雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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 さて、唐突ですが麻婆豆腐の用意は宜しいですか?


悪夢I

 

 

 

 

 

 

 

 燥く。何もかもが燥いて逝く。狐花が放った『劫魃』の影響は瞬く間にゆっくりとそして着実に冥界を覆う。それは直接的であって間接的に死に至らしめる。

 

 発生地点直下のグリゴリの建物はその急上昇した温度に耐え切れず数分と保たずに融解し泥土と化してその姿を消した。荒涼なる大地は沸騰するかの様に融解し流動する溶岩と化し黒煙を吹いている。そして旱と言うレベルでは無い悍ましき『熱』が広まっている。

 その地点を中心とし『燥き』と『熱』の影響は放射状に広がって行く。その熱波はゆっくりではあるがゆっくりであるが故に恐怖であった。狐花の『簡単には殺さない』と言う憎悪が籠っているかの様に……。

 

 

 

「……焼き尽くされた後に燥きが来る。悪夢を愉しめ……『死の王』よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冥界。『劫魃』の地点から約15km付近の辺境伯領。その地点では既に影響が現れて居た。元々、この付近では森林と言った自然環境が形成されており紅茶を産業として地方都市として発展。また毎年、魔王へ産業である高級紅茶の茶葉の献上を行ってきた。

 だが、今となっては見るも無惨な光景が広がっている。森林は自然発火して炎上し続ける大火災に見舞われ紅茶畑は炎上、一瞬で炭と化した。湖も数秒と保たずに蒸発して干上がり、罅割れ乾燥した大地と化す。作物の土壌の養分を瞬く間に破壊し何の作物も育つことの無い死の大地へと変える。

 

 

「あ、アツイ……アヅィィィィィィィィ‼︎‼︎」

 

 その熱波は地方都市にも襲い来る。建物はその熱量に耐え切れず炎上して火災し、または融解し始めその赤熱化して崩れ落ちた瓦礫の下敷きになった者も居る。街中の悪魔達は皆、踠き苦しんでいる。急上昇した気温。元々、冥界は冷涼な気候であり真夏日と言う気温とは無縁の世界。しかし、今の気温は非常識レベルの温度と化しており如何に悪魔と雖も耐えられるレベルでは無い。

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛ッ‼︎⁉︎ ヤケルゥゥゥゥ‼︎⁉︎ か、カラダがァァァ‼︎⁉︎ ヤゲッ‼︎」

 

 熱量により融解し泥土の如き大地の上で悪魔が1人、また1人と自然に発火して沼田撃ち回る。身体が頑丈であってもこの熱量の苦しみが長引くだけであった。気温、大地、そして自分自身の熱さによる苦しみ。身体に亀裂が走り噴出し流れ出す血液は熱量で水分が奪われ蒸発し霧散。汗すらも蒸発し体温は下がらない。

 

「アガが……お、かシイ。どう、して……意識……とば、死なない……ィィ、い‼︎」

 

 身体が黒焦げ眼球が灼け潰れて鼻が壊れ耳が聞こえなくなって尚、哭き叫ぶも苦しみからは解放されない。死ねずに苦しみ続ける。

 

「アツイよ、イタイよ……‼︎」

 

「アア、コロ……して、コロ……し、て」

 

「み、ミズ……あぁ、アア……シニ、しな」

 

「助け、て……ダレ、か……おね、がイ……イタイィィィィ‼︎⁉︎」

 

 地方都市は何処を見渡しても阿鼻叫喚の光景が広がっている。灼けたが故に黒焦げて尚も命が繋がっている。故に苦しむ。

 死を乞い願う声、ドロドロとなった地面に沈んで悲鳴を上げる声、助けを求めて融けた両手と両足を振り乱す声。

 

「イタイ、も、ウ、イヤ……シニたく、ナイ、コロ……」

 

「アガ、クルシ……ひぎ、キ……」

 

「……ダレ、で、こ、ロシ……タス、……タク、な」

 

 黒焦げた身体から視力も聴力も失って譫言の様に下細い声で乞い願う声。それは誰にも届かない。何故ならこの地方都市に居る全ての悪魔が同等の状態であり誰1人として誰かを助けられる状態では無いからだ。熱量の後に灼熱の風が吹き荒れ罅割れた身体を刺激し引き剥がす。

 

「「「ア゛ァ゛ぁ゛ァ゛ァ゛ぁ゛ッ゛ッっッ゛‼︎⁉︎‼︎」」」

 

「イダイ‼︎ イダィィィィ‼︎⁉︎」

 

「ワレ、イダイ‼︎ もう、あがぁぁぁァァァァ‼︎⁉︎」

 

「ゴメン、なさ、ゴメン、ユル、シテ……ダズ、て……ぁッ……ッ‼︎⁉︎」

 

 悲鳴。悲鳴。嗚咽。嗚咽。叫喚。

 街中は絶望に満たされた。ボロボロになった身体に突き刺す風の圧力は痛みに転じる。

 

「……クルシイヨ、アツいよ……」

 

「シチナクナイ、シニタクナイ」

 

 誰も助けない。誰も助けられない。ただただ悪夢が広がっている。たった1人が望んだ憎悪による悪夢が広がっている。

 熱波が襲ってから10分後、街中は依然として燃え続けている。大地の水分は燥き切り融解した土地も燥いて歪んだ形でボロボロの状態となっていた。そして急上昇した気温は一向に下がらず燥いた大気が覆い尽くす。

 

「……アツイ、アツイ」

 

「ミズ……イタイ、だれ、か」

 

「……イタイ、イタイ……しに、タイ」

 

「くる、シイ……ダレデも、良い……おわ、らせ」

 

 熱さの次は『暑さ』。変貌を遂げた冥界の空は青々とした青空が広がっている。雲の一つも見当たらない晴れっぷり。そして水の1滴も発生せず燥き切った環境。灼けに灼けて黒焦げの身体は最後の水分の1滴さえも奪い去りカラカラに干涸びて、やがては割れ砕ける。

 

 

 

 

 そして、また何処かで悲鳴が響いた。

 

 

 

 

 

 

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