雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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 良く考えなくても狐花は普通に生活破綻者だと思われる。


日曜日の狂想

 

 

「やっほ、2日ぶりかしらね?思いの外、早く話が纏まったみたいでね」

 

「あ、お久しぶりと言うには早過ぎますでしょうか?」

 

「……コレも神の意志です。日本神話の方々は『信仰は別段求めない。自分の信じる道を行け』との事でした。故に私は神の意志を信じて参りました」

 

 日曜日の朝。皓咲屋敷の本屋敷の一室。其処に白衣の緋袴と言う巫女服を身に纏った4人の少女が相対して座っていた。日本神話陣営に亡命したアイラ、保護されたアーシア、そして元転生悪魔であった静香の3人が家主である狐花と顔を合わせていた。

 

『お嬢さん方、一先ず身の振り方が定まった様で何よりです』

 

「あはは、組織に属するってのはそう言う事だからね」

 

 3人は今日から皓咲屋敷にて暮らす形となる。そもそもアーシアと静香は滞在する場所が無かった事もあって矢面に立った経緯がある。

 

 アイラの場合、狐花よりも先に駒王町に来ていたが、二つ返事で引っ越す事を決めた。『アイディアは刺激の中で見つかるモノ』、らしい。

 静香は一連の流れのこの境遇も『神の意志』であると捉えている。狐花と出会い、転生悪魔の呪縛から解放された事も、全て『神の意志』である。故に戦う道を選んだ。『悪魔を殲滅する』……その使命を抱きもう迷わない意志を固めた(と言うか、そう言う意味では狐花と大差ない)のであった。

 アーシアは同じシスターであった静香と共に行く道を選んだらしく着いて来た様である(高天原に滞在するのは返って危険と言う意味もあるのだが……)。

 

 そして、静香とアーシアの2人も駒王学園に翌日に編入する予定であった。

 

『して……差し当たり色々と買い揃える必要があると思います。お嬢さんは、私物と呼べるモノが然程ありませんので』

 

「そう言えば、狐花ちゃんのこの屋敷を軽く見たけれど何処の部屋にも何にも置いていないわね。広過ぎて余計に殺風景に思えるモノね」

 

『それに着替えの類も多くはありません。故に入り用であるかと……それからアイラお嬢さん』

 

 其処で恐介はアイラに耳打ちする様に移動して伝える事項を伝える。

 

「ん?何?」

 

『えー、少なくともこの中で貴方が1番、常識人だと信じて申し上げます。狐花お嬢さんは常識力が皆無に御座います故に、制御の方を宜しくお願いします。他にも生活能力が破綻しており食生活も虫食が中心です。あのイヌッコロもその辺は苦労しているようなので……常識的な意味での矯正をお願いしたいのです』

 

「……あー、高天原の神様達も何かしきりに言っていた気がするわね。戦闘能力や霊力の扱いは別格級の代わりに普段の生活能力は皆無だってね……」

 

 戦闘関連の能力に全振りした結果、『人間』としての常識的な能力はからっきしと言う有様。拾い食いなんて当たり前、羞恥心も皆無に等しくそして、思考回路も蹂躙一択のクレイジーバイオレンス。こんなのでは人間社会なぞ危な過ぎて目が離せない。故に恐介はこの中で比較的常識人であるアイラに教育を頼む事にしたのだ。

 静香とアーシアはシスター故に別の意味で偏りそうな気がするからだ。

 

「と言うか彼女、コレまでどんな教育を受けたの?」

 

『えー、申し上げ難いのですが……その……思兼様やその他、明らかに選択ミスっぽい方々です、はい』

 

「あーうん、貴方も何かと苦労しているのね」

 

 暴走系幼女の世話も楽では無い。そんな片鱗を垣間見たアイラであった。それから、当初の予定通り生活用品に必要なモノを買い揃える為に大型小売店に皆で向かう事となったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ、こう言う所来るのは初めてですっ‼︎」

 

「私も、こう言う大型のお店に来る事は以前からありませんでしたので何かと新鮮ですね」

 

「……大きい」

 

『いやー、ベンニーアさん。日本の進んだ大型量販店に来るなんて初めてっスよ。見ていて楽しいっスね‼︎』

 

「……聖職者は俗物的な場所とは無縁ね。それよりも私達……結構、目立つわよね」

 

 最初に必要なのは家具類や衣類だと考えた一行(こう言う事に関して狐花は完全に置物状態)はアイラの提案の元、インテリア雑貨や調度品を多く取り揃えている大型小売店に足を運んでいた。他にも被服店や食料品も取り扱っている事からデパートに近い。

 そして、その場所の中で彼女達は大いに目立っていた。何せ着替えが無い為に全員が巫女服のままで来ざるを得なかったからだ。しかも、全員が道行く人達が眼に留まる程の美少女だから尚更でもある。

 静香は幼い頃に転生悪魔と成り果て冥界に連れ去られ、アーシアは教会暮らし……その為かこう言った所に来るのは初めてであり、珍しそうに周りを見ている。

 因みにベンニーアも死神だからか霊体化して着いて来た様である。彼女の服装も人間社会の公共の場では補導モノ。流石に往来を歩くと言う非常識さは持ち合わせていなかった。

 

『まぁ、しゃあないっちゃあしゃあないわな。家具類は伊弉諾尊様に頼めば作ってくれるから、買うんは衣類とか小物とかやな』

 

 流石に伊弉諾尊様でも服類を作る光景は想像したくは無い。出来そうだけど……工程が嫌な予感しかしない。

 

「え?そうなの?初耳だけど」

 

『あのヤキトリめ。忘れとったな……』

 

「そなの?建物とか島とか良く建てるから無理だと思ってた……」

 

『あんな、狐花。ふつうは逆やからな? まぁ、何時もフラフラしとるから居らん体で話を進めてたんかも知れんがな』

 

「何故かしれっとトンデモない言葉交ざって居なかった?」

 

 アイラは初耳だと聞いた事に対して五七は呆れる。まぁ、此処まで来てしまったのだから仕方ない。幸い服屋もあるし、食料品売り場もあるから無駄足にはならないだろう。

 

『……ま、何時来るかも知れへんしなぁ。どうするけ?』

 

「伊弉諾尊様の方が速くて楽。居ないなら、屋敷を壊せば来てくれる」

 

 狐花はサラッと恐ろしい事を告げる。屋敷をぶっ壊せば直しに現れると言う自爆作戦。普通の人間……いや、悪魔でもそんな真似は考えようとはしないだろう。

 

「何と言うか狐花ちゃんって、会った時から思ってたけど人間離れしているわね、色々と」

 

『やろ? 制御すんのも大変やで?』

 

「あ、冷蔵庫の類が無いのは不安。屋敷にら電力も通っているからその辺は大丈夫ね。最悪、冷蔵庫だけでも後で買って置きましょう」

 

『資金に関しては心配せんで良えで、今回に関してはお上が見繕ってくれるからな。まぁ、狐花はお金貰っても、余り使わんから……其方の意味では安心やけどな』

 

 狐花の感性を目の当たりにした後、下着や替えの服の調達が先と考えたので服屋の方へと直行した。私服のセンスに関しては基本的に皆、壊滅的(常識的なアイラは芸術家故か、私服に頓着せずに汚れても良い奴なら構わない)でダメダメであった所為か、其処まで悩む事なく『取り敢えず他所行きに無難なモノ+ジャージ』と言う花の無い結果に終わり、アイラの提案で冷蔵庫や工具類の購入の手配(大きいので纏めて郵送して貰う形を取った)をした後に食料品売り場に向かった。その時、ある事が判明した。

 静香は甘いモノが好きらしいのだが……金銭感覚が壊れ気味の浪費家気質である事が判明した。どんどん購入しようとする為に、アイラは『ああ、ダメなパターン』と考えて阻止した後、胃薬も購入する事を決めたのであった……。

 

 

 

 

 

 

 


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