雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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 爽やかワルメン、再登場。


フェニックス家では——

 

 

 魔王セラフォルーが天魔雄の圧迫交渉(?)に屈して領土返還を宣言するその数時間前、冥界。

 

 悪魔や堕天使が住まうと言う界。顕界と比べると陸上地域が大部分を占めており、海と呼べる環境がほぼ皆無。強いて言えば大型の湖が疎らに点在していると言う事位である。そしてこの冥界の殆どが悪魔の領域であり広大な領土を持つのが貴族悪魔と言う訳である。

 そんな世界のフェニックス領。ライザー・フェニックスが領主として自治している地域のライザー城の一室、その部屋にてライザーは古めかしいアンティークな意匠がある電話機の受話器を使いある場所と電話をしていた。

 

「昨日の一件は世話になった……まさか、この番号が生きていた事も含めて驚きだった」

 

『……態々、礼を言う為にもう一度、電話をしたのかい?』

 

 受話器越しに聴こえて来るのは中性的な声質の声。

 

「……父上から『私の姉が家を出て行った。悪魔社会と縁を切ってな。しかし、家族の情までを切った覚えは無い』と聞いて、ダメ元ではあった。が、それは功を成した。君の協力が無ければ……こんな結果にはならなかった筈だ」

 

 電話の相手はフェニックス家の元分家。今では日本の何処かにて隠れ住んでいる『裏切者』の家系。ライザーから見て血筋的には従姉妹にあたる者だ。悪魔社会では裏切者と陰で笑い記憶から消し去ろうとも、フェニックス家としては遠縁である事に変わりは無く彼女の援護が無くば危険な状況に陥るやも知らなかった。

 

『……前回も言ったが、今回の様な事はもうコレっ切りにしてくれ。ただでさえ、悪魔と言うのは他勢力から受けが悪いんだ。とばっちりは御免だぞ』

 

「ああ、そうだろうな。日本神話のみならず、その事は俺も重々承知している。神器持ちの人間を拉致して転生悪魔として下僕に加える行為が横行しているからな……思えば、どうして俺に日本神話ビザの発行に口添えかは分からんが、協力してくたんだ?」

 

 ライザーは其処でふと、疑問を呈した。自分と相手は顔を合わせた事すら無い。この番号も父親の姉の持っていた冥界製受話器の番号だ。時期的に子供が居る可能性もあったし、実際に娘が電話に応じた。

 相手からすればフェニックス家とは言え見ず知らずの者に協力する道理は何処にあるのか?と、尋ねたくなったのだ。

 

『単なる利害の一致さ。リアス・グレモリーが主な理由だ。まぁ、概ね予測は出来るんじゃないのかい?』

 

「……駒王町の事か。確かにグレモリー家とは俺の婿入り先だ。しかし、婚約しているとは言え……現状だと其方の家の情勢は伝えられていない。流石に婿入り前はまだ他人だからな……精々、リアスが日本神話と揉めた事をセラフォルー様から聞いたけど詳細は曖昧でね。多分、婚約が絡んでいるし純血の子孫問題も絡むから、関係悪化を防ぐのかどうかは知らないが……伏せられててさ」

 

『……失態は隠したがる。良くある話だね。その様子だと、君は知らない様だね』

 

「ふむ……聞かせてくれ」

 

『リアス・グレモリーは日本神話や日本の政府、各行政機関に対して然るべき手続きをせずに踏ん反り返って駒王町に居座って領土と宣う不法滞在及び不法占拠。オマケに『はぐれ悪魔』や『堕天使』と言う存在を招き入れる始末……他にも色々あるけど、際立ってこの2つが目立っちゃってね。その事に関して日本神話がかなり怒ってしまっててね』

 

「俺が『ビザ』を取得するのに時間を有していたからよもやと思ったが、領土絡みか。俺もつくづく思って居たが……冥界以外の人間界で領土を持つと言うのは大丈夫かと思ったが……杜撰な対応だったのか」

 

 ライザーは顎に手をやる。グレモリー家は魔王を輩出した家系。のみならず大王家であるバアル家も関与する家系。それに人間界にも何かしらの形で進出している……が、勝手に居座って好き放題していた事も知った。

 

『僕達が独自にリアス・グレモリーを討伐する事も視野に入っていたよ。此の儘だと『悪魔と言う理由で巻き添えを喰らいかねない』ってね。日本神話ってのは結構容赦が無い。具体的に言うなら見境が無いし周りとか考慮しない……族誅……いや『ジェノサイド』だ』

 

 ぶっちゃけるとその言葉が恐ろしい程に似合う幼女が駒王町に居る……。

 

「ジェノサイド……人間界の言葉では……」

 

『フランス語とラテン語のかばん語。国民的、人種的、民族的、宗教的……全部か一部かは分かれるけれど、集団虐殺って事。今回の場合は、日本に居る悪魔を本当の意味で殲滅する。『ビザ』があろうが無かろうが、はぐれ悪魔だろうが、なんだろうが関係無い。全て絶やす、鏖殺し切る。それだけの事をリアス・グレモリーはやってしまっていた』

 

 リアス・グレモリー……と言うよりもグレモリー家は周りを巻き込む問題を抱えている。ライザーもグレモリー家も切羽詰まっている事も知ってはいた(後継問題の意味で)が、よもや其方で面倒事も抱えていたとは……。

 

『そう言う訳で大っぴらに喧嘩を売りまくってたんだよね。勝手に領土を名乗って威張るわ、神域を穢すわでさ……。彼女がそうでなくても、悪魔は人間を攫って奴隷にするわ、国宝級を盗むわ、建物は破壊するわ、それらを纏めて記憶操作で無かった事にして隠蔽するわで悪魔自体、嫌われているんだよ。言ってしまえばリアス・グレモリーが発破を掛けた事になるかな……特別強く目に映る形でさ……良く言うじゃないか。誰かの行動が全体が『そうなのだ』と思わせる心理。彼女の行動が『悪魔』の当然の行動だと思われる。いや、思われた。

 その所為でとばっちりがコッチにも向かって来そうだった。そんな折に君から連絡が来た』

 

「俺がリアスを連れ帰れば御の字……って訳か?」

 

『そう言う事さ。不幸にも今、駒王町には話を絶対に聞かない『祟り神』が居る。アレは『ビザ』が有ろうが無かろうが関係なく殺しに来る。もはや狂気か病気か執念かと言い切って良いレベルの悪魔嫌いで、周辺に住む無関係な民間人も巻き添えで悪魔をブッ殺す事も躊躇わない事で有名で日本神話も手に余る程なんだよ。

 その為、討伐しようにもそれする前に彼女に見つかれば此方が鏖殺されかねない。一回、以前に運悪く鉢合わせして皆、死に掛けたからね……出来れば出会したくないんだ』

 

「おい……それ、最悪の場合、俺も死ぬかも知れない危ない橋を渡ったのか?」

 

 見つかった瞬間に鏖殺ごっこの始まり。会話も成り立たずに周りの被害を考慮せずに暴れ狂う。流石の悪魔も人間界ではその被害を考慮して認識欺瞞の結界なり消音の結界を張る……迷惑過ぎる。

 

『お互い様だろ?僕の方も『ビザ』の件で結構危ない橋を渡ったんだ。余り姫を心配させたくない』

 

 相手も相手で『ビザ』の件で危ない橋を渡ったらしい。

 

「……首の皮一枚って奴か。俺も不死鳥だが、君も不死鳥のフェニックスの直系だ。それでもなのか?」

 

『その時、彼女はこう言ったよ『不死身? なら、死ぬまで殺す。楽しんで殺す、悉く殺す。お前達も殺す。何故なら、その為に私はいる』と言っていたよ。細かい所は覚えていないけど、大体そんな感じかな』

 

 不死鳥フェニックスは不死身だ。例え首が落ちようとも炎と共に再生する。しかし、精神的なダメージは回復しない。絶えずに殺し続ければやがては殺せるのはフェニックス家では当然の理屈だと理解している。だが、言うのとやるのでは別問題だ。

 

『本音を言えば、そんな時間を掛けずに無理矢理にでも誘拐紛いに連れ帰ってくれた方が有り難かったかな』

 

「俺も最初はそのつもりだったんだがな。リアスはプライドがかなり高くてな。頑として認めたくねぇってさ……」

 

——貴族が自由な恋愛を望むのは夢物語なんだよ。

 

「……父上も魔王様もリアスが拒否する事を見越して『レーティング・ゲーム』で決着を付ける事を予め決めていた。その日の内に始めても良かったんだが、初のゲームで陸に準備出来ていない状態だとな……魔王様の他に両家の懇意にしている面々も見物に来られる。戦力増強の猶予期間はあった方が良いと言う判断だ」

 

『戦闘と言うのはそんな甘いモノじゃないぞ。何時だって唐突に始まるモノだ。準備?用意? そんなモノ、相手は待ってはくれない。正義とか卑怯とか……戦闘じゃ役に立たないよ』

 

 受話器の向こう側から伝わってくる、非情な声。実際に見て来たかの様な声であった。

 

「……そうか。そうかも知れないな。君は分からないかも知れないが貴族ってのは、柵が多いのさ。主に見栄とか、面子とか……見栄えも含めてさ。悪魔の癖に堂々とか言っちゃってさぁ……くだらないだろう?」

 

『ああ、くだらないよ。ゲームとか言っちゃっている時点でくだらないや』

 

「ハッキリ言わないでくれ。若手悪魔としちゃ、全方位に喧嘩を売るぞ、ソレ」

 

『そもそも僕達は悪魔社会に生きていないし、生きる事は無理かな。皆、やってられないと言うよ。こう見えても、今の生活はそれなりに気に入っているよ。多少の不都合さはあるけど、それも含めて気に入っている』

 

——相手も純血の悪魔。聞けば冥界の悪魔社会から出ていった面々も固まって行動しその子供(全員純血)が一緒になって暮らしてるそうだ。現悪魔社会の『悪魔の駒』の様なグループとなっているそうだ。因みに『王』はアンドラス。離脱組の悪魔グループの中で中心となっていたからかその子供の周りに集う形になったらしい。

 

 冥界から離脱したアンドラス家の周りにフェニックス家を含めた他の家系の子供が集まって共同体として生活している。全員が純血悪魔であり、昨今の悪魔社会の純血悪魔の家が断絶して行く中で、純血悪魔の子供は貴重。恐らく魔王達は悪魔社会に復縁して欲しいと接触を図るかも知れない。親の世代は『裏切者』と言えるが、その子供も裏切者かと言われるとそうだと言い切れるのか?

 ライザーも冗談半分で聞こうと思ったが相手のその言葉で心の内に留める事にした。

 

「成程な。まぁ、話してくれて有難う。改めて言うが今回は世話になった。礼の品も送りたい所だな」

 

——リアスの一件。今なら調べれば判明させる事が出来るだろう。政略結婚とは言え利点にならなければフェニックス家に泥を塗る事になる。

 

『気持ちだけ受け取っておくよ。っと、何だい? 分かった。どうやら時間の様だね』

 

「時間を取って悪かった」

 

『次の連絡は、無いかも知れないけどね』

 

「縁起の悪い事を言うな」

 

 そのやり取りの末、通話は切れた。

 

「……ふぅ、ユーベルーナ」

 

 受話器を置いたライザーは自身の眷属である『女王』のユーベルーナを呼んだ。

 

「ライザー様。お呼びでしょうか?」

 

「……リアスの駒王町での成果。調べられるだけ調べてくれ。場合によっては現地の調査もしてくれ。他の眷属達にも手伝える事があるなら手伝わせても構わない」

 

「……リアス様の?」

 

 駒王町でのリアスの成果。駒王町はリアスの領土と宣っている。その成果を調べろとユーベルーナに命じた。

 

「ああ……父上達が決めた事とは言え……家名に泥を塗る行為は流石にな。日本神話と揉めた件は些細な問題の末かと考えていたが……どうやら、根深い所にまで食い込んでいる様だ」

 

 リアスを迎えに行く時までセラフォルーからの話から考えるに『リアスが日本神話の者と口論になった』程度しか考えて無かった。

 だが、今回の従姉妹に当たる人物の話だとどうやらそれだけでは無い様だ。

 

「ただ、駒王町の現地調査は呉々も注意して進めてくれ。日本神話の中でも特に危険な奴が居るそうだ」

 

「……具体的には?」

 

「悪魔嫌い、かつ……周りの事を躊躇せずに殺しに来る傍迷惑な無差別タイプの奴らしい」

 

「……ライザー様が其処まで言うのですか?」

 

 不死身のライザーも警戒する。その様子にユーベルーナも話だけでは分からないと考える。

 

「俺も出会った事が無いから何とも言えん。ただ『祟り神』……そう呼ばれているそうだ。美南風が言うには『祟り神は総じて強力な力を持つ神々です。殆どが主神クラスです』との事から、正面衝突は絶対に避けろ」

 

 寧ろ、そんな奴が街中を普通に歩いている光景は見たくない……出会えば豹変して町を破壊しながら襲って来る。普通に恐怖。

 

「主神クラス……それは是非とも出会いたくありませんね」

 

「だろ? タイトル目前と雖も、主神クラスに敵う程に驕れる強さは今の俺達には無い……ただ、厄介な事に姿が分からないのがネックだ」

 

 『祟り神』が悪魔嫌いで危険な存在である事は分かった。しかし容姿が分からない、気付いたら隣に居て、瞬殺……。とても笑えない。

 

「……駒王町でのリアス様の調査はスピードの速い者に託す他ありませんね」

 

「其方は出来ればで良い。メインは冥界で調べられる事に専念しろ。俺とて可愛いお前達をみすみす失いたく無いからな」

 

 

 

 

 

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