雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

153 / 182
狂乱への道

 

 

 駒王学園の本校舎が大爆発に巻き込まれた。此処の点は作戦通り故に問題は無い。アカリア達が仕掛けた遠隔操作式の爆弾はエルネシア達がエクスカリバーを奪取しシノアの魔法陣で離脱した後、起爆する運びとなっていた。然しながら、その後に現れた奇怪な姿の『ドラゴン』に関しては想定外だった。

 

「……もしもし、皆。無事?」

 

 エルネシアがシノア達と合流して離脱したら、それ以外のメンバーも離脱する想定で動いている。つまり現時点で帰還して居ないのはリィティアだけとなる。

 

『ヒヤヒヤしたけど、シノア達もエルネシア達も五体満足、無事に離脱出来たよ。後はリィティア、君だけだ。何をしているんだ?』

 

『雷花の攻撃が止まったわ。後はアンタだけよ。ただ、ちょっと面倒臭い事になっちゃって』

 

 狙撃役、妨害役のメンバーも無事離脱した様だ。コレで残るはリィティアのみである事が確認出来た。

 

「面倒臭い事?」

 

『エルネシア達が何とかエクスカリバーを奪い取る事に成功し、シノア達の魔法陣を介して離脱した所までは良かったのよ。ただ、同時に追手も一緒に飛んじゃったのよ』

 

 エクスカリバーを狙う勢力が他にもある可能性は否定しない。と言うか有力候補として既に動いて居た勢力が存在していた事を把握している。

 

「ペンドラゴン家なんじゃないの? 僕達が動く前に動いて居たじゃないか」

 

『そう言う事。まさかエルネシアに追い着くなんて思っては居なかったわ……。それが、首長本人だから余計にね。流石に驚きはしたけど、抑え込んで手足を縛って無力化したわ。まぁ、何人か怪我したけど』

 

——……何と言うか無茶する人だなぁ、ペンドラゴン家の首長って人は。

 

「……雷花が乗り込まれるよりはマシかな?」

 

『想像したくは無いわ。それで彼女に関して如何するの? 流石に余計な争いはしたくは無いわ。余裕がある訳では無いんだし」

 

——手間が省けるかな。そもそもエクスカリバーを奪取する計画は立てても『使う』訳じゃない。聖剣なんて僕達でも持て余す代物だ。争うのは僕達じゃないんだから。

 

「いや、取引する。首長、と言う事はあのエリザベス・ペンドラゴンだよね?」

 

『え、ええ。その様ね……』

 

「元々、エクスカリバーは奪取してから彼女と取引するつもりだったんだ。時間を作る手間が省けたよ」

 

『……何か考えがあると言う事かしら?』

 

「そんな所だね。兎も角目的は無事に完遂、僕も帰還するよ。席を用意して置いてくれるかな?」

 

 リィティアはそう言い通話を終了させた。

 

「さてと、帰還するのは良いとして」

 

 周辺を見渡すも溶岩が犇き少しずつ足場が崩れ落ちて溶岩に沈んで行くと言う環境。それに『ドラゴン』の存在が目を惹く。自分達の目的が達成された以上、長居は無用と言える。

 

——骸骨兵の姿も突然、消えた。雷花が何かをしようと考えているのかも知れないけど、其方に余裕を割く理由は無いかな。

 

 狐花が召喚した骸骨兵達の姿は見えなくなっていた。理由は分からないが、何かしらの用意を始めた可能性がある。目的は完遂された以上、長居は無用である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レディの扱いとしては杜撰なモノですわね。紅茶の一杯も出さないとは」

 

 リィティアは拠点となる場所に帰還し取引をする為に用意した部屋に入って早々、そんな言葉が投げ付けられた。

 

「あはは、返す言葉は無いね」

 

 部屋には椅子が2脚しか置かれていない。その片方の椅子にはエルネシアと一緒に魔法陣で飛んで虜囚となったエリザベスが両手両足を拘束された状態で座らされていた。

 

「一応、エクスカリバーを巡っての敵同士だしさ」

 

「……否定しませんわ。捕虜の扱いとしては妥当ですわね。随分と入れ込んでいる方もいらっしゃって居ましたしね……。不安になるのも頷けますし私も逆の立場なら当然の措置をしますわ」

 

 エリザベスは皮肉そうに告げる。自分の現在地が何処なのか不明なのに余裕そうである。まぁ、この程度で慄く胆力では無いのは知っていた。後、彼女を拘束したのはシノアだと察した。

 

「して、取引をしたいと仰って居ましたが、私を人質にした身代金目当てですか? そんなにお金に困っている様には見えませんね」

 

「いや、そんな無粋な事は言わないよ。取引内容は1つだけ。呑んでくれるならエクスカリバーは君達に返すよ」

 

「……内容によりますわね。その言い振りだと私達の事も把握している様ですが……」

 

「そんなに難しい事じゃないよ。エクスカリバーを僕達が持っていると言う『事実』。君達がコカビエルが天使陣営からエクスカリバーを奪取し奪還の行動を起こしているのは知っていた。君達の目的もエクスカリバーだ。

 要件と言うのは僕達がエクスカリバーを所有していると言う『事実』だけがあれば良い。君達が奪還したと言う事実は都合が悪いんだよね」

 

「…………」

 

「簡単に言えばエクスカリバーの実物は君達に返却する。でも、そのエクスカリバーは僕達が持っていると言う『事実』だけが必要なんだ」

 

 詰まる所、秘密裏にエクスカリバーはエリザベス達に渡すけど口外的には『リィティア達はエクスカリバーを所有している』と言う情報が現実と言う状態が欲しいと言うのである。

 

「随分と奇妙な要件ですわね……。そんな面倒な真似をせずとも奥地に封印なりすれば宜しいのでは?」

 

「エクスカリバーの実物は僕達でも手に余るんだよ。それに保持したままだと君達は遅かれ早かれ突き止めて奪還しに来るんじゃないかな?」

 

 ペンドラゴン家が天使陣営に強奪されたエクスカリバーの奪還も視野に入れている。コカビエルからリィティア達に変わった所で諦めるとは思わない。相手が変わっただけである。

 

「……故に取引、ですのね。『持っている』と言う情報は虚構であれ確かに威嚇にもなり得ますが、その真意の目的までは話さないでしょう?」

 

 情報戦と言うのは充分な威力となる。何も武力だけが勝敗を決する要因とは限らない。情報が決定打になる事もある。

 

「そうだね。態々、其処まで話す必要は無い事は知っているでしょ?」

 

——少なくとも今は困る。嘘ってのは吐き続けないと行けない。その時までは。

 

「ええ、今は然程興味はありませんわ。貴方達が極悪非道の汚物では無い限り」

 

「それで、返答は如何に?」

 

「良いでしょう。私達としてもエクスカリバーは奪還したと言う事実を公表する必要性はありません。そもそも公表する価値がある相手も居ませんけど」

 

 取引が成立した。その事実だけあれば充分だ。

 

「断るかと思っていたよ」

 

「……ええ、その選択肢もありましたわ。ですが、今の私の状態で断れば如何なるか考えれば受ける以外の選択肢は消えますわ」

 

——何というか末恐ろしい胆力だ。相手は諜報機関の長、取引が成立したらとっとと縁を切るべきだ。悪戯に事を構える理由も無い。

 

「……そっか。納得の行く内容で何よりだ。くれぐれもバレない様に宜しくね」

 

「……仮にバレた場合は如何なってしまうのでしょうか?」

 

 エリザベスは取引が成立した後でも試すかの様にリィティアの出方を見ている。

 

「さぁ、如何かな。僕達は君達と人間と違って悪魔だし悪党だと言う自覚はあるよ?」

 

「……成程。随分と変な悪魔が居たモノですわね?」

 

——変って言われたのは初めてだよ。そんなに変かな?

 

 エリザベスとの取引は無事に終わった。ある種の勢いがあったが無事に進める事ができた。その後、彼女にエクスカリバーを渡し駒王町付近に転移魔法陣で送った。因みに手足を縛ったまま魔法陣で放り出したとシノアから報告を受けるリィティアであった。

 

 

 

 

 

「でも、素直に取引の内容を守るかな? 素直に口封じした方が良かったんじゃない?或いは何処か遠い場所に監禁して放置とか」

 

「……相手も組織よ。不審がるのは当然よ、だから貴方は脳筋なのよ」

 

「なにおう⁉︎」

 

「……リィティア。皆、不安だと思うけどさ。本当にコレで良かったの?」

 

「彼女が吹聴する価値があるとは思えないけどね。モノがモノだし、そうすると困るのは彼女達も同じだ。動き方からして、秘密裏に動いている……彼女達も大っぴらに動いている訳では無いからね」

 

「だと、良いけど。もう少しやり方があったんじゃ無いかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。