雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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力の在り方

 

 リアス・グレモリー率いるリアス眷属と狐花の武力衝突。此処、駒王町を舞台に理不尽な戦禍が巻き起ころうとしたその時、想定外の事態が発生した。空間が歪み噴出するかの様に現れた無数の『腕』。それはこの場にいる当事者達を絡め取り動きを封じた。

 

「ん、裏幕府の付喪神(ヒト)が来ちゃったみたい……」

 

『そーいや、屋敷の地下に裏幕府に繋がる水路があったな……其処を通りゃ最短経路で此処に辿り着くわなぁ……』

 

「……こんな事、出来るのは1人しか居ないけどね」

 

 そう呆れた時、斬撃の音が響き渡ったかと思うと狐花と一誠達の間に壁を作っていた骸骨兵の幻影達が上空へと吹き飛ばされ、其処に1人の女性が立っていた。

 

「全く、おチビの嬢ちゃんはヤンチャが過ぎるさね」

 

 女番長。一言で言えばそんな印象を植え付ける出立ちであった。黒い臍だし学ランの上に和装マントを羽織り細い垂幕が靡いている(垂幕には『天下無双』と『天上天下唯我独尊』と言う文字が金字で書かれていた)。艤装が備わり大太刀を3振、佩き……その手に持つ長巻は肩に担いでいる。

 

「え、援軍⁉︎」

 

「誰よ⁉︎ こんな真似をするのは貴方だと言うの⁉︎」

 

「本音を言えば殴り合いたい所だけど、吾は強い奴としかやらない主義でね……まぁ、それはさておき……汝らに審判を告げに来た。それだけさ」

 

『うわぁ、よりにもよって加古が来るたぁな……』

 

 加古。古鷹重巡洋艦2番艦。『裏幕府』に属する重巡洋艦『加古』に宿った付喪神が人の姿を得て顕現した1柱である。

 

「審判を告げに……?」

 

「前置きは要らないよな?悪魔共。不法滞在つー事で、国外退去だ。冥界に帰ってチェスでもしているんだな」

 

『あー、裏幕府も分かっていたんやな。まぁ、当然やな……うん』

 

 加古はリアス達に有無を言わさずに『国外退去』を通告した。リアスは『領土』や滞在を宣う際に必要な証明を提示する事が出来なかった。故に日本神話や『裏幕府』はリアス達に『国外退去』を決定したと言う訳である。まぁ、分かりきった光景ではあるのだが。

 

「お、おい‼︎ いきなり現れて何言ってんだテメェ‼︎」

 

 骨が折れても口は変わらず、一誠は突然闖入して来た加古に吠える。

 

「ハッハッハ‼︎ そう啖呵を切れる奴は嫌いじゃないさね。でもなぁ、みかじめ料も払わずに勝手に縄張りを主張すんのは筋に合わねぇよ。この国の土地は日本のモンだ。汝らは悪魔であり異邦モンだって事、忘れんじゃないさね。そう言う不法滞在する連中は発覚次第、速やかに国に帰って貰うってのが日本憲法の決まりって訳さ。その決議が遅れたのはちと悪かったね。

 まぁ、コッチのおチビの嬢ちゃんみたいに『鏖殺万歳!』みたいな対応じゃない事に有り難く思ってくれって事よ。口上は終わりだ、さっさと帰ってチェスで遊んでな」

 

 加古は言いたい事が終わったのか、リアス達を掴む腕が引く力が強くなり、徐々に地面の中へと引き摺り込もうとする。

 

「な、なぁ⁉︎ ちょ、地面の中に引き摺り……⁉︎」

 

「くそ⁉︎ 動け、動けよ‼︎」

 

「冥界の、何処だったかな?まぁ、冥界なら何処でも良いだろうさね。行き先は知らねぇけど、問題無いよな?じゃあ、あばよ。2度と会わない事を祈ってるよ」

 

 暫く持ち堪えていたが、急速に引き摺り込む力が強くなりリアスを始め、その眷属悪魔達は腕によって地面の中に引き摺り込まれて視界から消えた。上空に位置していた朱乃は背後に現れた歪みの中に引き摺り込まれて此方も視界から消え去った。

 

「……さて、嬢ちゃん。幻影(コレ)、さっさと消せないかい? ケンカ相手は冥界にお帰りになったから振りつける相手はもう居ねぇぞ?」

 

「…………むぅ」

 

 思わぬ邪魔が入ってしまった。振り上げた刀、格好付かない状態……此の儘、暴れ出すのも宜しく無い。狐花は渋々と言った形で唇を尖らせた。その後に幻影達は薄らと消え去っていき、数秒後には綺麗さっぱり消え去り、普段の町中の夜中の光景へと戻った。

 

『いやぁ、加古の姐さん。悪ぃな……狐花が止まらんくて』

 

「……おチビの嬢ちゃんが悪魔連中と揉めていると聞いてね。大方、騒動を起こすと思って来たら案の定って奴さ。例の地下水路を有り難く使わせて貰っているよ。彼方の方が圧倒的に早いからね」

 

『……しかしまぁ、裏幕府もゴタゴタしとったんちゃう?』

 

「吾は余り興味ないから今迄やってなかったけど、経理とか計算やって奴はテンテコ舞いでさ。英国の連中やら独国、オマケに伊国、露国の連中の付喪神がドッと増えたらしくてね……人手が足らんくて足らんくて吾まで担ぎ出されてさ。もう、事務処理は懲り懲りだよ。ドンパチやるのが吾にはお似合いだからね。他にもビザの更新時期が重なったから余計にね」

 

 裏幕府が今迄動けなかったのは、付喪神達が一気に増えた為に、その事務的な意味での処理に追われていたらしい。後、日本神話の荒神化の影響も受けていて其方の件も合わせて来た為に忙殺気味だったと言う。

 

「何というか……裏幕府は行政機関みたいなモンなんスかね? と言うか軽く極められているのでそろそろ、離して頂けるとありがたいんスけども」

 

「おっと悪い悪い。それから自己紹介がまだったね。吾は加古。古鷹重巡洋艦、2番艦さね。汝は……確かベンニーアとか言ったかい?渡航の申請は届いているよ。ビザの更新は『裏幕府』でやってるから、時期になったから来ると良いさね」

 

「わ、分かりましたっス。無数の腕に掴まれるって……身の毛のよだつ体験っスよ」

 

「ハッハッハ。肝試しの時にゃ効果は覿面って訳さ‼︎ ……駆逐艦と言ったおチビの子達を泣かし過ぎて半年くらい禁酒令出されちまったけど……その時は地獄だったよ……」

 

 加古はその時の事を思い出して涙を呑んだ。飲兵衛である加古にとって禁酒令は地獄の拷問に匹敵する懲罰だった様だ。周りが酒を飲んでいる光景を見ながら水だけ出される悪夢は本人には堪え難いモノだった……。

 

「良し、取り敢えずこの地の悪魔共を叩き出した事だし後始末だな。悪魔共が置いた施設の破壊とかのその件は明石とかヴェスタルに任せれば良いさね。おチビの嬢ちゃんは早い所、寝な寝な。胸、デカくならないぞ〜?』

 

『まぁ、否定はせぇへんわな」

 

「うっさい……‼︎」

 

『では、後の事は宜しくお願いしますね。加古殿』

 

「おう。まぁ、悪魔共がどう動くかは分からないが……その時はその時で臨機応変にやるしか無いさね。兵は常勢無しとも言うからね」

 

 一夜限りの衝突。それは裏幕府の介入により水面下にて終わりを迎えた。狐花達は後始末を加古に任せて屋敷に帰る事となった。

尚、冥界に強制的に飛ばされたリアス達は不幸か幸か、グレモリー領に不時着した。悪魔には転移魔法がある為に翌日になれば舞い戻って来る可能性がある……何はともあれ、明日にならねば何が起こるかは分からないのもまた事実と言えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遠出の買い物帰りに懐かしい魔力を感じたと思ったら……アレはグレモリー家の魔力ね〜。それ以外に感じたのは霊力……溢れんばかりの奔流……油断したら簡単に飲み込まれちゃいそうな、そんな霊力……」

 

 某所にて、リアス達と狐花の揉め合いを目撃している影があった。

 

「う〜ん……コレは荒れるわね。今迄は悪魔、天使、堕天使の三つ巴は歪な均衡を保って小競り合い程度だったのだけど……見えちゃった(・・・・・・)のなら仕方ないわね〜。当事者になんてなりたく無かったのだけど……報告しなきゃ行けないわね。ビザの更新が近いのに……面倒な予感ね……困っちゃうわ」

 

 そんか独り言を呟きながら通りすがる影には悪魔のような翼爪の翼、天使の様な有翼の翼が生えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『加古』
出典:ブラック・サージナイト
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