雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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大浴場での一時

 

 

 

 買い出しを終えて家に屋敷に到着する頃に大型量販店の郵送トラックが購入した冷蔵庫等を運搬して来てくれた。本屋敷の建物の台所の場所に運んで貰い買い出した食料品を放り込む。

 その後にアイラが『借家から私物類を持って来たり、契約を解消しておかないと』と言う事で再び外出に繰り出した。アイラの私物は大半が画家らしく画材の類が大半を占めていた。それらの運搬が続き日曜日は見事に潰れるのであった……。

 

「買い出しとか、色々とやったから疲れちゃったわね。ごめんね、運ぶの手伝って貰って」

 

「いえ、大丈夫ですっ‼︎」

 

「うーん、環境も変われば新しいアイディアとか浮かぶかも……他の家具に関してはまた後日ね。流石に疲れちゃったわ、明日は学校もあるんだし……そう言えばお風呂とか何処かしら? 流石にあるわよね……?」

 

 本屋敷の広間。台所と隣接する部屋。食事絡みは此処で取れそうなリビングとなる部屋にて、狐花達は夕飯を食べながら駄弁っていた。疲れた為に惣菜で済ます事になった(因みに放置すれば見事に蜻蛉が食卓に並ばれる所であった)。

 

『大浴場は右城の1階やで。伊弉諾尊様、大層デカい風呂場を作りよってな。位置的に其処しか作れんかったんやろうな』

 

「良かった……流石に水浴び位はしたいわ。と言うか大浴場だなんてね」

 

『まぁ、取り敢えずヤキトリが伊弉諾尊様に連絡を取るさかい。まぁ、俺様やったら『家具作ってくれ』なんて口が裂けても口にでけへんけどな……』

 

「あ、ベンニーアさんは冥府に送らなきゃ行けない書類がありますので後で入るっスので、お先にどうぞっス」

 

 家具類に関しては恐介が伊弉諾尊様に連絡する為に屋敷を離れた。少なくとも明日以降になるだろう。夕飯を食べた狐花達は其の儘、地下区画に広がる皓咲城の右城の1階へと向かう。深さが深さ故に階段の昇り降りは大変である。エレベーターの類が無いので、余計大変であった。

 

「和風の城なんて初めて見たし、コレが個人の家だなんてね。構造的にも複雑ね」

 

「うーん、何かと迷ってしまいそうですわね。地図があるのが幸い、でしょうか?」

 

「あ、相変わらず何もありませんけど……」

 

 城内の部屋も相変わらず広い癖に何も置かれていない殺風景な光景ばかり広がっている。

 

「適当な部屋を使って良いよ。そもそも、何に使うか知らないし」

 

「ご、ご自身の家なのに……そんな適当に」

 

『伊弉諾尊様が大層派手に造ったからなぁ……持て余すのもしゃあないで、趣味らしい趣味も持っとらんし……』

 

「うーん、それじゃあ一緒に創作活動しよっか?一区画、アトリエとして使って良いよね?」

 

「別に良いけど……?」

 

 狐花が趣味らしい趣味を持っていないと聞いたアイラは創作活動に誘って見る。絵のモデルとして起用もしている。そんなやり取りをしながら右城の1階に到達する。右城の1階の半分程、大浴場のスペースとなっていた。脱衣所の区画も大人数を想定したかの様な広さであった。

 

「あ、アイラさん……静香さんも……大きい……⁉︎」

 

「うー……」

 

「あはは、アーシアちゃんと狐花ちゃんは予想通りのぺったんこだね」

 

「ですが、大きいと大きいで苦労する事もあるのですよ……?」

 

 脱衣所ではある意味、お約束な事のやり取りをした後、大浴場へと足を踏み入れる。複数の浴槽、岩壁を利用して熱湯が幾つかの小さな滝を成して浴槽に流れ込んでいる。浴槽同士、水路となって繋がっているらしく、緩めの水流風呂の様になっている。他にもシャワーの類も併設されており、作り込みの深さが窺える。

 

「ど、独創的なお風呂ですね……」

 

「へぇ、見事なモノね。アーティストとして、刺激されちゃうじゃない」

 

「ぷか〜……」

 

「あわわ⁉︎ 流されますぅ〜‼︎」

 

 大浴場と言う一言だけ、特異な光景を目の当たりにしてアイラは対抗心が湧いた。建築の芸術性を前にして、アイディアが浮かんでは消える事を繰り返している。かく言う狐花とアーシアは小柄で軽い所為か、流れが起きている水路の水流で見事に流されてしまっていた。風呂故に深さは然程無いのが幸いか。

 

「お気に召して何よりです。いやはや、整備を頑張った甲斐がありましたよ‼︎」

 

「……長門さんから頼まれて来たんですけど、修理箇所が多くて多くて……本当に大変でしたぁ〜‼︎」

 

 その時、浴槽の水面下から浮上して現れる2人の少女。潜っていたらしい先客であった。その光景にアイラと静香は思わず驚いた。

 

「ず、ずっと潜って居たんですか⁉︎」

 

「いや〜、底の方にちょっと不具合がありまして。あ、もう修理は終わったんでお気になさらず」

 

 赤みがかった長い桃髪に黄緑色の少女は耐水性の工具類を浴槽の中から外に放り出して縁に凭れて一息着いた。隣に浸かるのは薄い紫みがかった銀色に水色の少女で、此方は完全にリラックス状態であった。

 

「修理のついでに折角なので色々と手を加えました。其処の小さい滝とかです」

 

「……あの、私達によりも狐花ちゃんに伝えた方が宜しいですわ……」

 

「家主はあの子だしね。本人に許可取ったの?」

 

「……あ。修理と改修に夢中で忘れてました」

 

「んに。あ……」

 

 その時、浴槽から水路へと流され続けて一周したのかアイラ達の前に狐花が流されて来た。そして、アイラ達の他にいた2人の少女に視線が向いた。そして、後から流されて来たアーシアが狐花の背中にぶつかる。

 

「……明石にヴェスタル?何で、いるの?」

 

「え?いや、その長門様に『加古から降魔したと報が来た。施設を剥がして来い。それから狐花殿が屋敷を建てたそうだ。大方、殆どが放ったらかし故についでに修理、整備してやれ』との事で来たんですよ。いや〜、ちょっと長期作業だったから一風呂お借りしていたんですよ」

 

 なはは、と屈託なく笑う明石と呼ばれた少女。いいや、長門と名称から察する事が出来る通り彼女達は『裏幕府』の付喪神だ。

 

「あの〜、何方様なのでしょうか?」

 

「あ、自己紹介が遅れました‼︎ 私は工作艦、明石です‼︎ 修理や改修はお手のモノですよ」

 

「ヴェスタルです。工作艦で、修理メンテナンス専門で任されています。付喪神の人達の修理以外にも医療や薬品の勉強もしています」

 

 2柱は工作艦と呼ばれる種の付喪神であった。移動式の工廠と言った所であろうか。戦闘には向いて居ない後方支援を専門とする者達である。

 

「……分かっては居たけど付喪神って本当に人の姿になれるのね」

 

「誤解しがちですけど付喪神が全員が全員、人の姿になれるとは限らないのですよ? 強い意志や思いが宿り相応の年月を経て初めて依代として姿を獲得出来るんです」

 

「……見た目で判断すると〜、痛ーい目に遭うかも知れませんよ〜? 見た目は幼くて小さくても凄く強い霊力を持つ子だって存在するんですよ〜?」

 

「ふふ、それでも可愛らしい事に変わりは無いと思いますわ」

 

「……そう言って貰えると、有り難く思えます」

 

「修理とか、製造は出来ないの?」

 

「うーん、簡単な奴なら出来ますよ?」

 

「あ、あの。家具とか作る事は出来そうなのですか?」

 

「家具、ですか。その位ならば簡単に作れますよ……と言っても今日は流石に疲れましたので、後日で良いでしょうか?」

 

「はい。お手を煩わして申し訳ありません」

 

「いやぁ、その程度は仕事の内に入りませんよ。それよりも、狐花さんのあんな顔、見たのは初めてですね」

 

「え?そ、そうなのですかっ?」

 

「……私が以前に見たあの子は、そりゃもうおっかない位、凶暴でしたね。何せ、太平洋沖の無人島を文字通り沈めた事がありましたからね。その時は肝を冷やしましたよ。皆、心の中でこう考えたでしょうね……『海、割りやがった』って……」

 

「「「…………」」」

 

 因みに狐花はこの時既にまた流されて別の浴槽へと漂流していたのは全く別の話であった……。

 

 

 




明石 艦隊これくしょん

ヴェスタル アズールレーン
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