雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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劫魃

 

 

 

 

 

「何⁉︎ 侵入者は『魔獣創造』の保有者だと⁉︎」

 

「は、はい‼︎ アルマロス殿が部下達を率い辛うじて召喚された骸骨兵を相手に戦闘中です‼︎ どうやら亜種禁手に至っていると思われるそうです‼︎」

 

 アルマロスの指示で部下達がBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo the Hagesale総督に侵入者の情報を伝えていた。

 

——ま、マジかよ。数ある神器。その内、強力な力を持つ神滅具の一角。そして創造系神器の中で最高峰と目される『魔獣創造』……‼︎ 然も亜種禁手……‼︎ 俺の知らない形態に進化したか……‼︎ 研究したいが、侵攻を止めねばままならない‼︎

 

「骸骨兵を召喚か、その侵入者は⁉︎」

 

「姿が見えず、骸骨兵を囮に移動したと‼︎」

 

「総督‼︎ グリゴリ、神滅具の保管庫が炎上を‼︎ 阻止すべく行動した堕天使達は皆、焼かれました‼︎」

 

「何だと⁉︎」

 

——『神器』と『神滅具』は一緒くたに出来ん。故に別々に保管している。神器のみならず其方にも向かったって言うのか⁉︎ くそ、こう言う時に戦争馬鹿のコカビエルが居たらと悔やみ切れんな。それにバラキエルも所用で今、グリゴリに居ない。アルマロスは足止めを食っちまってる……‼︎ 他は幹部とは言え研究者気質、持ち堪えられるか分からん。

 

「……チッ、彼処でひと暴れされるのは敵わん。火薬庫みたいなモノだからな……‼︎ 余計な刺激を与えるのは予測不能の事態になり得る……‼︎」

 

——俺が出るしか無いか。その幼女の姿をした奴の狙いは神滅具か? 奴自身も『魔獣創造』を持っている癖にまだ望むのか? だからと言って此の儘、やられっ放しも皆の士気に関わる。

 

「Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo the Hagesale」

 

「ッ⁉︎ その名で呼ぶんじゃって、ウィキッド⁉︎」

 

「ッ‼︎ う、ウィキッド殿⁉︎」

 

 気付けば狐花襲撃の時にはこの執務室には居なかったウィキッドが壁に凭れ掛かる形で立っていた。その姿を見て報告に来た堕天使も驚いていた。

 

「呆然。随分と梃子摺っている……やはり『祟り神』が相手では分が悪いか」

 

「た、祟り神だと⁉︎」

 

——話で聞いた事がある。日本神話にゃ『祟り神』と渾名される奴が居ると……‼︎ 然も全く話が通じず問答無用で焼き尽くしに来ると聞いている‼︎ まさか、その祟り神だと⁉︎

 

「肯定。どうやら例の戦隊擬きの魔法陣に便乗して到達したらしい」

 

「目的は分かるのか?」

 

「否定。知らん、が……噂通りの行動ならば悪魔の殲滅。その過程で目に付いた堕天使も纏めて燼滅と考えるのが自然」

 

——おいおいおい⁉︎ 完全に『邪魔だから狩っておくか』みたいなノリで俺達、滅亡の危機に瀕しているぞ⁉︎

 

「ほ、報告します、総督‼︎ 神滅具の保管庫が全焼‼︎ 使い物になりません‼︎ それから侵入者の姿が見えなくなりました‼︎」

 

「好き放題暴れてどっか行ったって言うのか⁉︎」

 

——……悪魔大嫌いって話だから、単純に通行した。と考えたい所だ……が、油断は出来ねぇ。

 

「あの手の類は余計なモノに興味を持たぬ。目的以外には目もくれぬ、邪魔はせねば素通り、やもな」

 

「だと良いが……」

 

——……マジで嫌な予感がするんだよな……俺の不安、当たらないでくれよ?

 

 

 しかし、Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo the Hagesale総督の予感は最悪な形で的中してしまう事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 グリゴリを横断する形で進行する狐花。邪魔する堕天使は適当に撃つ焼く穿つ。葬るのは悪魔であって堕天使には興味が無い。単純に邪魔であるから殺すだけであった。そして、グリゴリの外壁を融解させ破壊し建物の外へと出て行く。

 

——時間を取った。

 

 そして、其の儘振り返らずに歩き出して行く。グリゴリの周辺は荒涼とした大地が広がっており冥界には太陽の様な強い光源が無い故に肌寒い世界が広がっている。

 

——……邪魔はさせない。遍く悪魔よ、思い知れ。

 

 狐花は歩きながら口を開き詠唱を始めた。それは狐花にとって『絶望』を想起させる忌まわしき世界を築くモノ。最期、冥界は『悪夢』に染まる。かつて起きた『悲劇』の再演。止められない止まらない。

 

「天に煌々(こうこう)、地に赫々(かくかく)。天上穢界、天下欲界、魂嘆驟雨、旱牢砂丘。其は全ての屍の褥よ、嘆いて沈め。此岸彼岸の橋は灼け申し嗤うは(かわ)きし屍よ。熱が全てを奪って去く、死が全てを融かして逝く、燎原焦土が我らが故郷(ふるさと)、遍く命よ()を目して(こうべ)を降ろせ。横たわる骸にて、燥きし大地に踏み場は無く、明ける空に歎く声は届かじ。見渡す限りは果て無き絶望の界、闃寂(げきせき)の中に沈む寂寥(せきりょう)よ。吾は旱の巫。生者か死者なるか。思想は虚し、祈祷は夢無し、万事天命も虚しき願い。神は人を見捨て給うた、其は頽廃の界よ。遍く命を燥きし世へと誘い、受け入れよ‼︎」

 

 狐花はその詠唱を歩きながら口遊み手にしたボーイズ対戦車ライフルを天へと掲げ轟音と共に発砲。放たれた赫い弾丸は紫色の天へ天へと飛翔して行く。

 

——何処まで耐えられる? この悪夢に、何処まで抗える?悪魔共。

 

 そして、その赫い弾丸が視認出来なくなった時、紫色の空が一瞬にして青空へと変わり果て薄暗かった冥界が蒼穹の晴天の如く明るい世界へと変貌を遂げた。

 

「……遍く命よ。死して屍へ、砂へと還るべし」

 

 つい先程まで薄暗い世界が当然の冥界が、太陽が昇る日中の晴天の如き天気へと変貌を遂げた。狐花の頭上遥か上空に直視は出来ぬ巨大な光を放つ太陽に近しい恒星が生まれていた。

 

 そして、異変は直様に現れる。大地の水分が急速に失われて『燥いて逝く』のだ。そしてその異変が大きく現れたのが狐花が多少暴れたグリゴリ本部。その建物が徐々に赤熱化し煙を上げながら融解を始めその原型を留められなくなって行く。

 

 『劫魃』……。狐花を知る者からすればその光景をそう名付けるであろう。大いなる日照りに晒された大地は、遍く燥きその全てが土砂へと変わり果て滅び去る……太陽の光が苦手な悪魔は正に絶望と言う他ない世界が此処、冥界に生まれたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

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