雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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非業

 

 

「……では、どうすれば貴方方は()を信用してくれるのでしょうか?」

 

——……憤怒に振られるな、私。何れは来てしまう現実の1つ……悪魔だからと言って、脅威が無い訳じゃない。殺される理由だって、目の前に突き付けられる日がいつの日か必ず来る。私達には、それが今日来たと言う事……‼︎

 

 ソーナは自己の中で渦巻く『現実』を掻い潜りながら、その言葉を八咫烏に向けて問い掛けた。

 

『……『達』では、無いのか? 貴様らでは無く貴様を、か?』

 

「はい。貴方方の情報は断片的にしか見えません。そうホイホイと喋る様な能無しでは無いのは分かっています。少なくとも、貴方方は私達の事を信用していない」

 

——悪魔達がやって来た事がやって来た事。当然、不満を抱かない筈が無い。お姉様も外交担当だから、上手く行かないと弱音を吐いていた時を稀にだけど、見た事がある。必ず上手く行く交渉なんてない。

 

『分かって居るでは無いか。では、貴様自身はどうか?と?翅蟲』

 

「ええ、悪魔にだって派閥があります」

 

『笑わせる。原因は別にあるから、自分達は違うのだと言いたいのか? 随分と自惚れた事を……信用に足ると言える論拠は?』

 

 他人の所為にする人間は信用ならない。それは悪魔だって通じる概念だ。自分は悪くないと言い切るのは勝手だが、離れるのが賢明だ。気に入らないのであれば、関わらないのが1番である。

 

「そうですね。悪魔社会に於いて私はごく一部の少数派の考え方に位置すると自負しています。だからこそ、是正せねばならないと考えています」

 

『……悪魔社会の事情なぞ、知らぬ。私は貴様ら翅蟲では無いのでな。勝手にしろとしか言わん』

 

——当然の反応。日本神話陣営にとって私達悪魔社会の事なぞ、対岸の光景でしかありません。でも、注目程度には把握している筈。はぐらかしていますが、此方の眷属を把握している以上……知らないは詭弁となる。でも、この流れは数少ない好機です。

 

「ええ、コレはあくまで此方の事情。今は別の事をしなくてはなりません」

 

——口を開かせる前に言い切る‼︎ 相手に口を挟む暇は与えては行けない。相手は常に此方を否定してくる。予め出鼻を挫かれては言うに言えない状況を作られる。ならば、否定するタイミングをズラさせる‼︎ そうすれば、話の方向性が変わる‼︎

 

「留流子は見事、任務を遂行し殉職しました。貴方方を前交渉(・・・)の場に引き出すと言う任務を‼︎ その死は決して無駄にはしません。

 して、私は悪魔陣営の窓口として、日本神話陣営との交渉に臨みたいのです‼︎」

 

「か、会長⁉︎」

 

 死亡し狐花に喰われた眷属をソーナは殉職したと表現した。死して任務を遂行した事をソーナは誇りに思いその表情を八咫烏に告げ、自身の考えを宣言した。その言葉に元士郎は異論があるとして声を張り上げるが、ソーナは冷徹な目を向けて黙らせる。

 

——私が行いたいのは交渉の場。リアスが問題を引き起こしている以上、私達にも影響が及ぶのは明白。現状のまま放置していれば、確実に皓咲さんは私達を民間人諸共、潰しに掛かるでしょう。皓咲さんは現代日本人(・・・・・)の思考回路じゃない可能性があります……迂闊でした。私の周りの転生悪魔は殆どが現代の日本人ばかり……強いて言えば椿姫が古い家系出身と言う事……皓咲さんが、現代の日本社会の中で生活していた、と言う光景は断言されない。

 

『ほぉ……殉職、か。言いおる』

 

 ソーナの言葉に八咫烏は眼を細めた。明らかに先程までの対応とは打って代わり、見定める様な視線を向けている。その視線もまた、凍てつくかの様なモノでもあった。

 

『……奴隷の命を誇りに思う、か。貴様ら翅蟲が? 命の尊厳を穢す輩が利いた風な口を叩く』

 

 だが、八咫烏から発せられたのは冷酷な気配であった。即ち、ソーナはある意味、相手を怒らせてしまった。

 

「て、テメェらこそ、言えた義理か⁉︎ 学園の生徒達諸共とか、町全体を滅ぼすとか‼︎ テメェらこそ、外道じゃねぇか⁉︎ 何で悪魔とか此方の都合に全く関係のない人間達もさも当たり前の様に虐殺しようと思えるんだよ⁉︎ ︎お前らこそ命が軽いと思っているだろ⁉︎」

 

 元士郎はソーナの視線を耐え切り声を上げて狐花の思考を激しく批難した。

 

『……それに関連する言葉、お嬢様に言った事がある』

 

 元士郎の言葉を受けて八咫烏は先程の気配が霧散させて無感情な言葉を紡いだ。如何やら、八咫烏も似た様な苦言を呈した事があったようである。

 

『返って来たのは『軽い』。その時のお嬢様は、それはそれは恐ろしい声音であった。私はお嬢様の過去(・・)を知らぬ。語りもしない、語られもしない。ただ、そんな風に見ていた』

 

 八咫烏から語る狐花の話。狐花は『命』は軽いと断じて居る。誰が死のうと何が絶えようと、己が朽ちようと構いはしない。須く虫の命の如く。

 

「何だよソレ……じゃあ、彼奴は今、何歳(・・)なんだよ⁉︎」

 

 狐花は1年生として駒王学園に編入した。だが、その体躯は幼い子供其の物。1年で小柄な体格と言えば同じクラスでリアスの眷属悪魔である小猫が該当するが、その子猫よりも身長が低い。コレで15〜16歳と言うには体躯が幼過ぎると言わざるを得ない。

 

『……断言はしない、が。私の見立てでは精神年齢は凡そ9歳……』

 

「はぁ⁉︎」

 

『見立てはな。その話は終わりだ。それ以上、話してももう無駄な事だ』

 

「匙……話に割り込んで良いと許可した覚えはありませんよ?」

 

「す、すいません……つい」

 

 ソーナは元士郎の話の腰折りを咎め、元士郎は尻窄みとなって退いた。命の尊厳絡みはお互い様だと言える。恐らくはリアスとの問答での意趣返しの1つかも知れないが、此の儘では埒があかない。

 

「……して、返答は如何に?」

 

 脱線した話の軌道修正。先手を打たねば主導権を握れずに逸らされ続ける。今は、会談の実現に漕ぎ着けねばならない。

 

『断る。それ以外の返答が無い事に気付かぬ筈が無かろう?』

 

 その時、不幸にも昼休みの終了を告げるチャイムがなってしまった。

 

『時間切れだ。そも元より答えが出ていた……だが、耐えた方だな。怒りに任せて来るやと思っていたが、残念だったよ』

 

 八咫烏はそう言い残して生徒会室から飛び去って行った。狐花の下へ帰って行ったのだろう。

 

「……会長……」

 

「…………すみません。少し、1人にさせて下さい」

 

「授業は……?」

 

「早退したと教師に伝えてくれませんか?」

 

——……留流子の思いを無駄にしてしまった。交渉は決裂。此の儘だと、悪魔諸共……駒王町や人間の生徒達が虐殺される……。こんな事、あって良いのでしょうか? 日本神話の狙いは何……? 何が目的なのでしょうか……?

 

 

 

 

 

 

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