雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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彼と誰への寿ぎを

 

 

 

「それで、性懲り、も、無く、来た、と?」

 

「ああ、そうだ」

 

 フェニックス領でライザーが頭を抱えて如何にもならない現状を憂いている最中。魔王であるサーゼクスはレーキュの研究所を訪れていた。『劫魃』の時、協力を仰いだが対価を支払う事が出来ず却下され盛大な被害を広げる結末を迎えた。その時、『無能』だと蔑まれたりもした。

 

「……現在の冥界は」

 

「二度手間。自分の、目で、見ている。赤い、大地、焼ける、大気、遍く、命が、尽きる」

 

「ああ、その通りだ」

 

 レーキュの研究所の一室。その部屋で冥界のこの様な状況であるにも相変わらずの態度のレーキュと深刻な面持ちのサーゼクスが対面している。前回ははぐれ悪魔が腹や頭を割られてその中身の内臓をレーキュが貪り喰らっていると言うグロテスク極まりない光景が広がっていたが、今回は赤い液体が収められた試験管の棚やシャーレと言ったモノが机に置かれていると言う研究室としては普遍で平和な光景が広がっていた。

 

「植物は全く育たず、水も枯れるばかり……熱波の影響で医療体制も限界に近い。その上に環境が大きく様変わりしている」

 

「ふぅん」

 

 サーゼクスは深刻な状況だと訴える。正直な所、悪魔陣営の魔王であるサーゼクスは藁にも縋る想いであった。自分達では如何にもならない上に、他神話の援助は借りる事は出来ない。和平も同盟も成り立っていないのに受けられる筈が無い。だが、悪魔陣営には扱い難いが未知の概念の存在であるレーキュが居る。恥を偲んで再び頼み込みに来たのである。

 だが、レーキュの反応は淡白であった。いや、本当に淡白だった。呆れるレベルでもあった。

 

「ちょっとでも構わない。流石に無茶な要件は難しいが出来るだけ意に添える対価を用意する‼︎」

 

「……同じ、で、違う、な」

 

「え?」

 

——……人間達、の、方が、もっと、必死で、生きる、為に、足掻いて、いた。お前、達は、尻馬、に、乗る、か。呆れる、本当、に、呆れる、衣笠、二等陸佐、が、知れば、怒る、か? それ、とも、嘆く、か?

 

「……生存、が、困難、な、世界、が、あった。食糧、も、綺麗な、水も、無く、更に、メルヒェン、と、言う、怪物、監獄塔、が、乱立、する、世界。過去の、姿、は歪み、融けて、変じ、殺し合う……」

 

「何を……?」

 

 レーキュは回想する。それは生きるだけでも大変な世界の事。そんな世界であっても生存する為に団結する人間達が居た。大小のコロニーを作り、協力や敵対しながら辛うじて、生き延びる道を模索していた。

 

「……化物と、蔑まれ、た、血式少女も、同じだった。生きる、為に、何でも、していた。文明は、無い。強い心、と力が、支配する、自由の世界」

 

——平穏と、自由は、対極。平穏の、為に、自由を捨てる、か。自由の、為に、危険を、冒すか。人間達は、平穏を、血式少女、や、ジャック、は自由を、選んだ。

 

「お前達、には、意志が、無い。貴族?知らない、そんな、くだらない、思想。意志、が、無い、お前ら、を、助ける、義理、は、あるか?」

 

 抗い戦う意志なき豚に助ける義理は無い。レーキュは言外に『くたばれ』と言いたいのかも知れない。誰でも彼でも助ける程、お人好しでは無いのである。

 

「……ああ、分かっている。だが、病人も、怪我人も居る‼︎ 全員が全員、戦える訳じゃ無いんだ‼︎ 僕は魔王として、皆を、悪魔と言う種を守る理由があるんだ‼︎」

 

「『悪魔、の、駒』、による、性質の、悪い、同化政策。相手、から、すれば、甚だ、迷惑な、だけ。良く、共存、と、宣える」

 

——……。黎明、は、状況、柄、上手く、やれた。平時、だと、暴動、起きて、いる。人間、は、自分と、違う、存在、を、決して、認め、無い。個人に、限定、され、尚且つ、不安定、な上に、暴走、の危険……、到底、受け入、れ、られな、い。感情、合理、何方の、点でも、変わら、なかった。

 

 感情的、合理的の両方の視点でも到底、分かり合えない。少数派なら上手く行く可能性はあるが『組織体』となると途端に難しくなる。複数の意見が混在しているのが組織と言うモノだからだ。視点も異なるし境遇も異なる。

 

——その点、悪魔、は、殊更、性質が、悪い。人間、臭いのが、悪い意味で、作用、して、最悪。『大博士』、より、性質が、悪い……‼︎

 

「今は難しいかも知れないよ……。でも、いつの日か理解してくれる時が必ず来る‼︎ 人間達だって手を取り合えただろう⁉︎ なら」

 

不可能(・・・)、だ」

 

 サーゼクスの言葉はレーキュの一言でぶった斬られた。

 

「共存?分か、り、合える、? 手を、取り、合、う? お前、は、だか、ら、無能、なん、だ」

 

——出来る、か、そんな、高尚、な、モノ‼︎ 出来た、試し、殆ど、見ない‼︎

 

「お前、ら、人間、臭い。だ、か、ら、言え、る。お、前ら、が、悪魔、な、ら、言わ、な、かった。自分、と、違う、存在、とは、分、かり、合え、ない、少数、な、ら、出来、る、だろ、う」

 

——……10、歳、まで、言葉も、話せ、な、かっ、た。星脈、世代、だ、か、ら、異端、だっ、た。人間、と、違う、だ、から、捨て、られた、そう。

 

「組織、企業、と、なら、ば、変わる。不可、解、な、存在、が、社会、の、基盤、に、加わ、る、のは、危険。施政、なら、ば、理解、し、ろ」

 

——……レー、なん、と、か、は、心底、くだら、な、い。星、武祭、レ、ベ、ルの、くだ、らな、さ。戦闘、が、娯、楽、と、は何処、も、同じ。それ、が、娯、楽に、飢え、て、いた、神奈、川、コロ、ニー、でも、一緒、だっ、た。他に、無か、った、と言う、のも、ある、けど。

 

 レーキュは当時の市長の顔を思い出した。当たり前のテレビの類すら過去の遺物と化していた環境。その中で唯一の娯楽が少女が命懸けで化物と殺し合う様を眺める光景。本音を言えば反吐が出た。馬鹿馬鹿しい上に、苛立ちすら覚える。その癖、この世界でも同じモノが流行しているとなれば、ウンザリもする。

 

「……僕達と人間達、他の神話とは分かり合えない。そう、言いたいのか?」

 

「無理」

 

「何を根拠に言えるんだい? 君は科学者だろう?不可能だと断ずるのは早過ぎないかい?」

 

「……現実、を、見た。ウンザリ、と」

 

——利害、が、一致、した、から、出来る、薄っ、ぺら、な、関係。お前、ら、の、言う、分、かり、合う、と、言うの、は、自分、本位。

 

 彼らを見た。人間性を限界まで削ぎ落とした人間の姿を。合理的で利益のみ追求し、情や欲を排除して機械と評しても生きる人間達を。

 彼らを見た。限りなく理不尽な環境故に足掻き、踠き、這いつくばっても生きる人間と、狂気に染まり血塗れでも進む血式少女達を。

 

「……君は誤解をしている。まだ、日が浅いから一方面しか見えていないのだろう。確かに悪魔にもはぐれ悪魔と化して迷惑を掛け甚大な被害を齎す者も居る。でも、責任を持って対処している」

 

「…………」

 

 諭す声にレーキュは半目でサーゼクスを見ている。呆れているのだ、この無能は全く分かっていない。

 

「……話を、逸らした、のは、私、だ、けど。無駄、な、時間だ」

 

 レーキュは嘆息。この話に振ったのは自分ではあるが、どうしてこうも不毛な話をする羽目になったのか数分前の自分に文句を言いたくなった。無駄、本当に無駄。コレなら本気の怒りをぶつけて来たジャックの方が好感を持てる。

 目の前のサーゼクスが相手だと割とつまらない問答で退屈にもなるし、利益が全く出て来ない代物しか見えて来ない。単純に時間の無駄になる。

 

「……構築元素、の、改竄。世界、を、塗り替える。環境、改竄、の一種」

 

「それは、如何言う意味だい?」

 

「……この、冥界を、覆う、状態。一種、の、術式、による、塗り替え、に、近い」

 

——ウィッチ、クラフトの、規模と、内容、に、比べる、と、大幅、に、スケール、ダウン、するけど、概ね、似た、認識、と仮定。

 

「わ、分かるのかい⁉︎ なら、状況を打破する方法も分かるんじゃないのか⁉︎」

 

 サーゼクス、ひいてはアジュカでさえお手上げ状態だったのにレーキュは現況を解析していた。やはり、味方に付けて正解だったとサーゼクスは内心、安堵する。理解しているのならば解決方法も分かる筈である、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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