雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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魔王よ拝謁の賜り

 

 

 

 夜摩天のお説教を夢現の状態で聞き流していた狐花は其の儘、寝落ちした。恐らくお説教の効果はほぼ無いと言っても良かった。そしてその間にも狐花の策は進んでいたのだった。主に五七を使って、朝方の内に悪魔『グレモリー』や『シトリー』にバレない様にC4を仕掛けて回っていた。

 

『管狐使いが荒いでホンマに……』

 

 

 

 

 そして授業の時間帯は何時もの様に変態3人組が教室に行こうとするも紫先生に捕まり進路指導室に連行される。その為、今迄変態3人組の公然迷惑行為が抑制され比較的平和な日々が過ぎていた。『一層の事、あの3人は別の教室で授業を受ければ良いのに』『猥談とか覗き行為とかして居るのに今迄、学園側は何にもしてくれなかった』『と言うか一層の事、退学か転校させてくれないかな』そう言う声が何回か交わされている。無論、変態3人組はその事実を知らない……。その為、平穏なまま時間が過ぎて時刻は放課後……。

 

『……そんな訳で、グレモリー家とフェニックス家が御家騒動で揉めちゃった訳なの☆』

 

「はぁ……その話は私も小耳には挟みましたが……」

 

 生徒会室。日本神話の八咫烏との前哨会談が破談となり、頭を冷やす目的で授業をサボったソーナ(同時に自身の姉であり外交担当の魔王に報告もしていた)は翌日には復帰していた。そして何時もの様に生徒会の業務を進めていた時、空間投影型魔法陣を介して通話を寄越して来た人物との対話をしていた。彼女の眷属悪魔達は相手が相手なので、緊張した面持ちで控えていた。

 

 魔法陣の上にホログラム体が浮かび上がっているその姿は黒髪ツインテールの少女然とした存在。一言で言えば頭から食い付かれて首無し死体になったり、全身丸ごと食い尽くされる死体になったり、プレス機の様にひしゃげた形で圧殺される様な少女の格好している。

 

「……他家の事情に首を突っ込むの野暮だと思いますよ。お姉様」

 

 ソーナの対話する相手は悪魔陣営の四大魔王が一角、セラフォルー・レヴィアタンであり、ソーナの実姉であった。放課後になったタイミングで彼女からの通信対話が寄せられた。

 内容は『リアス・グレモリーとライザー・フェニックスの御家騒動』。ソーナがセラフォルーに報告した駒王町での深刻な状況を鑑みてセラフォルーは駒王町に居るフェニックス家の三男であるライザーと婚約をしているリアスが物理的な危険な状況に立たされて居る事をフェニックス家に通達。結果、ライザーは大急ぎでリアスを冥界に連れ戻すつもりで対話に臨んだのだが、当のリアスは結婚を拒否。状況が状況であってもこの反応は想定内。結果的にレーティングゲームで決着を付ける事になった。

 

——正直に言って、凄くどうでも良いです。貴族ともなれば、結婚なんてモノ……世継ぎ関連で自由に出来ないモノでしょう? そんな自由は貴族悪魔には無い事を理解していないのですか……リアスは。

 

 ソーナは至極どうでも良いと言った心境であった。ついでに言えば、元士郎の夢は露と消えた(彼の夢がソーナと出来ちゃった婚)。ソーナも純血の貴族悪魔の1人である為に、婚姻絡みに自由は無い事を理解している。悪魔の情勢的に転生悪魔を増やしても根本的な解決には至らないと言う事を理解しているからだ。

 現象事態は無関係だとは言わないが、少なくとも両家の諍いには無関係だと考える……そんな事を一々、妹であるソーナに……ホログラム魔法陣を介してまで告げる事だろうか?

 

『……まぁ、それはそれ。で、私が話したいのは其処じゃ無いわ☆ 別の事なのよ』

 

「別の事、ですか?」

 

『ええ、それはライザーちゃんの事。実はね……レーティングゲームの予定を決めた後に、私の所に来たの☆ 私が伝えなきゃ大事になっていたと感謝の言葉を態々言いに来たの。それでね、その時ライザーちゃん、今回の件で人間界の日本に行くのに時間が掛かる程に苦労したって言ったの』

 

——……転移魔法陣を介すれば瞬時に飛んで来れると思うのですが。

 

 ソーナはライザーが『此処に来るのに苦労した』と言う発言。転移魔法陣を介すれば楽に来れる筈なのに、何故その様な言葉が出て来たのか?

 

『私、気になって聞いたの☆ そしたら日本神話の領域……具体的に言えば日本にビザやパスポートが必要らしいのよ。北欧やギリシャ神話とか、他勢力の者達が日本に来るにはビザやパスポートを提示しないと、追い出されちゃうみたいなの』

 

「そ、それは⁉︎ お姉様、どうしてそんな大事な事を⁉︎」

 

 此処でソーナも初めて『ビザ』や『パスポート』の存在を知った。無論、日本での生活が長い上に駒王学園には他国からの留学生も居る。その単語自体の意味は知っていた。

 

『私もその時初めて知ったの‼︎ 実はね……余り言いたく無いけれど日本神話陣営とは、外交上……折り合いが凄く悪くて……殆ど上手く行っていないの。対話自体、拒否を続けられちゃってね。転移魔法陣で行って直に対談しようって言っても全然取り合ってくれなかった……。そんな訳で日本神話から見て悪魔は快く思われていないみたいなの……』

 

「いえ、それは私も実感しています……。前哨交渉でさえ、上手く行きませんでした」

 

 しかしセラフォルーは何故、悪魔陣営が日本神話陣営から凄く嫌われているのか、理由が分からなかった。自分達は歩み寄ろうと考えているし、人間達とも友好的であろうとも考えて居る。しかし、日本神話陣営にはその考えが伝わらない。

 

『そう言う訳だから、『ビザ』とか『パスポート』とか中々、許可が降りないと思うの。ビザと言えば入国許可証みたいなモノ……つまり『私は安全です』と言う証明。日本神話陣営は私達の事を良く思ってくれていないから今は無理な筈なのに、ライザーちゃんは短時間とは言え『ビザ』を取得出来た』

 

「……‼︎」

 

 セラフォルーは日本神話は悪魔を嫌って居る。それはソーナから報告された『敵味方諸共、鏖殺を是とする日本神話陣営の少女』の存在から推測していた。平然と無関係な人間さえも纏めてぶっ殺しに掛かる姿勢、この状況で日本神話陣営と戦争状態に突入するのは避けたい。何故なら背後や横から天使や堕天使から測らぬ挟撃を受ける可能性があったからだ。日本神話に掛かり切りになれば、隙を突かれる可能性が高まる。

 三大勢力は敵対かつ拮抗した状態……他の勢力と戦争中に他方から攻められては耐え切れない。ただでさえ、戦争を脱して純血悪魔は断絶が相次ぎ政治関連の問題も山積みの状態……だからこそ、この状況で戦争なんてやってられない。それにセラフォルーの個人的な理由で、日本神話陣営と戦争になれば日本のサブカルチャーの存在も全て失われかねない、彼女が愛する魔法少女モノのアニメも失われる。それに加えてかの『敵味方諸共鏖殺前提』の戦術を取る存在が居る……難航続きで進展していないが忍耐強く交渉を進めて和解、和平へと繋げたいとも考えていた。

 そんな折に純血悪魔であるライザーが『ビザ』を短時間とは言えど取得して見せた。つまり、ごく僅かな時間ではあるが日本国に入国許可が降りた事実はセラフォルーにとっては信じ難い光景だったのだ。

 

『……ライザーちゃんは眷属の子の中に日本神話に詳しい子が居たから、日本神話のイカれ振りを理解していたみたい。それで、どうやって『ビザ』を取得したかと聞いたの。でも、その前に前情報としてまず先に大戦後の主義主張の違いから前魔王の家系が軒並み冥界の僻地に追放されたじゃない?』

 

「ええ……その為、魔王は襲名制になったと」

 

『他にも別件で追放……表向きは『現政治体制に異を唱えて追放』と言う形になっているけれど、自分達の方から冥界の外に出て行っちゃった家系が居るのよ』

 

 セラフォルーは語る。断絶以外にも冥界から出奔した純血悪魔がいると言う事を……そして、その家系が現状況を打破する鍵になるやも知れない、と。

 

 

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