「……ゲホ、ゲホッ……‼︎」
黒煙が吹き荒ぶグラウンドの一角にてリアスは咳き込み蹌踉めきながらも立ち上がる。どれ位気を失って居ただろうか?いや、そんな暇すら無かった筈だ。何故なら自分達は古より生きる堕天使コカビエルとの戦闘の最中、そんな折に気絶なんてしていたら其の儘、死んでいただろう。
——何が、起きたって言うの……⁉︎
コカビエルが嗾けたケルベロス。眷属を率いて戦闘に突入して居た矢先、突如としてリアス達に割り込んで来た大型タンクローリーが爆発した所までは覚えて居た。
「悪魔の分際で悪運が良い様だな」
声が聞こえた。魔法陣の中央に佇むバルパーの声だった。リアスの周りには誰も居ない。『王』が独り、此処に居る。その他の者達は爆炎によって散り散りになってしまったのか。
「そう言うな、バルパーよ。悪運があったから今日まで我々は生き延びていたのだ。それは悪魔も同じだ。そうでなければ、こうして戦争を起こす機会は永遠に来なかったさ。戦争とは、相手が居なければ意味が無いのだからな。それに、流れ弾で死んで貰ってはサーゼクスを煽るには理由としては弱すぎる上に期待外れも良い所だ。高々、人間達の作ったモノで死ぬなんて無様な姿だと言い捨てるのも悪くは無いがな」
バルパーの後方上空にて睥睨するコカビエルはそう告げる。悪魔も堕天使も天使も、悪運が強かった。大戦時に絶滅しても可笑しく無かった。そして良かれと言う悪行を行なって尚も生存している。コレを悪運と呼ばず何と言おう?
「……弁は立つ様ね」
——あの爆発で皆と逸れて私だけがコカビエルの前に放り出された。考えうる限り最悪の状況ね……‼︎ 祐斗も朝から帰って来ない。何時、イッセー達が合流出来るか分からないわね……‼︎
そして、現れるのはケルベロス。然も1匹では無く2匹目迄も現れる。状況は悪くなる一方だ。
「……まぁ、良い。戦場では何が起こるか予測不可能なモノだ。何時、何処で、誰が、何を、起こすか分からない。だからこそ、戦争は面白いのだ。投げた賽がどんな目を出すか分からないだろう?それと一緒だ」
「コカビエル殿。完成したぞ」
「ッ⁉︎」
コカビエルが言葉を続けている最中、バルパーの声が割り込んで来た。その時、聖剣エクスカリバーが全て眩い光を放ち始める。
「今一度、エクスカリバーが一つになる」
その眩しさ故にリアスは思わず目を覆う。その光が収束した時、其処には一振りのエクスカリバーが青白い光を纏いながら魔法陣の上に浮かんでいた。
「見事だ。バルパーよ……‼︎」
その姿を見たコカビエルは静かに拍手を送っていた。対するリアスの心境は悪かった。
——悪魔にとって、聖剣は無類の危険を持つ。見るからにあの聖剣は危険だわ。お兄様でも真面に喰らえば一撃必殺は免れない。そう思わせるわ……‼︎
「術式が成った今、この魔法陣は私の手から離れた。そう遅くない頃にはこの町は完全に崩壊するだろう。文字通り跡形も無く、な」
「何ですって……⁉︎」
バルパーの言葉にリアスは絶句した。既に駒王町は火災に溢れている(そして溶岩が犇く地獄にもなっている)。その上に崩壊するとまで言われた。これ以上、無い位に危機となっている上にトドメまで刺されようとしていた。
「フリード‼︎」
「へいへーい」
リアスが絶句している矢先、コカビエルはフリードの名を呼ぶとおちゃらけた足取りでフリードがグラウンドに現れた。
「あんれぇい? クソ騎士悪魔クンは居ないじゃあありませんかぁ? 居るのは豚肉沁みた豚悪魔じゃあん?」
——腹立たしい口草ね⁉︎
リアスを見てフリードは豚肉だと揶揄した。精神がぶっ飛んだフリードから見れば悪魔なんてモノは死んで当然なのだろう。
「最後の余興だ。魔法陣のエクスカリバーを使え、フリード。ひと暴れしたい気分だろう?」
「ひゃひゃっひゃ。いやぁ、ボスは人使いが荒いったらねぇ‼︎ でもでもでもでもぉ? 最高にエクセントリックなカリバァァン‼︎ になったエクスカリバーを使えるなんてぇ、聖剣使いに取っちゃあ、光栄の極みってか、俺様こそ騎士王って事でオーケー? 現代のアーサー・ペンドラゴンは俺様にありって事でぇ、ちょっくらと悪魔の首チョンパしちゃいましょうか‼︎」
フリードは狂気的な笑みを浮かべて魔法陣に浮かんでいたエクスカリバーの柄を握り取った。
——ケルベロスが2匹、聖剣エクスカリバーに加えて後方にはコカビエルが控えている。静観するつもりだろうけど、連戦は厳しいわね。ケルベロスは私の滅びの魔力でも耐え切った。となれば……ッ‼︎
リアスは滅びの魔力を集める。狙いはフリード。状況は最悪、それでも負ける訳には行かない。
「聖剣諸共、滅びなさいッ‼︎」
—— 一撃で決める‼︎ イッセー達は絶対に来る‼︎ 待っている余裕も無い。なら、それまでに敵の数を減らす‼︎ 何故なら、私が『王』でありリアス・グレモリーなのだから‼︎
リアスから放たれた滅びの魔力。それは1人の人間を軽々、覆い尽くす程の大きさの赤黒い魔力の塊であった。
「残〜念〜‼︎ スペシャルな〜聖剣ちゃんと、今週の俺っちは、スーパーな回転率なんでぇッす‼︎」
「……何ですっ……て⁉︎」
フリードはエクスカリバーを逆袈裟斬りに滅びの魔力の塊を切り裂いた。文字通り『一刀両断』の言葉が似合う綺麗に真っ二つにぶった斬られた魔力の塊はフリードの左右に逸れて飛んでいきグラウンド奥に植えられていた防風林の木々に激突、その防風林を消し飛ばした。
「う〜ん。さっすが全盛期なカリバーちゃんですねぇ‼︎ 良いねぇ良いねぇ、俺様、気分爽快ご機嫌ですよぉ⁉︎」
——渾身の一撃だったのに、簡単に斬り裂かれた‼︎
「打ち止め?打ち止め⁉︎ 呆気ないモンだねぇ、見た所、豚悪魔にゃんはさっきのが最強の攻撃だったんじゃなぁい? 悪魔にとって聖剣ちゃんの一撃はぁ、即死だモンねぇ‼︎ だっから、近寄られる前に殺しちゃえいっねん‼︎ つ、ま、ぁ、り、ぃ? 打つ手なぁしって事ですね⁉︎ それじゃあ、死んじゃえよん、豚肉悪魔ちゃぁあん⁉︎」
フリードは下品な笑みを浮かべてリアスに飛び掛かろうとした時。銃声は
「おろ? なぁんで、今週はスーパースペシャルな俺っちの身体に、穴がぁ、それこそ銃弾が通った後が付いているんですかねぇ?」
フリードの身体には赤い染みが3箇所から徐々に広がっていた。その事に疑問が浮かぶフリードは硬直していた。否、脚が動かないし、口から血が溢れ落ちて来たからだ。
「ストーリー‼︎ 頼みますわよ‼︎」
「あいあいさー‼︎」
「お嬢様。今ですよ‼︎」
「ええ、分かって居ますわ」
ほぼ同時、其々全く別の方向から声が聞こえて来て青い影がフリードに向けて突っ込んで来る。お互いの移動速度は互角、つまり全く同じタイミングで交差する事を意味していた。
ソシャゲのストーリー消化で書く暇が無かった……。