「2人とも、うっさい……‼︎」
『『は、はい……(ご、ゴミを見るような目……‼︎)』』
狐花に水より冷たい視線を向けられ恐介と五七は完全に黙り込むのであった……。
「で?恐介。要件は?他にもあるんでしょ?」
『ええ、高天原には暫く戻りたく無いと同時にお嬢さんにお伝えすべき事項が幾つか御座います』
五七と言い争っていた恐介は切り替えて狐花にそう語り始める。空気の切り替えが早い。と言うよりも狐花は余計な前置きが嫌いで核心を先に告げた方が早いからだ。考察するにしても勝手に拾ってくれる。手を離されて再び、狐花の頭の上に飛び乗り語り始める。
『まず一つ目、扶桑の国の各地にて龍脈の乱れにて異常が発した事による瘴気溜まりが晴れました』
『狐花が、龍穴を塞いでいたトコを吹っ飛ばした影響で流れ出たんやな』
『二つ目、神器の事はご存じで?』
「ん、知っている」
『承知しました。二つ目は、神滅具と呼ばれる類の神器の所持者が悪魔陣営と堕天使陣営に加入している事が確認されました。その両者は赤い竜と白い竜の意識を封じたモノと言われています。して、その赤い竜はこの地に屯している模様』
『へぇ、意外とデカい気配と小さい気配が混ざっとんと思ったらそない奴かい。ま、狐花の相手じゃねぇな』
『だと宜しいのですがね……三つ目、その各地の乱れた龍脈を鎮める為と、その地を穢す悪魔共を屠らんとして草達は暫くの間動けぬと言う報が来ております』
伊弉諾尊様が各地の杜や社を建て直したが、その地に巣食う悪魔共は未だに蔓延っている。龍脈の乱れがある程度とは言え正された今、悪魔共が穢した場所では、奮起せんとして行動を起こす者共が多数居る様である。
『四つ目、三大勢力……ひいては悪魔共の拉致行為に関して、憤慨なさる方々が居られる様子です。その中で一際、封豨様も大層、ご立腹なご様子です』
『お、おい……マジかよ……‼︎ 封豨って、あの封豨⁉︎』
封豨とは中華人民共和国にて伝わる強大なる妖の一つ。四凶や瑞獣が際立って目立つが、ソレ以外の妖も決して見劣りする訳では無い。
「……悪魔共の誘拐癖は底無し」
神器持ちの人間や、数が少ない妖達を誘拐しては自身の手駒に変える。その行為に関して黙って居られる程、寛容では無い。事、日本神話は一際、多くの行方不明者が出ているからだ。『運命』とは違う死亡案件……その8割が三大勢力が関与している。到底、無視出来る様な物では無い。
『他にも……夜摩天様はもうそれはそれは大変なるお怒りのご様子です……‼︎』
それは最早、裁きの柱さえも無視出来ぬ所業と化していた。普段から同僚の怠慢振りを見てストレスを溜め込んでいると言うのにこの状況では業火が犇くと言うモノであった。
『ぎゃあぁぁぁぁ‼︎⁉︎ 夜摩天様までぇぇ‼︎⁉︎』
「寧ろ、当然だと思うのだけど……この前、『運命』外での行方不明者リストを貰った時、12時間位、愚痴られた」
『運命』が見える以上、死の運命は不変であるべき。仮に人間が自力で覆す事が出来た場合は、本人が運命を乗り越えたとして不問とし寿ぎを奉るが、悪魔と言った三大勢力絡みが関与していた場合は認可は出来ない。明らかに運命を歪める行為に他ならない。こと、夜摩天から見て三大勢力は『祟り神に他に無し』と言う決が下されており、情緒酌量の余地は無い。
転生悪魔となった者達の中、と言うよりも大半は無理矢理な行為での眷属化。美少女や神器持ち、或いは希少種族、その複合で、劣悪な状況に陥り逃亡を企てるパターンが多い。それらは『はぐれ悪魔』と呼ばれ、悪魔社会から大した調査もされずに一方的に悪いと見做されて抹殺される。その罪状は大半が『力に溺れて、害を成すから』と言う者。中には誘拐されて転生悪魔にされた環境にて逃亡したパターンも多い。
そも、転生悪魔となった以上、人間としては死んだ事となる。何せ、存在其の物が人間社会から消え去ったと言っても過言では無いからだ。その辺の問題までは狐花は関与し切れない。取り敢えず抹殺して丸投げする事にしていた。
前回、狐花が半ば反射で『はぐれ悪魔』の脳漿を消し飛ばして滅したが、夜摩天からは『関与した死者は多数。酌量無しの有罪です。リストを参照し次からは確認してから送る様に、間違えた魂を黄泉還させるのも大変なんですよ?狐花ちゃん』との事であった。
『待って‼︎ 待たんかい⁉︎ 何ソレ、聞いてねぇよ⁉︎ つーか、夜摩天様とマブダチ状態⁉︎』
「ん。料理の話で盛り上がった」
『流石、お嬢さん。普段から蟲食いですから、夜摩天様のお料理をお口に出来るのですね……して、最後の四つ目。伊弉諾尊様がお嬢さんの神域を建立した事により神々が降臨出来る手筈が整っております。近い内に高天原や天門より天降りが行われるでしょう』
『そういや、門は鳥居の意匠があったし……広いのも祭壇とかそう言うのも含まれて居た訳やな。伊弉諾尊様、其処まで考慮して下さったんか……それで、あの馬鹿広さかいな』
『と言うか……夜摩天様が、お越しになられるそうです。しかも、今日』
『「……」』
『あ、それから、夜摩天様から伝言です『やっぱり狐花ちゃんは見つけた『はぐれ悪魔』の事情を考慮せず形振り構わず鏖殺するので監督目的で其方に参りますね』との事です』
『ぎゃああァァァァ‼︎⁉︎ 地獄の閻魔様が顕界におるって、どんな地獄⁉︎ あのお方、凄い五月蝿いんやで⁉︎ 後、料理が襲ってくるって噂やから怖いんや‼︎ 死にたくなぁぁぁぁい‼︎‼︎ 料理に食われて死ぬなんて、そんな死に方だけは嫌やぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎⁉︎』
『存在する事よりも、料理が恐ろしいのですね。気持ちは分かりますが……アレは……あの世のモノではありませんから』
「美味しいのにー」
『いえ、ソレを言えるのはお嬢さんだけですよ?と言うか、リストを貰った癖に信用されていないんですね……』
『天然やからや……敵は取り敢えず鏖殺すればええ、って言う無慈悲な性格やからな』
事実、堕天使を屠る為に近隣住民諸共、鏖殺しようと企てた。五七に阻止されたが、誰かが止めねばやりかねない。
『……して、私めは暫くはお嬢さんの所に居着きますね。無論、時折、伝達の任故に離れる事もありますが』
伝える事を伝えた八咫烏の恐介は狐花の頭の上でその翼を広げる。八咫烏故に、体躯に対して翼は大きい。狐花を脚で掴んで飛べそうな気がしなくも無い。
「じゃあ、この地に巣食ってる悪魔の情報を探って」
『畏まりました。では、早速参りましょうか』
恐介は翼を広げて晴天に向けて飛び立って行った。一応は神々の遣い故に仕事は堅実であった。
『しっかし……こりゃ彼方此方から来るやも知れんで?神無月の出雲やあるまいし……』
「賑やかで良いんじゃない?」
『……あーもう、そう言う意味や無いってのに……ええわ』
日本神話の神々が顕界の一角に集うとなれば、凄まじい神気を纏う事となる。そうなれば三大勢力も反応を示すだろう。尚、中心となりうる(と言うか家主が狐花)のに本人は呑気な反応である。
「……別に、信仰とか、求めてない。一神教の様に絶対神を求め、人間を従えて悦に浸る訳じゃない。他化自在天様もそう仰る。遊び相手になってくれればそれで良い、と」
『真顔でそう言うのは理解すんで。しっかし、大事になってきたわな……』
「時間の問題……邪魔するなら、滅ぼす」
『うわぁ……狐花って荒魂と和魂が曖昧やから面倒臭いねんな……つーか、面倒臭いのしか居ない気がすんやけど』
そんなやり取りをしながら通学している駒王学園へと到着したのであった。