邂逅は爆弾の味
月曜日。ある者にとっては始動の1日。また、ある者にとっては絶望の1日。金曜日頃に狐花と邂逅を果たしたリアス・グレモリー率いるリアス眷属の面々は、突如として介入してきた加古の手により冥界へと叩き返された。理由は『不法滞在』。ビザも無い、パスポートも無い。見事なまでの不法滞在と見做されて眷属共々、祖国となる冥界へと強制送還(物理)された。
この対応にリアスは不服として直ぐに駒王町へと戻ろうとした。何せ不本意な形での帰還が実家に発覚すれば『何かあったか?もしや、管理地域に異変が?』と勘繰られる可能性があったからだ。領土を追われた領主となれば、リアス自身の評価が揺らぐ事となる。時期が時期的に評価を下げる様な真似は出来ない。
しかし、そんなリアスに不幸が舞い込む。駒王学園の地下には悪魔専用の駅と電車が存在し、冥界のグレモリー領と直通線路で繋がっている。リアスがその電車で駒王学園へと向かおうとした矢先に線路と駒王学園の駅が爆砕された。線路もバラバラとなり、真面に運用出来ない状態にされたのだ。その状態を放置する訳にも行かず、リアス達は大急ぎで修復作業しながら駒王学園へと向かう道を作った。それは丸二日掛かった挙句、学園地下では無く日本領土内にある駒王町郊外にある別荘(不法占拠領域)に繋がった。繋がる頃には既に月曜日の午前4時頃……学校がある時点で休む暇も無い。
「オカルト研究部のシャワーで我慢しましょう」
と言う事でリアスは眷属を引き連れて其の儘、登校する事となった。早めに行けば人目に付かぬ可能性もある。其の儘、オカルト研究部に行きシャワーを浴びれば一先ずは安心であろう。そう、考えていた。
「リアス。戻って来れたのですね」
「ソーナ……」
校門前に立っていたのはリアスの知人であるソーナ・シトリーであった。風紀委員のつもりなのだろうか。登校者の面々を見ているのかも知れない。
「うひょ、胸は控」
「リアス。下僕の躾がなっていませんよ? 」
赤蛇の一誠が腑抜けた面構えでソーナに視線を向けるも、凍り付くかの様な冷徹な視線を浴びせつつ、苦言を呈した。
「金曜日の夜に起きた経緯は既に聞きました。日本神話に属すると思わしき人物と諍いを起こして、冥界に飛ばされた、と」
「そ、そうよ‼︎ 私の領土を荒らしに荒らしたその報いを受けさせないと行けないわ‼︎」
「リアス。敢えて言いますよ。昼間は私達が、夜は貴方達が仕切る手筈でした。しかし、学園内ならば此処まで大事にはならなかったのでしょう」
「何が言いたいの?」
「リアス。駒王町は貴方の管理地域……の練習に過ぎません。それを堂々と日本神話の方々に公言する行為は褒められた行為ではありませんよ?」
ソーナはそう告げる。悪魔陣営が半ば勝手に領土を名乗っている行為は自身も悪魔であるが故に強く批判は出来ない。だが、他陣営の領域を侵犯しているのは明白。
「私の領土である事に変わりは無いわ。そも、あの連中が私の領土を踏み荒らしている‼︎ こんな勝手な真似、許されざる蛮行よ‼︎」
「……恐らく外交問題になるでしょう。日本神話も黙ってはいないと言う事です。貴方は……いえ、悪魔社会の殆どは日本神話に関して知らない事が多いでしょう」
「ええ、それは否定しないわ」
「だからと言って愚弄する行為は危険ですよ。駒王町に広まる『破邪の気』、今でこそは下級悪魔が衰弱する程度の強さしかありませんが……コレがより強くなれば、私達も無事では済まないでしょう」
「……!」
悪魔にとって天敵なモノは複数ある。日本神話や仏教圏の存在はその気になれば駒王町全体に破邪の気をより強くして、それこそ駒王町に蔓延る悪魔を根絶やしにする事だって可能だろう。今しないのは何か理由があるのかも知れない。
「それに、この町に現れたはぐれ悪魔はほぼ全員がこの破邪の気により死亡している事が判明して居ます。その魂はほぼ全て、日本神話陣営に回収されているでしょう」
その話を聞いてリアスは面白くない。駒王町は自分が管理する土地。はぐれ悪魔の討伐も仕事の一環である。それが、日本神話陣営に横取りされている事態は宜しく思っていない。自分達よりも先に仕留められているのだから、尚更だ。
「…………何が言いたいの?」
「はぐれ悪魔の件は副産物と見て良いでしょうね。前置きは程々にして……私はコレらの件を踏まえて日本神話に属する者……具体的に言えば貴方と接触をした方と略式的な会談を行おうと思っています。私としましても、この状況は大変宜しく無いと考えた故の判断です」
ソーナは日本神話陣営の者と会談に臨むとリアスに告げた。当初は伝えないつもりではあったのだが、放置すると介入して来そうなので釘刺しのつもりで結局伝える事になった。
「……ッ⁉︎」
「どう取り繕うとも私達悪魔が領域侵犯している事は明白なのです。戦争になっても可笑しくはありません……出来るだけ、そうならない様に事を運びたいのが本音ですが、コレばかりは向こうの出方次第ですね」
「……あの連中は危険よ‼︎ いえ、日本神話は危険だわ‼︎ アイツら、町諸共、滅ぼすとか言い出しているのよ⁉︎」
「理由が無ければそんな暴論は出て来ないでしょう。つまり、悪魔が支配すると見做された土地を切り捨ててでも排除すると言う理由があると言う事です。どうやら、相当なお怒りかも知れませんね……」
町ごと粉砕するだなんて真似、早々やらない。然も自分の国の町をである。正気とは思えない。
『随分な会話やな。丸聞こえやで、翅蟲連中』
「……悪魔。この世界には居てはならないモノですわ」
「朝からエンカウントなんて、ツイて居ないか。いや、狐花ちゃんや静香からしたら幸先良いかもね」
その時、登校して来た面々がリアスとソーナの2人に聞こえる形で言葉を投げつける。狐花達、一行が駒王学園に登校して来たのであった。
「悪魔か。もう色々と面倒……‼︎ 駒王学園諸共、死に絶えろ。先に登校していた人間は己の不運を恨みながら死ぬと良い……弁明は閻魔様にする事、どんなに誠実でも地獄行きは変わらないけど」
そして、中央に居た狐花がもう何度目か分からない理不尽さを伴って、その様な宣告を告げた。