雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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燼滅への道

 

 

 駒王町に迫撃砲による榴弾の雨が降り注ぐ中、駒王学園にリアス達が足を踏み入れた。

 

「……部長、町が燃えているッ‼︎」

 

「此処までするなんて……‼︎ 狐花は本当に容赦ないわね……‼︎ 」

 

——女の子でも……やり過ぎだろコレは⁉︎

 

 雨の様に降り注ぐ惨禍を見てリアスは歯軋りした。コカビエルも脅威ではあるのだが日本神話の狐花も充分、脅威であった。まさか本当に駒王町諸共、滅ぼすつもりなのかも知れない。いいや、コカビエルを屠るならば町ごと潰す。その算段かも知れない。

 

「ですが、部長。駒王学園には降って来る気配がありませんわ。結界が張られたとは言え衝撃も無いと言うのは、些か不気味ですわ」

 

——確かに朱乃さんの言う通り、学園以外に降っているなんて変な話だ。それより木場の奴、本当に何処に行ったんだよ……‼︎

 

「……だけど、考えても仕方ないわ。私達は私達の役目を全うするだけよ‼︎」

 

 駒王学園にはソーナ達が結界を張り攻撃の余波が町に波及しない様にしてくれている。しかし人数が人数。何度も衝撃を受けては耐えられないしコカビエルクラスの攻撃など容易く粉砕される。状況は最悪。自分達でどうにか出来る相手では無い為に、リアスの『女王』である朱乃が事前に魔王に打診した(リアスが嫌がるので無断ではあったが)結界、援軍の約定を取り付ける事に成功。

 援軍が到着する迄の間、自分達が時間稼ぎをする運びとなった。相手は規格外の存在、死戦となり得る状態だった。

 

「な、何だ。コレは……?」

 

 校門を潜り抜け見えた先に広がっていたのは異様な光景であった。グラウンド全体に奇妙な形状の魔法陣が描かれ複数本の聖剣エクスカリバーが宙に浮かび神々しい光を放っていた。

 

「砕かれ分かれたエクスカリバーを今一度、1つに、即ち真のエクスカリバーへと統合するのだよ。愚かな悪魔諸君」

 

——誰だ、あのジジィ⁉︎

 

 魔法陣の中央に佇む祭服を纏った初老の男性、バルパー・ガリレイがそう答えた。

 

「エクスカリバーを1つに……? つまり、それら全てがエクスカリバーと言う事……⁉︎」

 

「マジかよ……⁉︎」

 

 堕天使コカビエルにより奪われた聖剣エクスカリバー。それらを1つに統合しようとしている。祐斗にとって積年の憎悪の対象。

 

「そうだ。一振りであろうと君達には即死を齎す代物だ。長年の願いが今、此処に成就となるのだ」

 

「バルパーよ。後、どれ程でエクスカリバーが統合する?」

 

 その時、上空から声が降って来る。見上げれば満月をバックにコカビエルが宙に浮かべた椅子に腰掛けて葡萄酒を入れたワイングラスを片手に眼下に広がる世界を睥睨していた。

 

「数分と掛からんよ、コカビエル殿」

 

「そうか。しかし、良い眺めだな? 俺が暴れる前に町が良い具合に燃えている。誰の差金かは知らぬがコレより始まる戦争の幕開けに相応しいセレモニーだ」

 

 コカビエルは上機嫌であった。自分が望む戦争、大いなる戦争。それが始まる前夜のように駒王町が火災に溢れている。

 

「サーゼクスが来るか? 或いはセラフォルーが来るのか?」

 

 其処でコカビエルはリアスの方に視線を移した。高所、椅子に腰掛け睥睨する様は魔王然としていた。

 

「お兄様やレヴィアタン様の代わりに私」

 

 その言葉の直後、爆轟と共に一陣の風がグラウンド全体に吹き荒れた。見やれば駒王学園に存在していたある物が消え去っていた。

 

「何だ、つまらん。実につまらんが……大いなる戦争の前の余興にはなるか」

 

 其処にあったのは体育館。その場所には大型の光の柱が深々と突き刺さり体育館を形成するモノであった残骸が周囲に散乱していた。

 

——な、何だよアレ⁉︎ あんなの食らったら一撃必殺じゃねぇのか⁉︎

 

「「「……ッ‼︎」」」

 

 その破壊力を前にイッセーを始めとしたリアスの眷属達は冷や汗を流した。

 

「……さて、冥府から連れて来た奴らの相手をして貰おうか?」

 

 コカビエルが指を鳴らす。視界の先、其処から唸る声と共に震動を伴う足音を鳴らしながらソレが現れた。巨大な影が魔法陣の光に照らされその全貌が明らかとなる。

 

——あ、明らかにバケモンと分かる姿だ。しかも頭が三つも有りやがる‼︎

 

「アレは、ケルベロスッ‼︎」

 

 その姿を目の当たりにしたリアスは忌々しくその名を叫んだ。

 

「部長、ヤバいんスか⁉︎」

 

「地獄の番犬。その異名を持つ有名な魔物よ‼︎ まさか人間界に持ち込んで居ただなんて‼︎」

 

『グォォォォォォォ‼︎‼︎』

 

 三ツ首の魔物であるケルベロスは其々の頭で咆哮を上げた。

 

「こうなったら消し飛ばすしか無いわ、イッセー‼︎」

 

「はい‼︎ 来い、ブーステッド・ギァァァァァァ‼︎」

 

 イッセーはそう叫び自身の腕に赤茶色をした籠手が顕現する。その籠手は以前の真紅の色から何故か錆びた色の様に変色し甲の部分の宝玉も燻んだ色合いと澱んでいた。

 

「イッセー、神器の色。変わって居ませんか?」

 

「え? マジだ、どうなっているんスか? 神器って色が変わるモノなんですかね?」

 

「神器は本人の成長によって姿を変えて行くの。つまり貴方の成長にやってどんどん強くなって行くと言う事よ」

 

——そ、そうか。確かに毎日、部長と特訓しているもんな。こうやって目に見える形で分かるのは実感が湧くぜ。

 

「部長、イッセーさん。相手は待ってくれませんよ」

 

 イッセーの自分自身の神器の変化に戸惑うもケルベロスは待ってはくれない。その口内に業火を燻らせ巨大な火球となって吐き出した。

 

「雷よ‼︎」

 

 咄嗟に朱乃が雷光を放ち放たれた火球を相殺し打ち消した。此処は戦場、悠長に敵の眼前で作戦会議などやっては居られない。

 

「部長、イッセーさん。話している余裕はありませんわよ‼︎」

 

 朱乃は翼を広げ跳躍し上空へと飛び上がる。その光景を見たケルベロスの左右の頭から火球を吐き出し朱乃が雷撃で迎え撃つ。

 

「朱乃が二つの頭の注意を引いているわ。この隙に仕掛けるわよ、イッセー‼︎」

 

「はい‼︎」

 

 イッセーが『赤龍帝の籠手』の異能である倍加を行使する。力を高めれば神であろうと葬る事が出来る。残りの頭から火球が此方に向けて放たれる。

 

「滅びなさい‼︎」

 

 リアスの手から等身大以上の黒い魔力の塊が放たれケルベロスの火球と拮抗する。ケルベロスは火球を吐いた後、業火の如き炎を放射してその勢いを後押しした。

 

「イッセー‼︎ 小猫、今の内に仕掛けなさい‼︎」

 

「「はい‼︎」」

 

 リアスが朱乃と共にケルベロスの頭の攻撃を抑えている間にイッセーと小猫に本体を叩く様に指示を飛ばす。火炎放射しているので手が回らない筈であった。

 

「行くぜ、小猫ちゃん‼︎」

 

——まだ力が溜まりきって居ない気がするけど、このチャンスは逃せない‼︎ 部長や朱乃さんが頑張っているんだ‼︎ 部長の『兵士』としてその期待に応えなくちゃ行けないんだ‼︎

 

 小猫とイッセーは左右に分かれ、ケルベロスの側面から挟み打つ形で飛び掛かる。小猫が跳躍しケルベロスの中央の頭部に脳天に直撃する拳打を打ち込む。その際の痛みからかケルベロスの火炎放射は中断され、拮抗して居た朱乃の雷撃とリアスの滅びの魔力が同時にケルベロスに直撃した。

 

「ぐわぁぁぁぁぁ⁉︎」

 

「イッセー⁉︎」

 

 同時にイッセーはケルベロス怯んだ際に振るわれた前脚に張り飛ばされて放物線を描きながらリアスの後方に飛ばされ2、3回、グラウンドを転がりながら倒れた。

 

「ぶ、部長。すみません……‼︎」

 

——こ、小猫ちゃんの攻撃より遅れた……‼︎ 本来なら、俺は前足を殴り付けて体勢を崩させる手筈だったのに……‼︎

 

「イッセー、どうしたの⁉︎ 動きにキレが無いわよ……?」

 

——力が、全然、増して来ない。どうなっちまったんだよ俺のブーステッド・ギア‼︎

 

「わ、分かんないっス。思えば全然、力が溜めれないんですよ⁉︎ 反応して居ないのか⁉︎」

 

「神器に不調があると言うの……⁉︎ こんな時に‼︎」

 

——今は一大事なんだよ‼︎ 応えてくれよ、ブーステッド・ギア‼︎

 

「……部長、イッセーさん‼︎ ケルベロスはまだ生きています‼︎」

 

『グルルルルルル……‼︎』

 

 小猫の声と唸り声に反応して前方を見やる。ケルベロスの左側の頭部の左目は焼け爛れ、胸元付近には滅びの魔力で削り取られた皮膚の焼け跡から真っ黒な鮮血を垂らしながらも未だに存命していた。その眼光は未だに鋭く、手負を与えた相手として寧ろ戦意が増していた。

 

「どうやら怒らせてしまった様ですわね……」

 

 手負の獣は恐ろしい。相手が冥府の番犬である魔獣ならば尚更であった。

 

「クソ‼︎ 何がどうなって」

 

 その時、轟音が響き渡る。学園を覆う結界が破片となって砕け散る光景が遠目に見えたかと思った瞬間、イッセーの視界に大型のタンクローリーが自分達に向けて突っ込んでくる光景が映り込んだ。距離的、速度的に考えてもう回避が間に合わない。

 

——あ。

 

 直後、グラウンドの一角にて爆轟伴う巨大な爆発と共に上空に大きく立ち上る黒煙が噴き上がった。

 

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