爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常 作:九十九一
「さて、次は、変色の能力なんだけど……これを変色できるか、試してみてほしい」
「あー、これは?」
「ウィッグだね。何の変哲もない」
「……いや、なぜにウィッグ?」
次の検証と言われ目の前に出されたのは、ショートカット程度のウィッグじゃった。
なぜにウィッグなのかわからんが……。
「まあ、理由は何でもいいんだ。ほら、できるか試してほしい」
「あー、うむ、まあ、やってはみるが……」
あの開示薬には、自分の色を変える、とあったが……。
正直、自身の一部ではない以上、能力は発動されないような気がするんじゃがのう。
とはいえ、これも検証である以上しっかりやらねばならぬ。
儂はウィッグを手に持つと、変色を発動させる。
……が、特段変化が訪れるようなことはなく、色はこれっぽっちも変化することはなかった。
「無理じゃな」
「ふむ……では一つ、考え方を変えてみようか」
「む、考え方とな? しかし、どう変えるのじゃ?」
「簡単に言えば、そのウィッグを自身の体の一部だと思いながら能力を行使するんだ」
「……それは屁理屈ではないか? さすがに、その程度の認識だけで発動しようものなら、世の中の発症者たちがとんでもないことをやらかすことになるんじゃが」
「まぁまぁ、試しにやってみてくれ」
「……まぁ、やるけど」
正直、できそうにないとは思うんじゃがのう……。
儂は渋々と言った風に、このウィッグを自身の体だと思いながら変色の力を行使する。
さすがに何かが起こることはないだろう、そう思った儂じゃったが……。
「……んん!? なんか変わったんじゃが!?」
なんと、どういうわけかウィッグの色が変わった。
自分の体ではないにもかかわらず、なぜか色が変わった
「やっぱりか……」
「やっぱり? どういうことじゃ? おぬし、これがどういうことかわかるのか?」
「あぁ、知っているとも。だから……そうだね。『獣化』と『変色』の実験をしたし、ここで息抜きがてらちょっとした講義と行こうか。私が解明した能力へのとある共通点を」
「ほう! 共通点とな! では、早速聞くとしよう!」
この能力だけでなく、他の能力たちの解明した共通点と言うのが気になった儂は、今すぐ講義したい! 超したい! と言わんばかりの様子の神の気持ちを理解しながらも’自身も気になっておったので、儂も興味津々に講義を聞くことにする。
「うむ! では生徒よ、まずは能力についてわかっていることを話そう」
「よろしく頼む」
「まず、そうだね……現時点でわかっていることを話すと……一つ、発症者は最低でも一つ、最大三つまで能力を所有する。二つ、一定以上の効果を持つ能力は存在しない。この二つだ」
「ふむ、一つ目はわかるが……二つ目はどういう意味じゃ?」
「うん、まぁ、簡単な話さ。そうだな、攻撃系の能力で例えるとすると……人類滅亡を片手間で行えるような能力は存在しない、と言ったところかな」
「……んん? いやしかし、それでは例の魔法が使える発症者ならば、割とできそうな気がするし、他にもおらんのか? 千人もおるんじゃろ?」
能力自体、個人個人で違う物。
であれば、正直そんな危険な能力を保持した者が現れても不思議で話とは思うんじゃが……。
そんな儂の疑問に、最もだと頷く神じゃったが、すぐに「でも」と切り出す。
「私はO3の日本支部責任者だからね。特に、研究方面に関しては。そして、この病を解明するために、私は各国の支部から情報が渡って来るんだ」
「ふむ」
「そして、全発症者の能力を見ていく内に、能力にはある一定ラインを超えるような能力が一切ないことが判明した」
「ふむ? そのラインというのが、さっきのたとえ話か?」
「そうだよ。んー、少し説明が難しいんだけど……攻撃系で言えば、核ミサイルを連発できるような能力は存在しないけど、魔法使いのように広範囲殲滅型の能力がないわけじゃない。不老不死になる力は存在しない。そして、時間を操るような力は存在しない。大体はそんな感じだね」
「なるほど……」
それがさっき話した片手間で人類滅亡を成すことができる能力がない、ということか。
たしかに、そんな能力があればかなり問題になるじゃろうし、世界征服を企むような悪人に知られてしまえば、間違いなく誘拐される危険度は高まるじゃろうが。
まぁ、そのような能力は無いとの話じゃが……。
「しかし、そのラインの明確な基準とは?」
「恐らく、人の身で行使できる力の大きさがそこまでなんじゃないか、と言う部分かな」
「十分、魔法使いの者とか人の身で行使できる力としては大きいと思うんじゃが?」
「まぁ、それはそうなんだけど……なんと言えばいいのかな。この世界の法則そのものを書き換えるような力、と言うのがラインとしての表現じゃ一番近いかな」
「ふむ……では、こう言う事か? 不老不死という夢を抱く者が多く存在するが、仮にそれを可能にする能力があった場合、生命の理が大きくねじ曲がってしまうが故に、存在しない、と?」
「そう言う事になるね。人類滅亡なんて、まさに武力行使ではなく、大虐殺であり、そして人一人でできる力じゃないから。それこそ、理がねじ曲がっているだろう?」
「まぁ、たしかに……。それで言えば、時間操作も無いと言うのは、あれか。過去や未来を変えることが問題になる、ということかのう?」
「そうとも。つまり、理を曲げてしまいかねないような力はない……はずだったんだけど」
そう言って、神がじっと儂を見つめる。
見つめる神の視線と言うのが、なんと言えばよいか……儂の内面を見透かそうとするような、それでいて困ったような、だが歓喜するような、そんな気持ちが入り混じっているような気がした。
「……君の能力の一つ、『成長退行』は、少し異常かもしれない、と思ってね」
「そ、そうかの? 儂的には、体の年齢が自由自在なだけじゃと思っとるが……」
「……そうか。ま、その話はまた後で。今は講義の続きと行こう」
「あ、うむ。了解じゃ」
今の間はなんじゃ? と訊くよりも早く、講義の続きにさっさと進める。
なんなんじゃろうか?
「さて、ここからが共通点の話。そうだね……それを話すために、君の『変色』の力について話しておこう。いや、正確に言えば、隠し要素とでも言うべきか」
「それは、あれか? ここへ来た時に話とった?」
「あぁ。その中でも、一部の能力に~、というあれが今回の話に出て来る。能力自体がまだどういう物なのかは解明できてはいないが……どうやら、『自分自身の』という限定的な文言が入る能力と言うのは、総じて拡大解釈が可能であることが分かった。いや、正確に言えばどんな能力も拡大解釈次第で、効果の幅が広がる、と言ったところかな」
「……」
開いた口が塞がらない、とはこのことじゃろう。
神の口から吐き出されたとんでもない内容に、儂は自分でもわかるくらいに驚愕の表情を浮かべておる事じゃろう。
それくらい、今までの常識をぶっ壊すようものだった故。
そもそも、能力とは魔法が使えるような能力や、物体を操作する能力、もしくは生み出すような能力以外は、所謂自身の体にのみ作用する能力がほとんどじゃ。
儂の持つ能力全てが三つとも後者に当たる。
前者はもともと自分以外を対象とした能力であるがゆえに、危険度が高い者が多い、と話を聞いておる。
O3から送られてきた資料の中に、そう言った説明があったからな。
この病が日の目を浴びることになったのは十年前。
現段階でも研究が盛んにおこなわれており、その中で解明されたことは全体のほんの数十パーセントほどと訊く。
それ故、にわかには信じがたいが……儂は発症したてとも言えるわけじゃ。
そのため、信じることは容易いと言えば容易い。
それに……これが真実であるのならば、儂の先ほどの謎現象にも説明が付く。
「……つまり、儂があのウィッグを自身の体であると認識したために、『変色』の効果が適用された、というわけか?」
「その通り。だからまぁ、一つだけ実験したいことがあってね」
「ふむ、実験とな? いやまぁ、なんとなーく思いつくが……」
目の前でニヤニヤとする神の顔を見ればな。
十中八九――
「私に『変色』、使ってくれない?」
「デスヨネー」
予想通りの実験内容じゃった。
こやつ、頭が割とマッドサイエンティストであるが故に、自身でも体験できるならしたい! というかさせろ! とか思っとるんじゃろうな。
「さぁさぁ! 早く私に能力を使用してくれたまえ! いやもう、ほんっとにこれがわかった時の私の気持ちがわかるかい!? 狂喜乱舞し、床をびったびったんのたうち回り! 一日五十時間と言わんばかりの速度と忙しさでもって仕事を全て相殺! 以前はちょっとしたイレギュラーが発生したから君の検査が出来なかったのは、まさに遺憾の極みッ……! だが! 私は今度こそは君の能力を検査し! そしてぇ! 君の検査と実験ができるように調整したのだよ! だからほらほらほらぁっ! 君の能力を! 熱いパトスをぶつけてくれたまえ!」
「おぬしは何を言っておる!? というか、なんか目が怖いんじゃが!」
目は血走り、鼻息は荒く、口端から涎もだばだばと流れており、なんと言うか……凶器を感じる。
というか、どんだけ自分に実験したかったんじゃこやつは!
じりじりと瞳孔が開き、血走った目で迫られるとマジで恐怖を覚えるんじゃが1
くぅっ、このような者が親戚とか……なんかこう、すんごい怖いし、我が従姉と通じる何かを感じる。
もしや、儂らの家系は碌な者がおらんのか……?
……な、なんか嫌じゃな。
「いやもうほんとに我慢できなぁぁぁい! 頼む! ほんっとーーーーに! 頼むから能力を! 私に能力を行使してくれぇぇぇぇぇい!」
「わ、わかったわかった! わかったのじゃ!」
「ほんとかいじゃあ早く能力をハリーハリー!」
な、なんて綺麗な目ッ……!
色々と怖いが……なんかもう、ここで『あ、やっぱやめる』などと言おうものなら、間違いなく儂がマジもんのモルモットになる恐れがあるので、大人しく能力を使用することに。
わくわく、とまるでヒーロー物の特撮番組が始まるのを待つ子供のように目をキラキラとさせる姿に苦笑を零す。
とりあえず、差し出された手を軽く掴み、能力を行使しようとし……
「あ、そう言えばどこを変えるのじゃ?」
変更箇所を尋ねた。
儂の一存で決めるのもそれはそれであれじゃからな。儂の体じゃないしのう。
「髪の毛で」
神は髪の毛にしてほしいと即答した。
うぅむ、一秒以下の反応だったんじゃが……怖いのう。
「では……」
軽く目を閉じる。
神の今の髪色は黒。
であれば、わかりやすい色がいいじゃろう。
今は暗い色じゃから……うむ、明るい色にするとしよう。
となれば……うむ、決めた。
儂は心の中で髪の色をどう変えるかを決め、自身に施すように、神の髪の色を想像した色に変える。
そして、目を開けると……。
「うむ、成功じゃな!」
そこには、黒髪ではなく、白金色の髪に変わった神の姿があった。
「ほ、本当かい!? 今私、髪色が変わっているのかい!?」
「うむ、変わっとるぞ」
「ちょ、ちょっと待ってね! 鏡鏡……あった! ……お、おおっ、おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~っっっ!」
ばたばたと確認確認! と鏡を取り出し自身の姿を確認するなり、それはもう喜色満面と言った表情で歓声を上げる。
少女らしいテンションの高さに、儂は思わず苦笑いを浮かべるが……まぁ、良いか。
「も、もとよりこれはほぼ確定に近い情報だったけど、まさか本当に成功するとはっ……! まひろ君! 本当にありがとう!」
「あ、あー、いや、別に良いが……しかし、その髪色、二十四時間は戻らんからな?」
「ははっ! そんなもの、些細なことだ」
「さ、些細かのう?」
「些細だ! あと、私個人として気になることがあるので、このままで行くさ、まぁ、イメチェンと言う奴だね」
「ま、まぁ、おぬしがそれで良いなら……」
神自身が気にならないと言うのならば、今更儂が言う事などないじゃろう。
「……しかし、一体どういう事じゃ? これは。なぜ、儂以外にも能力の影響がある?」
「おっと、そのことだったね。では、説明と行くが……能力、そこに『自身に』という逸聞があるタイプの能力は、自身が触れた範囲すらも『自身』と言う風に解釈を拡大することができるようでね」
「それは、確実なのか?」
「あぁ。間違いないよ。君の検査をした後、開示薬で得た情報をメールにて送るよう頼んだことは、憶えているかい?」
「うむ」
実はあの日、儂が検査から自宅に帰宅した後に神からメールがあり、開示薬に書かれておった能力の説明を書いて送るように頼んできたのじゃ。
大したことではなかった故、特に何も疑問に感じず、さっさと済ませたわけじゃが……そこから情報を得るためと言うのもあったのやもしれぬ。
おそらく、儂の持つ能力、特に『成長退行』と『変色』には、確かに自身の、と書かれてはいた。
『獣化』は……別段そう言うわけではなかった。
好きな三種類の動物に変身する、それが簡潔な説明なんじゃが……。
一応、自身の、とはついてはおったが、『獣化』は少し違った気がする。
なんと言えばよいのか、あくまでも『自身の好きな三種の動物に変身する』という物ではあるが、あくまでも儂が好きな動物を指すわけで、決して自信を変身させる、という書かれ方はしてはおらんかった気がするが……うぅむ、これ、ある意味屁理屈なような気がするんじゃが……。
「あれは、君の能力がどういう物なのかを調べると同時に、共通点に当てはまるか、と言う部分も調べるためだったんだ。ま、結果は当てはまったわけだけど」
「うぅむ……しかし、一体なぜ、拡大解釈が?」
「そうだね、身も蓋もないことを言えば、超常的な力なんだか何でもありだからなのでは? という片付け方ができる」
「本当に身も蓋もないな……」
「あぁ、だけど、それは研究者としては失格だから、この考えは無し。根本的な理由はわかっていないけど……仮説としては、そうだね。この能力が、実は何らかの特殊なエネルギーによる行使だった場合、相手に触れることでその力が触れている相手や物に移るのではないか? それによって、力の行使が出来ている、と。そんな仮説」
「ふむ……」
たしかに、おかしくはないじゃろうな。
何度も例を出すのでちとあれじゃが、魔法が使えるようになる能力などがいい例ではないじゃろうか。
魔力と言う力を扱えるようになった結果、魔法が使える、と言うことになるわけじゃからな。
そもそも、自身の体を変質させる力と言うのは、ある意味では自身の体と言う体の構造を書き換える行為ではないのか? もしそうであれば、たしかに何らかの力が実は発症者たちの体に流れておって、それらが作用した結果ならば、大して不思議でもない。
そもそも、ある日突然性別どころか、肉体が変わりすぎる病気。
今更謎の力が流れてるんだ! とか言われても、これっぽっちも変とは思わんじゃろう。
「しかし、もしそうであればその力が存在するかどうかを確認せねばならぬのでは?」
「そう、そこだ。問題はそこ。何かあるとは思うんだけど、これが全く見つからない。魔力は観測できたんだけど」
「いやそれはおかしくない?」
「しかし、あくまでも観測できたのは魔力だけ。他はこれっぽっちも観測できていないんだ。だからこそ、能力がなぜ存在するのか、と言う部分が解明できないんだけどね」
「お、おう、そうか」
ははっ! と笑いながら言うが、魔力を観測できてる時点で色々おかしいんじゃが……。
こやつの頭脳、やはりおかしくね?
「……しかし、ではその魔力が原因ではないのか? それも不思議な力じゃろ?」
「まぁ、それも考えたよ? けど、なんと言うか……違うんだよ」
「違う?」
なんとも言いにくそうに違うと答える神に、儂は首を傾げながら聞き返す。
一体何が違うと言うのか。
「魔力という物質……あー、エネルギー? は、所謂放出系の能力にしかないんだよ」
「放出系……つまり、魔法だとか、あのテトリスを出す能力とかのようなか?」
「そうそう。簡単に言えば、自身の体に作用しない能力、と言えばいいのかな? そう言ったタイプの能力は軒並み発症者の体内に魔力が観測できた。だけど、自身の体に作用するタイプの能力――身体系の能力を保持した発症者の体内からは、そう言った能力が検出されなかったんだよ。……ま、例外はあるけどね」
「なるほどのう……ということは、儂にも魔力はない、と言うことで良いのか?」
「そうだね。君の体からも魔力は検出されていない」
「ふむ……」
口元に手を当てて考える。
言われてみれば、儂が使う三つの能力は、あくまでも何らかの代償を払っておるだけで、いとも簡単に使用が可能であるために、儂は割とぽんぽんと能力を日常的に使用する場面がある。
体を小さくしたり、大きくしたり、あとは『獣化』を使用したり、などじゃな。
「……一つ気になるのじゃが、その、放出系というのは、使用すると疲れたりするのか?」
そこで、儂は一つ気になったことを神にぶつけてみた。
儂自身、能力を割と使用するにはするんじゃが……よくよく思い返してみれば、大して疲労感や虚脱感を感じてはいなかった気がするんじゃ。
しかし、それは儂だけなのか? それとも、儂以外にもそうなのか? もし前者であれば大した問題ではない。
じゃが、仮に後者であれば、そこに放出系と身体系の能力に違いがあるのではないか? と言うことも考えられた。
故に、今の質問をしたわけじゃが……果たして、どう返って来るか。
「まぁ、そうだね。放出系の発症者のもるも――ごほんっ。被験者たちからは、体力が抜けるような疲労感がある、とは聞くね」
「今、モルモットとか言わんかったか? のう? モルモットと言ったよな?」
「ははっ、気のせいさ。まさか、専門医であるこの私が、君たちを実験たいと思ってるわけがないだろう?」
「そのセリフが全てを物語っておる気がするんじゃが!?」
「はっ」
「鼻で笑うでないわ!」
やはりこやつ、色々と問題じゃろ……いやほんと、マジで。
「ま、どうでもいいことは置いといて」
「置かないでほしいんじゃが」
「ま、気にしない気にしない」
「……はぁ」
軽い笑みと共にひらひらと手を振る神に、何を言っても無駄じゃと思い直して溜息一つ。
こやつ、精神部分とか色々大丈夫かのう……。
「それで? なぜそんなことを訊くんだい?」
「あー、いや、ちと気になったのでな。儂は能力を使用しても大して疲れんから、儂だけなのか、それとも放出系と身体系の二種類の違いなのか、と思ってのう」
「……」
「じゃから、おぬしに訊こうと思ってな」
「…………」
「それで――って、なんじゃ? 聞いとるのか? おーい? おーーーーーーい?」
なぜか唖然とした表情で、一切言葉を発しなくなった神の眼前で手を振ったり、声をかけたりして見るも、反応がない。
まるで、処理落ちしたPCのような反応じゃが……どうしたんじゃろうか?
と、儂が固まった神を心配しておると、ガバァッ! と神がいきなり動き出す。
「――それだよまひろ君ッ!」
「ど、どれがじゃ!?」
「そうだよ、大きな違いはそこにもある! あぁ、なんでそんな簡単なことに頭が回らなかったんだ、今までの私は! ミジンコじゃあるまいし!」
「お、おい、神?」
「そうか、そもそも、括りが違うのか……今まで大きく分けて放出系と身体系と分けてきたけど、そもそもそれが間違いだったのかもしれない。能力としての本質が違い過ぎるし、何より系統が違うだけで同じだと思っていた。そもそも、使用する力が違う可能性すらあるんだ。なぜそこまで頭が回らなかった? くっ、やはり私は発症者じゃないからな……悔しい」
ぶつぶつ、と独り言を発しつつ、目をかっぴらいたかと思えば、どこからともなく取り出したノートに胸ポケットから取り出したペンを手に持つと、ガリガリガリ! と一心不乱に何かを書き込んでいく。
その姿は、狂気を感じさせるものであったため、思わず恐怖を感じた。
怖くね?
「か、神ー? おーい?」
「……おっと、悪いね、ついトリップしてしまった」
怖くなって恐る恐る声をかけると、ピタリ、文字を書き込んでいく手を止めて、にぱぁっ! と今までとは毛色が違う笑みを浮かべる神。
こ、怖いのう。
「いや別に構わんが……どうしたんじゃ?」
「いやなに、君のおかげで研究が進みそうだ、と思ってね」
「そ、そうなのか?」
「あぁ。……けど、今はまだ整理が出来ていない。だから、これはまた今度。伝えられる時に伝えるよ。……上層部にも提出しないとかも知れないし」
楽しみだ、と呟きながら、その表情は今すぐにでも研究したいという欲求が現れておった。
ほんと、研究が好きなんじゃなぁ……。
「……っと、一旦休憩にしようか。それに、時間もお昼頃だし、どうだい? 一緒に昼食でも」
「ありがたいが……おぬし、忙しいのではないのか?」
「ははっ、大丈夫さ。今日は君との熱く、そして濃厚な日を過ごすために他の仕事は全て片付けてあるからね!」
「誤解を招くような言い方をするでないわ!」
「はははは! というわけで、早速お昼を食べに行こう。ついでに、そこでも講義の続きでもするかい?」
「……はぁ。ま、そうじゃな。色々と調べることも多いし、その方が儂も助かる」
「おっ、そうこなくてはね! いやぁ、君みたいに自分から講義を受けたいと言う人はなかなかいなくてね、私も楽しいよ。さ、行こうか。ここは何でも美味しいし……何より、和菓子もたくさんあるよ?」
「――神よ急ぐぞ儂は腹が減ったほら速くぅ!」
「君、現金だね」
儂の変わり身の早さに、神は苦笑い交じりに肩を竦めながらも、さっさと先へ進んでいく儂の後を付いて来た。
どうも、九十九一です。
折角体育祭が終わったのに、今度は説明回的な物が続く……さっさと終わらせたいけど、一応は必要な部分だから書かざるを得ない。とりあえず、さっさと終わらせて、本当の日常回に戻したい。
次回は……早めに出したいですけど、わからないのでね、気長にお待ちください。
では。