく美味しいよ~?」

「うんうん! あたし、この唐揚げ大好きだよ! あと、サラダも美味しい!」

「わかる。なんかこの唐揚げすっごい柔らかいわよね。何をしたのこれ?」

「いやなに、タレに漬け込む際にすりおろした玉ねぎと蜂蜜を入れただけじゃぞ? これがマジで柔らかくなってのう」

「へぇ~、良く知っていましたね?」

「いやほれ、料理マンガとか割とそう言うテクニックが出て来るからの」

 

 ああいった類のものは割と勉強になる物じゃ。

 

 それに、昨今の料理マンガにはレシピが載っておる場合が多いからのう。

 

 なんだかんだ買ってしまうのよ。

 

「なるほどねぇ。……それにしてもほんとに美味しいわね。しかも、おにぎりとサンドイッチって、あんた、随分と作ったわね? ってか、主食を二種類作るって……大丈夫なの? ここまでして」

「いやほれ、いくらめんどくさがり、睡眠大好きの儂とは言え、今は既婚者。ちと不本意じゃが、儂は一応嫁じゃ。であれば、旦那であるおぬしらには美味い物を食べてもらいたいと思うわけでじゃな? しかも、今日は体育祭。ならば、美味く、そして普段よりも豪華にするという物。一年に一度ならば、力は入れるぞ」

「あー、そういえばあんた、祭り好きよね、何気に」

「まあの」

「たしかに、去年とか学園祭の準備期間中のまひろ君、すっごく生き生きとしてたもんね!」

「……まひろん、アルバイト先でもそうだったの?」

「うん! いつもの五割増しで動きにキレがあったよ?」

「え、このまひろが!?」

「どういう意味じゃコラ」

 

 喧嘩売っとんのか。

 

 ってか、あの時の儂って傍から見るとそうなのか。

 

 うーむ、自覚は特になかったんじゃが、アリアがそう見えたのならそうなんじゃろう。

 

「そう言えば、次の種目って何だったかしら?」

「綱引きね~」

「それでは、次はわたしですね」

「じゃな。しかし、綱引き、のう……儂らの中ではおぬししか出んからな。正直、応援いる? とか思わんでもないが……」

「いるんじゃない? ってか、たしか体育祭で優勝したり、好成績を残すとかなりいいこと会ったんじゃなかったかしら?」

「……学園祭で、特に制限なく出し物ができることと、仮に人気の出し物をやろうとして被った場合の抽選において、抽選が免除。あとは、予算の増額」

「へぇ~、この学園ってそんなことをしてるんだね! じゃあじゃあ、いっぱい応援しないとかな?」

「まあ、そうじゃろうが……うぅむ、ましろんだけがクラスが違うしのう……仮に儂らが優勝しても申し訳ないし……しかも、ましろんは今年が最後じゃろ? 故に、ちと迷う」

「……それは問題ない」

「そうなのか?」

 

 ましろんのことじゃから、てっきり残念がると思ったのじゃが。

 

 儂同様、祭りごとはかなり好きじゃからな、ましろん。

 

 無表情でわかりにくいが。

 

「……私は生徒会長。であれば、巡回という名目でみんなのクラスに行ける」

「職権乱用よねそれ?」

「……もーまんたい。それに、個人でお店を出すのもあり」

「あ、個人出店もありでしたっけ。確かにありかもしれませんね」

「もしそれをするなら、私も少し参加するわ~」

「そう言えば、教師も参加しとる者がおったのう」

 

 うちの学園の学園祭の面白い所なのじゃが、何気に教師も学園祭に参加する。

 

 しかも、店をやる側で。

 

 中には、教師と生徒で店を出す者もいるほどで、これがまたなかなか面白いことになる。

 

 特に、部活動の顧問をしている教師などは、100%参加しとるな。

 

「そういうことよ~。まぁ、まだ先の話だけどね~」

「そうじゃな。とりあえずは目の前のことじゃが……ましろん的には優勝を目指しとるのか?」

「……そこまでは?」

「そうなの? 真白さん」

 

 意外な反応を見せたましろんに、アリアがキョトンとした顔で聞き返す。

 

 うむ、儂も意外。

 

「……もとより、こういう物は楽しむのが一番。優勝は二の次。それに、私が優勝するよりも、みんなのクラスが優勝した方がこちらとしても都合がいい」

「都合がいい? ……あー、そういうことか」

 

 ましろんのやや遠い目をしている顔を見て、儂はなんとなく察した。

 

「まひろ君、何かわかるの?」

「……おぬしらに一つ訊く。ましろんの容姿のみの印象はなんじゃ?」

「容姿? そうね……クール系ロリっ娘?」

「可愛いので、襲いたくなります」

「うーんと、すっごく可愛くてカッコイイ?」

「可愛いわね~。つい、甘やかしてしまいそうね~」

「瑞姫はともかく、他の四名共にましろんを可愛いと言ったな? つまり、じゃ。……ましろんは、かなりモテるし、なんだかんだましろん目当てで来る客も多い。で、昨年はましろんのクラスが体育祭を優勝してなぁ……その結果、ましろんのクラスメートが暴走。ましろんをメインに据えた出し物をしていたのじゃが……これがまぁ、ましろんがひたすらもみくちゃにされるような事態になってな」

「……おのれクラスメート、許すまじ。そう思った」

「この通りでな」

 

 あれは酷い事件じゃったのう……。

 

 たしか、ましろんのクラスはよくある喫茶店をやっておったが、その際に一定の金額を払うことで、ウエイター、もしくはウエイトレスと写真が取れたり、握手が出来たりなどが出来た。

 

 特に人気が出たのがましろんであり、同時に他の面々もましろんをメインとしておった。

 

 そのため、ましろんがかなりぐったりしておった。

 

 ……尚、それを見かねた儂が、途中で嫌になって逃げておったましろんを匿ったという出来事もあったが割愛。

 

 一応当時のましろんは、可愛いと言われていなかったらしいが……うぅむ、普通メインに据えられたのであれば、気付きそうなものじゃが……まぁ、そこは境遇が原因じゃろうな。

 

「な、なるほど……真白さんでそれってことは、まひろ、あんたの場合もっとやばいんじゃないの?」

「あー……まぁ、わからんでもないが……まぁ、ほれ。あれじゃ。儂の場合、旦那がおるじゃろ? 故に、変なことをすれば訴えるぞ、と言えばよいのでは? と思ってはいる」

「あはは、まひろ君らしいね! めんどくさがりながら言う姿が目に浮かぶよ」

「そうね~。ひろ君、基本的にはぐーたらだしね~」

「いやぁ、照れるのう」

「褒めてないわよ」

 

 とはいえ、ここんところはあまりぐーたらできてはおらんがな……うぅむ、最初の頃はかなりぐーたらな生活が出来ておったんじゃがのう……こやつらと今の関係になってからは、かなり慌ただしくなったからな。

 

 一人で過ごす時間とか欲しい。

 

「あ、そう言えばまひろ君っていつまでその姿でいるんだっけ? 午前中で忘れちゃった」

「とりあえず、二人三脚までじゃな。あれは綱引きの後じゃからのう。しかし、儂だけ三回走るのはバカではないか?」

 

 決まった時も思ったが、何かがおかしい。

 

 いや、こやつらが他の男と走るとか、正直嫉妬してしまうが……うぅむ。

 

 そう考えると、儂が走る外ないが……やはり、儂の負担が多くね?

 

「まあいいじゃない。私たちはあんたと走りたいだけだし」

「……くっ、三人が羨ましい……」

「真白さん、三年生だもんね。ちょっぴり申し訳ないよ」

「……大丈夫。その分、家でイチャイチャするから」

「おぬしのイチャイチャ、大体キスなんじゃが、どう思う?」

「……もぐもぐ、玉子焼き美味しい」

「おいこら、何誤魔化しとんのじゃ」

「……まひろん、美味しいお弁当ありがとう」

「お、おう、そ、そう言われると照れるが……ありがとな」

「うわちょろ」

「まひろちゃん、さすがにちょろくないですか?」

「チョロインだね!」

「ひろ君、さすがにそのちょろさは心配だわ~」

「あれ!? なんで儂が集中砲火くらっとんの!? ってか、別にちょろくないわい!」

 

 というか、普通にああも言われたら嬉しくなるじゃろうが。

 

 だって、ましろんの貴重な笑顔じゃぞ? こやつ、基本的に無表情じゃし、なかなか笑顔が見れないんじゃもん。

 

 というか、見られるとしても、本当に不意打ちの時じゃし、確実にみられるのはまぁ……ベッドの上じゃからなぁっ……! しかも、その笑み、ドSな方じゃから。

 

 思わずぞくっとしちゃうくらいじゃし。

 

「ベッドの上を思い返すと否定できませんよ?」

「うぐっ!」

「まひろ君、すっごくメロメロになっちゃうよね」

「うぐぅっ!」

「可愛いわよね~」

「おぐふぅっ!」

「それに、自分から懇願するくらいよね」

「どげはぁっ!」

「……チョロイン、おめ」

「殺せぇ! 儂を殺せぇ!」

 

 くそう、寄ってたかってベッドの上のあれこれを端的に言いおってっ……!

 

 ってか、こやつらここが屋上であることを忘れとらんかの?

 

 さっきから近くにいる生徒共が、なんかこう、そわそわしとるし、中には聞き耳を立てとる者もおるし、しかも邪推でもしたのか顔が真っ赤な奴もおるし……くっ! これ、儂が一番辱められとらんかのう!?

 

「まぁ、まひろをからかうのはここら辺にして……ねぇ、まひろ」

「む、なんじゃ?」

「あのさ、一つだけあんたに言っておかないといけないことがあるのよ」

「なんじゃ、急に真剣味を出して。なんかあるのか?」

「いやー、私だけじゃなくて、瑞姫もアリスも知ってるんだけど、さ……あんた、死なないでね、午後」

「どういう意味じゃそれ!?」

「あー……あれ、ですか。なんと言いますか……わたしたちには大いにありですが、まひろちゃんとしましては、少々あれかもしれません」

「アレってなんじゃ!?」

「大丈夫だよまひろ君! まひろ君なら行けるから!」

「じゃから何が!? というか、なんで某熱血男風!?」

 

 マジで何があると言うんじゃ午後に!

 

「……アレのこと? 楽しみ」

「私もよ~」

「え、知らないの儂だけ!? ねぇ、マジで何があんの!? のう、すっごく気になるんじゃが!? あと、その生暖かい顔をやめい! ちょっ、本当になんなんじゃーーー!?」

 

 結局、こやつらから理由を話されることはなかった。

 

 ただ、ヒントとして、儂が出場する種目に関係する、とのことじゃったが……まさか、あれか? あれなのか!?




 どうも、お久しぶりです、九十九一です。

 二ヶ月以上も更新が止まってしまいマジで申し訳ないです……理由は色々ありますが、最初の方はゲームで、その後は他の小説を書いたり、後はメインの方を書いていたりしていたからですね。

 こっちの小説は少々後回しにしていたので。

 とりあえず、体育祭の話は十話以内で終わらせてぇ……とか思ってます。いやほんと。早く終わらせたい。次何も考えてないけど。

 次の投稿ですが……正直わかりません。なるべく一ヶ月以内にはどうにかしたいですが、リアルがかなりごたついてるので、遅れる可能性大です。マジで申し訳ない。お待ちいただけるとありがたいです。

 では。
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