雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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 資料作成が想像以上に時間が掛かりそうなので、分割で進める事にしました……。


紅炎の誓い

 

 

 

『何か話してんな……どうする?』

 

「情報は必要な事。一旦、様子を見る」

 

 悪魔のミサか会合かは分からない。隙を狙うにも情報と言うモノは必要不可欠、今は情報を探る事を優先するのであった。

 

 明かりが付いている部屋の窓際下、縁がある場所に脚を掛けて張り付き、バレない様に中の様子を見る。部屋の中には悪魔『グレモリー』の後ろ姿のの他に赤蛇とあの時に見据えた転生悪魔、数匹。そして——。

 

『……知らん奴がおんな。誰や、あの銀髪のネーチャンは』

 

 銀色の髪を三つ編みにした女性が壁際に佇んでいる。白と黒の特徴的なエプロンドレスを身に纏っている事からハウスキーパーだと思われる。

 

「……アレ、ちょっとヤバそう」

 

 狐花は本能的に危険だと認識し、警戒心を抱いた。被害を受けずに直接狙うには不意打ちが理想ではあった。流石に正面から堂々と挑んでやる程、狐花はお人好しでは無い。

 

『狐花の言うちょっとはホンマにちょっとやろ?でもまぁ、どんな隠し弾を持ってっか予想は出来んのも事実やな』

 

「む……何か来る……‼︎」

 

『あん? せやな、確かに歪みを感じんな。ったく、転移魔法ってのはホンマに面倒やな……結界張ってもすり抜けられたら意味無いっちゅうのに』

 

 狐花と五七はその時、周辺の空間の歪みを感じ取った。その時、同じくして部屋の中央部に魔法陣が広がる。その光が強くなると同時に紅炎が柱となって噴き上がって行く。

 

「……炎の悪魔?」

 

 その炎の柱の後方から黒い影のシルエットが浮かび上がる。身長的には成人男性程、つまる所。男性と思われた。その炎が収まり消える頃、其処には1人の男性が佇んでいた。

 

 

 

「ふぅ、久しぶりの人間界だな。愛しのリアス。会いに来たぜ」

 

 ワインブラッドカラーのスーツを着ている。ネクタイもせずに着崩した着方の所為か、ワイルド路線のイケメンと思われる。赤蛇は疑問符を浮かべてその男と悪魔『グレモリー』を交互に視線を向けている。

 

「やれやれ、ビザの申請に想像以上に時間が食ってしまったよ。美南風から日本神話の話が無ければもっと時間が掛かる所だった(冥界から追放され人間界の日本に流れ着いた分家のツテも無ければ即座に却下されていたな……)」

 

 

 

 あの男はビザの発行を申請して受理された上で現れた様である。その為、ある程度(・・・・)は信用出来ると言う事か。最もその程度の信用ではあるのだが……。

 

『なんや、ホスト見たいなニィちゃんが現れたな?』

 

「ビザを発行許可が降りていると言う発言が今の所、真実。虚偽である事が判明次第、始末する。と言うか直ぐに死ね」

 

 狐花は手にしたFNに霊弾を装填して構える。ヘッドショットを決めてしまえばその脳漿を破壊して粉砕出来る。しかし、弾丸と言う構造上の上に一点特化仕様の為に、急所以外に当たると効果は大きく減衰する。跳弾なんて以ての外で込めた霊力が飛散してしまう。狙うならワンキルのみ。

 

『はは……ビザ有りでも問答無用か、ハッキリしとんなぁ』

 

 正式な手続きだろうが狐花は知らぬ顔で抹殺しに掛かる。今の所は踏み留まっているが、箍が外れれば即座に殺しに掛かるだろう。

 

「これ以上、悪魔を地上にのさぼらせておく理由は無いから……虚無の彼方に失せるが良い」

 

 狐花の悪魔に対する敵愾心は異常では無く異質であった。相容れない、その一言に尽きる。仮に友好的に接してきても絶対に仲良くなろうとは考えないだろう。否、考える事自体、思考しない。

 

「悪魔の穢れ……穢らわし過ぎてイライラする……早く死ねば良いのに……」

 

『……ガラス越しでも影響が出るか。せやからか』

 

 五七は何時もより狐花の言動が荒い理由を察した。日本神話陣営は元々『穢れ』を特段、嫌う勢力である。穢れとは『死』や『負の感情』『三毒』と言った概念。侵され過ぎると荒神化する要因にもなり得る。その中には悪魔の纏う穢れも含まれている。冥界と言う辛気臭い超常の世界の瘴気は嫌われる傾向にある。

 して、取り分け狐花は悪魔も相まってその瘴気を特に嫌って居た。

 

 

 

「ライザー……‼︎」

 

「……聞いたぜ。日本神話と揉めたんだって? その話を聞いて大急ぎで来たんだよ。婚約者を知らない所で八つ裂きにされては敵わないからな」

 

「も、揉めてなんか居ないわよ⁉︎ 向こうが突っかかって来ただけよ‼︎」

 

 

 

『完全に不法占拠してんのは向こうやろ、つーか、あのニーちゃん。あの赤蝮の婚約者かいな』

 

「……」

 

 ライザーと呼ばれた男は悪魔『グレモリー』の婚約者……つまり結婚相手との事。その婚約者が冥界では無く日本神話の領域で殺されかけたのだ。婚約者としては心配になるのは当然だろう。つまり、あの男も悪魔と言う事である。

 

 

 

「……今はそう言う事にしておくさ。そんな話題よりも遅くなって悪いが今から式の会場を見に行こう。日取りも決まっているからな、早めに行動する方が良い。それに俺がこの地に滞在出来る時間は然程、多くは無い(日本神話は悪魔陣営に対して御冠の状態で、ビザ有りでも暗殺しに来ると美南風から聞いている。日本神話陣営は危険な連中ばかり……正面からなら兎も角、強襲は危ういからな)」

 

 ライザーは其処で悪魔『グレモリー』に近いて腕を掴もうとするが、その手を払われた。

 

「ライザー‼︎ 私は以前にも言った筈よ。私は貴方なんかと、結婚なんてしない‼︎」

 

「ああ、聞いたよ。その言葉は覚えている。だが、そう言う訳にも行かない事情があるのも知っているだろう?」

 

 近くで赤蛇が吠えて飛び掛かるが、ハウスキーパーの人に静止されていた。何か言っているが、狐花はその言葉は聞かない様にした。ライザー自体も見向きもせずに無視されている。

 

「……リアス。下僕の教育は怠るのは貴族悪魔、ひいては主として恥に繋がってしまうぞ。少なくとも俺の事は教えておくべきだろう。婚約相手の事も、下僕悪魔にとっても知っておくべき事柄だ。それに下僕の粗相は君の、ひいては『グレモリー家』の恥に繋がる。其処を理解出来ない君じゃないだろう?」

 

「教える必要が無いからよ‼︎」

 

 悪魔『グレモリー』は両手を机に叩いて立ち上がって叫ぶ。その様子にライザーはヤレヤレと言った体で宥めつつ話を進める。

 

「……当日に教えるつもりだったのなら、まぁ良いか。俺はそれなりに寛大な方だ。今回の件は水に流しておくが……他の家系だと、こうはならんだろう。其の儘、其処の下僕君が縊り殺されても文句は言えないからな」

 

 ライザーはハウスキーパーに止められた赤蛇に指を刺してそう忠告する。ライザーに対しての態度の悪さは眷属としては致命的だと暗に告げている。

 

 

 

「ふーん、悪魔ってどいつもコイツも、獣見たいな連中だと思ってた」

 

『貴族とかドーたらコーたら言うとるから……貴族社会って訳か。成程なぁ……』

 

 

 

「で、話を戻そうか。君は結婚を拒否するとは言うが……君の御家事情は結構、切羽詰まっている。違うかい?」

 

「大きく余計なお世話よ‼︎ そもそもお父様達は急ぎ過ぎなのよ‼︎ 私が次期当主である以上、自分の結婚相手は自分で決めるわ‼︎ そもそも、大学を出るまで自由にさせてくれる話だったじゃない‼︎」

 

「……ああ、その話、だった」

 

「だった……? どう言う事よ⁉︎」

 

「……堕天使の件の他に日本神話と揉めた件だよ。リアス、恐らく君は伝わっていないと思っているだろうけど、君と同じ人間達の学校に通っているソーナ君から、魔王様に報告が寄せられて居るんだよ。レヴィアタン様の方にな」

 

「……ッ‼︎」

 

 悪魔『グレモリー』、リアスは其処で歯噛みした。日本神話の狐花と揉めた件は悪魔『シトリー』であるソーナにも発覚している。ついでに言うなら、ソーナは単独で交渉に臨むが容易く破断に追い込まれた。そしてソーナは事の事情を悪魔社会での政治に関与する四大魔王の一角にして自身の姉である魔王レヴィアタンに報告していたのだ。

 

「……御家断絶。君のお父上も兄君であるサーゼクス様もそれを御懸念されている。ただでさえ、先の大戦で大勢の純血悪魔が亡くなった事により多くの家が断絶の憂き目に遭い、主義主張の違いから旧魔王派の純血悪魔は冥界の淵に追いやられ……別の主張をしたアンドラス家を始めとした一部の純血悪魔の家系も冥界を追放される様に去って行った……」

 

 悪魔の情勢も決して良い訳では無い。跡継ぎが居なくて断絶した家系の他に大戦後の主義主張の違いによる政戦で現悪魔政権から追いやられた者達や、冥界自体から追放された家系もある。

 

「戦争を脱したとは言え、堕天使や天使陣営とも睨み合い拮抗した状況……小競り合いの末に跡取りの次期当主を殺され御家断絶した家もある。其処に日本神話と言う北欧やギリシャ神話に比類しかねない連中と啀み合った末にまた1つ御家断絶させる訳には行かないだろう?

 悪魔の未来、将来の為にも純血悪魔同士の婚姻はこれからの時代には必要不可欠であり当然の事だ。寿命の長い悪魔の出生率は低い、純血の悪魔の新生児は大変貴重で、歓迎される事なんだ。この婚姻は……悪魔の未来がのし掛かっているんだよ、リアス」

 

 ライザーは諭す様に情勢を説明する。ライザーは日本神話(と言うか狐花)にリアスが殺される可能性を考慮してリアスに残された自由の期間を繰り上げて此処に来たようだ。

 

 

 

 

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