蒼い天。冥界と言う環境では基本的に紫色の大空が広がっているのだが、此処まで快晴と言う他に無い青空が広がるのは特異的な光景と言えた。
「ぶ、部長。冥界ってのはこんな風に突然明るくなるモノなんですか?」
——悪魔となって日が浅いし冥界にも数える程しか来ていないから何とも言えないけどさ……。
「いいえ、冥界で人間界の様な昼間の空が広がる光景なんて先ずあり得ないわ」
「そうだな。俺も長年生きて来たがこんな空は初めて見た。何か悪い事の前触れじゃ無きゃ良いんだが……使い魔の森の魔物達も騒がしくなって来たぜ……‼︎」
リアスとザトゥージは冥界でこの様な空が広がり昼間の様に明るい光景は先ずあり得ないと断言する。
「それに、ちょっと暑くなって来ました……‼︎」
「急に温度が上がるなんてね、異常気象って奴かな。明るくなったから温度が上がったのかな」
——そう言えば急に暑くなって来た気がする。こんな風に気温が上がるなんて事も無いのだと思うけど……。
「朱乃。上空から何が起こっているのか確認して頂戴‼︎」
「は〜い」
リアスの指示で朱乃は悪魔の羽を広げて使い魔の森の上空へと飛び上がる。そして周囲を見渡した直後、血相が悪い方向へと変わる。
「朱乃‼︎ 何が見えたの?」
「部長……大変な事が起きていますわ……‼︎」
朱乃が見た光景、それは遠い場所で夥しい迄の火災に溢れている光景。この地域は森林地帯が広がっているが故に緑が多い。山も有れば森もあるし湖もある。その全てが業火に包まれている光景であった。そして青空になった原因、冥界の空に『太陽』が浮かんでいる光景であった。
「此処より東……見渡す限り業火に包まれていますわ‼︎ 山や森も全て炎上しています‼︎」
地上に降り立った朱乃がリアスにそう報告する。業火の波が東方面全てを覆い尽くしている。巻き込まれれば悪魔と雖も無事では済まないのは容易に分かる。
「何ですって⁉︎」
「山火事と言う規模じゃありませんわ……それこそ冥界自体を燃やす勢いの様です……‼︎」
——おいおい、只事じゃ無くなって来たぞ‼︎
「部長……汗が止まりません。どんどん、温度が上がって来ています‼︎」
この気温の異常振り、その内容はリアスは知っていた。地獄の鬼に連れ去られたイッセーを取り戻す為に地獄に突入した時、異常な迄の熱さに晒された事がある。故にこれ以上、温度が上がるのは危険だと本能で理解した。
「一体何が起きているんだ……⁉︎」
「お嬢様、此処に居られましたか‼︎」
その時、リアス達の近くに転移魔法陣が現れ其処からサーゼクス・ルシファーの女王であるグレイフィアが現れる。表情からして緊急事態である事が分かる。
「グレイフィア⁉︎ 一体、何が起こっているの……⁉︎」
「お嬢様。心して聞いてください。つい先程判明しましたが冥界全体で気温が異常に上昇。そして熱波の大波が発生しているとの事です。その熱波が達した場所は凡ゆるモノが焼き尽くされています。悪魔も大地も建物も自然も須く灰燼に帰しています」
「凡ゆるモノが焼き尽くされる……⁉︎」
「はい。辺境地域の地方都市も熱波に覆われた直後、街はドロドロに融けて行き市民達は黒焦げになって尚も死ねずの状態との事……。熱波は現在も放射状に広がっているとされています。この場所も危険ですので一刻も早く避難を‼︎」
「グレイフィア……冥界全体に広がっている。と言う事は……‼︎」
「最悪の場合……魔王様が居られる首都リリスも旦那様、奥様も居られるグレモリー領も『熱波』に覆われる可能性があります。現在、セラフォルー様を始めとした氷魔法を得意とする方々が気温の上昇を食い止める為、その他の魔王様の眷属達が熱波を食い止めようと防御魔法陣を形成して事態の収束に当たっています」
——マジでヤバい状態になっているじゃねぇか⁉︎ ソレこそ冥界存亡の危機って奴だよ⁉︎
「……私に出来る事は」
「ありません。お嬢様の力ではこの天災級の事態を収束出来ません」
リアスが自分もと言い出すがグレイフィアはピシャリと『出来る事は無い』と告げた。そもそも魔王の眷属が動員されている状態で青二才も良い所のリアス達が乱入した所で二次被害を招き剰え邪魔な行為を引き起こす事になる。
タダでさえ過去の日本神話の諍いやライザーの一件で自身の評価を下げた。名誉を挽回しようにもその機会は中々、訪れない。
「…………」
サーゼクスの妻でありリアスにとっても義姉に当たるグレイフィアにそうハッキリ言われてリアスは理解はするが納得は出来なかった。
「お嬢様が弱い訳ではありません。ただ、今回の件は事情が異なるのです。お嬢様だけでは無く他の貴族階級の悪魔も冥界外へ避難を進めています。サーゼクス様も『最悪の事態と言うのもある。此処で悪魔と言う種を絶やす訳には行かない』と仰せです」
他の悪魔も転移魔法陣で避難し始めているらしい。
「……マズいですわ。この森の付近も燃え始めています‼︎」
使い魔の森にも熱波の先端部が到達した模様で、木々の隙間から明るい炎が見え始める。此の儘、留まれば数分後には黒焦げの蠕く死体が数匹分出来上がるだろう。
「分かったわ……私達も避難する。皆、転移魔法陣で駒王町へ帰還するわ‼︎ ザトゥージさんは⁉︎」
「ザトゥージ様は私がお連れしますのでご心配無く。お嬢様、お早く‼︎」
転移魔法陣がリアス達の足元に広がる。そして、速やかにリアスは眷属達を連れて転移して行った。
「……さぁ、貴方も避難させます」
「それは有り難いけど、あのレーキュって嬢ちゃんは⁉︎」
「レーキュ様は既にご帰還済みです。さあ、行きますよ」
グレイフィアが展開した転移魔法陣で避難した直後、全てを灰燼に帰す熱波が通り過ぎて遍く生命が根絶やしにされる。使い魔の森の魔物達は熱波により自然発火して悶えながら炎上。
ドラゴン種は流石に生命としては最上位故にその頑強な鱗により直接なる炎上に耐えられた。だが、劫熱には耐える事が出来てもその後に来る『燥き』に耐えられるかは別問題であった。
「んにー、コレ……何だろう?」
その頃、狐花は彷徨った挙句にある場所に辿り着いた。グレモリー領の一角にある次元駅。冥界グレモリー領と顕界の駒王町を繋ぐモノレールの駅。其処にあるモノレールを発見した。
——うー、電車?何でこんな所にあるんだろ〜?
「……電車、電車」
そして普通に侵入。其の儘、モノレールの先頭の運転席に到着。
「動くのかな?」
運転席のレバーを引いてみた。その時、モノレールが駆動し前方へ動き始める。
「んにー、動いたー」
狐花は運転免許なんて持っていない。そして、何処の部分がどうなっているのかも全く理解出来ない。つまり、その状態でやたらめたらに弄り回して何が起こるのかと言うと……。
——速い速い‼︎ コレ、何処に着くんだろ?
単純な話。そのモノレール車輌は暴走列車と化して爆走すると言う事であった。
暴走列車はこの後、どうなる?
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その辺に居た匙 元士郎を轢き飛ばす
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潜伏するコカビエルの頭を禿げさせる
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落ちていたドライグ(籠手)を跳ね飛ばす