夢の良い所を教えよう。必ず終わる事だ。
夢の悪い所を教えよう。必ず覚める事だ。
『全く、ヤンチャな所は相変わらずの様だな。狐花よ』
「んに……?」
眼下は真っ赤に染まる溶岩が犇き何もかもが融解し溶岩の中に沈んで行く光景が見える。しかし、上空であるにも関わらず高度がある程度、一定のままであった。
「んにーっ‼︎」
気付けばつままれて居た。猫の襟首を掴むかの様に蒼黒い炎を纏う右手(天魔王)に狐花の服の頸付近をつままれて居る。
『これ、暴れるでない。落ちるぞ、馬鹿者』
「むにー……」
『ドラゴン』を屠る為、最大火力としてほぼ全ての霊力を結集させた弾丸の上に後述詠唱で更に重ね掛けを行って放出した核熱砲撃の反動で又もや掌に収まるミニマムサイズにまで縮んでしまっていた。こうなってしまっては殆ど戦力としてアテにならないレベルである。
そして片目の眼窩を突き破って生えた雷花は消滅しておりその場所にある眼球は何事も無かったかの様に健在であった。
『つーか、吹っ飛んだ先に天魔様が居ろうとは思って居なかったっスよ』
頬を膨らませている狐花の隣に五七が浮いて居る。こうなっては大きさ的には五七の方が大きく見えてしまう。それ程、小さく見えた。
『……知らぬは道理か。この界は元の町を複製した偽りの町。元来の駒王町とは別物だ』
「んにー。てんいー?」
『あー、なーんかそんな感じはしとったわ。夜とは言え空模様が可笑しかったからなぁ。今夜は月が見えとったのに急に新月になるのは可笑しいと思っとたし、狐花が大地を融解させたのにだーれも介入して来おへんから』
『左様。して、汝の目的はほぼ完遂したであろう?』
「うー?」
狐花は元々、エリザベスの目的に追随する形で悪魔を殲滅すると言う名目で今回の一件に絡んでいた。かく言うエリザベスは目的を達成したかどうかは不明ではあるが、様子を見る限りは大方、達成出来たと思われる(最も確認は必要と言えるが)。
『貴族娘もこの界から離脱した。付人も追い出した。残るは堕天の者と駱駝とその他の付随物』
『で、天魔様は何故、こうして居られで?』
『……如何に吾が構築したとは言え、何れは限界は訪れる。凡ゆる存在は壊れるべく存在している。結界や世界も例外では無い』
「んー、げんかいー?」
天魔王が構築した『偽りの駒王町』。その存在出来る時間には限りがあった。その為、維持限界が訪れようとして居ると言う。
『そうだ。この小さき界は崩壊まで猶予は然程残されていない。この界は欲界の狭間に位置する故、崩壊すれば内部に存在する凡ゆるモノは全て輪廻の外、即ち魔縁に排出される』
『マジですかい』
魔縁は天魔の坐す輪廻の外にある概念。その界は救われる事は無いと考えられてきた界。六道の何れにも行く事が許されなかった者が流れ付く第七の道。
「……うー」
輪廻の外に排出されれば蘇生は不可能である。何故なら生死の概念から外され、魂の概念すら抹消される……地獄ですら置けないと言うのはそう言う意味である。
つまり此処で争っている連中はそう遠くない内に全滅する事を意味していた。狐花が手を下さずとも全員纏めて完全に抹消される。強い弱いと言う意味合いも無視され、ただただ世界から消される。
『故に此処で戦う理由は無かろう。駄々を捏ねる前に出るが良い』
「んにー(ーwー)」ポーン
小さくなり幼児退行した狐花を天魔王は上空に広がった空間の裂け目に放り込んだ。裂け目には駒王町の裏手に聳える山の風景が映っていた。
「んにーっ‼︎」
『偽りの町』から放り出された狐花。五七や恐介の様に自力で飛ぶ力は無い上に、ミニマムサイズにまで縮んでしまい大幅に弱体化してしまっている為、放物線を描く様に落下した。そして軽い音が鳴った。
「あら、随分と愛らしい姿になりましたわね」
「んに?」
落ちた先、其処はエリザベス・ペンドラゴンの膝の上であった。駒王町の北側にある低い山の木々が生い茂、駒王町を一望出来る開けた場所に生えている木に凭れて座る彼女の膝に落下した様である。
『あー、えーと。コレは色々あってな』
「……人間ではないと言うのは知っていますわ。しかし、此処まで劇的に小さくなるのは流石に初耳ですわね」
「んにー……(ーw<( 」
「あら、見た目も幼くなりましたが精神も幼くなって居るのでしょうか? 可愛らしい事」
自身の膝の上で周囲を見渡したりしているチビ狐花の姿を見てエリザベスはついつい、その頬を突いて見る。この場所から見える本当の駒王町。先程迄は火災に溢れていたのだが、一斉に火の勢いは収まりつつあった。消防隊による賢明な消化活動により鎮火の目処が立ってきた様である。
「……私は目的を果たしましたわ。して、貴方は如何ですか?」
エリザベスはそう言い傍に突き刺さっている統合されたエクスカリバーをチビ狐花に見せる。リィティア達は反故する事無く約束通り、エリザベスにエクスカリバーを譲り渡した様であった。
「んにーっ‼︎」
チビ狐花を両手で縫い包みの様に持ち上げるエリザベス。かく言うチビ狐花は両手を上げて何時もの様子を見せる。精神も身体に引っ張られて意思疎通が難しくなっている。
「その様子ですと上手く行った見たいですわね。さてと、長居は無用ですのでお暇したい所ですけど」
先程から連絡を告げる着信が引っ切り無しに鳴っている。心配性な執事が連絡を入れて居るのであろう事は容易に想像できる。
「ライアン達も無事なのは喜ばしい事ですわ。しかしながら今の貴方の様子を見ると少々、不安になりますわね。貴方の屋敷に送って差し上げますわ」
エリザベスはチビ狐花を自身の肩の上に置いて歩き始めた。幸い彼女の屋敷には一度、赴いた事がある。場所は分かっているのである。懸念材料と言えば現在、駒王町全体が火災現場真っ只中なので消防隊に道を阻まれる事位であろう。それに抜き身のエクスカリバーを持っている故に殊更、誤解を招く可能性がある。
『お嬢様、お嬢様‼︎ ご無事ですか⁉︎』
「ライアン。ええ、問題ありませんわ。其方も無事ですか?」
『はい。タデウス共に問題ありません。しかし、また無茶を……一時はどうなるかと……』
「今回は心配掛けましたわ。ですが、目的であったエクスカリバーの奪還には成功しました。ですが今回の件は秘密裏に、公表すると要らぬ争いが生まれますわ。あの口の軽そうなミジンコには通達せぬ様」
『……承知しました。して、現在は何処に居られるのですか?』
「皓咲 雷花さんのお屋敷にて落ち合いましょう。ご本人が今、有事の状態ですので」
『……分かりました。では、後程』
「さてと、次はあの
そろそろ気になる? レーキュがこの世界に来る直前に居た世界
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(/・w・)/
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(ーωー)