日本刀を持った少女の襲撃を受けたリアス達。当然ながら、迎撃する構えであったのだが、環境を一変され不利な状況下に置かれた事により苦戦。結果、眷属である祐斗が片脚を斬り落とされる事態に陥った。不利な環境下では戦う事もままならず、リアスは朱乃の提案で屈辱の撤退をする羽目になった。ライザーとのレーティング・ゲームを控えている矢先にコレは幸先が悪いと言えた。
「……容体は安定して居ます。しかしながら繋がり血が流れるまで最低でも2、3週間は掛かります」
「そう……」
撤退したリアス達は重傷を負った祐斗を首都であるルシファードにある病院へと運んだ。其処で告げられたのは切断された脚が繋がり完治までには最低でも2週間は掛かると言う事であった。ライザーとのレーティング・ゲームには到底間に合わない。
「祐斗先輩抜きでやらなくてはならないのですか……」
病院を出たリアスは思案する。『騎士』の駒が事前に脱落。ただでさえ人数差、力量差で劣っている状態で、手駒が減るのは大きな痛手である。特に前衛である祐斗が欠けた状態では苦しい戦いを強いられる事になるだろう。
「部長。日本神話に喧嘩を売ってしまった以上、日本の何処に居ても奇襲や強襲を受ける可能性がありますわ」
今回の件を踏まえ朱乃は、相手が本気だと再認識する。『ビザ』が無い上に堂々と日本の土地を自身の領土だと宣った。ましてや、真昼間から真正面から鏖殺しに来る始末。そして他にも刺客が現れる様になった。
「……どう言う事?」
「……日本神話は聖書の様に一神教ではありません。多神教の中でも一際、膨大な数の神が存在します。石や土、風……ありと凡ゆるモノに神が宿る程です。つまる所、日本では常に見られている状態と言えるでしょう」
「…………」
「……部長が何をしたって言うんだよ……‼︎ 何もしてねぇのに『殺す』とか意味、分からねぇよ‼︎」
一誠は納得出来なかった。『ビザ』だの『証明書』だの理屈ばった内容を立て続けに叩き付けた挙句に殺そうとして来る。
「……理屈としては正論なのが痛い所ですわ。理不尽に思えるかも知れませんが日本の人間社会と言う名目がある以上、その論は正道。勿論、悪魔の記憶改竄を使えばどうとでも出来ますが……そうすると、殊更相手側の神話を怒らせてしまいますわね」
「朱乃、日本神話に肩を持つ気なの?」
「……仮にも巫の家系です。以前から触れて居た事ですから……分かってしまいますのよ。部長、こうなってしまった以上、冥界で修行するのが1番の安全策です」
朱乃はリアスに日本で修行するのは止めた方が良いと提案する。寧ろ、日本に行く事自体をしない方が賢明だとも言える。
「嫌よ。それだと、マイナーな日本神話の宣告に屈したみたいで屈辱じゃない‼︎ それに自分の領地から追い出されては領民に対して申し訳が立たないじゃないの‼︎」
勝手に領主を名乗って何を言っているんだ、コイツは?と言いたいが素でコレなので言っても聞きやしないだろう。
「そうっすよ。朱乃さん‼︎ 部長だって頑張っているのに日本神話ってのは血も涙も無ぇ‼︎ 折角、修行場の別荘を粉微塵に吹っ飛ばしやがって、木場は……イケメン死ねと常々思ってたけど、あんな大怪我は……望んじゃ居ないってのに」
「……イッセー……有り難う。でも、朱乃の言う事にも一理はある気もする。修行しようにも横槍が常に入る状況だと身が保たないのは確か……でも」
リアスは再び思案する。冥界で修行する案もあるにはある。しかしながら、日本にある自身の領土を放置する訳にも行かない。かと言って駒王町で修行するのは総合的に危険。町諸共、吹き飛ばしかねない。しかし——。
「……冥界で修行するにしても、実家に場所がバレバレになってしまうわ。そうなると、面倒な横槍が来てしまうのよね」
何せ両家が結婚を画策している。政略結婚でライザーを当てる時点で確信犯ではあるのだが、万が一と言う事もある。更に一手加えられる可能性もある。
「リアス?」
その時、リアスに声を掛ける声が聞こえた。聞き覚えのある声、視線を向ければ其処にはソーナ一行が居た。
「ソーナ? 何故、此処に……?」
「それは此方の……いえ、状況的にもあり得る話ですね」
かく言うソーナの顔には陰りが見られた。よくよく見れば憔悴している様にも見える。それよりもリアスが気になった事、それは。
「ソーナ……貴方の眷属。少なくなっていない?」
「死にました。昨日、日本神話の神の一柱が現れまして……3人、目の前で殺されました。抵抗する間も無く、瞬殺です」
「ッ‼︎」
その言葉を聞いてリアスは動揺した。日本神話の神がソーナの眼前に現れ、眷属を3人葬った。躊躇無く殺したとも言われる。
「……不法占拠している利子、だそうです。やはり眷属悪魔が元日本人である以上……全て筒抜けでした。自ら悪魔に成る者に慈悲は無いと言う事なのでしょう……。以前にも貴方が揉めた日本神話の皓咲さんに1人、殺されて挙句にその身体を食べられ……骨と皮だけ突き返されました」
「……ッ‼︎ ひ、酷ぇ……‼︎」
「じ、人食……‼︎」
「……非常識ですわ」
ソーナは次いで、狐花に眷属悪魔を殺された挙句、その死体を喰われて骨と皮だけ突き返された事も告げた。明らかなカニバリズム……人食行為。元日本人からすれば、非常識極まりない行為、例え悪魔でも醜い姿と化したモノしかしないであろう行動を見た目は幼女でしか無い狐花が平然と行った。
「……彼女は幼女の皮を被った悪魔ですね。現代の日本に住む人間とは到底、考えたくありません」
「は、話を簡単に聞く限りその様ね」
相手を殺して喰らう……或いは喰い殺す。とても人間がする様な真似だとは思えない。それが見た目が幼い幼女ならば尚更と言える。
「それでソーナは何をしているの?」
「……私ですか? コレからフェニックス領のライザーの所に訪問しようと思っています」
「ッ‼︎ ライザーの所に……何しに?」
ソーナは其処でライザーとリアスは婚約者同士。しかし、リアス自身がライザーを嫌っている事を思い出した。
「……諸事情です。お姉様から聞きましたが、ライザーは短時間かつ限定的ではありますが『ビザ』の取得に成功したと……私の夢の為にも日本にて勉学を積む必要があります。故に『ビザ』の取得は必要不可欠なのです」
ソーナは学校を創ると言う夢の為にも困難が有ろうとも止まる訳には行かない。犠牲を払おうとも、諦め切れるモノでは無い。
「ライザーが……『ビザ』を手に入れた……⁉︎」
「あの野郎が……どんな手を使ったんだ、野郎は⁉︎」
「……本気で潰しに来る以上、ビザ無しの状態は危険です。藁にも縋る思いではありますが一縷の希望を持って『ビザ』取得に関してのお話をライザーから聞こうと考えています」
ソーナの言葉にリアスは僅かに歯軋りをした。『ビザ』が無ければ日本の管轄内での行動はままならない。かと言って冥界だと実家に連れ戻されかねない上に結婚と言うオチまで付いて来る。ビザ無しで日本の管轄内に居座ればあの幼女、皓咲の襲撃に加えてまだ見ぬ刺客が訪れる可能性がある。
「……そ、そう」
「リアス。意地を張るのは結構ですが……張る相手を間違えない様にしないと、悲惨な事になりますよ。では、私達はもう行きます。既に学校は無断欠席になってしまっていますから……」
「え、ええ。そうね……」
ソーナ一行はリアスに頭を下げた後、ソーナの後を追いライザーの住む城へと向かい歩いて行った。
「……仮に部長の結婚騒動が終結しても『ビザ』の問題に直面しますわね。先方の話だと私も、イッセー君も必要ですし」
「俺は日本生まれの人間なのに、何で外人扱いなんだよ……‼︎ つーか、あの野郎には死んでも頭を下げたくねぇ‼︎」
『ビザ』を取得するにはどうしたら良いのか分からない。かく言う冥界には日本のビザを発行する施設が無い。手段は現状、ライザーが握っているが……リアスと一誠は死んでも頼みたくない相手であった。
「『ビザ』、『ビザ』ね。無いなら造れば良いのよ。『ビザ』が有れば文句は無い筈よ」
「え?造れるんですか、部長?」
「……ええ、何故こんな簡単な事を思い付かなかったのかしら、過去の自分に問い質してやりたい位だわ。発行だなんてそんな廻り諄い真似、する必要が無いわ」
「部長‼︎ やりましょう、そうすりゃきっと行けます‼︎」
盛り上がるリアスと一誠。その様子を見て朱乃と子猫は憂が残る。
「朱乃先輩……」
「ええ、偽造ビザは違法なのは言うまでもありませんわ。日本神話がそんな事、意識が向いて居ない筈がありませんわ。確かに悪魔ならば作る事は容易いでしょうけれども……」
無論、朱乃は『止めた方が良い』と伝えるもバレなきゃ問題無いと一点張り……果たしてどうなる事か……。
「部長。何度も言いますが『ビザ』の偽造は危険行為です。これ以上、関係悪化を招けば本当に戦争になりかねませんわ」
「じゃあ、どうすれば良いのよ⁉︎ 他に手があるの⁉︎」
「……ライザー様は、部長自身が嫌ですわよね?」
「ええ……」
「ならば、他の手段を取るしかありませんわね……情報を集めねば何も始まりません。最悪、ソーナ様から聞くのが1番の近道かと」
「そ、そうね……ソーナなら、何とか情報を引き出せる筈よね」
何とか偽造ビザ作製を阻止する事に成功した。しかし、『ビザ』が無ければ日本に帰る事すらままならない……リアス一行の行先は暗雲に包まれたままだ。