雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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剣を砕く

 

 

「遅い‼︎」

 

「ッ⁉︎」

 

 だがニコは暴風吹き荒れる最中に飛来する魔力弾は掠りもせず、リアスの眼前に肉薄、黒き刀身の刃がリアスの喉元付近に迫り——。

 

「部長ぉぉぉぉぉぉ‼︎‼︎」

 

 その刹那、暴風に煽られながらも自身の身体能力、そして『騎士の駒』の速力を以って祐人が前身し後方から飛び出す。その手には青白い刀身を持つ剣が握られていた。

 

「……っ」

 

 その時、ニコは口の端を歪めた。その顔に祐人は寒気が走った気がした。ニコはリアスの首に刃を当てる直前で引きリアスの身体を蹴り飛ばした。

 

「部長⁉︎ っく」

 

 其の儘では構えた剣にリアスが当たる。咄嗟の判断で祐人は剣を捨て其の儘、リアスの身体を身体で受け止めた。

 

『早ったな、娘……』

 

「流石にいきなり大将首は獲らせてくれないか……‼︎ やはり他の悪魔の首を落とさないとダメ、かな」

 

 立っているのでもやっとの暴風と豪雨の中、眼帯の少女、ニコは日本刀を構え直す。この暴風が吹き荒れても全く動じている様子が見られない。

 

「……部長。どうしますか?」

 

 祐人にぶつかる事で何とか大きく吹き飛ばずに済んだリアスは自分達の状況を見て思案する。小猫は地面に臥せて暴風に飛ばされない様に踏ん張っている、朱乃もこの豪雨の中で雷を放つと自分達にも漏電しかねない。一誠は疲労で今は動けない。

 

「あの後方に控えているドラゴンが厄介ね。恐らくこの暴風と雨を降らせているのはアイツね」

 

『敵前で作戦会議とは、愚の骨頂ぞ‼︎ 癌共ッ‼︎』

 

「まずい、朱乃。魔力壁を‼︎ 祐人と子猫も‼︎」

 

「はい」

 

 その時、一目連が咆哮。その音量は衝撃波となってリアス達に襲い掛かる。咄嗟の判断で魔力で形成される障壁を前方に展開する。

 

「なっ⁉︎」

 

「嘘でしょ⁉︎」

 

 しかしながら、咆哮による衝撃波の破壊力はリアス達の予想よりも遥かに上回り端から残片となって砕け散って吹き飛ばされて行く。

 

「……御首級、頂戴致す‼︎」

 

「なっ⁉︎ 何時の間に⁉︎」

 

 気付けばリアスの足元にニコが居た。後方の一目連に気が向いていて彼女に注意を払い切れなかった。彼女自身、小柄であった事も要因か。今のリアスには障壁を張るのに手一杯で無防備な状態。どうぞ斬ってくれと言っている様なモノだった。

 

「させるかぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」

 

 リアスのピンチ的な状況に一誠は疲労なぞ知った事かと言わんばかりにリュックサックを投げ捨て籠手を顕現させてから駆け出す。だが、位置的に当然間に合わないし暴風と雨の影響で服に多量の水分が濡れて動き辛く疲労も祟り鈍い動きしか出来ない。

 

「この……ッ‼︎」

 

 リアスとて、此処で死ぬ訳には行かない。苦し紛れに障壁を張りながら滅びの魔力を眼前で炸裂させる自爆戦法を敢行。障壁の要であった自分が抜けた事により障壁は瓦解、当然ながらリアス達は散り散りに吹き飛ばされて地面をゴロゴロと転がった。一誠に至っては最後尾かつ後方が登って来た坂道……豪雨も相まって流され転がり落ちてこの場を離脱してしまった。

 

「自爆するとは、むぅ……」

 

『癌故に、易くは無い。そう言う事だ』

 

「……まだまだ修行が足らぬ、と言う事か……‼︎ だが、諦めるモノか」

 

 

 

 

「部長⁉︎ 大丈夫ですか⁉︎」

 

「ええ、苦し紛れの自爆だったけど、皆は?」

 

 リアスの自爆染みたやり方、当然自分にも被害は及ぶがあのまま、斬首されるよりかは遥かにマシである。朱乃達も転生悪魔故に吹き飛ばされた程度では死にはしない。

 

「……埒が開きませんね。向こうも同じかも知れませんが」

 

「私達はあんな奴と戦っている暇は無いのに……」

 

 人数差は此方が上、なのだが戦闘の場の環境は著しく悪い。暴風に加えての足取り、動きを悪くする豪雨。この様な環境で戦った事はリアスも含めて一度も無いのが1番痛い事だろう。

 

「部長。彼女の狙いは部長です、2回も部長を優先的に狙って来ている……」

 

「日本刀に東洋の龍……日本神話の所属の可能性が高そうですが……」

 

「本当、何処まで私の邪魔をすれば気が済むのかしら……‼︎ 私が何をしたって言うのよ‼︎」

 

 東洋の龍と共にある事から朱乃は最近、自分達の周りに彷徨く日本神話陣営の者と予測を立てる。その言葉を聞いてリアスは苛立つ。自分は何もしていないのに、事ある事に干渉して来る。

 

「……兎も角、私の領地にのさ」

 

 その時、暴風と豪雨の最中。音も無くリアスの眼前を横切る形で一本の矢が飛んで来る。その横切った。反射でリアスは目を見開き硬直した。

 

「隙ありッ‼︎」

 

「させないッ‼︎」

 

 鋼と鋼が打ち合う音が響く。僅かな隙も逃さずに突撃したニコ、動きからリアス狙いだと理解した祐人。お互いの刃が初めて打ち合った。ニコは下段から、祐人は上段から。

 

「悪いけど……そう簡単に『王』は獲らせないよ……‼︎」

 

「やはり、周りを片付けてからじゃないと邪魔が入ってダメみたいだ、ね」

 

「え?」

 

 ニコは日本刀を掴む力を緩めた。お互いぶつけ合う力の均衡が崩れ祐人は体勢が前傾姿勢になったその直後、ニコは濡れた地面に態と足を滑らせ祐人の真下を潜りながら独楽の様に旋回しながら刃を振るい祐人の右足の膝を斬り落とした。

 

「……ぐ、が、ああッ‼︎⁉︎」

 

 右脚を斬り落とされた祐人は体勢を維持出来ずにその場に倒れた。豪雨が傷口から噴出する血を滲ませて大地に染み込ませる。

 

「祐人⁉︎」

 

 

 

『……先の矢。どうやら、横槍が来たようだな』

 

「横取り……? 漁夫の利を取るつもりか……‼︎」

 

 

「部長、此の儘の状況は宜しくありませんわ。此処は退いた方が……‼︎」

 

 祐人は負傷、一誠は転がり落ちて行った。更に外部から飛来する矢がリアスを狙っている上に豪雨に暴風……状況は圧倒的不利な状態。リアスは歯噛みする。退くのはプライドが許さない、しかし祐人は片脚を斬り落とされると言う重傷を負った。治癒魔法と言うのは劇的な効果を齎すモノでは無い。冥界の病院でも切断された部位を繋げるのに数週間は掛かる。

 

「屈辱だわ……良いようにやられて、逃げ帰るだなんて……‼︎」

 

「じゃあ、首を置いて行ってよ。生き恥が嫌なら、潔く散って‼︎」

 

「お断りよ‼︎ 私はこんな所で死ぬ訳には行かないのよ‼︎」

 

 状況は最悪。数で勝っていると言うのに不利な状況……こんな戦闘はリアスにとっては屈辱と言えた。しかし、祐人を見捨てる事は出来ない。

 

「朱乃‼︎ 転がり流されたイッセーを連れて魔法陣で帰還するわ‼︎」

 

「はいッ‼︎」

 

「逃げる?逃すかッ‼︎」

 

 ニコは逃がせまいと日本刀で斬りかかるもリアスは倒れた祐人に魔法陣で転移させ、自分達も転移魔法陣でこの場を離脱。その刃は空を切った。

 

「くうううう〜‼︎ 魔法陣でワープされちゃ、簡単に逃げられる〜‼︎ 大将首がぁ〜……‼︎」

 

『まだまだ詰めが甘いな。肉を切らせて骨を断つ……それも戦術。最初の手で判断を失敗ったのが敗因だな……』

 

 豪雨の中、ニコは大将首を逃した事に落胆していた。首級を上げねば、意味が無いのだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おや、外しましたか〜」

 

「雨、風……渦の様……」

 

「流石にあの中で狙撃するのは無理がありましたね〜……此処で運良く仕留めれば〜……後々が楽になると言うのに……上手く行きませんね、何事も」

 

「…………ん」

 

「仕方ありません。帰りましょうか、この場に留まっても良い事はありませんし〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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