雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

181 / 182
燒凍同舟

 

 

 

『勿論、休戦ってのは俺様の一方的な提案でしか無いで。お前らが休戦なんて絶対に嫌だ、戦争や‼︎ 徹底抗戦からの殲滅や‼︎ 命の限り戦うんや‼︎ と、言うんやったらしゃーない……駒王学園の生徒さんやらには尊い犠牲を伴うんやけど、俺らも戦争を選ばなしゃーないわ……で、どうする? 此処にはお前しかおらんからお前さんが決めい』

 

『ああ、言っておくんけどな。今後はって意味やない。今の状況やと部外者に被害が及ぶやからや。周りに誰も居らんかったら、焼け骨にしとるわ』

 

「ですよね。そんな旨い話があるとは思っていませんよ。部長が聞けば恐らく付け入るつもりでしょうね」

 

 休戦と言う建前でくだらない座興を言い出すに違いない。狐花の赤紐角は五七達から見ても万全とは言い難い……言わば応急装置からの不完全な安全装置に過ぎない。厄介なのはその境界線(・・・)が曖昧かつ把握し辛いと言う事であった。場合によっては知らず知らずの内に境界線線上を通り越してしまう可能性もある。

 

『あの単細胞生物ならそうするやろう光景がアリアリと思い浮かぶわ。で、如何するんや?』

 

「私も死にたくは無いので一先ずはその提案を受けて置きます。正直な所、今の私で腕力でも勝てる気がしません」

 

『賢明な判断ですね。あの赤豚ならプライドの高さから拒否していた事でしょう。どうせ、自分の面子しか頭に無いでしょうから』

 

 恐介はリアスの心境を把握していた。何せ、前回の堕天使の一件で眷属が行方不明になっている。騎士は半ば離反同然の行方不明。女王は普通に行方不明。何方も再起の見込みは薄い。

 その為、本人としては有力な奴隷が手元から零れ落ちた事により焦って居る事だろう。手持ちの駒を失くし戦力がガタ落ちした。然も戦死では無く見限られた形もある為に本人の悪魔社会の評判にも関わるのだから。

 

「ぐうの音も言えませんね。悠人さんや朱乃さんが行方が分からなくて、内心は焦っています」

 

『何や随分と言いやるやないか』

 

「先程の烏からどうせ知っていると思いましたので」

 

 中々、強かである。大将が愚かであると部下も愚かになるとは言うがどうやら小猫は違うらしい。五七と恐介は子猫の認識を改める事にした。

 

「……何故、此処に悪魔が居る?」

 

 その時、底冷えするかの様な声音が隣から聞こえた。先程までグミに夢中であった狐花が首を動かして小猫を射抜く様な視線を向けていた。普段ならば劫焔の様な憎悪をぶつけて来るのだが、今の狐花は凍て燒く様な零度の様な憎悪を向けて居る。

 

『お、おい……焼き鳥』

 

『何ですか、イヌッコロ。次いでに言うならば八意思兼様の策謀はご破産ですね』

 

 狐花の様子から五七と恐介が憎悪の熄滅化は無駄だった事を悟る。激昂して暴れ回るのと打って変わって底冷えする様な憎悪。それは黄泉の様な絶対零度。そして、間近故に回避は間に合わない事を意味していた。

 

「ッ⁉︎」

 

 小猫が気付いた時には既に右腕の温度が急激に下がっており感覚が喪われていた。その範囲は徐々に侵蝕する様に体全体に広がろうとしていた。急激な温度変化で細胞が破壊される。そもそも、狐花自体に接近する事自体が自殺行為だと再認識するが遅かった。最初は近付いても何とも無かったがその認識は甘かった。

 

「ホレ、こんな時くらい喧嘩すんじゃねぇ。チミっ子共」

 

 その時、視界の隅から腕が伸びて来て小猫の視界を横切り狐花の口の中にチュッパチャプス(神令なるサクランボコンソメ味)を突っ込みながら紫先生が隣に現れた。

 

「(ー〜ー)」

 

 口の中にお菓子が放り込まれた事により凍結の危機に晒され絶体絶命だった小猫は九死に一生を得た。同時に腕の感覚が徐々に戻って来る。狐花にチュッパチャプスを放り込んだ後、紫先生は点呼を続ける為に奥の席の方に歩いて行き確認が終わると先頭へと戻っていく。

 

「た、助かった……」

 

 攻撃の姿勢を見せずに近付く者を葬る。飛び道具らしい攻撃を持たない小猫からすれば天敵。もう少し遅れていたら今頃は凍死していただろう(そして狐花は口封じでバス諸共、滅ぼしていただろう)。

 

「確認は終わった。コレより東京都の方へと向かう。途中でパーキングエリアに寄ったりするからな。手洗いとかはその都度、設ける。予定だと3時間を予定している。後、具合が悪くなったりしたら直ぐに言う様に」

 

 バスのエンジンが始動し先頭に停車しめいる1号車の車両から走り始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……こんなクソ忙しい時に何で管理が面倒臭い全校校外学習をやらな行かないんだよ……」

 

「文句を言っても仕方ありませんよ。紫先生」

 

 先頭の席で紫先生と明日風先生はそんな話をしていた。と言っても紫先生の愚痴に等しい内容ではあるが。

 

「しっかし……」

 

 紫先生はスマホを弄りSNSで明日風の方へと送る。口で話す訳には行かないので隣同士に座っていてもSNSでの筆談を選んだ。

 

『なぁ、やはり今回の一件。連中が絡んでいると思うか?』

 

『可能性は大いにあり得ます。シグノス、でしたか……となると狙いは』

 

『兎は2匹追っても無駄骨とは言うが……さて、何方に意識を向けるか』

 

『……少なくともシグノス側には把握されて居ると判断するべきでしょう。優先順位を考えれば』

 

『やはり……其方になるか? いや、片方を放置すると後が面倒だな。一層の事、纏めるか?』

 

『制御出来るのでしょうか?寧ろ深刻な被害が及ぶかも知れませんよ』

 

『知らん所で大暴れされるより視界の内に留めてくれた方がまだマシだ。となれば、やはりネックになるのはチミっ子か』

 

『如何するのですか?』

 

『本音を言えば御しきれん。が、誘導は出来る筈……上手く動いてくれればの話にはなるがな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。