「「「……」」」
——さて、どう出ましょうか。何が出て来るか見当も付きませんが……。
放課後の生徒会室。その場に招かれざる者達が訪れていた。フード付きの白い祭服の衣を身に纏い、ロザリオを首から下げた2人の少女。生徒会室の主、ソーナは生徒会室のソファに座り、その隣にリアスを、その後ろに元士郎を控えさせる形で相対するソファに座る2人組の少女と向き合う。
相手は聖職者、即ち教会、敵対勢力する天使陣営の勢力である事は分かりきっている。
「2週間程前、正教会、プロテスタント、カトリックの3箇所にて管理、保管されていた聖剣エクスカリバーが強奪されました」
「ッ‼︎」
「エクスカリバー?」
「リアス。眷属の教育は怠るとは何事ですか? 既に1ヶ月以上は経過していると言うのに、この為体では先が思いやられますよ」
その言葉にリアス眷属の声が漏れた。祐斗とイッセーの2人。その反応にソーナは眉を顰めてリアスに咎めの言葉を向ける。
「……ッ。イッセー、祐斗。静かにしなさい」
「進めて良いか?」
「ええ。構いません、エクスカリバーと言うと過去の大戦で折れた、と」
「はい。過去の大戦で折れた際、その破片を掻き集め錬金術により改めて打ち直された。それが7本、その内の3本が盗まれました」
話が進められるが異様な視線を感じ取れた。先程、エクスカリバーの言葉に反応した祐斗であった。
——憎悪、嫌悪。そんな感情が感じ取れますね。何かしら因縁があるのですが、此処で堪えて貰わないと……。
「聖剣なんてモノ。警備は厳重だと言うのに、失態と言うレベルじゃ無い話ね。それが、こんな極東の地方都市にどう言う因果関係があるのかしらね?」
リアスがその話に対してそう尋ねる。エクスカリバーの名前も凄いが地方都市で紐付けれる様な話題にも思えない。
「犯人は判明している。『神の子を見張る者』に属する堕天使幹部、コカビエルだ」
——可能性としては妥当な所ですね。聖剣エクスカリバー、悪魔としては触れれば即死する代物……如何に強力な力とて触れない代物は扱い切れず自滅する。
「そしてコカビエルは聖剣を奪い、この地に逃げ込んだ。逃げるならば冥界に行けば良い、つまり奴にとってこの地に来る理由があったと言う事だ」
「……私の周りにはトラブルが絶えないわね」
——コカビエル。古より生きる堕天使。正直な話、目の前のエクソシスト2人が敵う相手とは到底思えませんね。天使陣営も暇なのでしょうか?
「話は分かりました。それで、交渉とは?」
「交渉、いや注文か。単純明快な話だ。介入するな、と言いたいだけさ。聖剣エクスカリバーを堕天使勢力から奪還、或いは破壊。その関連事項にお前達は一切関わるな、と言う事を要求する」
白いフードから青髪が見え隠れする少女は堂々とした意志を持ってソーナにそう宣告した。
「……貴方達だけで対処すると言うつもりですか?相手は堕天使の幹部の中でも指折りの存在……貴方達は愚か、私達が束になってどうこう出来る相手とは思えません」
——本音を言えば魔王様に一報を入れて、協力や援軍を頼むのが最善策。しかし、冥界では惨劇が起きて余裕が無い状態……。
「それはどうかな?無論、私とて死にたくは無いが、最期の時は刺し違える覚悟だ。最悪、エクスカリバーが砕け散ってくれれば問題は無いのだからな」
「立派に戦ったとして天に召されるのならば本望。主の為に死ねるなら、喜んで死地へ向かうわ」
「ああ。上もエクスカリバーが堕天使の手から消えれば良いと判断している。タダで死んでやるつもりは無いが、必要とあれば構いやしない」
2人の少女は死にに行く様な覚悟だった。最悪、目的が果たされるのならば構わない。信仰が故の狂気とも言える。信じる者は救われる、正にその通りの光景が彼女に映って見えるのだろう。
——しかし、正直な所。コカビエルよりももっとオッカナイ人がこの町に居ますからね。
「そうですか。しかし、貴方達は間違いを犯しています」
「間違い、だと?」
——彼女達が教会組。天使陣営はある事を知らない。無論、公表するつもりはありませんが、かなり遅れた情報能力でしょうね。
「残念ながらこの町は悪魔の勢力下ではありません。黙っていない勢力へ先に交渉を行うべきでしたね」
「どう言う事? 上の人は『悪魔の勢力圏』だと言っていたのに」
——天使達はこの国の布教には失敗していますしね、ある意味。
「この国の神話。日本神話勢力の方々に拝謁するべきかと。機嫌を損ねると命が足りませんよ?」
「異端の神話なぞに下げる頭は無いな」
「そうよ。異教の」
その時、生徒会室の扉がメキィと言う軋み上がる様な音が聞こえた。ソーナはその異音に聞き覚えがあった。
「リアス‼︎ 元士郎、皆さん、伏せて下さいッ‼︎」
ソーナがそう叫んだ直後、爆ぜるかの様な快音と共に凄まじい勢いで扉が錐揉み回転しながら飛来。ソーナ達はソファや床に伏せたが、教会組の2人は突然の状況に理解が追い付かず、反応が遅れた。
飛来した扉は橙色の髪をした白フードの祭服の少女の顔面に直撃し吹き飛ばし、其の儘の勢いで何時ぞやの如く生徒会室の窓ガラスを突き破って其の儘、外へと放り出された。
「「「…………」」」
リアス達は絶句。ソーナは冷汗を流し、残された青髪の少女は隣人が吹き飛ばされた事実をまだ理解出来ずにいた。
「異教の、何だって……?」
——どうして、こんなタイミングで現れるのですか⁉︎
生徒会室に闖入して来た存在。それを見てソーナは心の中で叫んだ。日本神話の中でも無茶苦茶な存在。天魔雄様、その柱であった。『扉ミサイル』と呼ばれる扉を使った技術を伴いこの場に現れた。
「……ほー、随分とゴミ連中がゴミ捨て場に揃って居るじゃねぇか」
「貴方、何者よ⁉︎ それにゴミって私達の事⁉︎」
——リアス。貴方は口を開いちゃダメです‼︎ 貴方、如きじゃ相手になりません‼︎
「リアス‼︎ お願いですから貴方は黙ってて下さい‼︎ 相手は日本神話の一柱ですよ⁉︎」
「ゴミと言われて黙って居られないわ‼︎」
「囀るな」
その時、リアスだけ
「……さて、茄子女の妹。俺が来た理由、分かるか?」
「出来れば今、取り込み中なので……暫し待って頂けませんか?」
「知るか、悪魔だの堕天使だの、天使など、聖剣だの、くだらん座興だ」
——あ、コレ。全部、知られてる……。
「くだらないだと? 言ってくれるな。異教の神とやら」
天魔雄様の言葉に異を唱えたのは青髪の少女。ソファから立ち上がり布で巻き付けて居た棒状のモノを解き放つ。布の下から出て来たのは一振りの長剣。
「私達の信仰が、座興呼ばわりは流石に我慢ならないな……イリナの事は」
その直後、青髪の少女の視界が漆黒に染まり、衝撃と目眩が襲った。倒れた直後に自分は顔面を蹴り飛ばされたのだと理解した。
「話長くなりそうだから、黙れ。そもそもお前らの信仰やらくだらんゴミの飯事に興味無ぇからな。で、茄子女の妹、取り込み要件は消えたぞ?」
——ほ、本当に無茶苦茶な神様ですね⁉︎
緊迫した空気は天魔雄様の闖入によりより一層、緊張感溢れる状態に陥ったのであった。