「……それらを提示出来たのならば、私はこの地から退く。さぁ、提示を求めたモノを全て見せて貰う……出来なければ、この『駒王町』共々消えて貰う。或いは今すぐに『駒王町』から国外退去するのであれば、この町の悪魔関連の施設を破壊するだけに留め、この件では貴方達に危害は加えない」
『頭、混乱するやろ?簡単に纏めたらぁ。
1、請求された証明証拠をこの場で全て提示する。
2、『駒王町』共々、全員仲良く野垂れ死にする。
3、尻尾巻いて『駒王町』を放棄して冥界に帰る。
さぁ、領主サマや。どうすんや?逃げるか?それとも、焦土を枕に野垂れ死ぬか?』
五七は分かりやすくリアスに選択肢を突き付けたのであった。リアス達は何れの選択肢もあり得ない。1は当然物理的に不可能。2なぞ、以ての外……日本神話陣営だと言うのに自分の領域の人間を平然と斬り捨てる態度に納得が行かない。3は一見、平和的な解決方法。しかし、その場合だとリアスの立場が崩壊する。それは評判の失墜を意味する。ならばどうするか?
「そんなの4番の『お前らをぶっ飛ばして町を、皆を守る‼︎』に決まってんだろ‼︎」
赤蛇の一誠が左腕に赤く機械的な籠手が具現化されて吼える。
「そうですわね。後から出てきた方々に愚痴愚痴言われる筋合いはありませんわ」
「出てけと、言われる筋合いは、無いです……‼︎」
「そう大人しく引き下がれる程、聞き分けが良くなくてね……」
一誠の啖呵に他の眷属悪魔も呼応する形で発破が掛かる。破邪の気でくたばり掛けていたと言うのに士気で持ち直す……。
「イッセー、良く言ったわ。此処は私の領土、日本神話が何と言おうと不変の事実。私の管理する領地で悪事を企むと言うのならば容赦はしないわ‼︎」
リアスも右手に魔力の収束させて臨戦態勢に移る。他の眷属悪魔も既に応戦する気満々で構えている。どうやら、彼女達はやる気の様であった。
『おいおい、正気か?いいや、戦場に赴く者達は全員、頭イカれた連中ばかりやったな……』
『勇気と無謀は履き違えるモノではありません。が、彼女らにとっては背水のつもりなのでしょうね……退く事も出来ないが故に已むを得ない決死の戦闘に臨む……』
狐花の傍に控える五七と恐介はリアス達の戦意にそう評価する。無論、敵の戦力は未知数、油断する理由は無い。かくも赤蛇の一誠が居る、その時点で脅威度は跳ね上がる。
「行きなさい‼︎ 私の可愛い下僕達‼︎ 私達の力を見せつけなさい‼︎」
「「「はいっ‼︎‼︎」」」
リアスの号令で眷属悪魔達が動き出す、朱乃は背中から蝙蝠の翼を生やして上空へ、一誠を中央に左右に祐斗と小猫が揃って前へと押し迫る。
「……仕方ない。こうなるのならば初めから滅ぼせば良かった。後悔しないように……」
狐花は両手に焰の塊が現れ口遊む。その言霊は蹂躙の為の祝詞。
「何かしようとしている! 皆、気をつけて‼︎」
「はいっ‼︎」
「おう‼︎」
祐斗は狐花のやろうとしている事が詠唱であり、仕掛けて来る事を察知して警戒を促す。
「三千大千世界に轟かせし兵達よ‼︎ 兵は城、兵は石垣、兵は軍、事かくあれよ。燼滅されし戦場の夢想の梦の彼方より、今一度、現の界に再演を。業火と黒屍に刻まれしその記憶を、此処に解き放たん。
瞬き、息飲み、見惚れるな。闃寂を、寂寥を、静寂を、頽廃が汝らの世界ぞ。果てよ、潰えよ、絶えよ、壊れよ。解脱されし魂の宴は終わらぬ、遍く戦場は此処にありや。鮮血、流血、失血、鬱血、舞い踊らせて天上天下を赫く染め上げよ。混沌の坩堝、汝らの生きる意味を此処に解き放て‼︎」
狐花は詠唱。その傍に小さくて青白く揺らめく炎の塊が浮かび上がる。否、次々と炎の塊が大宇宙の星々の煌めきの様に次々と生まれ出ずる。その数は10、100、否。もはや、視界を焰の塊で埋め尽くさん限りに現れる。
『おいおい……結界、保たへんで……‼︎ つか、結界の意味無ぇー……』
『これはこれは……お嬢様も殺る気ですね』
「これが、狐花様の能力……?と言うか、コレはヤバ過ぎっすよ⁉︎」
「この高揚は、この躍動に、この歓喜が、この自由の、この幸福を、遍く命に分け与えよ‼︎ 殺戮こそが甘美なる美酒、今宵、開かれるは戦場の宴なり‼︎」
その詠唱の後、その無数の炎から日本刀、素槍、種子島が次々と生み出される。それらに重なる形でぼんやりと浮かび上がる人間達の幻影が現れた。青白い焰を眼窩から覗かせた頭蓋骨に胴体は青い骨の骸骨の鎧武者の幻影達……骸骨が戦国時代の足軽の姿形をした者達がリアス達を何層にも包囲する形で夜の街中に溢れんばかり現れた。たった1人が相手かと思えばあっという間に人数差を覆された。
「こ、これは……⁉︎ 魔獣創造の亜種⁉︎」
「か、数が多過ぎます……‼︎」
「笑えないよ、こんなの……‼︎」
骸骨兵の幻影達の軍勢の壁に阻まれて狐花の姿は完全に見えない。辺り一面、骸骨幻影の海だ。狐花との間に多数の骸骨兵の幻影が立ち塞がっている。迂闊に飛び込めば忽ち幻影の海に飲み込まれてバラバラにされてしまうだろう。仮に前方を吹き飛ばしても射程範囲外から攻撃されたりすれば終わりである(特に味方の事など考えそうにない狐花の即死級の横槍)。
「くそ⁉︎ 卑怯だぞ‼︎」
『卑怯?兵は詭道って言うやろ?(幻影のコイツらが暴れ出したら、この辺、まず保たへんぞ……)』
一誠の神器の能力は一言で言えば『倍化』。その為にはインターバルが必要。一対一ならばいざ知らず、この様な人海戦術は鬼門と言えた。と言うよりも祐斗、小猫、一誠は何方かと言えば少人数同士の戦闘に向いている。この様な状況で戦えるのは——。
「こんな隠し玉を……‼︎ 朱乃‼︎」
リアスの滅びの魔力ならば幻影の軍勢を吹き飛ばす事が出来るだろう。だが、前衛に下僕である眷属悪魔が居る。この状況で放つのは危険、誤射すれば消し飛ばしてしまう。故に制空権を維持する朱乃に指示を飛ばす。
「部長……屋根の上に居る鉄砲を持った幻影に狙われて動けそうにありませんわ……‼︎」
民家の屋根の上にも骸骨兵の幻影が溢れんばかりに出現していた。その者達は種子島を装備しており、銃口を朱乃に向けている。如何に朱乃が『雷の巫女』と謳われようとも指向性のある雷、一方を攻撃してもそれ以外の幻影達に蜂の巣にされる。
「倍化はまだかい?」
「部長や朱乃さんの言う破邪なんとかの所為で……倍化の速度が悪いぜ……‼︎」
「……私も徒手空拳ですので、あの人数に組み付かれたら終わりです……」
威勢を上げたものの『破邪の気』の影響は抜けた訳では無い。そうしている間にも幻影達は少しずつ包囲網を狭めて来る。
「時間の無駄……殺」
「やれやれ、好き放題暴れてくれるじゃないか。本音を言えば吾も交ぜろと言いたいが……そうは言ってはおれんのが惜しい所だ」
その時、地上に立っているリアス達と狐花やベンニーアの足元の影から紫色の爪をした人間の腕が無数に伸びて来てその脚を掴み、腰を掴み、胴体を掴んで動きを止める。朱乃は地上に居なかったが後方から伸ばされた同じ腕が四肢を掴み組んで拘束する。
「な、何⁉︎ 今度は何⁉︎ く、振り解けない⁉︎」
「くそ、離せ‼︎ 離しやがれ、こんちくしょう⁉︎」
「……ぐ、強い力です……」
リアス達は突如、現れた人間の腕に困惑している。腕の力は非常に強く、人間よりも身体能力が高い悪魔や転生悪魔と雖もビクともしない。
「……ちょちょ⁉︎ 何故、ベンニーアさん達も組み付かれて居るんスか⁉︎」
「……暴れ過ぎると、骨を折られるよ?」
「ヒィ⁉︎ 先に言って欲しいス‼︎ そう言うの⁉︎」
かく言う狐花とベンニーアもリアス達と同様に無数の腕に掴まれて拘束されていた。ベンニーアに至っては完全に巻き込まれ、狐花は特に驚かずついでに骨折させられると注意した時、リアス達の方から小気味良い、具体的に言えば骨が折れる音が聞こえた。
「ぎ、が……あァァ‼︎⁉︎ ほ、骨……折れ……⁉︎」
「イッセー⁉︎」
「イッセー君⁉︎」
どうやら振り解こうとした一誠の何処かの骨が腕によって折られたらしい。そりゃ、いきなりホラー映画宜しく無数の腕に掴まれては振り解きたくもなる。
『狐花〜……まさかやと思うけど……』
「ん、裏幕府の
『そーいや、屋敷の地下に裏幕府に繋がる水路があったな……其処を通りゃ最短経路で此処に辿り着くわなぁ……』