雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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正しいのは誰?

 

 

 放課後。殆どの生徒が帰路に着いたり部活動へと繰り出す時刻。しかし、進路指導室では平常通り続けられていた。毎日午後9時まで野郎しか居ない進路指導室で軟禁されての勉強は変態3人組にとっては苦痛でしか無い。

 

「先生‼︎ 俺、5時からバイトですので」

 

 清々しい顔をして松田が挙手しながら立ち上がり進路指導室から脱出しようと試みる。

 

「松田。この学園はバイトは禁止だぞ? と言うよりもご両親から『どうぞ宜しくお願いします』と言う言伝を頂いているから諦めろ」

 

「チクショォォォォぉぉ‼︎‼︎」

 

「先生‼︎ 俺は従姉妹の見舞」

 

「元浜……逆にその従姉妹さんのご両親から『お前は二度と見舞いに来るな』と強い語句で言われていたぞ。それからご両親からも午後9時まで宜しくと言っていたから諦めろ」

 

「チクショォォォォぉぉ‼︎⁉︎」

 

 元浜は従姉妹の見舞いを盾に帰宅を試みたが、変態であるが故に教育に悪いと見做され来るなと言う謝絶をされた為に撃沈した。

 

「先生‼︎」

 

「諦めろ」

 

「せめて一言くらい言わせろォォォ‼︎⁉︎」

 

 一誠に至っては理由を告げる前に撃沈された。まぁ、一言で言えば何かしらの理屈付けてこの地獄の進路指導室から逃亡を図ろうと企んだ訳なのだが、3人揃って撃沈したのであった。紆余曲折あり、3人の傍らには問題集が20冊以上溜まってしまっている。そりゃあ、逃げ出したくもなる。既に放課後、今日中に終わる気配は全く無いと言って良かった。

 

「何故だ⁉︎ 何故、俺達の懇願が届かない⁉︎ 目の前に居るのは教師の皮を被った」

 

 松田は頭を抱えて仰々しく天井を仰ぎ見る。その演技掛かった芝居をぶち壊す様にドスンッ‼︎と言う音が響いた。

 

「創作劇の練習は土日か帰ってからやれ」

 

「うぎゃぁぁぁぉぁ‼︎⁉︎ 何時の間にィィィィ‼︎⁉︎」

 

 松田の目の前には問題集が5冊、一気に追加されていた。その光景を見て悲鳴を上げる松田。

 

「全く……お前達と来たら……呆れてモノも言えん」

 

「鬼‼︎ 悪魔‼︎ 第六天魔王‼︎ 可愛い生徒を虐め追い詰めて何が楽しいんだ、この魔王‼︎ 大魔王‼︎」

 

「俺達を追い詰めて衰弱死させて晩餐にするつもりだな、このクソイカれ教師‼︎ 俺達にはおっぱいを揉んで吸って囲んで生活するおっぱいハーレムを築き上げるという使命があるんだ‼︎ 此処で補習を受ける義理は無ぇ‼︎」

 

「俺達のハーレム学園生活を阻む悪徳教師め‼︎ 俺達に彼女が出来ないのもテメェの所為だ‼︎」

 

 一誠達が口口に吼える。色々と言いたい放題の罵倒を浴びせるも紫先生には涼しい顔で受け流している。

 

「……どうやら俺の予想以上にお前達の煩悩は頑固な汚れの様だな。何が其処まで、後押しをしているのやら」

 

『紫先生』

 

 その時、進路指導室の扉をノックする音の声が聞こえる。声の中身から明日風先生の様である。

 

「こ、この声は……‼︎ 今年に綺羅星の如く現れた美少」

 

 眼鏡の位置を整えながら元浜は状況を整理しようとしたが、その途中でドスン‼︎と音が鳴り元浜の眼前にも問題集が5冊、追加された。

 

「せめて最後まで言わせろォォォ‼︎⁉︎」

 

『……あの、お取り込み中でしたら後にしますが』

 

「何、拙過ぎる演説の傾聴会だ。破綻しているがな……別に構わないよ。それに深夜は肌に悪いだろう」

 

『…………』

 

「クソォ‼︎ このリア充教師め……‼︎ モテない俺達を尻目にイチャつきやがって‼︎」

 

「当てつけ、当てつけなのか⁉︎ 俺達がこんなにも地獄を味わっていると言うのに、冷酷な鬼教師が幸せだと⁉︎ 不条理だ不合理だ、宇宙の真理が崩れ去るぞ‼︎」

 

「俺達に潤いを‼︎ 灰色の青春では無く、桃色全開の男のロマン溢れる生活を送るべきだ‼︎」

 

 扉越しで姿が見えないが一誠達は再び騒ぎ出す。その様子を聞いて明日風先生も呆れたような嘆息を漏らした。

 

『……どうやら苦戦している様ですね。貴方らしくありません』

 

「はは、見苦しい所を知られたな。恥ずかしながら、此奴らは相当なタマだ。中々、難しい連中の様でね……」

 

 問題児である一誠達の対処は難航している。そう簡単に悔い改める事は無さそうである。

 

「こ、この……‼︎ この鬼教師‼︎ 明日風先生とどう言う関係なんだよ⁉︎」

 

「唯の上司と部下の関係だよ。お前達の予想する様な関係では無ぇよ」

 

 

 

 

 

 

 

 その後、進路指導室に鍵(然も内側に付いている)を付けて『サボらずに課題をやっておけよ。脱走したら……本物の悪夢を見せてやろう』と一誠達を残して紫先生は呼び出された明日風先生と共にグラウンドが見えるかつ人気が無い場所に向かった。

 

「ほれ、紅茶で良かったすかね?」

 

「ありがとうございます。身長が届かないモノで……」

 

 移動した先、自販機近くで紫先生は自販機から紅茶の缶を買って明日風先生に投げ渡す。身長差と言うのは覆し難い現実でもあった。

 

「で?何か進展あったんすかね?」

 

「……お昼頃に地震があったでしょう? 縦揺れの地震」

 

「おー、あったな。片付けるの面倒でしたね」

 

「アレは人為的です。震源地は駒王町、直下」

 

「ふぅん……成程ね」

 

「それから、旧校舎付近で不自然な反応が検知されています」

 

「…………今の所、その位すか?」

 

「はい。表沙汰に出来る事ではありません……その割には、躊躇いのない者達も居る様で」

 

「勝手にやらせて置けば良いでしょう……其処まで馬鹿では無いでしょうよ」

 

 その後は教師間の他愛の無いやり取りが続いた……。

 

 

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