雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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三章
皓咲城にて……


 

 

 

「……会長。どうしますか?」

 

 ソーナの目論み通り『ビザ』の取得条件を説明して貰う事に成功した。しかし、その内容は過酷に尽きる。

 

1、領事館で申請する。(最も安全かつ正当な手段)

 冥界に日本神話の領事館が存在しない為に前提から不成立。

 

2、代理申請。(相手側にリスクが伴う上に制限のある可能性)

 そもそもソーナに代理を頼める相手が居ない為に不可能。日本に冥界から脱退した『裏切者』の子孫が居るらしいが交友が無い為に義理立てする理由がない。

 

3、『裏幕府』で直接申請。(最も危険かつ正攻法な手段)

 場所が分からない上に文字通り物理的な集中砲火を一身に浴びる危険性が高く、其の儘全滅となり得る可能性が非常に高い。

 

 

 以上の事から危険しか存在していない事が容易に分かる。

 

「……可能性があるのは『裏幕府』と呼ばれる組織。しかし、相手は付喪神と呼ばれる存在。ライザーの眷属の話だと護国鎮護……国を守りし者達……既に悪魔陣営が日本を脅かす存在と認知されている以上、そう簡単に警戒を緩めてくれるとは思ません」

 

——リアスが発端とは言えませんが、分かりやすい形を成してしまったのは言うまでもありません。しかし、此の儘手を拱いても時間の浪費にしか過ぎません。

 

 『裏幕府』の戦力と現状の自分達の戦力差で敵うとは思えない、いや思わない。

 

「………一か八か、やるしかありませんね」

 

「会長……?」

 

「場所も分からない。かと言って、現状では納得させる事の出来る材料はありません」

 

——後押しをしてくれる人は絶対に必要です。現状で、それが可能な相手はたった1人しか知りません。

 

「……皓咲 狐花さん。もう一度、対話を試みます。今回は私、一人で行きます」

 

 ソーナは日本神話に属し尚且つ駒王町に居る狐花に相対する決意を固める。八方塞がりの最中で、コレに賭けるしか無い。しかし、相手は『祟り神』とも謳われる幼女の皮を被った悪魔……最悪の場合、問答無用で惨殺される可能性もある。もう、それはそれは見るも無惨を通り越した猟奇的な光景が広がる事だろう。

 

「……会長⁉︎」

 

 副会長である椿姫が目を見開く。それは一か八かの賭けにしては余りにも分の悪い賭けでしか無い。故に思い留まって欲しい思いもある。

 

『無謀』

 

 その一言に尽きるからだ。直接戦闘した事は無い、無論『祟り神』と言うのも伝聞でしか聞いた事が無い。だが、少なくとも最上級悪魔クラスだと予想できる。

 

「……ええ、無謀な事は承知の上です。しかし、貴方達を連れては巻き添えで殺されるやも知れません。犠牲は少ないに越した事はありません」

 

「だからと言って会長お一人では殊更、危険です‼︎ 魔王様も……‼︎」

 

「無論、私が仮に死ねばお姉様は取り乱して日本神話との間に戦争が勃発するやも知れません。しかし、かと言って貴方達の誰かを差し向けたとしても、彼女の二の舞になってしまうでしょう……。彼女だけでは無く、あの二人の犠牲も無駄にする訳には行きません。王である私が直接動かねば、届きません」

 

——もう、直接ぶつかる以外に手はありません。最悪、殺されるかも知れません。

 

 ソーナは足元に転移魔法陣を展開させる。1人分、即ち自分の跳ぶ為の陣。狐花が何処に住んでいるかは見当が付いている。廃教会があった場所に日本屋敷が建設されていた。その周辺はより強い『破邪の気』が立ち込めている。下級悪魔ならば即死レベルだろう。自分は上級悪魔……何とか耐え切れる筈である。

 

「何も其処まで命を懸ける必要は……‼︎」

 

「私の我儘で、3人も命を落としました。匙も置き去りに来てしまった……‼︎ その犠牲に目を背けて王を名乗れましょうか……‼︎ 私の夢は、この程度で折れる程……安くはありません‼︎」

 

——……私とて死ぬは怖い。見るも感じるも無惨な殺され方をするかも知れない恐怖は身体が震えます……しかし、そんな恐れを感じない程の夢だと言えますか? そんな優しくて甘い夢だと、私は感じた事はあったか?

 私の夢を悪魔社会で叫んでも笑い話にされるでしょう……でも、諦める訳には行かない。私の描く夢……その制度が最も整っていて理想に近いのは日本の学校の制度……。他の国では天使と言った教会勢力が強く、迂闊な行動は出来ません。目下の敵である教会の勢力が弱い日本でしか充分に学べる環境が無い。

 

「……『王』である私の決断です。私は、必ず生きて貴方達の前に帰ってきます。『王』の凱旋を……粛々と待っていて下さい。コレは私の『王』としての命令です」

 

——……これ以上、私の眷属を見殺しにする訳には行きません。皓咲さん、今度は直に相対させて頂きますよ。シトリー家のソーナ・シトリーとして……‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、顕界は黄昏時を迎えていた。狐花達は地下の皓咲城で稽古をしていた。アーシアと静香に霊術を伴う稽古……高天ヶ原にて2人はその術を習ったのである。その稽古を此処、皓咲城の最下部にある広場にて行う事となった。

 

見よ、聞け、謳え‼︎ 人類史に積み重なりし叡智の結晶達よ、天翔ける翼、睥睨する瞳、侵略の劫火を伴い幾重もの装甲となり我が身に神の権威を顕現せよ‼︎ 重く、厚く、我は文明の代行者として深く深く進撃せん‼︎

 

 アーシアが紡いだ詠唱。それは魔法や霊術と呼ぶには異形過ぎた。肩から背中を覆い尽くすは小柄なアーシアの体躯を上回る大きさの多機能大型推進システム。多数の武装コンテナやら索敵システム。それは例えるのならば、高速機動のパワードスーツに近しい。明らかに出る作品間違えてる……。

 

神靁轟音は神々の神罰と知れ‼︎ 天神の咆哮全て、この腕に宿し、遍く悪鬼魍魎蔓延る穢界を打ち砕く神槌を振り降ろさん‼︎ 乾坤崩界‼︎

 

 静香が紡いだ詠唱。その手には雷光渦巻く戦鎚が貌を見せる。武装を展開する詠唱故に持ち歩く必要が無いが神器の様に今は瞬時とは行かない。

 

『よーし、お二人さん。大分詠唱早よなったな。出来ればもっと早くやらなな……コレが実戦やと先に潰されてまうで?』

 

 詠唱の隙と言うのは出来る限り小さくするべきである。そう考えた場合、2人はまだまだ遅過ぎると言わざるを得ない。

 

「うう……声が枯れて来ましたぁ」

 

「コレも……神の試練……‼︎」

 

 生成した武装を霊力に霧散させた2人は疲れたのか肩で息をするし声も絶え絶えであった。2人ともその身に宿る霊力は高い部類にあったらしく高天ヶ原にて基礎は教わったようである。後は自力でやるしか無い。

 

「いーよね。2人とも……私はそう言うの苦手だからね……」

 

『あん?アイラの嬢ちゃんはアーティストやから、ちょちょいのちょいで行けそうな気がすんやけどなぁ〜』

 

「芸術とソレじゃあ、違うと思うのだけどね……」

 

『ま、しゃあないな。でも、物理的にゃ戦い慣れてんなぁ?』

 

 かく言うアイラは肩に機械式の大鎌を持ってそう呟く。残念ながらアイラには霊術の才覚は無かったが近接格闘戦だと彼女に軍配が上がる。彼女が携帯している大鎌は大柄な武装ではあるのだが機械式かつかなり小さく変形縮小させてコンパクトにする事が出来る機構式。その変形風景は狐花は目を輝かせて物珍しそうに眺めていたのは記憶に新しい。

 

「まぁ……元いた組織の都合、って奴よ。霊術ってのにも種類あるみたいだし……他に覚えられそうなら覚えるに越した事は無いわ。1種類だけじゃ無いでしょ?」

 

『まぁな。つっても霊術は科学とちゃうからな……例外は幾らでも出て来んで? ほな、2人とも休憩は終いやで。もう一回‼︎』

 

「「は、はいっ‼︎‼︎」」

 

 五七の指導は結構、スパルタであった……。

 

「……見ているだけじゃダメだし、向こうでやっている狐花ちゃんの所に行こうかしらね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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