「……その話は一応、知っています。しかし、家系までは把握していません」
『そうよね……悪魔社会を捨てた裏切り者って言えばその通りになっちゃうから、記録とか色々抹消されちゃって居るもん☆ で、その家系はね……』
セラフォルーはその時、冥界から出て行った家系をソーナに教えた。大王家とか古くからある貴族悪魔達は『裏切者』だと蔑むが、ソーナが知っても問題無いと判断した。その家系が——
・アンドラス家
・アスモデウス家
・マルコシアス家
・ベルフェゴール家
・ルキフグス家
・ウェパル家
・フェニックス家
・レヴィアタン家
・マモン家
・ベルゼブブ家
以上の10の家系。その殆どが本家とは独立した分家、或いは家を出て家系図から抹消された者達(例えばフェニックス家は現フェニックス卿の姉の家系)であった。他にもレヴィアタン家やルキフグス家、アスモデウス家、レヴィアタン家、ベルゼブブ家は御家騒動の分裂で瓦解して追放や冥界から出て行った形となっている。その為、悪魔社会から自ら脱退し悪魔陣営では断絶した。そして、悪魔社会から離脱した『裏切者』として上層部や大王家から認知されている。
「……旧魔王の家系も、なのですか」
『うーん、敢えて言うなら当時の兄弟姉妹の内の1人がって事になるわね。当時、兄弟姉妹間でも主義主張の諍いが起こった挙句、絶縁状態になって家を出ちゃったって聞くわ。私が襲名しているレヴィアタン家はその筆頭ね……他のベルゼブブやルキフグスも似た様な理由だったとか……』
「そんな裏事情があったのですか……それにフェニックス家も⁉︎」
『フェニックス家の場合は現当主の姉に当たる人が、状況に嫌気が差して家を出ちゃったそうなのよ。フェニックス家としては『放って置きなさい』のスタンスらしいけど、気には掛けているみたい☆』
フェニックス家と言えば『フェニックスの涙』の存在がある。純血の血筋だ……気に掛ける理由はあるのだろう。
「と、なると……⁉︎」
『ええ、ソーナちゃんの考えて居る通り☆ ライザーちゃんはね、その分家の方に連絡を取り短時間ビザの発行を援助して貰ったそうなの。つまり、少なくとも冥界を出て行ったフェニックスの子孫は、日本国に居る事は確定事項』
「…………‼︎」
ライザーは日本国に自身の親の姉かその子供(つまり従兄弟、従姉妹に当たる)が居る事を知っていた?そのツテで日本神話陣営に『ビザ』を申請し30分と言う短時間でありながらも発行して貰えた。考えられる事は1つ……。
『現在の悪魔陣営は信用は全く無い。だけど、追放された家系の悪魔は日本神話からは少なくとも『ビザ』の発行許可の申請に関してある程度の発言権がある程の信用はあると言う事』
「現時点では私達の言葉は日本神話の方々には届かない……‼︎」
『うん、その通り☆ 今迄はお手上げ状態☆ だったけどライザーちゃんのお陰で糸口が見えて来たのは僥倖と言えるわ☆』
つまり、その者達に『橋渡し役』を頼めば少なくとも今迄よりは多少、円滑に話が進むだろう。だが、差し当たって問題があった。
「しかし……彼らは現在、何処に居るのでしょうか? それに主張の違いで仲違いして、其方とも話が出来るのでしょうか?」
彼らを裏切者と揶揄している。イザコザが起きて会話にならない可能性も否定出来ない。自分達から出て行った家系だ、現悪魔社会の体制に馴染むかも分からないし、関わろうとも思わないかも知れない。全員が全員、そうとは言い切れないが……それでも不安は残る。
『うん……其処なのよね。少なくとも、当時の離反した悪魔達はまだ存命の可能性が高いから、断られる可能性が高そうなのよね。強いて言えばライザーちゃんが頼んだフェニックス家の姉の家系……でもライザーちゃんは『向こうもコレッきりにしてくれ』と釘を刺されちゃったみたいだし……』
「…………」
セラフォルーとしては現時点で『ビザ』が無いソーナも充分、危険な状態であり、抹殺宣告を受けている事を知っている。本音を言えば、危機回避の為にも今すぐ冥界に帰ってきて欲しい。しかし、彼女の夢は其処で途絶えてしまう。夢を応援したい気持ちとソーナ自身を守りたい気持ちで板挟みであった。少なくとも『ビザ』を確保せねば、最低限の安全さえも危うい。
『10個の家系の末裔か本人が日本国に居るとも限らない……でも、現時点で『ビザ』を獲得する糸口としては、ソレしか方法が無い。兎に角、話してみないと分からないわ☆』
『ビザ』の発行は恐らく人数が絞られるであろうが日本神話との緊張状態は緩和して置きたいセラフォルー。刻一刻と状況は悪化する一方であり、此の儘ではリアス共々ソーナも屠られかねない。日本神話陣営はほぼ表に出て来ない以上、此方から出向くしかない。出向くにあたり日本神話の領域に立ち入る必要があり『ビザ』が無ければ喧嘩状となりかねない(と言うか抹殺宣告喰らっている時点で、喧嘩状を叩き付けてしまった状態)。
「何処に居るのか、そもそもどんな人物かさえも分からない状態で探せ……とは」
『ソーナちゃんみたいに名前を誤魔化している可能性もあるのよね……かと言って『悪魔の駒』は私達の代から始まったモノだし、知らない可能性も高いから眷属悪魔を持っていない……つまり単独行動をしているから、関係者を探すのも難しいかも……』
——いや、普通に無茶な話です。如何に日本と言う国が冥界よりも小さいとは言え……人口密度はトンデモ無いんですよ⁉︎
ハッキリ言って、無理ゲーにも等しい。かと言って、現状のままではソーナにも弁解余地無しの眷属悪魔共々、鏖殺或いは虐殺される状況である。ソーナ自身も夢の為にも冥界に帰ると言う選択肢はギリギリ……本当の意味での最終手段として残して置きたい。
そも、探せと言われても眷属を持っていないと言う想定上、直接本人を探し出すしか方法が無い(関係者も関係を隠匿している可能性が高い)。
『こうなっている以上、出来る事はその人達を見つけ出す事☆ 私達は『ビザ』が無い以上、動けない……ソーナちゃん自身も動くと危ない。となれば、ソーナちゃんの眷属達は日本人だから、その子達が彼らを探して見つけ出すしか方法が無いわ☆』
——いや、転生悪魔の時点で日本神話陣営からある意味『滅べ』と言われているのですが……。
セラフォルーは元日本人の転生悪魔ならば多少は動き易く捜索出来ると言うが、ソーナは狐花側から『自分から転生悪魔になった者に慈悲は無用』と言い切られている上に此方の眷属達の家庭事情を把握されている。現に眷属1人、屠られているのだ。
しかしながら、話の腰を折る訳にも行かない。少なくともセラフォルーはその話で進めたいと考えている。逆に止めると何をするか分からない。
「……お姉様。転生悪魔の時点で人間を辞めています。元日本人だからと言っても、通じない可能性が……それに余計な刺激を起こす事かと。そもそも、その方々が駒王町周辺に居るとも限りません‼︎」
——日本全国探して回れと⁉︎ 生徒会役員が1ヶ月以上、私情で休むとなれば不審がられる‼︎ 特に今年、来た紫先生はかなりの行動派な教師。変態3人組を1人で抑え込み(その点は感謝している)、他の教員からも信頼を得ており発言権が増している上に1番遅くまで学校に残っています……。リアス達、オカルト研究部の行動にも勘付いている可能性が……‼︎
『流石に元とは言え自分の国の人間を殺す様な真似は流石にしないと思うのだけど☆』
ソーナは自身の眷属が1人、殺された挙句に喰われて骨と皮しか残って居ない事を報告していない。ソレをすれば姉がどんな暴走を引き起こすか分かったモノでは無いからだ。
「お姉様……お姉様は日本神話陣営を正しく認識出来ていないのでは……?」
『え?日本神話陣営は私達の話を聞いてくれないからさ☆ 分かっている事は少ないのよ☆ 此処はやっぱりお互いの事を良く知った方が良いのだけどね』
「……」
——……。
『お願い出来ないかな?ソーナちゃん☆』
本音を言えば不可能レベルの内容。所在不明、名前不明、容姿不明、不明だらけの状態かつ手掛かり無しと来たら、虱潰しとなる。その癖、日本神話と言う
「お姉様……」
——お姉様、貴方は……貴方の頭の中身はラフレシアが咲き誇る花畑なんですか⁉︎
ソーナは素直に自身の姉の脳味噌がラフレシアの花畑になっている事を本気で心配したのだ。
無謀、無理、無茶、後……話の内容から此方が引き起こしている問題(転生悪魔の諸事情、領土の不法占拠、国宝級の窃盗)が綺麗に抜け落ちており、恰も『此方の話を聞いてくれない』と宣う責任転嫁の様な言い方になっている。こんな奴が外交担当では会話にならないのは当たり前であり心底嫌われるのは当然だった。
後、軽い雰囲気は本人の気質であろうが……少なくとも相手の神経を逆撫でする事は容易に想像出来る……明るさとウザさは別物であり言い方は悪いがセラフォルーの明るさと言うよりも……充分、いや、ハッキリ——
と言うか思いっきりウザい。