雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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恐怖と関心は紙一重

 

 

 そして、翌日、午前5時頃。狐花よりも早く動き出した五七。狐花の枕元には1通の文が置かれていた。

 

『あー、何や、コレ……えー、何何?』

 

『指定した位置に建立したぞ。既に人の子らの為来りの手筈は整えたから、気兼ねる理由は不要だ』

 

『………』

 

 五七は嫌な予感しかしなかった。一体、どの様な建物が建っているのか予想したくない。五七は未だに御眠な狐花を起こした後、指定された場所に赴く事にした。

 

「んに〜……眠い……」

 

『朝方、バタバタすんのは目に見えて分かんやから、早めに行っとかなあかん。二度寝してもええし、後で起こしたるわ』

 

 荷物と言っても然程、持ち歩くモノは無い。精々、制服と対戦車ライフル位である。伊弉諾尊様が書き記した場所はあろう事か、昨日に狐花が融かし尽くした廃教会があった場所である。廃教会の敷地は教会故に相応に広い上に丁度良かったのやも知れない。

 

『此処、やな。見た所は普通に見えるんやけど……』

 

 昨日まで廃教会が有った場所には見事な日本屋敷が堂々とした佇まいで建てられていた。門自体も堂々としたモノであり、昨日までの雰囲気が180度打って変わっている。

 五七としては此処まではまだ、許容範囲内である。あの神様が一般的な一軒家を建てるのに一晩は必要無い。大方『半刻後に来るが良い』と言う筈だからだ。

 

「眠い〜……」

 

『外観はまだ、マシやな……心無しか清浄な気が滞留しとる……居るだけで禊がれるなぁ。つーか、龍穴のど真ん中に建てよったから、龍脈の流れを浄化する腹つもりもあんのやのな』

 

 一先ず門を潜る。門を潜った先は庭園があり大きな池の上に朱色の木造足場が通路の様に架けられている。と言うか庭園の半分以上は池であり、その奥に屋敷が見えた。

 

『……まだ、普通やな。まだ、何かあるんちゃうか?』

 

「ん〜……」

 

『あー……分かったから、此処で寝んな‼︎ 風邪引くっちゅうのに‼︎』

 

 そろそろ狐花の眠気が限界な為に五七は襟首を掴んで持ち上げて運ぶ。色々な意味で苦労するのである。だって狐だもの。

 

『取り敢えず、1番近くの適当な部屋で寝かすとするかいな。畳張りやったら何処でもええし、こんだけ広いんやったら絶対あるやろ』

 

 屋敷の玄関口。玄関口ですら大型老舗旅館並みの広さであり、人1人が住む家にしては余りにも大き過ぎる。

 

『……加減せいと、言うた筈なんやけどね。伊弉諾尊様ァ……‼︎』

 

 この時点で暗雲が立ち始める。この程度で驚いて居てはやってられないのだが、今は堪える。そして、近くの畳張りの部屋(凄まじい広さであり、大宴会場かと思うレベルの広さ)に狐花を寝かせた。多分、3時間は起きないだろう。

 

『……今の内に、家の中見て回っとこか。あの神サン……ホンマに加減と言う言葉を知らんから……』

 

 そう言う訳で五七は1匹で狐花のモノとなる屋敷を散策する。狐花は狐花で能天気な上に天然な為に特に気にしたりしないし、自分がしっかりせねばならないからだ。

 

『……なんや、あの階段』

 

 そして玄関口から見て真正面の板張り廊下(間に細長い石砂利が敷き詰められている)、2本分の先にはコレまた横広型の階段が地下へ向けて続いていた。本当に嫌な予感がする。

 

『あかん、コレはあかん気がするわ。何かとスゲー、嫌な予感がする。加減無しの極地な気がするわい』

 

 だが、確認せねば不安は拭えない。意を決した五七は階段の下へと向かった。地上からの続く降り階段は途中から水平の空廊下になり城塞の最上階に繋がって居る様である。

 

『此処まではまだ、分かる光景やな……』

 

 降りた先にも広々とした空間が広がって居る。明るい暖色系統の照明が照らされ床には朱色の絨毯に木造を基調としたフローリングが敷かれていた。ご丁寧に案内図まで完備されて居た。上から見た平面図が描かれており、少なくとも八階以上の構造を持っている様である。気になるのは細い廊下を跨いでの構造が見受けられる事であった。

 

『なんか、嫌な予感がしてくんな、おい……取り敢えず1番広そうな最下層に行こか……』

 

 案内図を見る限り地下1階が最も狭い(ソレでも十分広いが)が最下層である地下8階はコレでもか言う程の広さがあった。五七は嫌な予感がしつつも最下層に降りる。降りる階段だけでも非常に長く、階層自体の高さも一般的な建築物よりも遥かに高く、もはや寺院レベル。

 

『此処が、最下層やな。何処の部屋1つ1つが広いわ……全部宴会場かも思うやんけ……』

 

 最下層には庭園がある様だ。地下空間故に枯山水を基本としているらしく石砂利が敷き詰められていた。五七は半ば確信を持って庭園へと出て、周りを見渡すと——。

 

 

 

 

『ホンマ、加減と言う言葉を知らんな‼︎ あの神サン‼︎』

 

 

 

 

 最下層の庭園から見た光景。それは地下を丸ごと全て取り払い、其処に巨大な城を地上と同じ形で建てて居たのである。然も、向き合う形でもう一つ建てていた。その城と城の間には空中庭園の様に吹き抜けの間に広間が設けられている。故に一部の階層に違和感を覚えた理由であった。

 他にも城や通路には水路が設けられており、段差のある場所では小型の滝の様に下方に流れており、一部には水車が備わっている風情のある光景……。たった1人の少女が住む家にしては凄まじいレベルの規模の屋敷であった。

 

『……よくよく見たら、最下層の庭園付近の部屋は何となく地上のと同じ様に玄関口に見えるわな。と言うか庭園は庭園やけど、通路っぽいな』

 

 更に散策すると少し離れた場所には地下水脈の水面が見えた。桟橋が広い感覚で設けられており、この地下水脈を通っての交通も考慮されている。こんな地下水脈の概念を考慮するその相手は明らかに限られて居る。

 

『……ご丁寧に東は『裏幕府方面』と西には『裏京都方面』って言う看板が立っとんな……いや、マジかいな。此処までやるか』

 

 寧ろコレだけの規模(屋敷+城2つ+地下工事+庭園+水道工事+他諸々)をたった数時間程度で完成させてしまっている。

 

『…………狐花の場合、一部屋だけで充分とか吐かすやろうな。いいや、絶対に言うわ……どう考えてもそうとしか思えへんわい』

 

 

 

 





 因みにこの家のネタは、全部、明晰夢で見た光景。

・地上の屋敷の庭園(去年の秋頃に見た、和風の学園の庭園の光景)

・地下最上階(8月頃に見た、木造内装の大学病院のフロアロビー)

・地下最下層から見た光景(去年の春頃に見た、金色の楼閣)

 我ながら良く覚えている……他にも全部、エメラルドカラーの西洋風城塞やら、青と白の近未来的病院、病院と商店街の内装がごちゃ混ぜになった建物の風景も未だに覚えてる……。
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