爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常87 二人三脚

 不安になる昼休みを終え、体育祭再開。

 

 最初に行われたのは綱引きだったのじゃが……正直、見せ場という見せ場はなく、ひたすら綱を引くだけで終わった。

 

 いや、そもそも体育祭の綱引きなぞ、そんなもんだとは思うが……如何せん、他の種目がアレなものばかりじゃったからなぁ……おかげで、違和感が半端なかったが、まあ、うむ。気にした負けという事で。

 

 尚、優勝はうちのクラスじゃった。

 

 なぜに。

 

 さて、綱引きが終われば、一体どの種目が、と思っとったら……。

 

「あら、次は二人三脚じゃない」

 

 二人三脚じゃった。

 

「……遂に、来てしまったと言うのか。儂にとってのデスマーチ的種目がっ……!」

 

 儂が今日の体育祭において、最も不安になっておった種目、二人三脚。

 

 うちの学園の二人三脚はリレー方式で、各クラス六名走ることになっておる。

 

 しかし、うちのクラスでは、なぜか儂が三回走らされる羽目になっており、その相手が軒並み儂の旦那という……。

 

 やはりこれ、儂の負担がえぐい気がするのじゃが?

 

「では、早速行きましょう!」

「だね! まひろ君、行こ!」

「う、うむ。……はぁ、獣化が使えんからキッツイのう……」

「……みんな、ファイト」

「頑張ってね~」

 

 二人三脚に参加しない組の応援を受けつつ、儂らは集合場所へと向かった。

 

 

『さてさて! どうやら参加する選手の皆様が集まったようですので、早速二人三脚についての説明をさせていただきます!』

 

 あたしと、まひろ君、未果ちゃん、瑞姫ちゃんの四人で集まってからちょっとすると、説明が始まった。

 

『二人三脚のルールは至ってシンプル! 各ペアには、赤、青、黄、緑、白の五色の布の内、どれか一つが渡されているかと思います。その布を使って、お互いの右足と左足を縛ってもらい、合計百五十メートルの距離を各ペアで走ってもらいます。そして、この学園における二人三脚はリレー方式! つまり、バトンのようなものが必要になるわけですが……そのバトンとなるのが足を縛る布です! こちらの布を次の走者の方たちに渡すことが、バトンタッチとなります』

 

 なるほどー、布がバトン代わりなんだ。

 

 でも、なんだか面白そう!

 

 だって、結ぶのが早ければ早いほどいいってことだもんね。

 

『以上が基本的なルールとなります。次に、注意点です。二人三脚は、お互いの息が合わないと上手く走ることが出来ません。ですので、慌てないように心掛け、怪我をしないように気を付けてください。それから、万が一走っている最中に布が解けてしまった場合、その際には先へ進まず、その場で結び直すよう、お願いします。万が一、先へ進んでしまうようなことがあれば、ペナルティが発生しますので、お気を付けください。……さて! ルール説明は以上となります! 最初のレースに走るクラスの方々は準備をお願いします!』

 

 ルール説明が終わると、一番最初のレースに出る人たちが並ぶ。

 

 みんな異性同士だから、なんだか甘い雰囲気があるね!

 

 中には言い争いをしてる人たちもいるけど、なんだか仲は良さそうだし、いいねいいね!

 

 やっぱり、恋人同士の人たちもいるのかな?

 

 うんうん、なんだか甘酸っぱい雰囲気があるよね。

 

 こういうイベントは一生の思い出になると思うし、そう言う理由で出場したのかな? だとしたら、お仲間だね!

 

 あたしも楽しまないと!

 

 

 そうして、いろんな人たちの走りを見ていたんだけど……

 

『チッ、やはり胸糞悪いぜ……』

『よっしゃぁ! 転んだぞー!』

『羨ましいッ……妬ましいッ……!』

『今ならこの怒りで世界を滅ぼせる気がするぜ……』

 

 なんだろうね、すっごく負の感情が渦巻いてる気がします!

 

 特に、男の子からの嫉妬や妬み? が多いかな?

 

 反対に、女の子たちからは、

 

『上手くやったわよね……』

『くっ、あの時私がああしてれば!』

『はぁ、いいなぁ、恋人同士で走るの。すっごく憧れる……』

『楽しそう』

 

 悔しさや羨ましさが強いのかな?

 

 やっぱり、女の子の方が色恋が好きそうだもんね、あたしも大好きだし。

 

 じゃあじゃあ、男の子の方はやっぱり嫉妬の面が強いのかな?

 

 創作物だとそういうシーンよく見かけるもんね!

 

 あれ? じゃあ、まひろ君は嫉妬を向けられたりしないのかな? 大丈夫かな?

 

 ……大丈夫だよね!

 

 今のまひろ君、女の子だもんね!

 

『さぁ、残りの選手全員がゴールしましたので、次に走る方々は準備をお願いします!』

「あ、あたしの番だ! まひろ君、行こ行こ!」

「う、うむぅ……のう、やはり儂、三回走るのか……?」

 

 放送が流れた後、まひろ君に行こうと言うと、まひろ君は眉根をよせてそう言って来た。

 

「うん! だって、喧嘩になっちゃうし、まひろ君は他の男の子と一緒に走るのを冷静に見られるの?」

「無理。おぬしらが散々儂にあれやこれやしまくってはおるが、なんだかんだ好いておるんでな。絶対渡さんぞっ!」

「わーい、まひろ君大好きー!」

「ちょっ、いきなり抱き着くでない!」

 

 まひろ君の言葉に嬉しくなって、ついつい抱きしめてしまった。

 

 しかも、今のまひろ君は小さくないから、こう、すっごくいいです! あと、まひろ君の胸、すっごく柔らかくて、ふわふわです!

 

「わぷっ、お、おぬしっ、は、早く準備をするぞっ……!」

「あ、そうだった! ごめんね、ついつい……」

「ふぅ……まったく、まあ、おぬしの抱きしめられるのは嫌ではないが……そう言うのは、できれば人目に付かない時にしてもらいたいものじゃ」

「あれ? それはあれかな? お誘い?」

「いや違うぞ!? 違うからな!? というか、おぬしらはすぐそっちに繋げるでない!」

「あはは、冗談だよー」

「……冗談に聴こえんのが怖いんじゃけど」

 

 まぁ、半分くらい本気だったけど、もう半分は冗談だからセーフです!

 

「まあよい。ささっと行くぞ、儂、三回走るんじゃから……」

「うん、頑張らないと、だよね! 特に、まひろ君は」

「ほんとにな……」

 

 遠い目をしながら、まひろ君はそう答えた。

 

 

「ん……これでよし、じゃな。アリアよ、きつくはないか?」

「大丈夫だよ! でも……えへへ、こうやってぴったりくっつくのって、ちょっとだけ恥ずかしいね」

 

 隣り合って、お互いの足首を縛ってくっついていることに、あたしは頬を染めながら感想を零す。

 

 大好きな人とこうして体育祭に参加できることが何より嬉しいもん。

 

 去年は、違う学校だったからね。

 

「ははっ、そうは言うが、割としょっちゅうくっついとる気がするぞ、儂は」

 

 苦笑いをしながら、まひろ君がそう言ってくる。

 

 たしかに、お家とか昼休みはよくくっつくかもしれないけど……

 

「ううん、こういうイベントで堂々とくっつくことがちょっとだけ恥ずかしいの。でも、とっても嬉しくはあるけどね!」

「そうか。まぁ、儂も似たような気持ちじゃよ。……この視線の量は、ちとあれじゃが……」

「あ、あははー……そうだね」

 

 まひろ君の言う事に、あたしも苦笑い交じりに同意した。

 

 なんと言いますか、すっごく視線が来てる気がするんだよね。

 

 こう、熱い視線? それとも、生暖かい視線? そんな感じかな?

 

 あと、やっぱりあたしたちはすっごく目立ってるね。

 

「やはり、儂らが女子同士で参加しているからかのう……」

「多分そうじゃないかな? ほら、まひろ君が発症者だっていうのは、学園だと有名だけど、外から来るお客さんは知らないもん」

「まあのう……ま、最近では好奇や奇異の視線にはなれたがな」

「いつも抱っこされてるもんね」

「……言うでない」

 

 ふふふー、やっぱりまひろ君は可愛い。

 

 男の娘の時もよかったけど、今なんてそれ以上だもんね。

 

『それでは! 各選手準備が出来たとのことですので、始めたいと思います! さぁ、選手の皆さん! 走り出す準備はできてますね!? それでは、よろしくお願いします』

 

 放送委員の人がそう言うと、こくりとスターター役の先生がスターターピストルを構える。

 

「それでは、位置について、よーい……」

 

 パンッ!

 

 と、乾いた破裂音が鳴ると同時に、あたしたちは駆け出した。

 

「「1、2。1、2」」

 

 お互いの腰に手を回して、掛け声と共にタイミングよく足を前に出して走る。

 

 結構いいペースで走れてるんじゃないかな?

 

 周りをチラッと見てみると、転びそうになったり、実際に転んじゃったりしてるペアの人たちもいるし。

 

 実際に、

 

『きゃっ』

『っと、だ、大丈夫か?』

『う、うん、大丈夫……』

『よ、よし、じゃあ今度はもうちょっとゆっくり』

 

 みたいに、甘酸っぱい青春をしてる人たちがいたり。

 

 うんうん、いいよねそういうの!

 

 応援したくなるよ。

 

 反対に、

 

『痛っ、あんた、ちゃんと私に合わせなさいよ!』

『そっちこそ!』

『『ぐぬぬ……!』』

 

 みたいに、喧嘩しちゃってるペアもいるけど……なんだろうね? 喧嘩するほど仲がいい、みたいな気がします。

 

 そういうのもいいよね!

 

 ただ、周囲からはこう、嫉妬の籠った視線が向けられてるけどね!

 

 特に男の子かな? あ、でも、カッコいい男の子と一緒に走ってる女の子は、女の子から嫉妬と羨望の視線をもらってるね。

 

 あたしたちは……やっぱり、不思議そうに見られてるかな?

 

『さぁ、現在戦闘を走るのは、二年三組の、桜花まひろさんと時乃=C=アリスティアさんです! えー、なぜ女の子同士で? とお思いの人たちもいるかと思いますが、片方の方は『TSF症候群』の発症者ですので、問題なしです!』

「はぁ、はぁ、ちょっ、あの放送委員堂々と儂のこと言いおったんじゃけどぉ!?」

「まあまあ、まひろ君、どのみち前の種目でバレてたと思うよ?」

「はぁっ、ふぅっ……それでも、じゃ!」

 

 放送委員の人がまひろ君のことを堂々と放送で言われて、まひろ君が走りながらツッコミを入れる事態が発生。

 

 その際、まひろ君がよそ見をしちゃったからだと思うんだけど、

 

「むっ、あ、あわわっ……きゃぁっ!」

「うわわっ! ひゃんっ」

 

 足がもつれて転んでしまった。

 

 あと、何気にまひろ君が『きゃぁっ!』って言ったのがすっごく可愛いです!

 

「いたた……アリアよ、怪我は無いか?」

「うん、大丈夫! まひろ君こそ大丈夫?」

「うむ、問題なしじゃ。ほれ、さっさと立って行くぞ!」

「うん!」

 

 転んだものの、あたしたちはすぐに立ち上がって再び走り出す。

 

 ……ふふふ、さっきどさくさに紛れてまひろ君の胸を触っちゃったけど、バレてないね!

 

 まひろ君の胸は何と言うか、あたしと違ってすっごくふわふわしてる気がするから大好きです。

 

「ぬ、アリアよ、何やら邪な、感情がある、気がする、んじゃがっ……はぁ、ふぅっ……」

「気のせいだよー」

「……そうか。ならいいわい」

 

 危なかったー。

 

 最近まひろ君が鋭くなってきた気がするから気を付けないとね!

 

「はぁっ、はぁっ……んくっ……ふぅ、はぁ……んんっ……」

「……」

 

 あの、まひろ君? なんでその……えっちな感じなんでしょうか……。

 

 普通に走ってるだけなのに、まひろ君の吐息がすごくえっちに聴こえちゃうんだけど。

 

 あれかな、まひろ君は天然なのかな?

 

 むむぅ、すっごく襲いたい……けど、今は我慢!

 

 するとしても、帰ってからにしないとね!

 

 ……って、違う違う。

 

 今はそういうことは考えないで前を見て走らないと、追い抜かれちゃう!

 

「……やはりおぬし、邪なことを考えておる、よなっ?」

「き、気のせいだよ?」

「目が泳いどるぞ」

「あ、あははー、ま、まっさかー?」

「まあ、いいわい……おぬし、あんぱん、なしな」

「えぇぇ!? それは嫌だよぉ!」

 

 あんぱん無しと言われて、あたしは走りながらまひろ君に縋るという不思議なことをしていた。

 

 だってだって、美穂ちゃんがすっごく羨ましかったんだもん!

 

「どうせ、襲いたいとか思ったんじゃろ?」

「うぐっ」

 

 み、見抜かれてた……。

 

「はぁ、まったく……別に、襲うなと言っとるわけではない。というか、おぬしらはむしろフリーダムに襲うじゃろ、儂のこと」

「うん」

「即答かい。まあよい。はぁ……まったく、んくっ、おぬしらは本当にこう、どうしようもないのう……はぁ、はぁ……」

「まひろ君、とりあえず喋りながら話すのはやめた方がいいと思うよ?」

「いや、ほれ……はぁ、んっ、ふぅ……言っとかんと、と思って、なぁっ……」

「あはは、そっか。じゃあ、さっさと瑞姫ちゃんの所に行かないとだよね」

「そう、じゃなっ……正直、もう止まりたい、が、なぁ!」

 

 そう言いながらも、まひろ君はすごく楽しそうな表情を浮かべていた。

 

 なんだかんだ、楽しんでるみたいで何よりだよ。

 

「お二人とも、もうすぐですよー!」

 

 あたしたちが走っていると、前方でペアがいない状態で待っている瑞姫ちゃんが手を振って待ちきれないといった表情で手を振っていた。

 

 あたしたちはそれを見て少しだけペースを上げて、瑞姫ちゃんにバトンタッチした。

 

 

「瑞姫ちゃん、はい、たすき!」

 

 アリスティアさんとまひろちゃんのペアが最も速く第二走者の所まで来て、アリスティアさんがわたしにたすきを手渡してきました。

 

「ありがとうございます。それではまひろちゃん、第二ラウンドと行きましょう!」

「はぁ、はぁっ……くっ、あと、二回もあるのかと思うと、辛いわい……」

 

 そう言いながらも、まひろちゃんはすぐにアリスティアさんとの紐を解いて、今度はわたしの足とまひろちゃんの足に紐を結びました。

 

 うぅ、いつもの可愛らしい小さなお姿じゃないことが悔やまれますが……これはこれでありですね。

 

 なんでしょう、こう、普段のまひろちゃんにはない柔らかさと言いますか、視線の高さと言いますか……ええ、はい。このまひろちゃんにも、いえ、このまひろちゃんだからこその魅力が詰まっていると言う事でしょうね。

 

 ふふ、ロリコンのわたしですが、やはりそれだけでまひろちゃんを好きになったわけではない、と言う事でしょうか。

 

 そうならば、とても嬉しいですね。

 

 今もこうして、寄り添っているだけですごくドキドキしますし、頬が緩んでしまいますから。

 

「よし、と。瑞姫よ、結べたぞ」

「はい! では、行きましょう!」

「うむ」

「「せーの」」

 

 わたしとまひろちゃんはその掛け声と共に、それぞれ右足と左足を前に出す。

 

 それから、定番の掛け声とともに仲良く走り出す。

 

「……の、のう、瑞姫よ」

「はい、なんでしょうか?」

「おぬしの右手が、な? なぜか、その……わ、儂の尻辺りにある気がする、というか……なんか、妙に厭らしい手つきをしとらんか?」

「気のせいです」

 

 嘘です。

 

 ほとんど無意識に、まひろちゃんのきゅっと引き締まりつつも、柔らかいお尻を揉んでいます。

 

 だって、仕方ないじゃないですか! そこに、大好きな人のお尻があるのですから!

 

「……アリアといいおぬしと言い……何故、真面目に走れんのか……」

「そこにお嫁さんがいるからです!」

「そういう問題じゃないからな!?」

 

 いつもの調子で話しながら、わたしたちは走って行きます。

 

 やはりこう、まひろちゃんとのこういう何気ない軽口はいいものです。

 

 しかし! やはり小さなお姿ではないのがこう、悔しいです!

 

 今のまひろちゃんが200点だとすれば、普段のまひろちゃんは500点と言ったところでしょう。

 

 それくらい、魅力が違うのです!

 

 しかし、この姿のまひろちゃんもとても可愛らしい……わたしの方が背は高いですが。

 

 いえしかし、今のまひろちゃんのお姿も一応はロリと言えるのでは……? ただ、お胸が大きくなり、背が伸びただけで、背丈は良くて中学生程度ですし……なら問題はありませんね! やっぱりこちらも500点で!

 

 あ、いえ、やはり普段のお姿は1000点?

 

 い、いえ、それならばこちらももっと点が高く……あぁ!

 

 これはあれです、まひろちゃんはどんなお姿でも可愛らしく、魅力的! ということですね!

 

 えぇ!

 

「おぬし、さっきから何を二十面相をしとるんじゃ? 表情がころころ変わって面白くはあるが……」

「はっ! い、いえ! まひろちゃんはどのお姿も魅力的です!」

「おぬしは突然何を言っておる!? て、照れるじゃろうが!」

 

 まひろちゃんに表情を指摘されて、反射的に魅力的と口にしてしまいましたが、まひろちゃんは頬を赤く染めて照れた表情を浮かべました。

 

 はぅっ、照れた表情も素晴らしいです……。

 

「お胸を触っても?」

「良くないわっ!」

 

 しまった! 欲望が口を突いて出てしまいました……。

 

 いえ、いつもこのような調子なわたしではありますが、さすがに競技中は襲うことはしませんとも。

 

「まったく……というか、やはり二度目となると疲れるのう……」

「まひろちゃん、連続ですからね」

「……おぬしらが出たい、と言わなければこうはならなかったんじゃがな」

「でも、まひろちゃんも嬉しいですよね?」

「……そりゃあ、おぬしらには散々な目には遭わされてはいるが、好いてはおるからな」

「そっぽを向きながらの好き、ありがとうございます!」

「おぬしのその調子、どうにかならんのか」

 

 やれやれ、と呆れたまひろちゃんですが、その口元は小さく笑みを作っていました。

 

 素直じゃないですね~。

 

 ですが、そこも良い所と言うことで。

 

 ……そう言えば、わたしたちに対してかなり視線が集まっていますね。

 

 やはり、女の子同士且つ、まひろちゃんが連続で走っているからでしょうか?

 

 そうでしょうね。通常、連続で走ることはルール的に不可能ですから。

 

『えー、現在、連続して別の方とペアを組んで走っている方がいますが、問題ありません。あの人は既に結婚した方がおりますので、この後の最終走も走ります』

「ちょぉ!? また余計なことを言いおったぞ!? くっ、更なる好奇の視線がっ……!」

 

 まひろちゃんは走りつつ、両手で顔を覆うという、何気にすごいことをしていました。

 

 その上、決してペースを乱さないと言う……くっ、先ほどのアリスティアさんのように転倒すればさりげなくまひろちゃんのお胸を触る免罪符が得られると言うのに!

 

 ……いえ、大好きな人の不幸で得られる幸福は嫌ですね、よくよく考えれば。

 

 であれば、正面から行く方がわたしらしいですね!

 

「瑞姫よ、儂はさっさとゴールしたい……じゃから、少しペースを上げるが、行けるか?」

「わたしは問題ありませんけど……まひろちゃんは大丈夫なのですか? 二度目ですけど……」

「ま、まぁ、大丈夫じゃろう……というか、なんか振り切ってる気がするのでな」

「そ、そうですか? では、行きましょうか」

 

 そう告げ、わたしとまひろちゃんは走るペースを上げました。

 

「はぁっ、はぁっ……くぅっ、き、きっつい、のう……!」

「で、ですから、大丈夫か訊きました、のに……」

 

 ペースを上げた結果、まひろちゃんの息切れが少し酷くなりました。

 

 あと、わたしも。

 

 というより、理由はわかり切っているのですが……。

 

「くっ、や、やはり、胸が痛いっ……!」

「です、ねっ」

 

 そう、わたしとまひろちゃんのお胸がこう、揺れに揺れるため、付け根が痛くなるのです。

 

 ですが、悪いことばかりではなく、まひろちゃんのお胸とわたしのお胸がこう、ぶつかり合うと言いますか……ふふ、お胸とはいえまひろちゃんのお胸に合法的に触れることができるのはいいですね……。

 

 などということを考えていると、美穂さんが見えてきました。

 

「二人とも、早く早く! 少し後ろから来てるわ!」

 

 わたしたちを急がせるように、美穂さんがそう言ってきました。

 

 それを見て、ラストスパートをかけて、わたしとまひろちゃんは美穂さんの所へ到達しました。

 

 

「美穂さん、バトンタッチです!」

 

 二人が巨乳を惜しげもなく揺らしながら、まるで当てつけかこの野郎! とか思いつつも、到着した瑞姫からたすきを受け取る。

 

 まひろは……

 

「ぜぇ、はぁ……あー、しんどい! マジしんどい! はぁっ、んんぅっ……はっ、ふぅ……」

 

 すごく疲れてたわ。

 

 でしょうね。

 

 正直、私たちが原因ではあるけど、やっぱり大好きな人と走りたいし……いやでもやっぱり、結構酷いわね、これ。

 

 うん、酷い。

 

「あー、まひろ、大丈夫? もしきついならリタイアする?」

 

 だからだろう、私はそんなセリフが口を突いて出ていた。

 

 別に、走りたくないとかっていうわけじゃなくて、単純に心配になったからなんだけど……。

 

「い、いや、大丈夫じゃ……というか、おぬしだけ走れないは、可哀そうじゃろ……? それに、儂は嫌ではない、ぞ。おぬしらと一緒に何かをするのは、楽しいからのう……!」

「まひろ……」

 

 ……いやまぁ、正直リタイアを進めた理由、他にもあるんだけど……。

 

「ほれ、行くぞ」

 

 気が付くと、まひろが私の足と自分の足を紐で結んでいた。

 

「大丈夫か? 旦那様よ」

「――っ、だ、大丈夫よ! じゃ、行くわよ!」

「うむ!」

 

 まひろと一緒に走りだす。

 

 うん、まひろとの走りはすっごく安定するわ。

 

 昔、二人三脚をやったことがあるけど、その時よりも安定してる。

 

 すごく走りやすい。

 

 けど……。

 

「はぁっ、はぁっ……」

「……(ぎりぃっ)」

 

 けど……!

 

「んっ、ふぅっ……はぁ、くっ……」

「……(ぎりりぃっ!)」

 

 こいつの胸が揺れるのが視界にちらつく度、クッソ腹が立つぅぅぅ!

 

 私とこいつが一緒に並んで走ると、マジで格差社会がすごいんですけど!?

 

 しかも、私の前に走った二人も巨乳だし!

 

 なにこれ、私だけなんかみじめじゃない!?

 

 おのれ巨乳、許すまじ巨乳!

 

 ってか、なんでまひろはこんなにでかいのよ!

 

 元男よね? なのにこの胸! 今まで女として生きてきた私がなんかこう、負けた気分になるんだけど!

 

「はぁっ、あー、マジ辛いわい!」

「私も辛いわっ!」

「おぬし、何を怒っとんのじゃ……?」

 

 まひろの辛いという言葉に、私はつい怒った口調で同意の言葉を発し、まひろは疲労で顔を歪めつつも疑問を口にしていた。

 

「いや、うん、別にまひろが悪いわけじゃないのよ……そう、悪いのは神様であってまひろじゃないの」

「おぬし、本当にどうした」

「でもっ、やっぱりあんたと横並びだと、私がこう……すんごいみじめ!」

「いやほんとにどうした!? ――んぐっ!? げほっ、げほっ……む、むせたっ……」

 

 まひろがツッコミを入れようとして、気管に唾が入ったのか、むせだした。

 

「ご、ごめん。つい……」

「い、いや、別に構わんが……」

 

 ほんとごめん。

 

 ……でも、あれね。

 

 さっきから私の腕や胸辺りに当たるまひろの胸が何と言うか……うん、すごい気持ちいい。

 

 私たちの間でも、まひろは基本的にロリ形態でいるから、この姿は滅多にないから知らなかったけど、何かしらね、この……すっごい安心する感覚。

 

 まひろ、一応男だったのになぁっ……!

 

「というか、あんた大丈夫、なの?」

「しょ、正直辛いし、マジで止まり、たいっ……!」

「でしょうね!」

「じゃ、じゃがっ……ほれっ、楽しいから、のうっ……!」

「ま、まひろ……」

 

 ……なんだろう、この、敗北感。

 

 こんなに真っ直ぐにやってくれてると言うのに、私は何と言うか、劣等感ばかり感じて……って、うん、いやまぁ、勝手なアレだけども。

 

 けど、こうしてまひろが楽しいと言ってくれるのは、すごく嬉しい。

 

 なら……。

 

「じゃあ、さっさと進んで、一着ゴール、目指すわよ!」

「と、当然、じゃあっ……!」

 

 なんてことを言いながら、私たちは走るペースを上げていく。

 

 まひろは疲れてるけど、私が少し強めに引っ張れば、まひろの負担を少しは軽減できる。

 

 まぁ、まひろが合わせてくれれば、だけど……。

 

 そう心配していた私だったけど、私の意図に気付いたのか、はたまた単純に疲れて力が抜けたのか、紐が結ばれてる方の足が少し重く感じるようになった。

 

『おーっと! 速い速い! 最終走も走っている桜花まひろさんと音田美穂さんが速いです! 後方にも息の合った走りを見せている人たちもいますが、それ以上に息が合うのか、かなりの速度で走って行きます!』

 

 どうやら、私たちはかなり速いらしい。

 

 けど、後ろを振り向いたら確実にまずいことになると思ったから、私とまひろは走ることに専念して、前だけを向く。

 

 そうして、少しずつ、少しずつ、ゴールテープに近づいていく。

 

「はぁっ、はぁっ……ま、まひろっ、もう少しよ!」

「う、うむぅっ! あー、もうすぐで休めるのじゃぁ!」

 

 まひろの叫びがマジで切実過ぎて泣ける。

 

 まあでも、まひろってこの後もあと二種目出場するんだけど……これ、まひろ過労死するんじゃない?

 

 大丈夫? 死なない?

 

 なんと思っていると、もう目と鼻の先の距離までにゴールテープが迫っていて……

 

『ゴーーーーール! トップでゴールテープを切ったのは、二年三組! しかも、一人はずっと走り続けていた桜花まひろさんです! 他の人たちと違い、三人との息を合わせなければいけないにもかかわらず、難なくこなし、見事な一位でのゴール! 皆様拍手をお願いしまーす!』

 

 私たちがゴールすると同時に、そんな放送が流れた。

 

 ゴールに到達した私たちと言えば、

 

「ぜぇ、ぜぇ……あー、もう無理! マジ無理じゃぁ! 美穂ぉ、儂を運んでくれぇ……」

「了解。あんた、すっごく頑張ったものね」

「うむぅ……」

 

 紐を解くなり地面に寝転ぶまひろとそんなことを話していた。

 

「ほら、起き上がって。おんぶしてあげるから」

「おぉ、助かる……はぁ、ふぅ……よっこい、しょ……っと、おー、なんかすっごい落ち着くのう……」

「はいはい。私はあんたの胸が気持ちいいわよ」

「……お、おう、そうか」

 

 私の言葉に、まひろは頬を染めて、体を私に預けてぐったりとするのだった。

 

 ……でもやっぱり、この背中に当たる二つのふくらみは心底腹つわー。




 どうも、お久しぶりの方はお久しぶり、九十九一です。
 二ヵ月半以上も投稿が出来ず、すみませんでした。
 理由はまぁ色々あるんですが……やはりこう、思い浮かばなかったからでしょうね。本当に申し訳ないです。
 次の回ですが、正直なんも思い浮かんでおりません。なので、また時間が空いてしまいそうですが、気長に待っていただければと思います。
 では。
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