ライザー・フェニックスとの『レーティング・ゲーム』。それはリアスにとっても絶対に負けられない戦いとなる。日本神話の横槍により自身の領土が脅かされている状態が実家であるグレモリー家に伝われば『経営能力に欠陥がある』と見做され、実家に連れ戻されてしまう。リアスにとって実家であるグレモリー家も大事ではあるのだが、日本と言う冥界の悪魔の社会よりも生活基準で言えば目新しいモノや娯楽が数多い為に手放したくは無いモノである。それに、ライザーとの結婚は政略結婚と言う肩書きがあり拒否権は本来無い筈のモノではあるのだが、リアス自身としては断固として拒否したいモノ。
だが、相手は不死鳥の名を冠する『フェニックス』……リアス自身は『滅びの魔力』。しかしながら、人数的、戦力的にも大きな差がある。レーティング・ゲームでは無敗を誇る。対する自分達が何処まで善戦出来るか……リアスの眷属達は他の貴族悪魔から見てレアな能力を持つ者達ばかり居るが、それで勝てる程甘くは無い。
10日後の決戦に向けてリアスはグレモリー家が所有する(無断占拠)山にて修行する運びとなった。
「ひー、ひー……‼︎」
伝説の赤蛇こと、兵藤 一誠はまだ夏にも遠い時期ながらも汗を流しつつ、常人ではとても支えきれない量の荷物が入ったリュックサックを背負い、急勾配の坂道を歩いていた。
リアスに連れられた眷属達はグレモリー家が勝手に自身の縄張りだと主張し出して領有している山付近に訪れていた。距離がある為に早朝の内に転移魔法陣で山の麓に飛んで来たのである。と言っても本日は平日、当然ながら学校は休んでの実行……無断欠席も甚だしいがリアスにとってはそんな事、些事な事。生徒会であるソーナがいる限りどうとでもなるし、一誠は紫先生に扱かれて居る事も歯牙に掛けていない。
「雲行きが怪しいわね……予定だと晴れて居る筈なのに、変ね」
「……そうですわね。山岳部は天気が変わりやすいとは聞きますが、天気予報では快晴だった筈……いつの時代も天気予報はアテになりませんわね」
ヒーこら、言いながら後方で歩き続ける一誠を他所に、遥か先を歩くリアスと朱乃は上空の景色が曇天になりつつある事に不安を覚える。山に修行しに来たのに雨が降られては困ると言えば困る。最も過酷な環境下での修行は歓迎されるべきではあるのだが……万が一と言う事もある。
「お先に、遅れると修行の時間が無くなるよ」
「ぐそぉ……イケメンめぇ‼︎」
その隣を一誠と同様に巨大にパンパンに詰まったリュックサックを背負った祐人が軽快な足取りで通り過ぎて行く。
「イッセー‼︎ 早くしなさい‼︎ 置いて行くわよ‼︎」
リアスが一誠に檄を飛ばす。一誠に宿る神器の特性上、本人が強くならねば十全にその機能は発揮出来ない。故に過酷な修行をせねば強くなれないのである。
「ぐぉぉぉぉ‼︎‼︎」
赤蛇の一誠は奮起と疲労を繰り返しながら急勾配の坂道を駆け上がり、リアス達の目的地である木造の別荘がある場所へと辿り着いた。
「イッセー……この程度で根を上げちゃダメよ。相手はライザー……ちょっとやそっとの強さじゃ勝ち目が無いわ……」
「う、うす……‼︎」
急勾配の坂道を登り切ったリアス達。と言っても疲労困憊なのは一誠だけであった。別荘地周辺は芝生が生い茂り、木々が点在する広場。修行をする場にとってはベストな立地であった。
リアスの言う木造の別荘はグレモリー家が所有するモノ。普段は魔力により姿が消えて視認出来ないが、使用する時にはその姿が現れる。
「さぁ、皆。荷物を部屋に置いて、着替えてから修行を開」
リアスが木造の別荘へと向き直りそう意気込んだその刹那。木造の別荘が轟音と災禍と共に粉微塵に吹き飛ばされた。炎上し焼けた別荘からは黒煙が噴き上がっていく、火事と言うには余りにも衝撃的な轟音。
「「「…………ッ‼︎⁉︎」」」
木造であったが故に柱や床、屋根に至るまで大いに焼け、爆轟により飛散した焼けた木材が周辺に飛び散る。しかし、同時に曇天の空から雨がポツリポツリと降り始める。
「……な、何が起きたと言うのよ……⁉︎」
「真面では無い存在を相手に真面にする必要は無い‼︎」
『……娘、使い方を間違っておろう。まぁ、良いわ。そも構えてて正解であったな……‼︎』
「目指すは立身出世……。悪魔と言うモノを祓い切って……この世を切り開き……何時の日か政宗公の様な武将になる‼︎」
『時代が違うと思うのだが……まぁ、乱世と大差ない世と言えようか』
ゴォォォォォ‼︎ と言う地響きに似た唸り声が、物理的な衝撃波となり残された焼けた別荘の瓦礫を吹き飛ばし黒煙が払われた。別荘が建っていた場所の向こう側、其処には眼光が1つ……黒光りする鱗を纏う蛇の様な体躯、2対の勇壮なる角……黒い雲を従えている姿は正しく東洋の龍其の物であった。だが、片目は潰れており言うなれば隻眼の龍であった。
「……‼︎」
その竜の前には日本刀を佩いた1人の少女が立っていた。小柄な体躯で濡羽の髪を後方に二叉に分かしている。そして、片方には眼帯を付けていた。
黒い龍と共にある少女。リアスの別荘を破壊したのは間違いなく目の前の龍と少女。
「ゼハァ……おーい、木場……何がどうなってんだよ……‼︎」
疲労で俯せに倒れたままの一誠は祐人に状況を尋ねる。何かがぶっ壊れたのは理解したが……状況が分からない。
「分からない、ただ……嫌な予感がする‼︎」
「イッセー、へばって無いで構えなさい……‼︎」
明らかにピンポイントでリアスの目的地である別荘を吹き飛ばした。それにこの山自体もリアス、ひいてはグレモリー家の領土(不法占拠)。自身の領土である駒王町を日本神話に荒らされている以上、気が立っていた所に婚約問題がも縺れ込み、更に苛立って居るリアス。その矢先にコレだ……‼︎
——どれだけ私の邪魔をすれば気が済むのかしら⁉︎
その感情が膨れ上がるも貴族たる者、激情に流されてはならない。だが、目の前の存在に対してどう処理するかは決めていた。
「……貴方達、一体どう言う心算のつもり? 此処は私達、悪魔の……グレモリー家の領土よ? 不法侵入した挙句に所有物を破壊するのは明確な敵対行為よ?」
しかし後にライザーとのゲームを控えている。リアスとしては戦力が足りないとも考えていた。駒に成る者は1人でも多い方が良い。確かに領土侵犯されたが、目の前の少女は後方に龍を従えて居る様にも見える。
「でも、この私。リアス・グレモリーの眷属になると言うのならば不問にしてやっても良いわ」
赤龍帝に加えて黒龍。ドラゴンと言うのは古今東西、力の象徴……構えは盤石となる。建物は壊れたが魔法での再建築は容易いと言える。故にリアスは眷属への勧誘を試みた。
「リアス・グレモリー……‼︎ 本当に幸先が良い……今迄は大した名も無いはぐれ悪魔の首ばかりだった。今回は文字通り大将首だ……‼︎」
だが、目の前の少女の反応はリアスの予想とは違っていた。その隻眼は獲物に対する欲望を湛えていた。
『ふむ、日の本を荒らす悪魔共の首……‼︎ 何れの首であっても士官する証に丁度良かろう……見やれば赤蛇の首もあるぞ?』
少女の後方に控える隻眼の龍、一目連は唸る声でそう告げる。少女の隻眼もギラつくかの様に唸る。
「両方の首級を上げれば……実力を示すは充分……‼︎ 大将首、大将首だ。
大将首だろ⁉︎ リアス・グレモリー‼︎ その
眼帯を付けた少女、青葉 ニコは抜刀と同時に一足に踏み込み一陣の風と共に体勢を低くしてリアスの眼前にまで駆ける。
「残念ね。悪魔になれば……無限の生を得られると言うのに……滅びなさい‼︎」
リアスは眷属への勧誘を蹴られた為、残念だと思い赤黒い魔力、滅びの魔力を小型の球に形成して放つ、当たれば滅び消滅して消え失せる。
『……やれやれ、迅る娘が。どれ、吾は其方の相手をしてくれよう。悪魔共よ』
雨が強くなる。風も強くなる。立っているだけでも精一杯の最中、朱乃を含めた眷属達は風雨故にその場に踏み留まらなければ風圧により吹き飛ばされかねない。一誠に至っては疲労+リュックサックの重量で堪えているに過ぎない。
「遅い‼︎」
「ッ⁉︎」
だがニコは暴風吹き荒れる最中に飛来する魔力弾を躱し切り掠りもせず、リアスの眼前に肉薄、黒き刀身の刃がリアスの喉元付近に迫り——。
青葉 ニコ 47HEROINES