駒王町に降り注ぐ榴弾の雨。それらは町を破壊して行く。正に絨毯爆撃であり、それは空襲の様でもあった。それらに加えて青白く燃え盛る骸骨兵が街中に跋扈し始める。
「形振り構わなくなって来たな……‼︎」
リィティアは民家の屋根の上を伝い飛び移って移動していた。初手の作戦は潰された、だが幸いにも1番の懸念事項である狐花の注意を引く事が出来た。後は皆に託すのだが……。
——町中、骸骨兵だらけだ‼︎ その上、街全体が燃えている。本気で駒王町を滅ぼすつもりなのか⁉︎ オマケに……。
深夜の夜。その夜空が真っ赤な光で照らされまるで夕闇の様であった。何故なら、町中の至る所から突如として溶岩の様なモノが噴火の如く火柱となって噴出し、その溶岩によりアスファルトが融解しドロドロとなる危険地帯と化して居るからだ。
「ッ‼︎」
撃鉄の音が響き、後方から弾丸が飛来する。その弾丸はリィティアの頭蓋を撃ち砕く直前、斬り伏せられた。彼が持つ2振りの双刀で弾丸が両断されたのである。
——本人は表に出ず、遠距離から狙って来る‼︎ 溶岩が彼方此方に溢れ出ている所為で、足の踏み場が限られて来る‼︎
後方から狐花がボーイズ対戦車ライフルで狙撃して来るのだ。引き付けるとは言うが狐花の性格上、真正面から襲っては来ない。大概の場合、遠距離から狙撃や霊術による広範囲爆撃。いずれにせよ、接近を許してくれない。
『リィティア‼︎ 町の彼方此方で溶岩みたいなのが噴き出してる‼︎ どうなっているんだよ、コレ⁉︎』
『この付近、活火山とかは無い筈だけど……』
「考えられるのは雷花が、急速に地面を融かしたんだろうね。然もこの規模とは……」
——オマケに此処、龍穴があるんだよ。まさかと思うけど……爆発させて自分諸共、此処に集まる悪魔を鏖殺するつもりなんじゃ……だとするなら長居は本当に危険だ。
街路樹や街道が流動し流れて行く溶岩に飲み込まれて行く。一部の民家も垣根が灼き尽され溶岩に飲み込まれ焼け沈んで行く。時間が経てば経つ程、安全な場所は減って行く。更に爆轟と共に爆炎も彼方此方で発生し建物の残骸が溶岩の川に落ちてはその流れに流されて行く。
『暑い……‼︎ つか、熱いわ‼︎ 迫撃砲の砲撃は無くなったのは良いけど、代わりにこの熱さは洒落になんないわよ⁉︎』
溶岩が噴出した影響で気温が急上昇。咽せ返る様な熱さにより喉が焼ける。炎熱による熱さにより体力を消耗する。赫赫となる溶岩に近付けばその熱で肌が焼けてしまう。
「上昇気流で火の粉が舞ってる……‼︎」
悉くが燃えて行く。駒王町全体が溶岩に覆われるのも時間の問題だろう。それ程までの規模の光景を目の当たりにする。
——もはや日照りと言うレベルじゃない。温度を急速に上げて金属やこの町の地下の地殻である岩石類を一瞬で融点に達させ疑似的な溶岩流を発生させる……。温度を操るのならばそれは不可能じゃない。
術者である彼女を止めれば阻止出来るだろうけど、肝心な所……姿を見せようとしないんだよね。狙撃手は姿を見られる訳には行かないと言うし。
無茶苦茶。その一言に尽きた。やろうと思いやる者と言えばリィティアの中では狐花しか居ない。その間にも全く別の方角からも弾丸が飛来し間一髪の所で躱す。此方も常に移動しているが相手も常に移動している。
『おい、リィティア。大型のタンクローリーが突っ込んで来やがった‼︎ 爆発したから爆煙で何も見えねぇ‼︎』
『大型タンクローリーが割り込んで来ましたわ⁉︎ まさかそんなシンプルなド直球で来るとは……‼︎』
駒王学園でも想定外の事態に陥っている。駒王町自体、赤熱化したアスファルトに加えて流れる溶岩の川により長居は危険な状態と化している。一刻も早く避難するべきだ。
——まさかこんな形で攻めて来るなんて流石に予想出来ないよ。
『作戦失敗として退却を提案します〜。と言うか暑いのでもう帰りたいです〜。これ以上は危険ですよ〜?』
『ちょっと、グータラ⁉︎ 此処まで来て引き退ると言うの⁉︎ 骨折り損の草臥儲けじゃない⁉︎ このチャンス、見す見す見過ごせって言うの⁉︎』
「…………」
——ハルタの言う通りだ。時間が経てば経つ程、安全な場所は消えて行く。溶岩の上を飛んで行くにしても何時、爆ぜるか分からない。でもエリミアの言う事も正しい。
大型スーパーの屋上に飛び移り遮蔽物に隠れながらリィティアは思考を張り巡らせる。狐花が完全に予想外過ぎるやり方でこの町に居る全員に攻撃を仕掛けて来た。特定の面々では無く環境自体に攻撃するやり方。
その直後、大型スーパー其の物が崩れ始める。濁流の様に迫り来る溶岩の波に対してスーパーの建物自体が耐え切れず崩壊し、天井や壁、柱と言った残骸と共にリィティアは溶岩の川に落下した。
「……流石にこの状況は、マズいな」
幸いにも先に溶岩に川に落ちて居た元々は壁であった残骸の上に着地する。かと言って周りは赤熱化した溶岩。
「……熱っ」
溶岩自体、直近に存在する為にその熱が直接、伝わってくる。溶岩の川には巻き込まれた民家の残骸、自動販売機、街路樹や電柱等が流されて行くのが見える。
——溶岩の川って……町中に作り出す様な物じゃ無いと思うけど……ッ‼︎
「……何だ?」
——気配を感じる。雷花じゃない、じゃあ、コレは何なんだ?
「……なんだ、忘れ、ちゃっ、たの、かい? いや、
その時、リィティアの後方から声が降って来た。振り向いた先、勢いが衰えつつも流れ行く溶岩の川の上空に浮かんでいた。赤黒い煙が噴出し巨大な爪先を持つ掌のような形をした翼を形成している真っ白な幼女。その双眸はピンク色に仄かに光っており溶岩の光に照らされる様は映えて見える。それはまるで色が反転した狐花の様な姿をした人物だ。
だが、リィティアは見た瞬間、彼女では無いと直感で気付いた。狐花とは全く違う悍ましいナニカを感じ取れたからだ。彼女には無い、もっと別の狂気の存在が。
「何処かで見た覚えは無いけれど、何故か君の事は許せない気がする」
「そう? まぁ、許せ、とは、言わない、し、言う気も、無い、けど。じゃあ、研究、させろ」
その白い幼女の姿をした存在。レーキュは背中に生やした赤黒い煙で形成された腕翼を振るいリィティアへと襲い掛かった。
このシーン。実は何処かで……?