「……天照。貴方は何をするつもりなんですか?」
「んーとね〜。三っちゃんを『斎王』にするの」
「天照……貴方ねぇ……‼︎ 斎王と言うのは1000年も前に断絶したじゃないですか⁉︎ 狐花ちゃんは付喪神であって内親王ではありませんよ⁉︎」
「そうだよ? 建武の乱を最後に終焉を迎え途絶した。今となっては斎王まつりとして残っているだけ。でも、ヤーちゃんが口出すのはお門違いだよ? 斎宮じゃ仏教系は禁忌だよ?」
「それはそうなのですが……だからこそです‼︎ 斎宮は穢れは御法度の筈です‼︎ 狐花ちゃんはその存在理由により莫大な穢れを溜め込み続ける事になります……‼︎ 穢れ、即ち『死の穢れ』。数多の憎しみ、怒り、死を受けて産まれた付喪神。そして怨恨を胸に怨嗟が終わるまで際限なく死を作る……‼︎ そう言う意味でも貴方が天照であろうとも許される事では無いでしょう⁉︎」
天照大御神様と夜摩天様は大いにモメている。その光景をアイラ達は口を挟めない。何せ、その内容に関して知っている事が少な過ぎるからだ。
『あー、そりゃ反対と言うか為来りじゃあ、そう考えるわなぁ』
『形に拘りますからねぇ……』
五七と恐介はその光景を見てヤレヤレと言った風に見ている。
「貴方達の意見はどうなの?私達じゃ、良く知らないから何とも言えないのだけど」
『俺様らが言う前に狐花が言う事ぁ、決まっとら』
「
「がーん‼︎ Σ(゚д゚lll)」
天照大御神様の膝に座る狐花はそっぽを向いてたった1文字で拒絶した。その返答に天照大御神様はショックを受けた。
「斎王になったら、悪魔を燼滅させる事出来ないもん。絶対、引き篭もる形でつまんない」
『あー、狐花は天照大御神様の様に引き篭もりインドアと言うより活動的やしなぁ』
目を離した瞬間に街を滅ぼそうとする位である。と言うか冥界を壊滅寸前にまで追い込んでも居るが。
「……決まりですね。本人が嫌がって居るのですから無理強いしては行けませんよ」
「うー、三っちゃんが嫌なら仕方ないかな……じゃあ、お姉ちゃんが色々教えてあげる‼︎ 他の神達の教育方法が間違っていると言う事を証明するっ‼︎」
「果てしなく盛大かつ圧倒的な迄の神選ミスです。ミスマッチ率が貴方が1番高いでしょう」
斎王は諦めたがお姉ちゃん特権を全力行使する方向に切り替えた。その宣言に夜摩天様は溜息混じりにそう告げた。日本神話は教育がヘタクソ。その主宰神じゃとても無理だと考える。
『俺様も選択ミスっとると思うんやけどなぁ……』
「酷ーい‼︎ 皆して、酷いよぉぉ‼︎‼︎ むー、絶対にぎゃふんと言わせてやるぅぅぅ‼︎」
「えーと、張り合う事なのでしょうか……?」
「其れも狐花ちゃんを巡って神達が争うなんて……」
「…………」
——親しみ易いと言うか性質が悪いと言うか、こうして見ると日本の神様って他の国の神話よりも人間臭く見えちゃうわね。
ギャーギャー騒ぐ天照大御神様達を見て蚊帳の外に追いやられているアイラ達は遠い目で見ていた。
『まぁ、天照大御神様もその場の思い付きでしょうね。斎王の制度が途絶して、話し相手が居なくなってしまいましたから』
「……天岩戸の伝説、でしたわね。以後も?」
『引き篭もりな上に主宰神故に孤独でした。月読尊とは会う事が無く、あんな性格ですので弟君であられる素戔嗚尊様は嫌がって高天ヶ原を出て行って久しくなりました。故に、心置きなく構ってくれる方が居なくなりました。
その上、周りからも『もっとしっかりしなさい』と良く言われていたのです。主宰神だから、主神だから、と』
頂点に立つが故の苦悩、孤独。それは神であっても変わらない。見ての通り天照大御神様の性格は子供っぽくてかなり構ってちゃんの様な神様と言うよりも本当に人間臭い。逆に狐花は超然、淡々、孤立としている所があり無機質さと対照的に見える。
「話によると、狐花さんに取り憑いたと聞きましたが……」
『神口は巫女であれば誰でも出来る訳ではありません。其れが天照大御神様と言った三貴子となれば尚更……。古来、斎王と呼ばれた方々が天照大御神様と神口が出来たそうなのでしたが、南北朝時代の乱により斎王の制度が途絶し、廃絶と相成りました。そして現代になり、偶発的な産物とはなりますが狐花お嬢様を依代とした神口が成立したのが余程、嬉しかったのでしょう』
「「「……」」」
だから狐花を斎王にしたがったのだろう。日本神話の神は構ってくれたり遊んでくれる人間(狐花は付喪神だけど)が居れば満足するのだ。何処ぞの唯一神が絶対を求めたり人間を従えて悦に浸ったりなど考えない。
「寂しかった、のでしょうか?」
『左様。日本神話は八百万の神とも呼べる程、沢山の神々が居られます。しかしながら主宰神故に、『日本神話の天照大御神』として見ますが『天照大御神』様としては如何なる者も見えません。ですが狐花お嬢様はその辺は幼さ故に分からないので『天照大御神』様として見えるのでしょう』
「……分かる様な分からない様な。つまり色眼鏡無しに見えたって事?」
「その気持ち、分かります。その枠組みであれ、そうでなければならない、と。そうでなければ、ならない……日本の神様も、私達と同じように悩むのですね」
『……心中。察して頂き恐悦至極です』
「……あら?」
「お姉様、どうしたのですか?」
その時、静香が片眉を顰めて何かに気付いた。
「いえ、どうやら招かれざる客がお越しになられた様ですわ」
静香は自身、皓咲屋敷を中心に狭い範囲ではあるが電探と同じ要領で電波を放っている。コレは受動態らしくこの事に気付いたのはつい最近であった。
「正門前、2人、いらっしゃいますわ。屋敷の前の道路の通行人、では無さそうですわね」
「……悪魔だと『破邪の気』で消し飛ぶわよね? となると、人間?」
然も今は主宰神の神気も合わさり上級悪魔じゃないと軽く蒸発するだろう。
「……少なくとも人間、だと思いますわ。悪魔だと感触が違いますので、恐らく人間かと」
因みに八百万の神や日本の妖は神霊と言った霊体なので電探に引っ掛からない。悪魔は普通に引っ掛かる。故に静香は人間だと推定する。
「……あ、あの‼︎ 狐花さん、誰か来たみたいですよ⁉︎」
「んに? 誰かって、誰?」
「あれ? 何か頼んで居たっけ? この前、狐花ちゃんの身体を借りてAm◯zo◯で注文したゲームのメアリスケルターが届く配達日はまだだった筈だけど……」
「貴方ねぇ……完全に顕界でエンジョイして居ますね……‼︎ と言うかゲーマーと言う噂は本当でしたか⁉︎」
「「「…………」」」
「えーと、どうする?」