雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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狐花ちゃんのジェノサイドデビルお料理教室

 

 

 

 元士郎を引き摺って狐花一行は皓咲屋敷へ帰宅。帰ったらやる事は基本的に夕飯の支度である。皓咲屋敷では、飯の担当は基本的に代わり番こで行われる。なのだが……皓咲屋敷に集まるのは癖だらけの面子ばかり、マトモな料理を作るとは思えない者達揃いである。

 夜摩天様の場合、料理が襲ってくる可能性がある為に戦々恐々、コレまでのアーシアと静香、ベンニーアは陸に料理をした事が無い。アイラは簡単に済ませる事が多い。残るは狐花なのだが……放って置いたら確率的に食卓に昆虫類が並びやすいので、もはや論外レベル。しかも今回は捕獲した悪魔を使って料理すると言い出している為に、狐花以外は全力で拒否した為に今日は別々に作る事になった。誰1人として狐花の悪魔料理は理解されないのである。

 

「……じゃあ、作る」

 

 夕刻頃。皓咲屋敷本屋敷の台所。其処に狐花はいた。制服から普段着の巫女服(上は白衣では無く黒衣)に着替えていた。因みにアイラ達は今日は買い置きの惣菜で済ます事しており、1人分の料理となる。かく言うその食材の悪魔である元士郎はと言うと水揚げされた魚の様に近くに逆さで吊るされていた。

 

『あー、具体的にゃ何作るんや……?』

 

 五七が今回、何作るのか尋ねる。ある意味、野生児であるが故に現地で出来る料理をする事があったのである程度は予想出来る。

 

「鍋」

 

『あー……まぁ、無難やな』

 

 狐花が選択したのは『鍋』であった。鍋の中に色々放り込んで煮る、以上。その為、変に拘った物よりかは幾分かマシである。

 

「………んにーッ‼︎」

 

『それ以前の問題として身長が足りてねぇな、おい』

 

 が、それ以前の問題があった。狐花はご存じ幼女と言って差し支えない程の低身長。台所の各所は大人仕様の為に狐花の身長では色々と届かない。外から見れば狐花の頭の髪の毛さえ隠れてしまっている。

 

「んにっ‼︎」

 

『あー、はいはい。分かった分かった、持ったるからそれで我慢せいや……』

 

 結果、五七が狐花の襟首を掴んで持ち上げて料理を進める事になった……完全にぶら下げられた状態で進める料理とは一体……?

 

 

 

 

 

 

 

「……ぐ、う? って、なんじゃこりゃあぁぁぁ‼︎⁉︎」

 

 その時、元士郎は朦朧とした意識を覚醒させ現状を把握して叫び声を上げる。しかし、狐花は気にする様子を見せない。本人は何が起きているのか全く分からないのだが、現状ではどうしようも無い。

 

『で、狐花。鍋の他の材料はどないすんや?』

 

「……白菜とか豆腐とか」

 

『まだ普通やな……』

 

「あと、蝉と蚊と、それから甘酒」

 

『闇鍋級、確定やないかッ⁉︎』

 

「何が起きてんだよ⁉︎ つか、お前ら誰だよ⁉︎ と言うか此処、何処⁉︎」

 

 元士郎の叫び声は無視され狐花は適当に鍋の中に具材を次々と放り込んで行く。もはや鍋にブチ込んで居るだけである。それでも生食し続けるよりかは遥かにマシであった。火をかけてグツグツと泡立って行き湯気が立ち昇る。

 

「じゃあ、次は……」

 

 狐花は其処で何処からともなく、鋸を取り出した。ギザギザは粗い為にかなり痛そうな代物である。

 

「お、おい……?料理にノコギリは使わねぇと思うぜ?」

 

 元士郎は状況は分からないがそれでも周りの様子から台所である事を理解する。だが、料理にノコギリは使わない筈だと告げるも狐花には届かない。

 それを持って狐花は逆さ吊りにしている元士郎の方へと向き直り、振り上げる。

 

「ま、待て待て待て⁉︎ は、話せば、話せば分かる⁉︎ と言うか状況が全く分からない⁉︎ や、止めろ⁉︎ 兎に角止めろ⁉︎」

 

「えいやっ‼︎ (≧w≦)」

 

 元士郎は自由となっている両腕を必死にバタつかせながらの懇願は狐花には届かず、元士郎の右腕を斬り落とす様に鋸の刃が振り下ろされた。

 

「が、あッ……⁉︎」

 

 ゴリ、と耳障りな音と共に肩付近から沸騰する様な熱さと激痛が元士郎の身体全体を駆け巡る。

 

「ん?やっぱり簡単には斬れないや、えいっ‼︎」

 

 肩付近の骨や軟骨に引っ掛かる為、ガリ、ゴリ、ギリと何度も挽くかの様に動かす。その度に粗々しい傷口から猛烈な勢いで鮮血が台所中に飛び散る。噴水の如く飛散した返り血が狐花を盛大に濡らして行く。

 

「あ゛あ゛ッ!あ゛あ゛ッ!」

 

 叩く、挽く。

 

「ぎゃあぁああぁぁあああぁぁ‼︎」

 

 叩く、挽く、叩く。

 

「ぃぃいいぃぃぃ……っ‼︎」

 

 折れて、取れた。

 

「んに、取れた取れた。やっぱり食べるなら新鮮なモノが1番だよね」

 

 元士郎は歯茎が壊れんばかりに歯を食い縛り激痛に耐える。痛いのは王であるソーナから日夜折檻を食らっている為に慣れては居たつもりだった。だが、目の前の幼女はそんな努力を嘲笑うかの様に抉り切られた己の右腕を持っている。

 

「かは………か、な、……‼︎ ふ、巫山戯……んな」

 

 腕が折り取られ痛みに堪えながらも息を整え目一杯睨み、恨み節を投げつける。しかし、当の本人は背中を向けて聴こえて居ない様にも見えた。悪魔が好んで眷属に勧誘するのは神器持ちや容姿が良い者、それから希少な種族。元士郎の場合は神器を持っていた。だが、顕現する場所は他ならぬ右腕。その腕を折り取られた以上、抵抗する術を失っている。近くに手に取れるモノが無いのが何よりの証拠。

 

『ま、まぁ……そうなんやけどな』

 

 その腕を狐花は俎板の上に乗せて包丁を使い中の骨と肉を分離して行く。皮膚の皮も邪魔な為か剥ぎ取って行く。彼女が主に取るのは二の腕の筋肉の部分。血を抜いて筋肉の部分だけを綺麗に取り出す。

 

「おい、テメェ……何、しているんだよ……⁉︎」

 

 転生悪魔となってから何れは『レーティング・ゲーム』と言う戦いの場に赴く事は重ね重ね理解していた。その時には戦闘する事になる事も理解していた。だが、目の前の悪意も殺意も無く、この様な常軌を逸する行動を取る存在を見るのは初めてであった。はぐれ悪魔の中には人間を喰らう奴が居ると言うのは知っている。そのはぐれ悪魔は大概が醜い化け物と化している……だが、目の前に居るのは年端もいかない幼女が人食すると言う想像だにしない光景だ。

 

「丸ごとぽーんっ‼︎」

 

 手頃な大きさになった肉部分を狐花は其の儘、豪快に鍋の中に放り込んだ。

 

「あああぁぁぁぁ‼︎⁉︎ お、俺の腕がァァァ‼︎⁉︎」

 

 自身の腕が鍋の具材に追加される様を見て絶叫する。誰だってそんな光景、見たくない。

 

「んー、次は隠し味に……」

 

「お、おい……今度は何する気だ……⁉︎」

 

 再び狐花は元士郎に向き直り今度は肉切り鋏を持って躙り寄る。既に元士郎の中では目の前に居るのは幼女の皮を被った悪魔にしか見えなかった。

 

「……やっぱ悪魔の肺臓だよね。美味しい場所って」

 

「や、止めッ⁉︎」

 

 狐花はそう言い肉切り鋏で元士郎の胸部を切開し始め抉り始めた。途中で鋸に持ち替えて邪魔な肋骨を抉り始めた。

 

「ぎ……ぎぎ……! うごっ⁉︎」

 

 折れる、取る、砕く。

 

「ぎィィッ‼︎」

 

 管を曲げて掴み邪魔な肉を退かす。

 

「$@゛♯%$&ーーーーーーーっ‼︎」

 

 右側の肺を無理やり引き摺り出す。

 

「ーーーーーーーーーッ‼︎」

 

 切除して取り出す。

 

「おお〜、やっぱり柔らかい〜。美味しそう〜」

 

 麻酔無しでの胸部を切開。その間、元士郎の絶え間ない絶叫が響き渡る中、狐花は眉一つ動かさずに肺を抉り取った。胸部を切り開いたが故に鮮血が溢れて元士郎の口からも喀血や嗚咽と共に吐瀉物を床に零す。

 

「げぽ!……ひゅッ………ごぼごぼごぼ」

 

 取り出した肺をお湯で洗い付着した血液を洗い流し、手頃な大きさに切り分けた後、鍋に放り込んで蓋をした。

 

「……後はちょっと待つだけ〜。五七、恐介と一緒にソレ、持ち主に返して来て」

 

『あー、はいはい。分かった分かった』

 

 逆さ吊りにされたままの元士郎は胸部が切り開かれ肋骨の一部が破壊され右腕を斬り落とされた状態。悶絶した状態であっても転生悪魔故か未だに生命を維持していた。相応に丈夫な身体をしているのだろう、最も返って苦痛を長引いて受けている事もあってか、不幸か幸福かは意見の分かれる所であった。

 

 そして五七達が元士郎(瀕死体)を生徒会室に放り込んで来て戻って来た所、狐花は鍋の中身を思いっきり捨てて居る光景に出会した。

 

『おーい、狐花。何しとん?』

 

「不味かった、凄く不味かった。あの悪魔、凄く不味いッ‼︎ 産業廃棄物ッ‼︎ 錆臭い上に腐ってる……腐敗が白菜や豆腐にも……うう、勿体ない。‼︎ それから頭が痛い……」

 

 狐花は頬をぷくーと膨らませながら憤慨した。煮込んだ悪魔鍋を食べたは良いが、想像を絶するレベルで不味かったらしい。

 

『……とりま、少彦名命様から頭痛薬貰って来よか。で、稽古は明日に持ち越しや』

 

 その後、恐介は高天原に赴き少彦名命様から頭痛薬を貰う為に飛び立ったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【狐花メモ】

 匙 元士郎。

 不味い。 筋肉と肺は美味しく無いから捨てた。煮ようが焼こうが錆臭い上に腐敗臭が凄まじく食べられたモノじゃないから、食べない方が良い……。
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