「こんな所を巣にしていたか。日本神話が一柱……つったら充分だろ? 蛆虫共」
「『ッ⁉︎』」
その男。天魔雄がそう名乗るとセラフォルーとソーナの表情が変わった。今、まさに『日本神話とどう折り合いと言うか会談を経て和平や相互理解』をどうするか話していた矢先に、日本神話の一柱が目の前に現れた。が、とても友好的な態度とは思えなかった。
「貴方が……⁉︎ 日本神話の一柱……⁉︎」
『嘘でしょ?』
目の前の存在が日本神話の一柱だと言われて納得しかねるソーナとセラフォルー。本音を言えばとてもそうには見えない。ソーナもセラフォルーも日本神話の神と合間見えるのはコレが初めてであった。ソーナはいざ知らず、セラフォルーに至っては如何なる八百万の神々にも会った事が無い。目の前の存在は酒瓶を持った不良青年にしか見えない。2人にとって外見的に近しい存在を言えばライザー・フェニックスの風体に近いだろうか。
「テメェら蛆虫共程度の脳味噌じゃあ、理解出来ねぇのも無理は無ぇ……地を這い蹲って下しか見る事が出来ねえ塵共には、高尚なる存在を理解するのは夢のまた夢と言う訳だ」
『凄まじい程の上から目線⁉︎』
「で、くだらん話をしに来た訳じゃねぇよ。サー何とかクズが此処の理事長だと聞いて来たんだが、影も形も無ぇな……‼︎ 一層の事、この町全体を滅ぼすか。したら出て来ざるをえんだろうな……‼︎」
——どうして日本神話は事ある毎に町単位で破壊しようとするんですか⁉︎
天魔雄様はあろう事か、と言うかこの神様も『面倒だから駒王町諸共、粉砕するか』と言う認識で攻撃を仕掛けようと画策し始める。理由が狐花よりも性質が悪いと言うか何と言うか……。
『ちょ⁉︎ 余りにもいきなり過ぎないかしら⁉︎』
「黙れ。この土地が悪魔が宣う領土だと言い張る以上、この国にとっては癌以外何物でも無ぇよ。故に鏖殺して終いにするのが最善手だ」
取り付く島も無い。駒王町が悪魔陣営の宣う領土と言い張る以上、容赦は必要ない。徹底的に蹂躙し絶やさねばならない。言わば、この町は日本国、ひいては日本神話から見て『悪性腫瘍の癌』である。癌は早期に手を打たねば周囲に広まり全てを破壊して滅ぼす。駒王町は癌……他の町に住む人間達、ひいてはこの日本国に癌が移転し広まる前に排除せねば更なる被害が予想される。そんな事が分からない程、耄碌している連中は不要である。
「……そんなに、そんなに私達が憎いのですか」
ソーナは歯軋りしながら目の前の柱にそう問い詰める。
「憎い? 違ぇな……単純に邪魔だからだよ。と言うかテメェら……自分達が何をして来たのか、理解出来ねぇ程に脳味噌足りねぇ程のタマか?」
——心当たりが……あり過ぎます。
「……其処のボケ茄子女は理解出来てねぇようだな。と、その前に聞かねばならん事を忘れていたな……テメェら、『ビザ』と『パスポート』……あるだろ?出せ。サー何とかクズが居ない以上、テメェらの様なゴミに聞くだけ無駄だ。別の方から片す」
——ッ‼︎
その言葉を聞いてソーナは青褪めた。『ビザ』の概念。その概念をつい先程、姉であるセラフォルーから聞いたばかり……申請してどうやって取得するか頭を捻っている矢先にコレである。
「聞こえなかったか?蛆虫並みに聴覚は退化したか?『ビザ』出せつってんだよ。3秒以内に出せ、じゃなければテメェらのド頭、ブチ壊す」
無いモノは無い。ソーナ達に与えられた時間はたったの3——。
「はい、いーち」
その言葉の直後、生徒会室に居た生徒会役員の1人である草下 憐耶の頭部が異常な腫瘍が数カ所から現れ勢いよく破裂、脳漿が床全体に撒き散らされその勢いで眼球が飛び出してソーナの眼前を横切り壁にぶつかり砕けた。残された身体は其の儘、重力に従って撒き散らされた脳漿の中に倒れ沈んだ。
「「「………‼︎」」」
隣人の突然の死。その現実に生存している生徒会役員、ソーナ。通信越しで見ていたセラフォルーは言葉が出てこない。
「……に、2と3は……?」
その様子を見てソーナが辛うじて出た言葉。悪魔であり、生存的な意味で生死を分かつ状況である為にその覚悟はある。いや、この場に於いて1番覚悟はある。だが、目の前で無惨な形で殺される光景は堪えた。
「知らねぇな。そんな下らない数字。そもそもテメェらにそんな高尚な数字は要らねぇ。あるのか、無いのかどっちだァ?」
——何をしたのか、全く分からなかった……。彼自身、特に何かした訳では無い……となると精神系の能力? いや、物理攻撃? 神である以上、神器の可能性は無い……だとするとこの神の能力?
『も、もうある訳無いじゃない‼︎ コレから『ビザ』の申請とかしようって話の時にいきなり押し掛けて何様のつもりなの⁉︎』
その時にセラフォルーが噴き出すように叫ぶ。魔王である以上、同類が眼前で敵に殺される様は幾度でも見てきた。故に状況の飲み込みは早かった。
「……何様だぁ? 神様に決まってんだろうが? そんな事も分からない程に知能が、あー……そうかそうか、こりゃ蛆虫に大変失礼だな。蛆にも劣る程の生命体だったな。そんな簡単な事も分からない程の低知能。
『ビザ』や『パスポート』は相手の国に来る前に事前に用意しておくのが当然の行為だ。良く理解しろよ、ゴミ共」
口は悪いがほぼ正論を叩き付けられる。『ビザ』と言う物は自国で用意して然るべきモノである。
「ビザは持っていない……‼︎ まぁ、一応聞いてやろうか。御入国の目的は?」
悪魔よりも悪魔染みた顔でソーナに尋ねる天魔雄様。言葉を間違えればその場で消される。いや、消されるだけで済めば良い。狐花に至っては殺された挙句にその死骸を貪り尽くされ骨と皮だけ敢えて残された。
——此処は正直に……告げた方が良さそうですね。
「……か、下級悪魔や中級悪魔、転生悪魔向けに皆、平等に学べるレーティング・ゲームを学校を建てる為に必要な教員、教育概念の」
「違うよなぁ? 人間の搾取、不法占拠領土のミカジメ料搾取、それから色々強盗行為もしているよなぁ?」
『ちょっとそれは言い掛かり、言い掛かりよ⁉︎ ソーナちゃんはそんな事』
「じゃあ、其処に突っ立っている奴隷共は何だ? 隠す必要は無いぞ、既に知っているからな。元日本人で、転生悪魔に成り下がった……愚かな獣だ」
もはや日本神話陣営は転生悪魔の状況を全て把握している。異論も弁論も反論も全てが無意味、己の行動が全てを物語る。
「皆、平等だと吐かしたな?ゴミ。平等という綺麗事は、闇を直視できぬ弱者の戯言にすぎん。生あくる者は他者を踏み躙り壊し喰らい尽くす運命にある。貴様らの行動は、その者達の歴史を踏み躙る愚行……その歴史を否定する蛮行よ。死せる時に死ねぬと言うのは最大級の侮辱だ‼︎それに貴様のその夢、実につまらん夢だ」
「何ですって……⁉︎」
ソーナの夢を否定した。流石に自身の夢を貶されて黙っては居られない。思えば此処に元士郎が居なくて良かったとも思えて来た。彼の場合はいの一番に飛び掛かり、そして刹那の内に屠られて終わっていた。
「獣を調教して見せ合う動物園であろう? 奴隷を見せ付け合い、悦に浸る。良い趣味をしている」
「決してそんな事は⁉︎ 貴方に何が」
「……まぁ、興味の無い事だ。くだらん話はそろそろ終いにして事を終わらせるとしよう。覚悟は良いな? 無くてもやるが」
本当は駒王学園其の物を火災させて炎上させる予定でした。退路を完全に塞いで逃げ遅れた者から無差別に焼け死ぬと言う展開を予定していましたが、ボツになりました。