雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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七章
扉は投げるモノではありません


 

 

 旧校舎火災事件から1週間。旧校舎が全焼すると言う事件は爆発物と言う火元要因から臨時の休校措置が取られた。原因としては使われて居ない理科室のアルコールが引火、爆発したとして処理されたと言う。

 

「えー、旧校舎があった場所は現在も危険だから全校生徒立ち入り禁止だ。建物自体、老朽化が進んでいる旧校舎だから再建する予定は無い」

 

 駒王学園、1学年の教室。狐花のクラスの担任である紫先生がチュッパチャプス(『恐怖のハンバーガーミント味』)を咥え何時もの調子で朝のホームルームで連絡事項を伝えている。

 

——C4爆弾を使った事に気付いて居ないか、或いは隠蔽したかの2択かな。

 

 旧校舎を爆破したのは言うまでもなく狐花。旧校舎に悪魔『グレモリー』が巣食っているのは周知の事実故に頃合いを見て奴隷達共々、爆殺する予定だった。が、駒王学園の球技大会と言う不確定要素が絡んでいた為に失敗に終わった。が、悪魔1匹を瀕死に追い込んだのが唯一の救いか。

 

「それと駒王学園球技大会に関してだが」

 

 

『そりゃ無いっスよ、先生ッ⁉︎ 球技大会が中止だなんて⁉︎』

 

『先生、アンタはそれでも男ですか⁉︎ 美少女お姉様の生着替えが覗けないなんてアンマリな措置だと思わないんですかッ⁉︎』

 

『そうだそうだ‼︎ タダでさえ鬼教師の所為で更衣室が最上階にされて覗けないし、そもそも覗く機会が激減しているのに、数少ない機会を奪うだなんて‼︎』

 

 

 上の階の教室からそんな声が聞こえて来る。声からして誰なのかが良く分かる。紫先生も顳顬に手を当てながら苦虫を噛み潰したような顔を見せる。

 

「あの、莫迦の三乗共めが……ッ‼︎ 夏期講習、参加決定だな……‼︎」

 

 ドスの効いた声音で死刑宣告をする紫先生。夏期講習と言えば夏休みの期間の特別講習。どうやら前回の校外合宿では物足りなかった様である。

 

 

『男の浪漫の侵害は止めるべきだと思うんですよ‼︎ 俺達にエロを取り除いたら何が残るんですかッ⁉︎』

 

『そうだそうだ‼︎ 男には保健体育と言う知的好奇心を満たす義務があるんですよ‼︎ つまり健全なる行為です‼︎』

 

『先生なら』

 

 

「五月ッ蝿いわッ‼︎ 塵共ッ‼︎」

 

 我慢の限界となった紫先生は教室のを掴み剥がして其の儘、天井へと投げ付ける。風を斬る様な音と共に減り込む様な音が同時に響き天井へ深々と突き刺さる。見る限り扉の半分以上が上の階に突き出している様に見える。その光景と同時に沈黙が訪れた。

 

——あ、突き刺さった。

 

「先生、扉は投げる物じゃないと思います」

 

「……そうだな。以後、気をつけよう。まぁ、そんな訳で球技大会は中止となった。で、次の連絡事項だがプリントを配るからソレを見て説明する」

 

 天井に扉が突き刺さったまま紫先生は話を進める。前の席の生徒からプリントが配られ全員に渡り切った事を見計らってから口を開く。

 

——……『全校校外合宿』?

 

 プリントにはそう題目が書かれていた。

 

「あー、来月の頭辺りに東京の方で2泊3日の」

 

 

『いやっほぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎‼︎ 合宿だ、合宿‼︎ 寺のむさ苦しい地獄とは大違いの女子アリの合宿だァァァァ‼︎』

 

『うぉぉぉぉぉ‼︎‼︎ 合宿、旅館、覗き日和だァァァァ‼︎』

 

『天は、俺達を見捨て』

 

 

「魔縁に堕ちろ。塵がッ‼︎」

 

 青筋を浮かべた紫先生は本日2度目の教室の扉をぶん投げ天井に豪快に突き刺さった。

 

「「「…………」」」

 

「の合宿になる。まぁ、勉学とかそう言うのは殆ど無くての遊覧目的の修学旅行だな。何でもロボだか知らんがその博覧会の日程だそうだ」

 

——……あの教師が何とも言えない様子。本人も予期せぬ内容なのかも知れない。

 

「急に決まったとか、面倒な真似しやがって全く。他にも理事長のヤローも仕事しねぇ癖に不信任決議を受け取ろうとしねぇし、マジで邪魔何だよ、クソ理事長。まぁ、急な話ではあるからな……個人的理由の不都合が有れば不参加の意を提出するように。細かい事は配ったプリントを見る様にな。分からない点は俺か明日風先生に聞く様に」

 

 前半、愚痴。後半は真面目に説明する。

 

「先生、あの変態3人組はどうするのですか?」

 

「参加する場合は、カプセルホテルに押し込む措置を取る。100%、風呂の覗きをするだろうからな。或いは強歩をさせておく」

 

 因みに紫先生はその後、事の次第(扉を投げた件)を聞いた明日風先生から『紫先生、減給です』と無慈悲な宣告を喰らい絶叫を上げたそうな。

 

 

 

 

「……東京都内でのロボットの博覧会見学、ね」

 

「はい。何やら急に日程が決まったそうです」

 

 放課後、美術部であるアイラ達は体育館の舞台裏に居た。何時もの演劇部の助っ人の様な形である。アイラとアーシアが朝のホームルームで聞いた『修学旅行』の件に着いて話をしている。

 

「秋辺り京都に行くと言うのに、何を考えているのかしら?」

 

——そもそもロボットの博覧会って何?態々、そんな理由で予定組む程なのかしら……?

 

「さぁ……? 私にも分かりません」

 

『私が調べた限り。どうにも先方が費用を全額負担する様ですよ?』

 

「何それ……? そんな真似する必要があるのかしら……?」

 

——何か、嫌な予感がするわよね。駒王学園は私立校……と言っても数多くある私立校の1つだからピンポイントで態々、招致する理由があるのかしら?

 

「アイラさん?」

 

「……何か不穏な気がするわ。全学年って事にも何か引っ掛かるのよね……」

 

——東京。ロボット……。まさか、と思いたい。一応、自由参加みたいな形にはなっては居るけれどね。

 

 

 

「んにー」

 

「うんうん、サイズもピッタリで良いわね〜」

 

 そして狐花は最早、当然と言わんばかりに演劇部の面々により着せ替え人形にされていた。今回はと言うと舞踏着を模した鎧に近い。かと言って背中部分は素肌が丸出しと言うかなり極端な構造。そして劇用の模造の剣を持っている。一言で言えば姫騎士であった。最も本人は剣の腕など下手もヘタクソではあるが。

 

 アイラの一抹の不安は他所に時間は過ぎて行く……。

 

 

 

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