「おろ? なぁんで、今週はスーパースペシャルな俺っちの身体に、穴がぁ、それこそ銃弾が通った後が付いているんですかねぇ?」
フリードの身体には赤い染みが3箇所から徐々に広がっていた。その事に疑問が浮かぶフリードは硬直していた。否、脚が動かないし、口から血が溢れ落ちて来ているからだ。
「……コレ、撃たれたって訳ぇい?」
ほぼ同時、其々全く別の方向から声が聞こえて来る。双方ともに青い影。その影がフリードに向けて突っ込んで来る。
片や長い金髪を靡かせた幼女ストーリーを肩に背負い陸上選手顔負けの俊足でこの場に飛び込んで来たエルネシア。片やナイフを手に同速の勢いで迫るエリザベス。
お互いの移動速度は互角。即ち、ほぼ同時にフリードへと襲い来る。
「頂きましてよ‼︎」
「させませんわ‼︎」
「ちょ、聞いてねぇよぉ⁉︎」
流石のフリードも左右から美少女2人が乱入して来る事は想定外。然も身体が銃弾に撃たれた為、不自由な状態のままの上に眼前にまで接近を許した挙句に死角。その為、フリードが選択したのは——。
「「ッ‼︎」」
金属質の高音が響き渡る。エルネシアの高硬度のブーツとエリザベスの硬質ナイフがぶつかり合う音だった。双方共にフリードの息の根を止める勢いの攻撃がお互い相殺される形でぶつかった。
「今は貴方の様な見知らぬ方と争う暇はありませんわ」
「それは此方の台詞でしてよ‼︎」
フリードは無理な姿勢で脚を態と滑らせて頭の位置を地面スレスレに下げた後、頭上で乱入者達が衝突した隙に後方へと逃げた。そして上空で寛ぐコカビエルに文句を言う。
「ちょいちょいチョイ⁉︎ おい、ボス‼︎ どうなってんだよ⁉︎」
「ほほう、招かれざる客と言うモノか。良い、実に良いぞ。見れば魔法陣でこの町が消し飛ぶ前に既にこの学園以外の全体が火災のみならず地面から噴き出した溶岩によって飲み込まれつつあるでは無いか。ふはは‼︎ 全く余興にしては実に楽しませてくれるでは無いか‼︎」
「何ですって⁉︎ 町が溶岩に飲み込まれているですって⁉︎」
フリードの声を柳の様に受け流すコカビエルは笑っていた。元々、悪魔陣営に戦争を吹っかけるつもりであったが見知らぬ面々が乱入して来た事に関しては歓迎の気持ちがある。そして、上空に居るが故に駒王学園以外が赤熱化した溶岩や立ち昇る黒煙と放たれる赫い光の光景が見えた。
その言葉にリアスが目を見開いて叫んだ。
「ほう、我々が破壊する前にこの町は既に全てを焼き尽くす溶岩に沈もうとしているのか。そう言えばこの国は火山大国であったな……。如何に悪魔と雖も溶岩に飲み込まれれば一溜りもあるまい」
「ククク、自然の脅威に脅かされる気分は如何かな? サーゼクスの妹よ。貴様の領土は今や大自然の脅威に飲み込まれた。貴様の滅びの魔力で町は再生出来まい?」
破壊と創造は対比。然し消滅は何も生まれない。
「言ってくれるわね……‼︎ この戦争狂め」
「おっと、お嬢さん。足下、注意だぜ?」
「え?」
その時、魔法陣の下、つまり地面から複数の爆音を伴い次々と地面が爆ぜ飛ぶ。それらはグラウンド全体に及び、魔法陣の上に居た者達、全員を巻き込む程の爆発が連続で発生し真っ黒な黒煙がグラウンド全体に覆う。
「おいおい、今度は何だって言、ってぇ⁉︎ ああ、俺っちのカリバーちゃんが、無い⁉︎」
「全く、品位の欠片も無い下品な方ですわね。ミジンコ未満ですわ」
「あ、わ、私の、脚が、ぁぁ……⁉︎」
「グルォォォ……‼︎」
「…………」
黒煙の煙と魔法陣の光が合わさってグラウンドの様子が俯瞰出来なくなった。聞こえてくる数々の声だけが状況を告げている。コカビエルは静かに腕を振るい光の槍を形成し投げた。
本日、何度目かの爆音が響き渡った。その轟音と暴風はグラウンド全体に広まる黒煙を一息で吹き飛ばし煙に隠れていた者達の姿が露わとなった。
「……ほぅ?」
コカビエルの視界に映る光景。両脚が吹き飛ばされ喚くバルパー。聖剣が手元から消えたフリード。そして呆然と立ち尽くして居たリアス。
「エル〜、とった‼︎」
「三十六計逃げるに如かず、ですわっ‼︎」
「あの視界不良の中で良く動けますね。しかし、逃がしませんわよ‼︎」
そして、突如として乱入して来た少女達。双方共にエクスカリバーが目的で現れ黒煙に紛れて奪い取ったのはエルネシアとストーリーであった。目的を済ませた彼女達は一目散に逃亡。その後をエリザベスが追う。
「あんのアマッ‼︎ 俺様のエクスカリバーちゃんを返しやがれ‼︎」
エクスカリバーを奪われたフリードがその後を追う。混沌が更なる混乱を招き想定外の光景へと移り変わって行く。
「悪いな、兄ちゃん。爆弾はまだ不発な奴が残って居たんだよ」
その追走を阻む様に遅れてグラウンドの大地が爆ぜる。その上にはフリードが居た為に簡単に巻き込まれる。エクスカリバーを奪われた為に死角からの爆襲。意識の外からの攻撃には対応出来なかったのだ。
「グガァァァ‼︎⁉︎」
吹き飛ぶフリード。エクスカリバーを奪ったエルネシア達はグラウンドを横断して校舎の方へと走り去って行く。その数秒後、校舎其の物が大爆発しその爆炎と黒煙に包まれた。爆発の衝撃で発生した爆風により発生した熱風と風圧はグラウンドは愚か駒王町全体に波及した。
「おいおい、校舎には爆弾は一切仕掛けて居ないぞ⁉︎」
『タデウス‼︎ 今、建物自体が大爆発を起こした‼︎ 何があった⁉︎』
「どうやら俺以外にも爆弾を使っている第三者が居たらしい‼︎ 悪い事に同じタイミングで現れた連中がエクスカリバーを掻っ攫って校舎に逃げお嬢様が追っちまってんだよ‼︎」
『何⁉︎ お嬢様がッ⁉︎』
眼下に現れていたのは初老一歩手前の中年男性。本人は焦った様子で通信機で話しているのが見えた。如何やらグラウンドの爆弾は彼の仕業だが校舎の大爆発は無関係の様である。
『おぉぉぉぉぉォォォォォ‼︎‼︎』
「ん? どうやら、今度は全く違う奴が現れた様だな。全く、この町はまだ飽きさせてくれないらしいな」
大爆発により崩壊する校舎の残骸を崩しながら巨大な影が黒煙と業火の火災を浴びながら悠々と聳え上がって行く光景がコカビエルの視界に映った。それは正しくこの町に強大なる存在が現れたのだと、確信を持って喜びの声を思わず上げた程であった……‼︎