雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

120 / 182
物憂う悪魔

 

 

 

「はぁ……」

 

 放課後、生徒会室。その生徒会長の席に座るソーナ・シトリーは深い溜息を吐いた。この部屋の空気はかなり重たい。

 

「……此処もかなり広くなってしまったわね。ソーナ」

 

「ええ、冥界の方も酷い有様の様ですね、リアス」

 

 ソーナ達、生徒会の面々以外にもリアス達オカルト研究部の面々も此処に居た。旧校舎が爆破され焼け落ちて学園として旧校舎故に再建の予定は無い為、リアス達は新たな部室を探していた。しかし、リアス達は悪魔であり夜間に悪魔の仕事をする為、居座れる場所が限られる。

 本校舎内だと1番夜遅くまで居る紫先生に見つかりかねない為、本校舎内に部室を作る事が出来ず仕方なくソーナの生徒会室に暫く滞在する事となった。言うなれば生徒会室しか悪魔の領域が無くなって居るのが現状であった。

 

「ええ、1週間程前にね。お兄様やグレイフィアから無事の知らせは来たけれど、冥界自体、非常に大きな損害を受けたそうよ」

 

「私もお姉様から連絡は頂きました。建物自体は何とでもなりますが……それ以外は悲惨の一言、と」

 

 冥界で起きた『熱波』による惨劇。それは10,000単位の死傷者を出す大惨事。建物や大地、山は融解し多数の悪魔が死に追いやられた。1週間が経過した今、元凶であった冥界の空に浮かぶ『太陽』は消え去ったがその傷跡は未だに冥界に残り続けている。今、四大魔王を筆頭に復興が進められている。

 何処の貴族悪魔の家系も莫大な支出が予想されると言う……そして何よりタダでさえ悪魔の存続が危ぶまれている最中、多数の転生悪魔が死亡した。悪魔政府にとっても由々しき事態であると言う。

 

「……残念ながら私達が出来る事はありません。戻った所で、足手纏いです」

 

「ええ、誠に遺憾ながらその通りね。変に動いてお兄様や他の魔王様達を困らせる訳にも行かないわ」

 

 リアスもソーナも今、冥界に戻っても役立てる事は無い。リアスはグレイフィアから『出来る事は無い』と言われた。ソーナにも、直面する問題があった。

 

「冥界の件は、お兄様達に任せて……。ソーナ、大丈夫なの?」

 

「全く以って大丈夫ではありませんね……」

 

 話題を変えたリアス。ソーナも思わず溜息を吐いた。ソーナの問題、それは自身の眷属達の事であった。今年に入りソーナの眷属が立て続けに死亡が相次いだ。此間に至ってはソーナの腹心とも言える『女王』真羅 椿姫が高来 静香により討ち取られた。

 結果、ソーナの眷属は元士郎ともう1人のたった2人だけと言う状態だった。

 

「こうも立て続けに眷属を失うとなれば、評価にも響いて来ますね……夏休みの帰省時には若手悪魔の会合があります。現在の冥界の状況であっても行われるでしょうし、その時に眷属が2人だけだと……それは問題になるでしょう」

 

「となると、会長。眷属を増やすのですか?」

 

「現段階では非常に難しいでしょう。理由はこの場に居るリアス達にも分かっているでしょう?」

 

 リアス達の脳裏に浮かんだのは『皓咲 狐花』の存在であった。『祟り神』とも呼ばれる日本神話に属する狂気の塊の様な幼女。悪魔を見れば問答無用に襲い掛かり滅ぼす迄止まらない破壊者。論理、常識、体裁、対話、数多くの手段が通じない相手であり問答無用、不倶戴天と形容詞が似合うと言って良い。

 

「ええ、激しい敵意を見せて居るのはウンザリする程、知っているわ。彼女の活動圏内で新たに眷属を増やすのは危険……ね」

 

「成り立てとは言え、問答無用に葬り去るでしょう。元人間に対して容赦も見られませんわ」

 

「……対話其の物が成立しない以上、認知された途端に殺し合いに発展します。これ以上、学園内での刃傷沙汰は避けたい所です。何故か認識阻害の結界が通じない紫先生に勘付かれるリスクが高くなってきます」

 

 ソーナも2度に渡る交渉は眷属の死亡と言う代償と共に失敗に終わって居る。場所が人気の少ない部活棟であるのが幸いだが、これ以上派手な惨劇を引き起こすと愈愈、バレかねない。

 

「それ以前に何故、彼女が其処までして悪魔を憎んでいるのか、その理由が分かれば交渉の糸口は掴めるのですが……」

 

「出来たら苦労しないでしょう……」

 

「朱乃さん‼︎ 俺も出来たら女の子とは仲良くしたいです‼︎」

 

 狐花の能力は周囲に甚大な被害を齎す事はこの場にいる者達には周知の事実。それに加えて周りのアイラ達も手練れだと思われる。

 真正面から打つかるのは今の自分達では非常に危険であった。ソーナも済し崩しに激突し椿姫を失う惨敗に終わって居る。リアス達も初めて邂逅した時、横槍が無ければ大損害を被っていた可能性が高い。

 

「……貴方達の意見も最もです。しかし、相手は日本神話の者であり悪魔社会との間に緊張が張り詰めて居る事は確かです」

 

 その言葉にリアスは思う所がある。『リアスの領土を放棄』に追い込まれたからである。その為、現在の駒王町はリアスの領土では無くなっている。無論、何れは奪還したいと考えて居るがその場合、日本神話と事を構える羽目になるだろう。

 修行の件では1人の少女剣士に惨敗を期し、地獄での一件では、見逃される様な形で逃げる羽目になった。

 

「……それと離反組の悪魔達の動向も気掛かりですわ。全くの情報が入って来ませんし……どんな状況かも分かりませんわ」

 

 気掛かりは他にもある。日本神話の領域内にて冥界からの離反組の悪魔達。以前、リアス達に接触を図って来たきり、音沙汰が無い。彼らも狐花の存在を認識して表立って行動は起こせない為に情報が無い。

 

「貴方達は接触したのですか?」

 

「ええ。離反組の筆頭格であるアンドラス家の悪魔。リィティア・アンドラスと彼に臣従していると思わしきアスモデウス家の者達と」

 

「会長‼︎」

 

 その時、ソーナの眷属が張り詰めた顔で生徒会室へと入ってくる。

 

「どうしたのですか?そんなに慌てて」

 

「そ、それが……きょ、教会の人間が交渉を行いたい、と……‼︎」

 

 その言葉にソーナは眼鏡を掛け直した。教会、つまり天使陣営の者である事は容易に想像出来る。嫌な予感しかしない。

 

「交渉、ですか……」

 

「はい。交渉と言う事で危害は一切加えないと神に誓って、だそうです」

 

「…………分かりました。案内して来てください。リアス、席を外しますか?」

 

 この場合、ソーナに交渉を望んでいる様に聞こえる。

 

「いいえ、解任されたと言えども駒王町は私の縄張りよ。住んでいる町だもの、除け者なんて許さないわ」

 

「分かりました。では、相手がどう出てくるか、分かりませんが……一先ず、話を聞いてみましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 




 何気に漸く聖剣絡みに突入……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。