その頃、皓咲屋敷では——。
「此処で、メテオ‼︎」
『何ィィィィ‼︎⁉︎』
『と見せ掛けて隙あり』
「嘘ォォォォ‼︎⁉︎」
町中が火災に覆われているその頃、皓咲屋敷の一室。超大型テレビの前でコントローラーを握りながら天照大御神様は堂々とゲームをして居た。1人じゃつまらないと言う理由で籠手の姿である海老龍帝エビイグを誘い、どう言う訳か忽然と現れた天魔王(左手)も途中参加して楽しんでいる。ゲームの内容は大人気の乱闘ゲームでありテレビの画面のキャラクター達が所狭しと吹っ飛ばし合って乱闘している。
「うわーん。アシストフィギュアなんてアリ⁉︎ 然もタイミング良すぎるよ‼︎」
『と言うか俺、片手だけだから壮大なハンデだと思うのだが⁉︎』
エビイグは籠手の姿故にコントローラーを床に置き指先で器用にボタンを押したりして操作している。中々なハンデと言えるが。
『それはお前の『腕』がヘタクソなだけだ。赤海老』
『赤海老ではない‼︎ つーか、どいつもコイツも俺を海老扱いするんじゃない‼︎』
そして蒼黒く燃える左手、その手の甲には不気味な眼球が蠢いている存在、第六天魔王波旬がエビイグの腕がヘタクソだと告げる。此方も此方で片手でコントローラーを操作しているが慣れているのか器用に扱い廃人ゲーマーである天照大御神様に奇襲勝ちを収めた。
天照大御神様、天魔王、そして海老龍帝エビイグが一緒にゲームしていると言う珍妙な光景が広がっていた。
『グヌヌヌ、此の儘、コケにされてはドラゴンとしての沽券に関わる‼︎』
『何度やっても無駄だ、海老』
『黙れぇい‼︎ 左手如きに負けて居られるかッ‼︎』
手の姿同士で揉めるエビイグと天魔王。その様子を見て天照大御神様は笑みを浮かべながら双方、蹴り落として一人勝ちを狙って居た。
「しっかし、三っちゃんも派手にやるね〜。幸い態とらしい火災のさせ方で人の子達を避難させたみたいだけど〜」
『しかし、そんな折に俺達は普通にゲームしてて良いのか?』
「良いの良いの〜。手を打ってるんでしょ〜?」
画面の中のキャラクター達が盛大に殴り合っている。投げたり殴ったり蹴ったり爆弾、壁当て何でも御座れ。
『無論。既に打ってある、後は役者が揃うのみ』
「ふふん。後は当事者達がどう動くかな〜? はい、1落ち〜」
『ば、馬鹿なァァァァ⁉︎』
『廃人ゲーマー相手に片手で相手するのが元々、無理な話よ』
『お、おのれぇい‼︎ 此の儘引き下がれるかぁ‼︎ 逆転の目はいつだってある‼︎』
エビイグが奮起し負け時と挑む。天魔王に至っては日和見に決め込んで適当にやっている様である。
『あのじゃじゃ馬は相変わらずか?』
「う〜ん。あの子達と触れて少しは丸くなったかな? 昔は凄くピリピリしていたからねぇ〜何て言うかな? 研ぎ澄まされたナイフ?みたいな感じ」
『ば、馬鹿な⁉︎ 一方的にフルボッコ状態だと⁉︎』
「でも〜、やっぱり諦めて居ないみたいだね〜。私としては一層の事、何もかも忘れて欲しいと思って来ているんだよね」
『ほう?』
コントローラーのボタンを叩く指は異次元の様な動かし方である中で並行して口を動かす天照大御神様。
「だってさぁ、見てられない程に死に急いだ生き方だもん。敵は屠る、無関係な奴も潰す。文字通り目に映るモノ全てを殺す……。なら、一層の事、綺麗さっぱり忘れた方が幸せになれるんじゃない? 充分、頑張ったと思うんだ。冥界で派手に焼き尽くしたし、恐らく悪魔陣営も再起するには1,000年くらい掛かると思うし」
『だが、付喪神と言う種族上、自分自身を見失い自己破綻を引き起こすぞ。『想い』の集合体に等しい種族だ。存在意義を消失されれば……無意味な存在と化して消滅に至る』
「マジ?」
『うむ。前例がある以上、あの神楽鈴も例外なく同じ結末を迎えよう。元々、殺意の想い故に阻害する事自体、危険が伴う』
『ぐぉぉぉぉ‼︎⁉︎ 何故だ、何故、其処でスマッシュボールがァ⁉︎』
画面の中ではエビイグが使うキャラクターが盛大に吹き飛ばされ文字通り星になっている。
「うわぁ……どーしよ。抜け道とか無いの?仮にも欲界の主なんでしょ? 出来ない事を探す方が難しいんでしょ⁉︎」
『あるにはある』
「本当ッ⁉︎」
『も、問答無用のデスコンボだとォォ⁉︎ 然も都合が良い時にマスターボールをォ⁉︎』
天照大御神様の無茶な相談に対して天魔王は左手の姿故に表情は全く分からないが無い訳では無いと言う旨を示す。後、エビイグの使うキャラクターが天魔王の使うキャラクターにハメ倒されていた。
『が、余り推奨されん方法だな。本来の人格とは全くの別モノと化すだろう。下手すれば今の殺戮特化思想がより悪化する可能性もある。今の状態でも持て余す程だ。悪化すれば殊更、難儀なモノとなろう。名実共に祟り神になるな』
「うーん、やはり代償が伴うか。美味しい話にはなり得ないね……」
『此処でヤクモノ経由のKO⁉︎』
「それで、具体的な方法は?」
『前例が無い以上、机上の空論になり得るが……相反する『想い』の思念を上乗せする。具体的に言えばそうだな……其処の元赤龍帝に海老を追加して海老龍帝エビイグと言う形か』
『元でも何でも俺は赤龍帝だッ‼︎ 海老になった覚えは全く無いぞ⁉︎』
「此処でバンパーッ‼︎」
『ぐぉぉぉ‼︎⁉︎ 復帰出来ずに落とされたァァァァ‼︎ 悪魔かお前はァァァァ‼︎』
画面のキャラクターがステージに復帰しようとして妨害されて落下した光景を見せられてエビイグは号泣した。
「ふーん。つまり三っちゃんに別の思考を馴染ませると言う事?」
『要約するとそうなる。が、余りにも隔たりが強いと拒絶反応が出て来よう。それに言うは易いが実際にはそう簡単に行かぬ』
「何で?」
『あの神楽鈴が異常に頑固で意固地で分からず屋だからだ。言ってしまえば洗脳でもしない限り不可能と言える。したとしても、思い出すのが関の山だ』
「言い切ったァァ⁉︎」
『って、落ちて来たボム兵にぶっ飛ばされたァァ⁉︎ 俺って運悪過ぎないか⁉︎ 幾らなんでも悪過ぎる‼︎』
「うーん。もうちょっと簡単に行かないかな?」
『簡単に……とは言うがな。そもそも付喪神とは産まれた時から思考は不変なモノだ。多少の影響はあれど、余程の劇的な外的刺激が無ければな。人の子以上に存在理由に執着がある。故に机上の空論と言ったろう』
其処でゲームセットとなりぶっちぎりでエビイグがビリになった。
『何故だ……何故、1度も撃墜出来なかったんだ……‼︎』
「うーん、諦めたくないなぁ。アレでしょ? 三っちゃんって悪魔を殲滅したら、存在理由が無くなって消滅しちゃうんでしょ?」
『そうだ。神楽鈴と言う願いが集積する概念の付喪神である以上、不変の事実。事実上、あの神楽鈴は自分が死ぬ為に悪魔を滅ぼす必要がある。性急な希死念慮とも言える』
「じゃあ、他に存在理由が出来たら生存出来る?」
狐花は『悪魔を滅ぼす』『人間を滅ぼす』。その想いを以て存在している。其処に別の想いが宿ると?
『然り。だが、後付けで加わった前例が無いのもまた事実。殺意に凝り固まっているから殊更、困難を極める』
「うわぁん、無理ゲーな気がして来たァァァァ‼︎‼︎ 思えば三っちゃんて誰にも懐く気配が無いし‼︎ 殺す事以外に興味が殆ど無いし……本当の意味で殺す為に産まれて来たみたいだし……‼︎」
『今更、理解するか。しかし、あのまま悪魔共を道連れに死なせてやる方が本人の為やも知らぬがな。人の子はそれを余計なお世話とも言う』
「見殺しにしろ、と?」
『……凄く居辛いんだが』
『『死は救い』とも言う。無理矢理、生かす事が真の救済とも言えんよ。死なせてやるべき奴も必ず出て来る。不幸な命も存在しよう……本人の勝手だ。好きな様に生きて死ぬなら本望だろうさ。元々、アレは産まれる必要の無かった付喪神だからだ』
「…………」
気不味い空気がエビイグを挟んで立ち込める。左右からのイカれ神話の二大巨頭の威圧に晒される。
『お前は馬鹿だ。大馬鹿だ、略して正に駄目な大馬鹿。略してマダオ。少し考えれば答えなんて直ぐに出て来るだろう。そんな事も分からんのに幸福だの何だの言ってもあの神楽鈴は聞く耳、持たん。あのじゃじゃ馬が
「……それは、本当?」
『知らぬフリか或いは気付いて居ないか、それとも……
「…………」
『金将と王将では同じに見えて実際は見える景色が違うモノだ。良く考えて見ると良い』
天魔王はそう告げて青黒い炎と共に消滅するのであった。
「景色が違う……か。見えている様で、見えて居なかったのかも」