午後の部が始まり殆どの生徒は教室で授業を受けていた。かく言う狐花もまた、1学年の教室で授業を受けている。最も、授業態度は良いかと言われると疑問符は浮かんでしまうのだが……。
『お嬢さん。楔は打っておきましたよ』
その最中、生徒会室に骨と皮を届けた恐介が戻ってきて狐花の頭の上に停まる。一般人には恐介の姿は見えない為、狐花が変な行動をしなければ注目は浴びないだろう。
——ん……どうだった?
『事故とは言え怒りに身を任せて攻撃してくるかと思って居ましたが、中々忍耐力がありましたね。最も転生悪魔の方はそうでは無かった様ですがね』
——ふーん。他には?
『……どうにも『シトリー』は会談を望んでいる様ですね。内容は恐らく駒王町の領土問題……』
——とっとと冥界とやらに帰れば、何もしないと言うのに、固執する理由は何?と言うか、『グレモリー』がしないのは何故?
『……昨今の悪魔は何かと傲慢ですからね。マウントを取りたいのでは?』
——その前にやる事色々とあると思うけど? 必要書類とか証明書とか……。
『他にも一般人に手を出すな、とか言ってましたね?』
——いきなり大将を狙えるのならそりゃ狙うけど、万全を期すなら周りの足軽を片付けて置かないと横槍入るじゃん。
『……その心は?』
集団戦の場合、大将を討てばその集団は瓦解までの猶予が産まれる。ワンマンならば其の儘、内輪揉めで荒れる。統率が取れているのならば、大将が崩れても集団は維持される。
だが、大将を直接狙える程、現実と言うのは甘くは無い。そう言うのは、相手との相当な戦力差があった上での乾坤一擲の博打策だ。そう言うのは最悪の天才か最高の馬鹿しか取らない作戦である。創作物ならば、見栄えを重視してそんなアホみたいな作戦を選ぶのだが……正直に言えば無謀にも程がある。
大将に直接殴り込むと言う事は壮絶な消耗戦、総力戦となる。大将ともなれば拠点的にも最重要に強固な防衛線が敷かれている事は当然であり双方共に多大な損害を被り勝っても負けても人的、物資的にも大きく損耗する事となる。
かと言って攻撃側が少数精鋭の場合、更なる困難となる。必然的に一対多を強いられ続ける事となる。物量差と言うのはどうしようも無い程の絶望的なモノであり、包囲戦をされれば成す術も無く崩壊する。大将を倒す事に失敗すれば大軍に包囲され、退路なき戦闘を強いられる事になる。
——此処が悪魔『グレモリー』の
『駒王町』をリアス・グレモリーは自身の領土と宣った。日本神話からすれば『何言ってんだこの小娘は⁉︎』と考えるが、狐花からすれば
——兵糧、兵員、物資……その他諸々。駒王町の各地に悪魔専用の施設が併設、これらは裏幕府の面々が破壊したから、省略。領主を名乗る以上、敵地の人間は兵士と捉えて見るのが当然。
狐花からすれば、駒王町に住む人間は皆々、敵側の兵員と見えていた。アイラは日本神話に亡命したが故に
——悪魔には記憶の改竄する能力を持つ。洗脳能力と言って良い。自身に都合の良い様に記憶の改竄する。
悪魔には記憶処理の魔法を扱える。基本的には見られたくない事を消す事に使うのだが、狐花はそんな事はお構いなしに考察を述べる。
『…………』
——分かる?駒王町に住む人間、全員が悪魔『グレモリー』の兵員と見て差し支えない。悪魔じゃないから『破邪の気』は通じない、それは洗脳された人間だから。もしかしたら暗示の類かも知れない。
民兵の類と見て差し支えない。普段は人間としての生活、有事の時……例えば敵が現れた時は戦闘員としての機能が発令されると考えれば筋は通る。この前、試しに民家の上に幻影兵を出したけど、反応は無かった。様子見か、或いは単純に領主が無能かは判断は付けれない。
狐花は駒王町はリアスの領土と見てその人民はリアスの私兵となる民兵と考えていた。敵国であり領土を名乗る以上、治安維持の為に兵員を保有するのは至極当たり前の事である。眷属が幹部級と見做せば兵は何処から来る?『歩の無い将棋は負け将棋』。肉盾となる兵士が居ない軍団程、役に立たないモノは無い。
『……面倒だからと纏めて屠っているのかと思いましたよ……』
狐花からしたら、隣人が襲って来る可能性を考えただけ。敵国である以上、周りを信用してはならない。何時、襲って来るか分からない。ならば、殺られる前に殺すだけである。今迄は襲われなかったから、様子を見ていた。
——日本神話や仏法の援軍は頼れない。アーシア達の戦力は未知数で役に立つか分からない。ベンニーアは客分。ならば自分でするしか無い。1人でやる以上、取れる手段を考えなければならない。自分の欠点も把握している、民兵の盾の間に強烈な攻撃を喰らえば終わり。
ならばどうするか?答えは簡単、民兵を先に片付ける。相手の兵力を削るのは戦闘の常套手段であり必然的な選択。全員纏めて相手にするのは面倒臭い。民兵としての仮定でである以上、正規兵と違い現代の民兵は虐殺に耐性が無いと考えるのが自然。一部隊を殲滅すれば、恐怖が伝播して自ずと他の部隊は瓦解する。
仮定として『死を恐れない洗脳』と考えるならば、洗脳が解けるまで鏖殺あるのみ。一層の事、逆焦土作戦として壊滅させるのもアリ……面倒臭いけど。
他にも市街戦となる以上、大型スーパー等は食糧が確保出来るライフラインとして機能しかねない。戦闘になれば事前に破壊するのが望ましい、いいや……焦土作戦として民兵側から破壊する可能性もある。
『……』
——他にも眷属だっけ? 幻影兵を差し向けたけど、その戦力は今は分からない。けど、突っ込んで来た以上、接近戦が主。1人は制空権か……接近戦なら罠で嵌めて封殺。問題は巫女擬き……アレは狙撃で落とすしか無さそう。
『仮に聞ききますが赤蛇は?』
——女の死体の服を剥いで並べておく。性欲マニアならば反応する筈。隙は出来るからその隙に、脳漿を撃ち抜く。
『異様な光景ですね。と言うか逆効果では?』
——死骸に魂は無いから。死ねば肉の塊だよ。死んだ身体は唯の肉塊。非常食か火を起こす材料の認識で良い。
死体を何とも思わない。弔う気持ちも無いと言う考え方。死は穢れとも言うが、その中で狐花は穿った思考をしている様にも見える。魂は黄泉に送るが死骸は見向きもしない。
——大量の兵力を削れば大将が出て来ざるを得ない。領土を名乗る以上、領民を守る理由がある。民なき王国は無用なモノ。そして領民を守れない領主程、無能は無い。
特殊な形になるけど此処で『釣り』を仕掛ける。霊術の応用で効果はある筈。この前確認した悪魔『グレモリー』の性格上、挑発をすれば自分から出て来て突っ込んで来る可能性が高い。引き付けて所定の位置で上で相討ち覚悟で仕留める。仮に失敗しても私の代わりは幾らでも
悪魔『グレモリー』を仕留める機会が先延ばしになるだけ。兵力を削れば削る程、この地に住まう領民が減りこの地に巣食う悪魔『グレモリー』の力が弱まる。弱らせる意味では効果は出ると見ている。
狐花は刺し違えによる戦死もあり得る作戦を考えていた。リアスを侮らず、そして目的が果たされれば自分自身が死んでも構わない。正しく、捨て駒上等。仮に自身が転生悪魔と化したら割腹(*1)し果てる事を決めていた。
『…………』
——……だったんだけど。
『?』
——夜摩天様が顕界に来ちゃった以上、殲滅戦が出来ない。後で怒られるのヤダだし……他の作戦を考えなきゃ。
洗脳されているとは言え故意な人間の
『お嬢さんでも苦手なモノはあるんですね……と言うか、殺戮する事前提だったんだね』
——少しでも確実性のある作戦を考えるのが自然でしょう? 私の代わりは幾らでもあるけど、この私は私だけ。なら、どうするかは私の勝手。
『……はぁ』
——こうなった以上、別の作戦で行こう。確実性が落ちるんだよね……少しでも上げないと……その為にも準備が必要になる。
『何をするのですか?』
——大将である悪魔『グレモリー』を直接、狙うしか無い。
狐花は代替案を授業中の内に考えを纏める事にした。因みに授業の内容は全く入っていないのはご愛嬌……。そして、放課後となり準備の為に動き出すのであった。