オカルト研究部。それはリアス・グレモリーがこの駒王町で拠点とする為に作り上げた隠れ蓑。場所も旧校舎に作られている為、一般人も然程、来ない場所。そして、そのメンバーは全て悪魔、転生悪魔でありリアス眷属の者達で占められていた。
「すみません……体調が悪くて……」
「部長、僕も……朝から怠さが抜けず……」
「コレは一体どう言う事……?」
その部室にてソファに横たわる転生悪魔の塔城 小猫と同じく転生悪魔であり2年生である木場 祐斗は、壁に凭れて窶れていた。朝から2人とも体調が悪くて顔色も悪い。動くのも億劫な程に消耗している様子であった。
「それよりも、イッセーはどうしたの? まさか……‼︎」
リアスは下僕の2人が体調を崩している。もう1人、この場に姿を見せない下僕も寝込んでおり起き上がれない程に消耗していた。そして、リアスが1番のお気に入りである『兵士』の姿も見えない事に焦りを見せる。
「いや、彼は……補習、だそうです」
「ほ、補習……?」
祐斗はリアス・グレモリーの『兵士』、兵藤 一誠と同じクラス。故に現在その居場所を知っていた。彼はまた何時もの様に覗き見行為に勤しんでいた所、対策を取られた挙句に教師に見つかり生徒指導室に友人共々放り込まれたのだと言う。
「担任教師が丸投げ……して、しまった様で……生徒指導室で只管に、問題集を解かされている……そうです。毎日、午後9時までやらされる、みたいですね」
「はぁ……イッセー、貴方は何をしているのよ」
午後9時まで補習授業。普通の生徒ならば根を上げかねない過酷な対応。最も同情される余地が無い変態3人組な為に、大半の生徒からは心配すらされなかった。寧ろ変態行為を目の当たりにする事なく隔離された事に喜びの声さえ上がる始末であった。
「……でも、マズい事に変わりは無いわね」
悪魔社会としては下僕の戦闘能力が非常に重要。リアスとしては戦力向上の為の特訓の為にもこの様な時間外拘束の延長は看過は出来ない。然も午後9時まで時間的拘束が設けられると殊更、面倒だ。
「部長……」
その時、朱乃が部室に入ってくる。リアスの命令で2人の体調が崩れた要因を調べて貰っていた。それに日本神話の介入も考えられるからそれも併せてである。
「朱乃。何か分かったの?」
「駒王町全体に魔を祓う破邪の気が微かにですが広がっています。私達は大丈夫ですが、下級悪魔となると太陽の光よりも毒となりますわ」
「出処は?まさか、あの廃教会跡の屋敷⁉︎」
「はい。その周辺が特に強い破邪の気や結界が発生しています。流石の私達でも近付く事がままなりません」
「魔王様クラスじゃないと耐え切れない、そう言いたいのね……」
悪魔にとって有害な気が駒王町全体に覆い始めている。日本神話の魔を祓う破邪の気。リアスにとってもコレは看過出来るモノでは無かった。
「悪魔家業に支障が出るわ……‼︎ この私の領地にそんなモノを振り撒くなんて‼︎」
荒れる様子のリアス・グレモリー。それを宥める朱乃……その様子を窓の外から一羽の烏が覗いていた。
『……扶桑の国の領土を悪魔の領土、とな?呆れた事を嘯くモノですね。流石は傲慢の象徴……ルシファーの妹を名乗るだけありますね』
『さてさて、姫島 朱乃。リアス・グレモリー。木場 祐斗。塔城 小猫。そして兵藤 一誠、ですか。姫島……ですか、本当に愚かな娘ですね。それよりも兵藤 一誠……赤蛇に力を付けさせる訳には行きませんが、その心配は薄いかも知れませんね』
その頃、狐花はと言うと。
「うーん、やっぱり此方の方が良いかもね。あ、次は此方を着てみて‼︎ 袖余りなら、それはそれで良いかも知れないわ‼︎」
『何つーか、完全に着せ替え人形やな……』
部室棟のアトリエ、其処でアイラの手で着せ替え人形の様に色々な服を着せ替えられていた。演劇部から多種多様の演劇用の衣装を借りて来たアイラは次から次へと狐花に着せて見てあーだこーだと頭を捻っている。完全にモデル扱いされていた。
「よーし、じっとしててね」
満足の行くコーディネートにしたアイラは狐花を椅子に座らせてキャンバスに筆を走らせる。黒と赤のゴスロリ衣装に銀髪の長髪ウィッグの上にヘッドドレスを着けた狐花の肖像画を描き始めた。今回は黒薔薇の造花によるブーケ持ちであり、ゴスロリ衣装にも薔薇の意匠や造花があしらわれていた。差し詰め薄幸の薔薇姫と言った所か。
「所でさ……貴方、何処の勢力?私の予想だと……日本の妖怪かな?」
「『!』」
筆を走らせながらアイラは唐突にその様な事を告げた。昨日の『狐の霊』の言葉から、少なくとも霊感が強いと踏んでいたが、更に踏み込んだ問い掛けであった。
『おまはん、マジで何モンや? 喧嘩売んなら、買ったるで?』
「あははッ、そんなつもりは無いわよ。単純に気になっただけ」
五七と会話が通じた。見える以前に知覚している事がはっきりと判明した。
『その前におまはんは何モンや?三大勢力の類なら、大したモンやと誉めたるで?何せ、眼前に居て全く悟られへん隠蔽能力は早々、居らんからな』
最も、殺すがな。とも五七は付け加える。明確な敵ならば躊躇無しに仕留める。そう言う気迫を見せる。
「……五七。アイラは違う」
『あん?ツー事は人間か?」
「違う」
『じゃあ、精霊か人に窶した神魔の類か?』
「違う」
『……じゃあ、自立型の神器か神滅具か?』
「違う」
『じゃあ、何やねん⁉︎』
「少なくとも『悪魔の駒』は無効化される存在、と言う事」
狐花は五七の言葉に対して全て否定した後、アイラの正体を含ませた言い方で告げた。この時点で狐花はアイラの正体を見抜いた様である。そして、敵意を見せて居ない事から少なくともアイラを敵と認識していない。
「あはは、貴方達、良いコンビじゃない」
『天然娘の子守りはしんどいで?何やるか分かったモンやない……で?おまはん、どう言うつもりで接触したんや?』
「他意は無いわ。強いて言えば、可愛い女の子と仲良くなりたいなって事。可愛いけれど、三大勢力の人達はちょっとお断りなのよね。あの連中、結構面倒くさいから」
そう言いながら一旦、筆を置いて狐花を抱き上げて頬擦りするアイラ。完全に可愛がる気しか見られない。
『つっても日本神話も大概、面倒臭いで?人の話聞かんし、暴れる時は災害やし……料理は襲ってくるし……』
その様子をみて五七は嘆息する。日本神話の二面性を知る者からすれば、大層傍迷惑な神話体系である事は否定しようもない。
「うーん、神々の怒りって題材の絵も描こうかしらね? 悪くないセンスだと思わない?」
『ちったあ、ブレてくれや。まぁ、細かい事は聞かへんが三大勢力に関してはお断りなんやな?』
「そう受け取って貰って良いわ。と言うかどちらかと言えば私はグノーシス的な部類だからね」
『成程な、納得したわ。名は体を成すってな』
アイラの言葉に五七は警戒心をやや解いた。早い話が彼女は耶蘇教を否定する立場の人間と言う事であった。
「んにゅ〜……」
今も頬擦りされている狐花はそんな声をあげる。余り擦られると嫌がりたくもなってくる様である。
「あ、ごめんごめん。それで、貴方達は日本神話の勢力で間違いない訳ね?」
『そうやな。で?可愛い女の子と仲良くなりたいのは本心やろうけど、結局の本音はどうなんや?』
今度は五七が踏み込み、アイラの本心を聞き出す。アイラの本音は——。