爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常98 休日。久々の同性との遊び

 そんなこんなで土曜日。

 

 今日は健吾と優弥と遊ぶ日であり、儂が旦那共から解放される素晴らしい日と言えよう。

 

 それに、男同士での遠出と言うのは、春休み以来故、昨日からずっとわくわくしとったし、思わず早起きしてしまうほどじゃった。

 

 さっさと起きるなり飯を食い、遠出用の衣服に着替える。

 

 ちなみに、今日着とる儂の服装は、白のブラウスに、赤いチェック柄のミニ丈ほどのフレアスカートに、ニーハイソックス、あと紫陽花をモチーフとした髪飾りもつけとるなど、なんか……ちと可愛らしい女子高生? のような姿に。

 

 体も高校生にしとる。

 

 ロリっ娘状態であの二人と出かけるとなると、あやつらがロリコン扱いされるのでは? みたいな心配が生まれてのう……。

 

 それに、儂としてもどうせなら同じくらいの歳頃で遊びたいとも思った故、この姿にした。

 

 なお、この状態は何気に神との調査の時からこの状態を維持しとったので、飢餓感は今はない。

 

 ただ、学園にいる間凄まじい飢餓感と空腹感に襲われておったため、授業中に集中を欠いてしまったのは問題じゃったな。

 

「よし、そろそろ行くか」

 

 化粧は特にせず、所謂すっぴんじゃが……まぁ、化粧などという七面倒なことはしたくないのでな、何もしとらんが……なんか、美穂たちが、

 

『せめて、リップくらいはしときなさい』

 

 と強く勧めてきおったので、リップだけはすることにした。

 

 というわけで、準備万端! と気炎万丈とまでは行かんが、遊び尽くすぞ! という気持ちで儂は家を出た。

 

 

 今日は珍しく早起きしたため、集合時間である十時よりも三十分以上早い時間に駅前に到着。

 

 うぅむ、早く着き過ぎたのう……。

 

 健吾と一緒に来るべきじゃったか? あやつとは家が隣同士じゃし……とはいえ、待ち合わせと言うのも遊びに行く醍醐味というもの。

 

 どれ、適当に本でも読んで待つとするかのう。

 

 カバンから一冊の本を取り出し、儂は壁に背を預けて読み始める。

 

「うぅむ、時代小説も良いが、やはりラノベも良いのう」

 

 あれにはない面白さがある。

 

 カッコいい男たちの勧善懲悪が描かれた物も良いが、やはりファンタジーやラブコメ良いものじゃ。

 

 ……まぁ、最近は特にラブコメ系を重点的に読んどる気がするがのう……現実が現実故、ついつい甘酸っぱい作品を求めてしまうのじゃ……砂漠を彷徨う者が、水を求めてオアシスを探すかのように。

 

 儂の今の生活は、旦那共の動きによってそれはもう爛れた生活になりかけとるわけで、こう、性と欲が割と出まくる生活であるために、甘酸っぱい生活、と言うのは憧れると言うか、面白いと言うか……現実の儂とは真逆の生活が羨ましく感じると言うか……うん、羨ましい。

 

 普通、こういうのはこんな美少女(イケメンの場合もあり)と嬉恥ずかしな生活を送れてるのが羨ましい! と思うのんじゃろうがのう……。

 

『な、なぁ、あそこで本読んでる人さ、超可愛くね?』

『うわ、すっげ。ってかスタイルも良すぎだろ』

『睫毛なっが! 顔小さ! しかも、モデルみたいにスタイルもいいし可愛いとか……反則じゃん……』

『私もあんな風になりたい……』

 

 ……む? 何やら周囲がざわついとるような……それに、視線も来とる?

 

 ふと、周囲からの視線に気づき、一旦本を読むのをやめて周囲を見回すが、通行人らしき者たちが立ち止まったり、歩く速度を落としたりして、儂の前を通り過ぎていく。

 

 んんー?

 

 訳が分からず小首を傾げるも、すぐに視線を本に戻す。

 

 ぺら、ぺら、と本をめくり、中身に集中しておると、

 

『ねぇねぇそこのお姉さん』

 

 不意にそんな声が聞こえてきた。

 

 しかし、儂ではないと切り捨て、一切視線を目の前に向けることなく本の続きを楽しむ。

 

『おーい、そこで本を読んでるお姉さんだよ』

 

 が、再び声が聞こえてくる。

 

 どこか軽薄そうな声じゃな。

 

 しかし、本を読んどるお姉さん? んむぅ……あ、もしや。

 

「む、もしや儂のことか?」

 

 本を読むお姉さんなる存在が儂であると思い直し、儂は視線を前に向けると、そこにはいかにも遊んでます、と言った雰囲気を漂わせるチャラそうな男が二名ほど。

 

『そうそう君君! ねぇ、さっきからそこで本を読んでるってことはさぁ、誰かと待ち合わせしてるの?』

「ん? まぁの。今日はちと、遊ぶ約束があってな」

『でも君ぃ、さっきからずっとそこにいんじゃん? 君みたいな可愛い子を待たせるとか、酷いんじゃね?』

「ふむ、生憎と儂は早めに着いただけでな。つい、早く気過ぎてしまっただけじゃ」

 

 実際、まだ予定時間まであと十五分はあるしのう。

 

『でもさぁ、こんな所で待つくらいならさぁ、俺らと一緒の遊ばね? なんでも奢ってあげるからさぁ』

『そうそう。何でも買ってあげるよ? ブランド品でもなんでも!』

 

 この者ら、見てくれは悪くないのう。

 

 それに、どうやら財力があるとドストレートに言って来るが……。

 

「すまんな。儂はブランド品なるもの興味もなければ、金銭面も特に困っとらん。見ず知らずの者に金を使うならば、自身で使えばええじゃろ」

『つ、強がっちゃってぇ、でも、そんなところも可愛いじゃん?』

 

 ……あぁ、なるほど、これはあれか。ナンパ、と言う奴か。

 

 ほほう、創作物の中ではよくある光景じゃが、なるほど、現実にもあるもんじゃのう。

 

 あと、こういうのもなんじゃが、儂、大企業の娘と結婚しとるし、何より儂の両親会社経営しとったからのう……なので、金に困ることはないんじゃよなぁ。

 

『それに、俺らって結構イケてるっしょ? そんな俺らと一緒なら絶対楽しいって』

「ふむ、顔に自身があるのか?」

『そりゃそうっしょ』

『こう見えて俺ら、読モなんだぜ?』

「ほう、それはすごいのう」

 

 初めて読モという存在を見たが……ほうほう、たしかにそれっぽい雰囲気がなくもないな。

 

 じゃが、それを笠に着てナンパするというのは、それ以外自身が無いとでも言っとるような物じゃろうに。

 

『だろだろぉ? だからさ、一緒に――』

「すまんのう。儂はおぬしらに対する興味など微塵もない。今日はな、儂が日頃精神的に疲れるような事態が多くあるが故に、そのストレスを解消するためにこうして外出しとるのじゃ。そのストレスは、儂の友人共でなければ解消などされんのでな。ほれ、わかったらさっさと別の所へ行った方が、ええぞ。口説き落とせぬ相手にずっと絡むよりも、有意義に時間を使えるぞ」

 

 正直、ある意味貴重な体験をしたと言えるが、しかし面倒であるのも事実。

 

 儂は言外に邪魔だと伝え、手をひらひらと振る。

 

『だ、だけどさぁ――』

「くどいのう。儂は面倒なんじゃ。というか、儂を現実逃避させとくれ。そのために、こうして本を読んどるのに」

 

 まったく、今良い所じゃのに、こやつらのせいで台無しじゃわい。

 

『いいじゃねぇかよ! んなことよりも楽しいことを――』

 

 少し苛立ちを見せながら、男の一人が儂の腕を掴もうと手を伸ばし――

 

「なぁ、俺たちの親友に絡むの、止めてくんね?」

 

 たところで、横から現れた別の男に腕を掴まれていた。

 

『誰だっ?』

「誰って、こいつの幼馴染だけど? なんだよまひろ、今日は早いじゃねーか」

 

 おぉ、健吾か。なんとも良いタイミングじゃのう、まるでラブコメの主人公の如きタイミングの良さ。

 

「はは、いやなに、ちと楽しみでのう。して、優弥は?」

「僕ならここに。すみませんね、遅れてしまって」

 

 きょろきょろと見回して優弥を探しとると、儂の背後から優弥が謝りながら現れた。

 

「いやいや、気にするでない」

 

 今回ばかりは、儂が早すぎただけじゃからのう。

 

「……と、そう言うわけなのでな。おぬしらに遊んでもらう必要もなければ、用など何一つない。というか、こっちの優弥の方がおぬしらよりイケメンじゃろ」

『『ぐっ――』』

「おいおいまひろ、それは言い過ぎじゃね? いやまぁ、俺も思うけどよぉ」

「少し照れますね」

 

 頬を掻きながら、少し気恥しそうな笑みを浮かべる優弥。

 

 ま、これでさっさと遊びに行ける、と思ったところで、

 

「ってか、こいつ既婚者だぜ?」

 

 健吾が爆弾を落とした。

 

『『『――エッ!?』』』

 

 その瞬間、周囲のいた者たちが固まった。

 

 目の前の男たちも。

 

「いやまぁ、確かにそうじゃが……うぅむ、改めてそう言われると、こう、気恥ずかしいものがあるのう」

「まぁ、まひろさんは特殊な例ですからね。問題ないのでは?」

「ははっ、まあのう!」

 

 そもそも、十六歳で結婚! というのも、世間的に見てもかなりレアじゃろうからな。

 

『え、き、きき、既婚者!?』

「ん? うむ、そうじゃが?」

『い、いやでも、指輪……』

「指輪? ……あぁ、結婚指輪か? 実はまだなくてのう」

 

 何せ、肝心の指輪は今、羽衣梓家の方で用意する! とかで今世界最高の職人に依頼中らしいからのう。

 

 なんか、とんでもないものが出来そうで怖いが……まぁ、うむ、そこは諦めた。

 

 アリアとか、気絶しないか心配じゃな……あやつ、テンションが高い反応を見せるが、度を越えた物を見たら気絶しそうじゃし。

 

 現に、今住んどる家にある高そうな壺(実際に高かった)の値段を聞いた瞬間、マジで倒れたし。

 

 元が貧乏じゃったからのう。

 

『お、おいおい! 既婚者なのに、旦那同伴で浮気か!? なんだお前ら!?』

『頭おかしいんじゃねぇの!?』

 

 わなわなと男たちが震えだしたかと思えば、怒鳴り声で健吾と優弥に向かってそう叫んだ。

 

「いや、なんか勘違いしてるようだが、俺たち別に、こいつの旦那じゃないぞ?」

「そうですね。そもそも、付き合ったことなどありませんし、恋愛的な意味で好きになることはないですね」

「だな」

『は!? じゃあ、何か? このお姉さんは別に旦那がいるってことか!?』

「まあ、そうじゃな」

 

 何を驚くことがあると言うのか。

 

 よくよく見れば、なんかすっごいひそひそされとるが……しかも、どこかアレな人を見る目をしとる気がするが。

 

『なんだお前!? 白昼堂々と浮気とかヤバすぎだろ!?』

「ははっ! 生憎と、旦那共からはきちんと許可は貰っとるぞ。というか、こやつらが浮気相手とか……ないない」

「そりゃそうだなー。ってか、俺らは小さい頃からの仲だし、優弥も優弥で付き合いはそこそこあるしな」

『いやいやいや、どう考えても、おかし――って、ん? 旦那『共』?』

「うむ。旦那共じゃが?」

 

 え、聞き間違い? みたいな間抜け面を晒す男に、儂は何を当たり前のことを? と旦那共であると返す。

 

『……え、何? 君、もしかして複数人の旦那さんがいるの?』

「そうじゃな。五人ほどおるが……」

『『『五人!?』』』

「うむ。いやまぁ、なかなかメチャクチャな所もあるが、全員可愛くてな」

 

 実際、儂は儂であ奴らのことは好きじゃからなぁ。

 

『……か、可愛い? 何? 旦那全員ショタなの?』

「ショタ? 何を言うか。儂の旦那共は全員女じゃぞ?」

『『『……んん!?』』』

『え、ちょっと待って? 君もしかして……』

『は、発症者……?』

「そりゃそうじゃろ。現実にこんな桜髪の者がおるはずなかろう。それに、旦那が複数いる時点で気づくじゃろ」

『い、いやほら、事実婚とか……』

「んなことをしようもんなら、儂は干からびるわい」

『ひっ――……あぁ、なんか、その……』

『『すんませんした!』』

 

 二人してお互いに顔を見合わせたかと思いきや、ものすごい勢いで頭を下げなんか謝罪してきた。

 

 うぅむ、意外に素直なのかのう?

 

「ま、気にするでない。実害などなかったわけじゃからな」

「だなー。ってか、お前ら命拾いしたなー」

『それは、どういう……?』

「いやだってこいつの旦那の一人――」

「健吾さん、それは言わない方がいいですよ。下手にバレれば、まひろさんの身にもよくないことが降りかかる可能性があります」

 

 おそらく瑞姫のことを言おうとした健吾じゃったが、言い終える前に優弥に止められる。

 

 まあ、儂と瑞姫の関係……というより、羽衣梓グループとの関係が露呈すれば、変な輩に狙われる可能性があるからのう。ナイスプレー、優弥。

 

「っと、それもそうだ。なんでもねぇや。ってわけだから、お前らもナンパはほどほどにした方がいいぜ。じゃあなー。二人とも、行こうぜ」

「うむ。ではな」

「それでは」

 

 ナンパ男たちと別れ、儂らは電車に乗るべく駅に入って行った。

 

 

 というわけで、電車に乗る。

 

 幸い、目的地である秋葉までは一本で行くことが出来、更に幸いなことに席に座ることが出来た。

 

 ありがたいのう。

 

「んで? お前その姿で来たんだな。いやまぁ、公欠した次の日もその姿だったしさ、予想はしてたけど」

「いやまぁ、ほれ、あの姿では下手すりゃおぬしら、ロリコンとか思われるじゃろ?」

「「あー……それはそう(ですね)」」

「じゃろ? そう言うわけじゃ。……それに、この体である方が、同じ年代と思えるじゃろ?」

「確かにな。同年代に比べりゃ平均身長よりも少し低いかもしれんが、同年代に見えるか」

「ですね。まあ、僕らとしてもその姿の方がありがたいですよ」

「ははは、じゃろじゃろ? やはり儂、空気が読めるのう」

 

((まあ、ロリコン扱いされないようにする、と言う部分がちょっとアレだけどな(ですけどね)))

 

 む、何やら今一瞬、変なことを二人が考えたような気がするが……ま、気のせいか。

 

「ってか……やっぱお前でもナンパされんのな」

「そりゃまぁ、こう見えても儂、一応発症者じゃからのう」

「実際、ナンパされる、というのは良くあるみたいですね。まひろさんも例にもれず、かなりの美少女ですし、当然と言えば当然ですが」

「俺もそう思うわ。俺らの場合、まひろと接する時間も長かったし、性格も良く知ってるし、何より元の姿も知ってっからなぁ。だからこそ、恋愛に発展しないわけでな」

「いくら外見がかなりの美少女でも、以前の姿と中身を知っていれば恋愛的な行為を持つことはないですよね」

「まぁ、儂もその方がありがたいわい」

 

 幼馴染の男と、気の合う親友とも言うべき男に、この姿になったことで惚れられたら、それはそれで困惑するしのう……というか、普通に嫌じゃろ。

 

 ただ、神や未久斗たちが言うには、そう言う形でゴールした者も普通におるとかなんとか。

 

 元男の女が、男友達とゴールインしたり、元女の男が、女友達とゴールインしたり、みたいな。

 

 まぁ、肉体は異性じゃからな。

 

「にしても……あのまひろが、スカートねぇ? お前、制服以外でも何気に穿くよな」

「まあの。意外と楽じゃぞ?」

「そういや、まひろは楽かどうかが選定基準だったか」

「実際、めんどくさい服は好みませんしね」

「ははっ、やはり楽こそ一番、ってな」

 

 スカートとは、その点かなり良い物じゃな。

 

 スースーして、心許ないと思わんでもないが、穿くのも脱ぐのも楽と言う、儂にとって最高の衣類よ。

 

 個人的に、トイレに行くとき、ミニスカートであればいちいちスカートを下ろさずとも用を足せるのが素晴らしい。

 

「んで、秋葉に着いたらまずどこ行くよ?」

「そうじゃのう……やはり、ゲーセンかの? あと、トレードーにも行きたい」

「……お前、まさか買うつもりか?」

 

 儂が行きたい場所を告げると、健吾がマジかこいつ、みたいな顔でこっちを見て来る。

 

「む? 当然じゃろ? 実は儂が好きなゲームブランドの新作が発売しとってのう。店舗限定特典もあるらしいのでな、ついでに購入しようかと」

「……まひろさん、悪いことは言いません。止めた方がいいかと思います」

「なぜじゃ? 儂、そのためにこの体にしたと言っても過言ではないんじゃが?」

「いやそれが理由なんかい!」

「当然じゃろ、あの姿じゃ絶対に買えそうにないし」

 

 この姿でもギリギリアレかもしれんが……しかし儂は知っておる。

 

 東京では、年齢確認をされないと!

 

「ともあれ、儂は絶対に買うぞ! そのための軍資金も既に下ろしてある」

「お前、いくら下ろしたんだよ……」

「十万くらい?」

「「多い!」」

「これこれ、二人とも大きな声を出すでない。周りの迷惑じゃぞ」

「だっ――誰のせいだと思ってんだよ」

 

 再び大きな声を出しそうになった健吾じゃったが、すぐに声を小さいな物へと変化させる。

 

「なんと言いますか、美穂さんたちがいないと、前のまひろさんに戻りますよね」

「そりゃそうじゃろー。儂、本来はボケじゃし」

「わかるけどよ、マジで心臓に悪い行動は止めてくれよ?」

「ははは、そのようなこと、するはずがなかろう」

 

((発症した日に、裸で俺(僕)たちの前に現れた様な……))

 

 む、何やら二人が苦い顔をしておるが……まあよいか。

 

 などと思っておると、どこかの駅に着いたらしく、電車が止まる。

 

 すると、電車内に杖を突いたお婆さんが入って来る。

 

 む? あのお婆さん、腰を痛めとるように見えるが……ふむ。

 

「そこのお婆さんや」

 

 儂は席を立ち上がると、お婆さんに話しかける。

 

『あぁ、はい、なんでしょうか? 可愛らしいお嬢さん』

 

 いきなり見ず知らずの人に声をかけられたからか、お婆さんは不思議そうな顔をしたものの、すぐに笑顔で応えてくれる。

 

「いやなに、もしよければ座らないかと思ってのう」

 

 儂が立った理由は至ってシンプル、席を譲るためじゃな。

 

『いやいや、いいんですよぉ。お嬢さんが座ってください』

 

 儂が席を譲ろうとしたが、お婆さんは笑みを浮かべてやんわりと断る。

 

 む、この人は優しい人じゃな?

 

「いやなに、儂らは若いからのう。長時間経つ程度、ちょっとした運動じゃから、気にするでない」

『そうかい? ありがとうねぇ。それじゃあ、ありがたく座らせてもらうよぉ』

 

 最初はやんわりと断るお婆さんじゃったが、儂が運動になるからと言えば、にっこりと優しい笑みと共に礼を言ってから席に座った。

 

 儂的には何と言うか、こういう人を見るとついつい優しくしてしまうわけで。

 

 元々、爺ちゃんが大好きじゃったからな、お年寄りには優しくしたくなると言うか。

 

 それに、爺ちゃんには、

 

『子供と女性、あとお年寄りには優しくするんじゃぞ、まひろ』

 

 とよく言われとったのでな、これくらいは当然と言うものよ。

 

「良いのじゃ。……と、言うわけじゃから、儂は立っとるぞ、二人とも」

「お前、本当優しいよな」

「実際に席を譲る人と言うのはなかなかいませんよね。さすがです」

「当然じゃ」

「ま、お前は変なところで優しいしな。んじゃ、俺も立ってるかね」

「では僕も」

 

 儂に合わせるためか、二人も席を立つ。

 

「なんじゃ? 別に儂のことは気にせんでもよいぞ? 儂が好きでやったこと故」

「なーに言ってんだよ。俺らは親友だぜ? なら、お前だけ立たせるのもどうかと思うってもんだ」

「同じく。というか、見た目美少女のまひろさんだけ立たせておきながら、僕たちが座っていると言うのは……周りの視線が痛くなります」

「あー……」

 

 なるほど、そう言う理由もあるのか……。

 

 とはいえ、健吾が言った理由が本命じゃろうが、少ない割合とはいえ、その理由もあるんじゃろうなぁ。

 

 実際、儂が立ち上がり、席を譲った後、

 

『え、お前らは立たないの?』

 

 的な視線がこの二人に行きそうになっておったからな。

 

 しかし、儂は言いたい。

 

 ならばおぬしらも立てばよいのでは? と。

 

 特に、どう見ても健康的な学生! おぬしら、絶対体力あるじゃろ!

 

 車内にお年寄り、そこそこいるからな!

 

 などと思っておったら、近くでも席を譲る者がぽつぽつと現れだした。

 

 お、儂の思いが通じたのかの?

 

 ふふふ、そうじゃそうじゃ、お年寄りには優しく、じゃな!

 

「お前、ある意味大物だよな……」

「将来、とんでもない人になってそうですね」

「何が!?」

 

 突然言われたことに対して、わけがわからず思わず大きな声を出すのじゃった。




 どうも、九十九一です。
 もうすぐで100話に到達します。とは言っても、何も書くことはないんですが……そうですね、100話行ったら、一応各キャラの紹介部分でも投稿しましょうかね。まとめ的な。
 次回は、まあ出せたら明日も出します。とはいえ、期待しない程度でお願いします。
 では。
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