「アイツら……片っ端から展示品を盗んでいるわ‼︎」
爆撃が行われた展示室から出た先。美術展の内部の通路では荒らされた形跡が残っていた。道中の展示物も片っ端から強奪しているらしく大半の展示物も被害を受けている様だ。
「……逃げ足の速い連中。単純に追いかけても追い付けない」
その気になれば美術展諸共、融解させて滅ぼすと言う手段はあるが……確実に止めろと言われる為にその手段は使えない。
「此の儘では取り逃してしまうな。屋内と言う都合の上に逃げ遅れた者達もいるやも知れぬ。壁を壊して進む訳にも行くまい」
「うー……面倒臭い連中」
「流石に私達が派手に壊すのはちょっとね」
マイノリティ側の為に余りド派手な行動は避けたい。それに自分達も秘匿された側の存在故に公になるのは避けたい所である。
「…………で、あるな。かと言って衆目の目に余達の本性を顕にするのもまた下策……堕天使共はそうは考えて居らぬ様だ」
カイテンジャーと名乗った堕天使の連中は堂々と破壊行動を行い強奪している。そんな真似をすれば日本神話の怒りを買う可能性が高いのに余りに堂々……つまり堕天使は堂々と日本神話に喧嘩を売る腹積りと言える。
「街中で暴れ回るのも危険ですわ……」
狐花の霊術も静香達の霊術も衆目に晒すのは宜しくない。必ずや後で大事になる、そうなれば街中を出歩く事もままならない。
「……本来、人間社会に居らぬ存在が現実に知られるのは宜しくない影響が出よう。裏幕府が壊滅した機の反抗。悪魔と堕天使は裏で結託しているのやも知れぬ」
『だー、クソ‼︎ この辺りもスッカラカンや‼︎ 見境ないな、このヤロー‼︎』
行先行先、展示室は荒らされている。根刮ぎ奪うつもりなのだろう。コレでは美術展も台無しであろう。
「あ、居ました‼︎ 今、広間に居ます‼︎」
アーシアが逃亡しているカイテンジャーの姿を見つけた。美術展の中央部に位置する内部庭園にカイテンジャーが逃げ込んで居た模様。その足元は紫色に光っている様子が見て取れた。
「ぬ、奴ら……転移魔法陣で逃げるつもりだな? 恐らく悪魔と堕天使が拠点とする冥界か……」
「此処からじゃ追い付かない……‼︎」
「……! 長門様」
「む?」
その時、狐花がある事を思いつき長門にある事を頼んだ。その提案に長門は眉を顰めた。
「……狐花殿。相変わらず無茶な真似を……‼︎ が、余に他の手立ては思いつかぬ。引き受けよう」
長門はその提案を受け自身の艤装をその場で展開する。艦船の付喪神である以上、地上では陸に戦力とならない。が、固定砲台程度の役は担える。
「皆、耳を塞げ‼︎」
その号令の直後、長門は一際大きい主砲を撃ち放つ。当たりさえ出来ずとも転移の妨害を担えれば良い。轟音と共に1発の砲弾が通路上を通過する。その際に放たれる衝撃波が狐花を巻き込んで前方に吹き飛ばされた。
『え、えぇぇ⁉︎ 狐花ァァァァ⁉︎』
狐花は七五三鈴の付喪神故に、体重が物凄く軽い。その軽さ故に踏ん張りが効かず突風で簡単に吹き飛ばされてしまう程に軽く、衝撃波なぞ煽られれば簡単にすっ飛んで行ってしまう。その身体的理由を逆手にとり長門の砲撃の際に発する衝撃で自身も高速で吹き飛んで移動すると言う荒技を躊躇いなく敢行。
「ふははは‼︎ 大量、大量‼︎ コレだけあれば我が野望が成就されるのは容易い‼︎」
「Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo the Hagesale総督閣下も喜ぶ事だろう‼︎ 我らが堕天使側に贔屓している資産家に売り付ける資金に換金するまでが任務だ」
「うむ。転移魔法陣……」
「れ、レッド‼︎ 此方に何か来るぞ‼︎」
「何⁉︎ だが、我らが堕天使謹製の魔法陣の方が速い‼︎ さらばだ、次回も宜しく‼︎」
鮪の寿司ネタを頭に乗せたカイテンレッドが高らかに叫ぶと同時に魔法陣が光り魔法陣の上に立っていたカイテンジャーが光の粒となって消え去った。
転移魔法陣の行き先。それは冥界にある堕天使達の領域。グリゴリ。研究者気質のアザゼルの指向により本部自体が研究所の様な建物となっていた。
「……此処まで来れば、我らの勝利も同然‼︎ ふははは、このグリゴリに辿り着けるモノは1人とて居まい‼︎」
「日本絵画は高く売れる。1枚の絵が1億に化ける事もある」
「コレで我らの悲願である神器兵器。KAITENN EX MK0の製造に着手出来るぞ‼︎」
「んにー(・w・)」
「その暁には世界征服も夢では無い‼︎ 我らがグリゴリの栄光ある未来に続くのだ‼︎」
「……あれ? 何か聞き覚えのない声が聞こえた様な?」
「「「「え?」」」」
カイテンジャー達が口々に勝鬨を上げている時、冷静にカイテンピンクが違和感を口に出していた。
「んにーっ‼︎(/・w・)/」
其処にはボーイズ対戦車ライフルを構えた狐花が其処に居た。そして、その周囲には狐火らしきモノが多数浮かんで居る光景が見えた。
カイテンジャーが転移魔法陣で跳躍する直前、吹き飛んできた狐花が滑り込んで一緒に転移して来たのである。
「な……⁉︎」
「「「……何だと……⁉︎」」」
狐花の存在にカイテンジャー達は漸く気付いた。黒髪に大きめの鈴と彼岸花の髪飾りを付けた幼女……。その幼女が小さな体躯に似つかわしく無い大型銃器を携えその周囲には赫く燃える狐火が燻っている……。
「お、お嬢」
「死ね」
カイテンレッドが口を開いた直後、狐花は軽く跳ねながらボーイズ対戦車ライフルを発砲。同時に周囲に燻っていた鬼火が一斉にカイテンジャー達に襲い掛かる。
「ぐふぉ⁉︎ ひ、ヒーローが……口上を、述べ」
放たれた弾丸がカイテンレッドの胸部に着弾、貫通。そして降り注いだ狐火の群が連鎖的に爆裂し周辺のカイテンジャー諸共、吹き飛ばした。狐花は軽く跳ねて地上から脚を離していた為に爆風の衝撃で後方へと吹き飛び距離を取った。
「ぐわぁぁぁぁぁ⁉︎ ひ、ヒーローが木端悪役の様にィィィィ‼︎⁉︎」
「お、己ェェェ‼︎⁉︎ 小さき悪魔めェェェ‼︎ 我らがグリゴリの秘密基地を破壊する気か⁉︎」
「く、ククク……このグリゴリ謹製のカイテンスーツが無ければ即死だった……‼︎」
「フフフフフ、レッドは我がカイテンジャーの中では最弱……‼︎ 今こそ、我らがカイテンジャーの真の力を見せてやろう‼︎」
狐火の爆襲を受けたレッド以外のカイテンジャーは健在の様だ。そしてレッドはカイテンジャーの中では最弱らしい。
「邪魔」
その直後、カイテンジャー達が一斉に1箇所へ向けて押し出され両腕で堪える様な体勢となる。
「な、何だ⁉︎ 何が起きている⁉︎」
「お、己‼︎ 奇っ怪な術を⁉︎」
「こ、コレ。左右から透明な壁が迫って来ているんじゃ無いのか⁉︎」
その突然の展開にカイテンジャーは動揺している。何せ左右から見えない壁が迫り圧殺しようとしている状態なのだ。少なくともグリゴリのこの部屋にそんな仕掛けは存在していない。
そして、そんな無防備な姿を晒している敵に対して狐花は逃しはしない。
「It requires more courage to suffer than to die.」
その言葉と共にボーイズ対戦車ライフルによる速射。発砲音は4発。それらの弾丸はカイテンジャー達の仮面を貫通し、その頭部の脳髄を頭蓋骨諸共、打ち砕き床にその衝撃で破裂した大脳らしきモノが溢れ出し床に広がった。
「…………」
ゴロリと転がる死骸。カイテンジャーと名乗った堕天使達はモノ言わぬ骸と化した。その様子を見ても狐花は何の感慨も浮かばない。
——……グリゴリ。堕天使共の巣窟。それに長門様は『冥界』には悪魔の拠点がある、と言っていた。
——良し、滅ぼす。
状況を把握した狐花。此処に燼滅燎原の華が咲き誇る事となる。