雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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ウィキッドと『死の王』

 

 

 

「叫んでも仕事は減りませんよ。私は私の仕事がありますので失礼します。尚、私が見ていないからってサボっていると……貴方研究資料を全て処分しますので、呉々もサボらずに仕事して下さい」

 

 シェムハザはそう釘を刺して執務室から退室して行った。その釘はBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督に取っては命の次に大切なモノである。

 

「クソ……‼︎ 今日は踏んだり蹴ったりじゃねぇか。俺、何かしたか? 寧ろ、何もしてねぇよな?」

 

「侮蔑。独りで何を喚いている?Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督」

 

 と、其処へ又してもウィキッドが音も無く現れていた。壁に凭れ半目でBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督の方を見ている。溜め込んだ仕事、追加の仕事、再編集の仕事、そして予算組み立ての仕事etc……。それらの仕事が山の如く積み上げられて聳え立っている。

 

「だから、少しは現れる兆候を見せてから現れろ⁉︎ と言うかテメェが原因だからな⁉︎」

 

 Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督は机を叩き立ち上がる。その際の衝撃で机の上に積まれた書類の山が床に振り撒かれた。

 

「……独言。天体の兆を齎す者の姿が見えない。時同じく、ペンドラゴンの末裔が動いた」

 

 Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督の言葉を無視して瞑目したウィキッドはそう呟く。その言葉にBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督は眉を顰める。

 

「……コカビエルが? それにペンドラゴンだぁ? 今日は随分とお喋りじゃねぇか?つーか、それはどう言う意味だ、ウィキッド」

 

「知らぬ。そも天体の兆を齎す者は火種よ。燻る火薬……勝利の使い方を知らぬが故にこうなる事は予見出来た筈であろう?神の如き強者よ」

 

「……、……っ。……アイツめ……‼︎」

 

 ウィキッドにそう問い返されてBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督は少し考えてその真意を見抜いた。

 

「……あの野郎。過去の大戦を蒸し返すつもりか⁉︎」

 

 過去の大戦。天使、堕天使、悪魔の三つ巴の戦争。ドラゴンの介入により三者共、浅く無い傷を被り済し崩しに終戦を迎えた。存続も危ぶめられる状況の中、武闘派は戦争の再開を提唱するもこれ以上の継戦は文字通り消耗戦となり滅亡へと導く。故にBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督を始めとした各勢力の上層部は各々のやり方で封殺し一先ず、戦争は終わった。しかし今でも小競り合い程度の争いは散見的に起きている。

 

「推察。脳筋は争う事でしか表現出来ない。手段の為に目的を求めるのは良くある事」

 

「…………だが、奴も其処まで馬鹿じゃねぇ。腐っても大戦を生き延びた上にグレゴリの中じゃ1番の戦闘狂だ。だが、戦争のやり方を知っているからな……独りで(・・・)勝てるとは思ってねぇだろうよ」

 

 コカビエル独りで冥界の悪魔陣営に突撃するのが1番手っ取り早いからだ。だが、Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督はコカビエルも馬鹿では無い。戦馬鹿ではあるが……。そう考える根拠はある。力が強いだけではあの大戦は生き残る事は出来なかった。

 

「56。12。悉く屠れや……有無を言わさずに前面戦争に陥り……神の如き強者も戦争へと駒を進めねばならぬであろう」

 

「……テメェの言う言葉。今一、伝わり難いぞ。もう少し簡単に言え」

 

 ウィキッドの口調は時々、意味が伝わらない言葉になる。『神煉具』により人格に影響が出て居る……とBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督は仮説を立てている。

 

「侮蔑。駒王町に巣食うグレモリーとシトリーを屠れば悪魔陣営のルシファーとレヴィアタンが激昂するのは明白」

 

「……あのシスコン共が、妹を殺されたら確実にキレる。お前でも知っているんだからコカビエルの奴も何れは知る……‼︎ 使わぬ手は無ぇだろうな……‼︎」

 

 身内を殺されたら確実に報復に移るのは目に見えている。その対象がシスコン魔王ならば尚更……堕天使側の宣戦布告と受け取られても可笑しくない。Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督としては『和平』の提案をしている以上、コカビエルの行動はとても看過は出来ない。

 

「しかも駒王町って日本じゃねぇか⁉︎ 確実に日本神話の連中をブチ切れさせる羽目になるじゃねぇか⁉︎」

 

 Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督は悪魔や天使の両陣営の他にも和平を結ぼうと考えている陣営があった。日本神話の陣営である。しかし素直に会ってくれる様な陣営では無い、その癖『ビザ』の概念を確立させている為に裏口面会は怒らせる羽目になると踏んで『ビザ』の発行元である裏幕府に向かったのだが盛大な歓迎を受けて退く事となった。

 

「ヤベェ……‼︎ 日本神話の連中をキレさせると何を仕出かして来るか分かったモンじゃねぇ‼︎ 『神煉具』の火産霊ってのは日本神話の神だから日本に在っても不思議じゃねぇし、それ以外の理由も予測出来ねぇ‼︎」

 

 Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督は三大勢力の中では1番日本神話の危うさを理解している様である。数え切れない程の神が存在し凡ゆる意味で混沌化している神話。

 

「い、今すぐコカビエルを探し出せ‼︎ そして一刻も早くグレゴリに連れ戻せ‼︎ 悪魔と天使どころか日本神話も殴り込まれたら確実に滅ぶぞ‼︎」

 

「否定。命令を受ける謂れは無い。寧ろ悪魔と堕天使共が共倒れになれば万々歳だ」

 

「テメェは何処の味方なんだよ⁉︎」

 

 焦るBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督の言葉にウィキッドはキッパリと断り剰え『双方滅べ』とまで言われる。

 

「まぁ、奴らも黙って死ぬのならば其れ迄の命。その程度の問題は些事であろう」

 

「……俺からしたら些事じゃねぇんだよ」

 

 その癖、ウィキッドはコカビエルの引き起こそうとする事件を『些事』であると切って捨てた。本人からしたら何処で誰が死のうが知った事では無いのだろう。

 

「……じゃあ、テメェにとっての些事じゃねぇ事って何だよ? その言い方だと他に問題が起きてんのか?コカビエルの奴の事で腹一杯だぜ?」

 

「『死の王』」

 

「あん?何だと?」

 

 ウィキッドがポツリと呟いた言葉。その言葉に対してBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督は思わず聞き返す。

 

「再送。『死の王』には気を付けろ。アレは話が通じる相手(・・・・・・・)じゃない」

 

「死の王? 思い付くのはギリシャのハデスの事か? ありゃ俺達堕天使や悪魔の事は大嫌いだからな……或いは北欧のヘルか?」

 

違う(・・)

 

「あ、違うってどう言う事だよ?つーか、テメェの知り合いか?」

 

「多分、違う(・・)。会った事も無い、見た事も無い。でも、凄く嫌な奴……Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督より性格悪い」

 

「……何が言いたいんだ?会った事も見た事も見た事も無いのに、中身は知ってんのか?」

 

 ウィキッドの歯切れの悪い言い方にBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督は顰め面となる。

 

「…………分からない」

 

 その問い掛けにウィキッドは『分からない』と答えた。自分にも分からない、ただ『死の王』と言う存在は危険(・・)と言う事だけは理解出来た。ドラゴンや悪魔やそれこそ各神話の主神、『祟り神』なぞ……雑魚同然の程に危険な存在、そんな気がしてならない。

 

「……『神煉具』の所有者のお前さんが警戒する程なのか?その『死の王』って奴は? 他神話の連中じゃねぇと……何かしらの渾名か二つ名みたいなモノか?赤龍帝や白龍皇とかと同じ類の呼び名の」

 

「多分、そう」

 

「……ただ、脅威になり得るって訳か。ゴタゴタが多過ぎるのに、追加注文なんて誰がしやがったんだ?頼んだ覚え無ぇっつーの」

 

 Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督は椅子に腰を沈めて嘆息する。その直後、何かが机の上に散乱する。それも1つじゃない。次々とヒラヒラと落ちて行くのは毛髪(・・)

 

「…………」

 

 その光景を見てウィキッドは半目で静かに見ている。Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督自身も自分の異変に気付いて机の上に散乱して行く自身の髪の毛を見て動揺が走り抜ける。

 

「……お、おい。ウィキッド……?」

 

 現実を目の当たりにしたく無くなったBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督がウィキッドに縋る様に口を開く。見覚えのある色合いの毛髪の量。

 

「回答。Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督かHagesale総督。好きな方を選べ」

 

「今、禿って言ったよな⁉︎ 言ったよな‼︎ つーか今、ハゲとアザゼルを組み合わせて斬新な名前を作りやがったよな⁉︎」

 

 Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督……頭髪の全ての毛根が死滅した。要はハゲたのである。頭に生える髪の毛がたった今、全て抜け落ちてしまったのだ。本当に唐突に、である。

 

「嘲笑」

 

「無表情で嗤うんじゃねぇェェェェェェェェ‼︎‼︎ うぉぉおおお⁉︎ 俺のイケメンフェイスとその髪がァァァァァァァァ‼︎⁉︎」

 

 Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督は鏡面の様に照明の光を反射する事になった自身のスキンヘッドと化した頭を抱えて絶叫する。

 

「Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo the Hagesale総督」

 

「巫っ山戯んなァァァ⁉︎ 合わせんじゃねぇよォォォォ‼︎」

 

 Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo the Hagesale総督は絶叫した。そして必ずや画期的な育毛剤を開発して見せると密かに誓ったのであった。

 

 

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